
我が国が持続的な経済成長を実現するためには、イノベーションを通じて需要の創出や生産性の向上を図り、もって経済的・社会的価値を創出することが不可欠です。当研究所では、科学技術・イノベーション政策の推進に資する客観的証拠を提供するため、企業におけるイノベーション活動や我が国におけるイノベーション・システムの状況及び動向を調査・分析しています。
イノベーションの測定と分析
第6期「科学技術・イノベーション基本計画」では科学技術・イノベーションの推進機能の強化を目的として、客観的証拠に基づく政策の企画立案、評価、政策への反映等が推進されています。当研究所では国際標準に基づく統計調査を実施して、企業のイノベーションやイノベーション活動の状況や動向を調査しています。また、企業や機関レベルのデータと書誌情報(特許、論文など)を接続し学術研究から産業への知識フローをつうじた経済インパクト等について分析しています。当研究所はこれらの調査研究をつうじて、科学技術・イノベーション政策の対象や背景となるイノベーション・システムやイノベーション・プロセスについての理解を進めるとともに、イノベーションの測定におけるさらなる改善を図ります。
調査研究成果
全国イノベーション調査(イノベーション測定:統計調査及び分析)
「全国イノベーション調査」は、OECD(経済協力開発機構)とEurostat(欧州委員会統計総局)が合同で策定したイノベーションに関するデータの収集、報告及び利用のためのガイドライン-『オスロ・マニュアル』-に準拠して実施されています。同マニュアルに基づく同種の統計調査は世界の約100の国・地域で実施され、調査の結果はOECD等が公表する国際比較のための指標集及び報告書等の基礎となっています。当研究所は、我が国における政策分析・形成・執行での活用、国際社会への貢献はもとより、統計調査により収集した個票データを用いた実証分析も行っています。
[統計報告]
- 全国イノベーション調査2022年調査統計報告 [NISTEP REPORT No.200/2022.9]←NEW!!
- 全国イノベーション調査2020年調査統計報告 [NISTEP REPORT No.192/2021.10]
- 全国イノベーション調査2018年調査統計報告 [NISTEP REPORT No.182/2019.8]
- 第4回全国イノベーション調査統計報告 [NISTEP REPORT No.170/2016.11]
- 第3回全国イノベーション調査報告 [NISTEP REPORT No.156/2014.3]
- 第2回全国イノベーション調査報告 [NISTEP REPORT No.144/2010.9]
- 全国イノベーション調査統計報告[調査資料 No. 110/2004.12]
[その他報告書]
- サイエンスベースのイノベーション実現のための吸収能力:全国イノベーション調査を用いた実証分析 [DISCUSSION PAPER No.221/2023.3]←NEW!!
- ステージ型プロジェクト管理がプロダクト・イノベーションの実現に及ぼす影響:企業向け設問票調査に基づく定量分析 [DISCUSSION PAPER No.209/2022.6]
- イノベーションの画期性と企業成長:全国イノベーション調査を用いた分析 [DISCUSSION PAPER No.196/2021.6]
- 日本企業の研究開発マネジメントとイノベーションの現状 -「研究開発マネジメントに関する実態調査」結果概要-[DISCUSSION PAPER No.189/2020.9]
- 研究プロジェクトの中止・継続がイノベーションの成果に及ぼす影響とその決定要因:全国イノベーション調査による定量分析[DISCUSSION PAPER No.178/2020.2]
- 日本とドイツの中小企業における国際化とイノベーション:統合的な国際化戦略の重要性[DISCUSSION PAPER No.170/2019.4]
- 国民総市場新規プロダクト・イノベーションの売上高:新プロダクトの市場への導入の経済効果に関する新たな指標の提案と試行的推計[調査資料No.277/2018.9]
- 博士号保持者と企業のイノベーション:全国イノベーション調査を用いた分析[DISCUSSION PAPER No.158/2018.6]
- 企業のイノベーション・アウトプットの多面的測定 [DISCUSSION PAPER No. 149/2017.6]
- 研究開発活動における組織・人事マネジメントがイノベーションに与える影響 [DISCUSSION PAPER No.137/2016.6]
- 第1回~第3回全国イノベーション調査の経年比較の試み(調査設計及び調査事項の整理とそれに基づく産業別・企業規模別の比較考察)[DISCUSSION PAPER No.116/2014.3]
- 「イノベーション」に対する認識の日米独比較[調査資料 No. 208/2012.3]
- 我が国におけるプロダクト・イノベーションの現状 ―第2回全国イノベーション調査を用いた分析―[DISCUSSION PAPER No.70/2010.11]
- 国際比較を通じた我が国のイノベーションの現状[DISCUSSION PAPER No.68/2010.9]
知識基盤に依拠するイノベーション・プロセスに関する経済分析
大学や国立研究開発法人等において生み出される先端的な科学的知識に基づくイノベーションが、企業の経営成果ひいては経済全体の生産性や成長に与える影響について分析しています。
- 学術的知識創造と地域イノベーションへのクラスター政策の影響: 日本における産学連携の地理 [DISCUSSION PAPER No.223/2023.6]←NEW!!
- 女性役員比率の労働生産性へ与える効果及び イノベーション実現との関係 [DISCUSSION PAPER No.217/2022.11]
研究活動からの知識フローを通じた経済インパクトに関する研究
学術論文や知的財産権等の書誌情報を著者・発明者等の個人レベルで接続し、また、それら著者・発明者である研究者等の所属組織、事業所、企業及び機関レベルの統計調査情報を相互に接続したデータベースを整備する。これらのデータベースを活用して、統計的及び計量経済学的分析を行い、大学や公的研究機関から産業への知識フローの規模、企業業績への影響、及び市場条件や環境変化の影響、制度や政策の効果などに関する実態の定量的把握及び国際比較分析、並びに多様な側面からのメカニズムの理解を図ります。
- 日本の多国籍企業における海外研究開発と特許出願 [DISCUSSION PAPER No.198/2021.7]
- 特許発明の奨励は大学の基礎研究を阻害するのか?[DISCUSSION PAPER No.191/2021.2]
- 特許データと意匠データのリンケージ:創作者レベルで見る企業における工業デザイン活動に関する分析[DISCUSSION PAPER No.171/2019.3]
- 日本におけるビジネスグループの構造とパフォーマンス [DISCUSSION PAPER No.164/2018.12]
- Microsoft Academic Graph の書誌情報データとしての評価 [DISCUSSION PAPER No.162/2018.10]
- 研究費属性と大学の技術開発の関係について [DISCUSSION PAPER No.161/2018.10]
- AIにおけるサイエンスとイノベーションの共起化:米国における論文・特許データベースを用いた分析 [DISCUSSION PAPER No.160/2018.7]
- 日本企業における特許出願が生存率に与える効果の実証分析~オープンイノベーション時代の創造的破壊に関する一考察~ [DISCUSSION PAPER No. 143 / 2017.3]
- 科学・技術・産業データの接続と産業の科学集約度の測定 [DISCUSSION PAPER No. 142 / 2017.3]
- 日本企業の海外展開と国内事業再編 [DISCUSSION PAPER No. 141 / 2017.3]
- 為替変動の不確実性と研究開発投資:日本の企業データによる実証分析 [DISCUSSION PAPER No. 140 / 2017.2]
- 製品市場の効率性と全要素生産性-日韓企業の比較研究 [DISCUSSION PAPER No. 136 / 2016.6]
- 意匠権及び商標権に関するデータベースの構築 [調査資料 No.249 / 2016.4]
- 知的生産活動の集積傾向に関する分析報告 [調査資料 No.247 / 2016.3]
無形資産投資・イノベーション・生産性の関係に関するミクロデータ分析
企業における研究開発をはじめとする無形資産投資の決定要因とそれら無形資産投資のイノベーションに対する影響、さらには生産性の上昇に対する影響について研究を実施しています。特に、民間企業における研究開発投資の産業内・産業間のスピルオーバー効果の経路に関する研究、大学等の公的機関における研究活動が企業・産業のイノベーションに与える影響に関する研究に取り組んでいます。
- 産業集積と逆選択:多工場企業の実証分析[DISCUSSION PAPER No.115 / 2015.04]
- 企業間の取引関係とR&Dスピルオーバー[DISCUSSION PAPER No.114 / 2015.04]
- 日本の新規開業企業における研究開発・イノベーション・パフォーマンス:成熟企業との比較分析[DISCUSSION PAPER No.104 / 2013.12]
- Modes of International Activities and the Innovativeness of Firms: An Empirical Analysis Based on the Japanese National Innovation Surveys for 2003 and 2009[DISCUSSION PAPER No.94/ 2013.6]
- 工場立地と民間・公的R&D スピルオーバー効果:技術的・地理的・関係的近接性を通じたスピルオーバーの生産性効果の分析[DISCUSSION PAPER No.93/ 2013.5]
- 企業別無形資産の計測と無形資産が企業価値に与える影響の分析[DISCUSSION PAPER No.88 / 2013.3]
無形資産投資・イノベーション・生産性に関するデータベース構築
大学・公的機関における研究活動および民間の研究開発をはじめとする無形資産投資が産業におけるイノベーションと生産性に及ぼす影響を科学的に分析するために基礎となるデータベースの構築に取り組んでいます。無形資産投資に関するデータ、企業間および公的機関から企業へのR&Dスピルオーバー効果に関する指標、イノベーションの実現や特許出願といった中間段階の成果指標、生産性や雇用創出などの経済成長に関するデータについて、産業及び地域別の集計データや上場企業のミクロデータを整備します。
構築したデータベースは「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』」推進事業(データ・情報基盤整備)の一環として順次公開しています。
イベント
- 「近年の研究不正の要因―学術論文の撤回から見た組織構造・制度・不正の影響―」(2018年1月26日)
⇒講演ハイライト(英語) - 「海外大学との共同研究における企業本部の関与」(2017年10月24日)
⇒講演会ハイライト(英語) - 国際セミナー「イノベーション調査の新展開:政策形成に情報提供する測定」(2017年2月27日)
⇒セミナー・ハイライト(英語)