(1)全世界の技術分野バランス
ここでは、技術分野毎にパテントファミリー数の状況を分析した結果について述べる。技術分野の分類には、WIPOによって公表されている技術分野と国際特許分類(IPC)の対応表を用いた。WIPOの技術分野は、図表4-2-9に示すように、35の小分類に分類されているが、ここでは、これらをまとめた9技術分野を用いる。

注:
パテントファミリーの分析方法については、テクニカルノートを参照。
資料:
WIPO, IPC - Technology Concordance Tableをもとに、科学技術・学術政策研究所で分類。
参照:表4-2-9
まず、図表4-2-10には、全世界における各技術分野のパテントファミリー数割合の推移を示す。1981年と2019年を比べると、機械工学は11.4ポイント、化学は9.2ポイント減少している。情報通信技術は15.7ポイント、電気工学は5.5ポイント増加した。情報通信技術の占める割合は1990年代に入り急速に増加した。

注:
1) パテントファミリーの分析方法については、テクニカルノートを参照。
2) その他には「未分類」を含む。
資料:
欧州特許庁のPATSTAT(2023年秋バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。
参照:表4-2-10
(2)主要国内の技術分野バランス
次に主要国の内部構造をみるために、図表4-2-11では、主要国内の技術分野バランスの変化を示す。
2019年時点の日本の技術分野バランスを見ると、世界全体と比べて一般機器、電気工学、機械工学の割合が高くなっている。他方、バイオ・医療機器、バイオテクノロジー・医薬品の割合は、世界全体と比べて低くなっている。時系列で見ると、日本において多くを占める電気工学の割合は2010年前後から減少傾向にある。同時期に機械工学、輸送用機器の割合が増加していたが、近年は減少している。近年は情報通信技術の割合が増加している。
米国は、世界全体と比べて、バイオテクノロジー・医薬品、バイオ・医療機器、情報通信技術の割合が高い。1981年と2019年を比べると、情報通信技術が18.1ポイント増加し、機械工学は11.2ポイント、化学は11.1ポイント減少している。また、輸送用機器の割合は2005年頃から増加傾向にあったが、近年では減少した。
ドイツは、輸送用機器、機械工学の割合が世界全体と比べて高い。1981年と2019年を比べると機械工学は8.0ポイント減少している。情報通信技術は8.6ポイント増加しているが、その割合は世界全体における情報通信技術の割合の約6割(2019年時点)となっている。また、電気工学やバイオテクノロジー・医薬品の割合も、世界全体と比べて小さい。
フランスは、輸送用機器、化学、機械工学、バイオテクノロジー・医薬品の割合が世界全体と比べて高い。1981年と2019年を比べると、機械工学は9.9ポイントの減少をみせている。情報通信技術の比率は8.4ポイント増加しているが、その割合は世界全体における情報通信技術の割合と比べて小さい。また、電気工学の割合も、世界全体と比べて小さい。
英国は、バイオテクノロジー・医薬品、バイオ・医療機器、化学、輸送用機器の割合が世界全体と比べて高い。1981年と2019年を比べると、機械工学は13.7ポイント、化学は9.1ポイント割合を減少させている。情報通信技術の割合は16.9ポイントと大幅に増加している。英国は欧州の中では、パテントファミリー数における情報通信技術の比率が高い国といえる。
中国と韓国は、ともに電気工学と情報通信技術の割合が、世界の平均と比べて高くなっている。
(A)日本

(B)米国

(C)ドイツ

(D)フランス

(E)英国

(F)中国

(G)韓国

注:
パテントファミリーの分析方法については、テクニカルノートを参照。
資料:
欧州特許庁のPATSTAT(2023年秋バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。
参照:表4-2-11
(3)世界における主要国の技術分野バランス
図表4-2-12では、世界における主要国の技術分野バランスを示す。具体的には、主要国のパテントファミリー数の技術分野毎の世界シェア(2007-2009年と2017-2019年、整数カウント法)を作成し、比較を行った。
2017-2019年のパテントファミリー数におけるシェアに注目すると、日本は一般機器、電気工学が30%を超えており、バイオテクノロジー・医薬品、バイオ・医療機器のシェアが相対的に低いというポートフォリオを有している。電気工学と情報通信技術の世界におけるシェアは、それぞれ、8.2ポイント、8.7ポイント減少している。これは、中国が急激に世界シェアを増加させているためである。
米国はバイオテクノロジー・医薬品、バイオ・医療機器で世界シェアが30%を超えている。ドイツは輸送用機器、機械工学において世界シェアが20%を超えていたが、2017-2019年では、それぞれ17.9%、16.8%となった。フランスは輸送用機器、化学、バイオテクノロジー・医薬品で、世界シェアが5%を超えている。英国ではバイオテクノロジー・医薬品で5%を超えている。これらの国については、2007-2009年と比較すると、多くの技術分野で世界シェアは減少又は横ばいにある。
中国は急激に世界シェアを伸ばしており、特に情報通信技術、電気工学でその伸びは顕著である。2017-2019年時点での中国の情報通信技術は23.4%、電気工学は16.4%である。韓国については電気工学が14.4%、情報通信技術が10.7%と世界シェアの10%を超えている
(%、2007-2009年と2017-2019年、整数カウント法)

注:
パテントファミリーの分析方法については、テクニカルノートを参照。
資料:
欧州特許庁のPATSTAT(2023年秋バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。
参照:表4-2-12