科学技術や学術に関する定量データやその分析は、科学技術政策の立案のための欠かすことのできない基盤であるとともに、複雑で多岐に渡る科学技術・学術活動の状況を把握、また、政策の効果や影響を分析する上でも重要な役割を担っています。
しかし、科学技術・学術活動の本質は知識生産プロセスであり、そのような形の見えにくい対象についての定量データを作成することは容易ではありません。また、科学技術・学術活動は、関連する様々な活動と密接に結びついており、他と区別して測定することは、技術的にも困難が伴います。このような問題意識のもとで、当研究所は、科学技術や学術に関する定量データの活用や分析を深めることを目的として、科学技術指標の開発と科学計量学の研究に取り組んでいます。

科学技術指標

「科学技術指標」は、日本を含む世界の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき、体系的に把握するための基礎資料です。科学技術指標は、世界の多くの国で作成されており、我が国においては、当研究所が1991年に初めて公表しました。当初は、概ね3年毎に指標の構成を見直して報告書を公表していましたが、2009年以降は、データの速報性を重視し、基本的な指標に絞り、日本と主要国の研究開発費や研究者数、論文数をはじめとする基本的なデータと、それについての説明を体系的にまとめて毎年公表しています。また、「科学技術指標」の公表に加え、関連する調査研究にも取り組んでいます。

調査研究成果

科学技術指標報告書

「科学技術指標」の最新版(科学技術指標2024)及びこれまでの報告書については、以下より御覧ください。

 

科学技術指標の詳細はこちら

 

科学技術指標に関連した調査研究

科学技術指標は、科学技術の全体的状況を示すことに重点を置いていますが、特定の項目のなかには、更に分析を深める必要性の高いものがあり、それらについての調査研究を実施しています。また、科学技術指標の作成・活用の基礎となる事項についての調査研究も実施しています。

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科学計量学

科学技術の動向を俯瞰的かつ定量的に把握することを目的とし、論文や特許などの研究活動のアウトプットに着目し、国内外の研究開発の動向や科学技術水準の定量的分析を行っています。各国の科学技術の強み弱みの時系列分析、国内外の研究機関の特徴分析等に加え、科学の現状を俯瞰的に捉えることの出来る「サイエンスマップ」を隔年で作成し、注目される研究領域の出現状況やそれらの特徴を分析しています。

調査研究成果

科学計量学的アプローチを用いた、科学技術基本計画のフォローアップ調査

当研究所で行った第3期科学技術基本計画のフォローアップ調査において、科学計量学的アプローチを用いた以下のような分析を行いました。

世界の研究の潮流を読むサイエンスマップ調査

サイエンスマップ調査は、高被引用度論文(各分野で被引用回数が上位1%の論文(TOP1%論文))を分析対象とし、国際的に注目を集めている研究領域を把握するため、隔年で実施しています。これらの研究領域を分析すると、世界の科学研究の流れ、学際研究や融合研究の質的変化、サイエンスマップに現れるホットな研究成果における日本のシェアの状況、主要国のどこが関与度を伸ばしているかなどが見えてきます。

主要国との比較から見る日本の研究活動のベンチマーキング調査

研究活動結果の公表媒体である論文に着目し、我が国の科学研究のベンチマーキングを行っています。個別指標(論文数、Top10%・Top1%補正論文数)と、複合指標(論文数に占めるTop10%補正論文数の割合(Q値))により、日本の状況を分野ごとに、主要国と比較しています。また、日本については、部門別・組織区分別での分析を加え、日本内部の論文産出構造の時系列変化を分析しています。

日本の大学の研究活動のベンチマーキング調査

研究活動結果の公表媒体である論文に着目し、各大学の“個性(強み)”を把握するためのベンチマーキングを行っています。個別大学の分野特徴や時系列での変化を把握するために、大学ごとの研究状況シートを作成し、比較しています。また、個別大学の相対的な状況を把握するため、日本の大学の中でのポジショニングの分析および各種研究分野における世界と競える強みを持つ大学の分析をしています。

日米共同研究: 科学における知識生産プロセスに関する分析

当研究所、一橋大学イノベーション研究センター、ジョージア工科大学は、日米の科学者を対象とした科学における知識生産プロセスについての大規模アンケート調査を実施し、約4,400件の回答を得ました。本調査から、科学における知識生産プロセスにおける日米の共通点と相違点が、初めて定量的に明らかになってきました。

科学計量学的アプローチを用いた工学分野に着目した動向分析

工学関連の研究は、今後のイノベーションで重要な役割が期待されています。しかし、今まで文献計量学では,詳細な分析はあまりされていませんでした。そこで、当研究所では、米国に本部を置き世界の工学系文献の三分の一を出版し、標準化などでも影響力が強い世界最大の学協会の電気電子技術者協会(IEEE)の文献を分析し、世界の研究人材の国際移動や技術動向の変化などを独自の視点から明らかにしています。

特許に関する分析

研究活動のアウトプットとして計測可能な特許に着目して、世界及び主要国について特許出願動向の特徴や変化を分析し、科学技術指標で報告しています。また、以下のように、大学や公的研究機関に着目した分析も行っています。

科学計量学的アプローチを用いたその他の調査研究

その他、特定分野の分析、途上国についての分析、産学連携の分析などを行っています。

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