調査研究成果公表
文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)ではこれまで、「専門家が注目する科学技術アンケート調査」として、NISTEPが運用する専門家ネットワークに対し、自身が注目する科学技術の概要や実現時期等をアンケート調査してきました。
これらの回答は将来実現し得る科学技術等についての専門家の見解(エキスパートジャッジ)であり、未来に関するデータという点で、学術論文や特許といった既存の情報とは異なる価値を有しており、俯瞰・分析することで科学技術の変化の兆しの早期発見に資すると考えられます。
これまで2020~2023年度の間に約一年おきに注目科学技術アンケート調査を実施し、過去3回分の調査データが蓄積されています。本調査では、過去3回の注目科学技術アンケート調査をマップで可視化することによって俯瞰的に分析し、回答傾向や特徴を明らかにしました。
さらに、一般に使用可能な分析ツール(ST PANGAEA)を作成したため、その使い方についても概説します。詳細は報告書URL及び以下URLを御参照ください。
報告書URL:専門家が注目する科学技術(注目科学技術)等の可視化・分析システム[DISCUSSION PAPER No.241]
ST PANGAEA:ST PANGAEA
この度、人工知能分野の主要国際会議(AAAI, AAMAS, ICML, IJCAI, NeurIPS)を対象に、2015年から2024年の10年間における研究発表の動向を分析しました。
本調査は、研究活動の国際的な構造変化や日本の立ち位置を把握することを目的としたものです。
各発表の著者所属機関の所在国・地域を整理・集計するとともに、発表タイトルをもとにワードクラウドを作成し、研究テーマの推移を可視化しました。国・地域の推定には、LLMによる著者・所属抽出とROR APIを組み合わせた半自動化手法を導入しています。
分析の結果、以下の知見が得られました:
- 発表件数は大きく増加し、NeurIPSでは2015年の403件から2024年には4,538件と約11倍に。
- 増加を牽引したのは中国と米国で、AAAI・IJCAIでは中国が首位。一方、ICML・NeurIPS・AAMASでは米国が最多ながらシェアは低下傾向。
- AAMASでは2024年に中国が英国を抜いて2位、インドも4位に浮上するなど、地理的構図に変化。
- 国際共著では米中共著が最大であり、シンガポール・韓国・インドのハブ化が進む中、日本は件数を増やす一方で周縁的な位置にとどまる。
- 研究テーマは深層学習中心からLLM・生成AI、倫理・公平性、医療・ロボティクスなど応用へと広がりを見せている。
本報告書では、地域イノベーションシステムの状況を明らかにするため、地域のステークホルダーとして、企業、都道府県、政令指定都市、財団法人、公設試験研究機関、金融機関の合計5,643機関を対象として、大学との各種連携に係る実態・意識についてアンケート調査しました。
その結果、大学との連携を行ったことがある機関のうち7割以上が、それぞれの連携において期待通りの成果が得られたと認識していることが確認されました。また、好ましい結果となった要因として、学内の専門家人材による丁寧な対応と、平素より最新の研究動向や地域の課題意識を共有する交流の場の設定が重要であることを確認することができました。
詳細については、以下のリンクより御覧ください。
ライブラリ:地域イノベーションと大学の地域貢献に関するアンケート調査報告[調査資料 No.347]
NISTEPにおいて継続的に実施している、「民間企業の研究活動に関する調査」(民研調査)で得られたデータを用いて、報告書の分析用データとは別視点での分析用データを作成し、民間企業における費用構造からみた研究開発状況を分析しました。
本調査研究は、民研調査での定義と民間企業の研究開発経営で使われる定義が異なる調査項目のなかで特に注目するものについて、この両者の分析用データの比較分析を通して、研究開発状況の実態を把握することを目的としています。
研究開発効率に関しては、新聞報道等で用いられた評価指標を用いて、民研調査の個票データから数値を算出し、新聞報道等の数値との比較分析を行いました。民研調査から作成した数値では、研究開発効率等は種々報告されている結果より良い方向に修正されることが見いだされました。
詳細につきましては、以下のリンクより御覧ください。
ライブラリ:民間企業における費用構造からみた研究開発の状況―「民間企業の研究活動に関する調査報告」を軸とした分析―[DISCUSSION PAPER No.240]
この度、撤回論文データベースであるRetraction Watch Data 及び、研究成果書誌データベースであるOpenAlexを活用し、撤回論文の実態に関する分析を行いました。本調査は、学術研究における信頼性確保や研究インテグリティ向上に関する議論に資することを目的として実施されたものです。
撤回論文には、単なる不注意による誤りだけでなく、データの捏造・改ざん・盗用といった不正行為に基づくものも含まれており、研究者や研究機関の信頼性を損なう重大な要因となっています。こうした不正行為の抑止に向けて、撤回論文の実態把握と定量的な分析は、研究政策の観点からも極めて重要です。
本研究では、撤回論文の年別推移や、学術分野別、著者所属機関の国・地域別、撤回理由別など、多角的な視点からデータを整理・分析しました。また、関連する既存研究についても併せて調査し、論文撤回における研究不正の傾向やパターンに関する理解を深めました。
分析の結果、以下のような知見が得られました:
撤回論文の件数は年々増加傾向にある。
- 撤回件数の多い国・地域は、通常の論文数や引用数における上位国とは異なる傾向を示している。
- 特定の著者が突出して多くの撤回論文を出しているケースがあり、国・地域単位の傾向分析を難しくしている。
- 我が国においては、一部の著者による大量撤回が全体の撤回数を押し上げていることが確認された。
詳細につきましては、以下のリンクより御覧ください。
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)ではこの度「博士人材追跡調査(JD-Pro)」2012年度修了者の1.5年後、2015年度修了者の0.5年後のコホート・データを用いて博士課程修了者が非専門分野へ就職する際に影響を及ぼす要因についての分析を行いました。
分析結果からは、(1)博士課程在学時の教育・研究指導の質、 (2)異分野との交流・協働、(3)キャリア開発支援や進路指導が、非専門分野における雇用可能性に有意に影響を及ぼすことが示唆されました。
本研究の知見は、博士課程教育における柔軟な指導体制や、多角的なキャリア支援の必要性を示唆するものであり、今後の博士人材政策や大学院カリキュラムの最適化に寄与することが期待されます。
詳細につきましては以下のリンクより御覧ください。
ライブラリ:博士課程修了者の非専門分野における雇用可能性を高める要因の探索的研究:ランダムフォレスト法を用いたアプローチ[DISCUSSION PAPER No.238]
本研究は、オープンアクセス(OA)が異分野引用に与える効果の有無を検証するものです。OA化の方法の中でもゴールドOA(ハイブリッドOAを除く)に焦点を当てて、自然科学の諸分野において論文をOA化することにより異分野引用は増えるかどうかを明らかにしました。
分析の結果、過半数の分野においてOAは分野内引用と異分野引用を共に増やすこと、幾つかの分野では異分野引用のみを増やすことが明らかとなりました。異分野引用のみにOA化の効果が見られる分野の中でも、特に臨床医学分野は分野全体が異分野引用されやすくなることが分かりました。
国際的にOAが推進されてきた背景の一つにはOAは異分野への知識移転を促すという期待があります。本研究の知見は、実際にOAはこうした期待に応えていることを示しており、OAを推進する意義及び根拠の一つとなるものです。
詳細につきましては以下のリンクより御覧ください。
ライブラリ:ゴールドOAが異分野引用に与える効果:自然科学系論文に着目した分析[DISCUSSION PAPER No.237]
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では、地球環境の持続可能性への関心が高まっていることから、2022年度に続きカーボンニュートラルをテーマに掲げて2050年の未来社会像の検討を行いました。具体的には、石川県及び島根県において地域ワークショップを開催し、2020年度以降に開催した5地域と合わせて地域の未来社会像を整理しました。続いて、諸外国事例も踏まえて、地域の可能性と課題について考察しました。
その結果、地域が望ましい姿の実現を目指す中でカーボンニュートラルに貢献する可能性として、自然資源を収益源として持続的に活用すること、及び、地域の課題解決にカーボンニュートラルの視点を導入することが示唆されました。取り組むべき課題としては、行政区分などにとらわれない取組範囲の設定、価値観や行動の変化の促進、経済的仕組み構築などが挙げられました。
詳細につきましては以下のリンクより御覧ください。
本データには、日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条)を適用して特許出願した発明について、創出元となる研究開発事業や委託元である省庁やファンディング機関などのデータを収録しています。
同制度は、政府資金による委託研究開発等による知的財産権について、一定の条件を受託者が約する場合に、受託者に帰属させることを可能とする制度であり、その適用には、特許法施行規則第23条第6項に基づき、出願願書にその旨を申告記載する必要があります。
本データに収録した委託元の機関や研究開発事業データは、この申告文章に記された情報を手掛かりとして、特許出願1件ごとにインターネット上に公開された情報を調査し取得したものです。なお、出願人等の特許基本情報は、別途公開している「日本版バイ・ドール制度を適用した特許出願データ」と連携し取得することができます。
本データファイル及びユーザマニュアルのダウンロードは、こちらからお願いいたします。

