3.3理工系学生の進路

ポイント

  • 「理工」系学部学生の進路を見ると、2021年の「就職者」の割合は約6割を占めている。なお、「就職者」の「無期雇用」の割合は卒業者全体の54.1%、「有期雇用(正規の職員等でない者)」は1.0%である。「進学者」の割合は37.8%となっている。
  • 「理工」系修士課程修了者の進路を見ると、2021年の「就職者」の割合は85.4%であり、「就職者」の「無期雇用」の割合は修了者全体の84.5%、「有期雇用」は0.9%である。ほとんどが正規の職員として就職していることがわかる。
  • 「理工」系博士課程修了者の進路を見ると、2021年の「就職者」の割合は68.6%である。なお、「就職者」の「無期雇用」は全体の52.0%、「有期雇用」は16.5%であり、学部卒業者や修士課程修了者と比較すると、「有期雇用」の割合は多い。
  • 「理工」系学部卒業者のうちの就職者を産業分類別に見ると、学部学生の「製造業」への就職割合は1980年代には50%台であったが、継続して減少しており、2021年では23.5%になっている。非製造業(研究、教育を除く)は増加しており、2021年では74.0%である。
  • 「理工」系修士課程学生の就職者の場合、「製造業」への就職割合は、1980年代には70%台であったが、その後は減少傾向が続き、2010年以降は50%台となった。2015年頃から微増していたが、2020年、2021年と減少し53.7%となった。非製造業(研究、教育を除く)は増加傾向にあったが、2014年をピークに微減した後、2020年、2021年では増加し44.7%となった。
  • 「理工」系博士課程学生の就職者の場合、「製造業」への就職割合は概ね30%前後で推移しており、2021年は31.9%である。「教育(学校へ就職した者など)」については1980年代半ばには50%に達したこともあったが、2000年代に入ると約3割まで減少し、2021年では27.6%である。また、「研究(学術・研究開発機関等へ就職した者など)」は、2021年では13.6%である。非製造業(研究、教育を除く)は、近年増加傾向にあり、2021年は27.0%となっている。
  • 「理工」系の学部卒業者、修士課程修了者、博士課程修了者の就職者を職業分類別に見ると、「専門的・技術的職業従事者」になる者が多い。学部卒業者では、長期的に見ると増減を繰り返しながらも2010年ごろまで減少傾向にあったが、その後は増加傾向にある。修士課程、博士課程学生では最新年において、それぞれ約90%を占めているが、長期的に見ると減少傾向にある。
  • 「専門的・技術的職業従事者」の内訳を見ると、学部卒業者や修士課程修了者は、そのほとんどが「技術者」である。博士課程修了者は1981年時点では、「教員」、「技術者」、「研究者」の順に割合が大きかったが、その後、「教員」は減少、「研究者」は増加、「技術者」はほぼ横ばいに推移し、2010年頃からは「研究者」、「技術者」、「教員」の順に割合が大きくなっている。

3.3.1理工系学生の就職・進学状況

 この節では「理学」系及び「工学」系に特化して、学生の進路を見る。ここでいう「就職者」とは経常的な収入を目的とする仕事についた者であり、一時的な職業についた者や、アルバイト等は「その他」に含まれる。また、2012年から「就職者」が「無期雇用」と「有期雇用」に分類された。ここでいう「無期雇用」とは雇用の期間の定めのないものとして就職した者であり、「有期雇用」とは雇用の期間が1年以上で期間の定めのある者であり、かつ1週間の所定の労働時間がおおむね30~40時間程度の者をいう。なお、このデータは調査時点(該当年の5月1日)で学校側が把握している学生の進路状況を調査したものである。


(1)学部卒業者の進路

 「理工」系の学部卒業者の進路を見ると、「就職者」の割合は、1980年代には概ね80%前後で推移していたが、1990年代に入り大きく低下した。2000年代に入ると増加しつつあったが、2010年に大きく減少した。その後は再び増加していたが、2021年は前年と比べて3.3ポイント減少した。1990年代後半からの大学院拡充の影響もあってか、「進学者」の割合は増加傾向にあった。ただし、2010年をピークに減少し、近年はほぼ横ばいに推移している。
 2021年の「就職者」の割合は、全体の約6割を占めている。「就職者」の「無期雇用」の割合は卒業者全体の54.1%、「有期雇用(正規の職員等でない者)」は1.0%である。「進学者」の割合は37.8%となっている(図表3-3-1)。

【図表3-3-1】 理工系学部卒業者の進路

注:
1) 各年の3月の卒業者の進路を示している。
2) この図表では、「就職進学者」(進学しかつ就職した者)を「就職者数」に含めている。
3) 就職者:経常的な収入を目的とする仕事についた者。
4) 無期雇用:雇用の期間の定めのないものとして就職した者であり、自営業種等も含む。
5) 有期雇用:雇用の期間が1年以上で期間の定めのある者であり、かつ1週間の所定の労働時間が概ね30~40時間程度の者をいう。
6) 進学者:大学等に進学した者。専修学校・外国の学校等へ入学した者は除く。
7) 不明:死亡・不詳の者
8) その他:上記以外
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-3-1


(2)修士課程修了者の進路

 「理工」系修士課程修了者の進路を長期的に見ると、2000年代初めまで、構成比に大きな変化は見られず、「就職者」が全体の約80%を占めていた。2000年代に入ると、就職する者の割合はさらに増加し、2010年に若干減少した後は、再び漸増傾向であった。2020、2021年に「就職者」の割合は微減しており、2021年の「就職者」の割合は85.4%である。「就職者」のうち「無期雇用」の割合は修了者全体の84.5%、「有期雇用」では0.9%であり、ほとんどが正規の職員として就職していることがわかる。「進学者」の割合は2000年代に入り減少傾向にあったが、2010年に一時的に増加した。その後は、ほぼ横ばいに推移しており、2021年では8.0%である(図表3-3-2)。


【図表3-3-2】 理工系修士課程修了者の進路

注及び資料:
図表3-3-1と同じ。

参照:表3-3-2


(3)博士課程修了者の進路

 「理工」系博士課程修了者の進路を見ると(図表3-3-3(A))、「就職者」の割合は、1990年代半ばから2000年頃にかけて大きく減少し、その後は増加傾向にあった。2012年をピークに減少・横ばいであり2021年の「就職者」の割合は68.6%である。
なお、「就職者」の「無期雇用」は修了者全体の52.0%、「有期雇用」は16.5%であり、学部卒業者や修士課程修了者と比較すると、「有期雇用」の割合は多い。
2020年から雇用形態について詳細なデータが収集されるようになったことから、詳細な状況を見ると(図表3-3-3(B))、「雇用契約期間が1年以上、かつFT(フルタイム:常勤)勤務相当の者」は16.5%、「雇用契約期間が1か月以上1年未満の者等」は6.5%である。2021年の「理工」系博士課程修了者に占めるポストドクターの割合は15.5%である。博士課程修了者のうちポストドクター(1)については、「有期雇用」及び「その他」含まれている。過去のデータとの継続性の視点から図表3-3-3(A)では、「雇用契約期間が1年以上かつFT勤務相当の者」を就職者のうち、「有期雇用」としている。


【図表3-3-3】 理工系博士課程修了者の進路
(A)内訳の推移


(B)2021年の内訳

注及び資料:
図表3-3-1と同じ。

参照:表3-3-3


 「理工系博士課程修了者の進路」においては、「理工」系学部卒業者や「理工」系修士課程修了者に比べて「その他」の占める割合が大きい。
ここでの「その他」とは学校基本調査における「雇用契約期間が1か月以上1年未満の者等」、「臨時労働者」、「臨床研修医」、「専修学校・外国の学校等入学者」、「左記以外の者」の合計である。「その他」の占める割合が大きい要因として、調査実施時点で進路が確定していない者の影響が考えられる。学部卒業者や修士課程修了者と異なり、博士課程修了者の中にはアカデミックポストを目指す者も多い。企業への就職については、就職活動の時期が概ね決まっているが、アカデミックポストの公募は年間を通じて行われる。この為、アカデミックポストを目指している者の中には、学校基本調査が調査対象としている卒業の次年度の5月1日現在で進路が確定していない者が、一定数いると思われる。これらの者については、進学でも就職でもないので、進路が「左記以外の者」に分類されていると考えられる。実際、2021年の「その他」(1,232人)に占める「左記以外の者」の割合は74.5%と大きい。また、進路状況の調査の際に、進路が決まっていない為、調査に回答せず、結果として学校では進路状況が把握できない者(この場合不明となる)も一定数存在する可能性がある。
 これらから、「理工」系博士課程修了者の「その他」の占める割合が大きいのは、博士課程修了者のキャリアパスの形態が、学部卒業者や修士課程卒業者とは異なっているためと言える。


3.3.2理工系学生の産業分類別就職状況

 この節では、3.3.1節の「理工系学生の就職・進学状況」での「就職者」がどこに就職したかを産業分類別に見る。ここでいう産業分類とは「日本標準産業分類」を使用しており、事業所の主要業務によって産業を決定している(日本標準産業分類の改定は1993、2002、2007、2013年に行われ、いずれも翌年から適用されている)。なお、日本標準産業分類中の「教育」とは「学校教育」のことであり、たとえば小・中・高・大学などはここに含まれる。また「研究」については「学術・研究開発機関」のことであり、学術的研究、試験、開発研究などを行う事業所を指す。

(1)大学学部卒業者のうちの就職者

 「理工」系学部卒業者のうちの就職者の産業分類別就職割合の推移を見ると(図表3-3-4)、「製造業」への就職割合は1980年代には50%台であったが、1990年代半ば以降、減少傾向が続いており、2021年では23.5%になっている。非製造業(研究、教育を除く)は増加しており、2021年では74.0%である。「非製造業」のうち「サービス業関連」への就職割合は、1980年代の10%台から30%台を経て、2021年では40.7%となった。「サービス業関連」で最も大きい産業は「情報通信業」である。2010年に「非製造業」の「その他」の割合が大きくなった後、その後は減少傾向であったが、最新値では微増した。「その他」には、「建設業」、「卸売業、小売業」、「公務」などが含まれており、最も大きい産業は「建設業」である。


【図表3-3-4】 理工系学部卒業者のうちの就職者(産業分類別の就職状況)

注:
1) 就職者数には「就職進学者」(進学しかつ就職した者)を含む。
2) 1981~2002年の分類
サービス業関連:日本標準産業分類(1993年改定)でのサービス業を指す。
教育:日本標準産業分類(1993年改定)での「サービス業」のうちの「教育」を指す。
3) 2003~2007年の分類
サービス業関連:日本標準産業分類(2002年改定)での「情報通信業」、「飲食店、サービス業」、「医療、福祉」、「教育、学習支援業」、「複合サービス業」、「サービス業(他に分類されないもの)」を指す。
教育:日本標準産業分類(2002年改定)での「教育、学習支援業」のうちの「学校教育」を指す。
研究:日本標準産業分類(2002年改定)での「サービス業(他に分類されないもの)」のうちの「学術・研究開発」を指す。
4) 2008年~の分類
サービス業関連:日本標準産業分類(2007年改定)での「学術研究、専門・技術サービス業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業」、「教育、学習支援業」、「医療、福祉」、「複合サービス事業」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「情報通信業」を指す。
教育:日本標準産業分類(2007年改定)での「教育、学習支援業」のうちの「学校教育」を指す。
研究:日本標準産業分類(2007年改定)での「学術研究、専門・技術サービス業」のうちの「学術・開発研究機関」を指す。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-3-4


(2)大学院修士課程修了者のうちの就職者

 「理工」系修士課程修了者のうちの就職者の産業分類別就職割合の推移を見ると(図表3-3-5)、「製造業」への就職割合は、1980年代には70%程度で推移していた。その後は減少傾向が続き、2010年以降は50%台となった。2015年頃から微増していたが、2020年、2021年と減少し53.7%となった。非製造業(研究、教育を除く)は増加傾向にあったが、2014年をピークに微減した後、2020年、2021年では増加し44.7%となった。「非製造業」のうちの「サービス業関連」への就職割合は、2021年では28.9%である。「非製造業」の「その他」も17.4%を占める。


【図表3-3-5】 理工系修士課程修了者のうちの就職者(産業分類別の就職状況)

注及び資料:
図表3-3-4と同じ。

参照:表3-3-5


(3)大学院博士課程修了者のうちの就職者

 「理工」系博士課程修了者の産業分類別就職割合の推移を見ると(図表3-3-6)、「製造業」への就職割合は年によって差異があるが、概ね30%前後で推移しており、2021年は31.9%である。全期間を通じて「非製造業」への就職割合の方が大きい。「非製造業」のうち、「サービス業関連」の割合は2000年代に入ると増加し始め、一時期は60%を超えたが、近年は減少傾向にあり、2021年では57.0%になっている。「サービス業関連」のうち「教育」については、1980年代半ばには50%に達したこともあったが、2000年代に入ると約3割まで減少し、2021年では27.6%である。また、2003年から計測しはじめた「研究」への就職割合は、学部卒業者、修士課程修了者の割合と比較すると大きく、2021年では13.6%となっている。ただし、2010年代半ばから、その割合は低下傾向である。非製造業(研究、教育を除く)は、近年増加傾向にあり、2021年は27.0%となっている。


【図表3-3-6】 理工系博士課程修了者のうちの就職者(産業分類別の就職状況)

注及び資料:
図表3-3-4と同じ。

参照:表3-3-6


3.3.3理工系学生の職業別就職状況

 この節では3.3.1節の「理工系学生の就職・進学状況」での「就職者」が、どの職業についたかを職業分類別に見る。ここでいう職業分類とは「日本標準職業分類」であり、個人の職業を分類している。よって、その所属する事業所の経済活動は問わない。
 ここでいう「研究者」とは「試験所・研究所などの試験・研究施設で、自然科学に関する専門的・科学的知識を要する研究の仕事に従事する者」である。「技術者」とは「科学的・専門的知識と手段を生産に応用し、生産における企画、管理、監督、研究などの科学的、技術的な仕事に従事する者」である。また、「教員」は「学校及び学校教育に類する教育を行う施設等で、学生等の教育・擁護に従事する者」であり、大学の教員などはここに含まれる。

(1)大学学部卒業者のうちの就職者

 「理工」系学部卒業者の職業分類別就職割合を見ると、1990年代には「専門的・技術的職業従事者」が80~90%で推移していた。長期的に見ると増減を繰り返しながらも2010年ごろまで減少傾向にあったが、その後は増加傾向にある。その内訳を見ると「技術者」が多くを占めている。2021年の「技術者」は全体の72.0%である。「技術者」の中では「情報処理・通信技術者」が最も多くを占める。また、「事務従事者」や「販売従事者」の職に就く者は長期的に漸増傾向にあったが、「事務従事者」は2010年代に入ってから、「販売従事者」は2010年代半ば以降に微減している(図表3-3-7)。


【図表3-3-7】 理工系学部卒業者の職業別の就職状況

注:
1) 研究者:試験所・研究所などの試験・研究施設で、自然科学に関する専門的・科学的知識を要する研究の仕事に従事する者。研究者は2011年から職業分類の改正にともない、名称が「科学研究者」から「研究者」となった。
2) 技術者:科学的・専門的知識と手段を生産に応用し、生産における企画、管理、監督、研究などの科学的、技術的な仕事に従事する者。
3) 教員:学校及び学校教育に類する教育を行う施設等で、学生等の教育・擁護の仕事に従事する者。
4) 事務従事者:一般に課長(課長相当職を含む)以上の職務にあるものの監督を受けて、庶務・会計、生産関連・営業販売等に関する事務及び事務用機器の操作の仕事に従事する者。
5) 販売従事者:有体的商品の仕入・販売、不動産・有価証券などの売買の仕事、売買の仲立・取次・代理などの販売類似の仕事、または営業等の仕事に従事する者。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-3-7


(2)大学院修士課程修了者のうちの就職者

 「理工」系修士課程修了者の職業分類別就職割合について見ると、「専門的・技術的職業従事者」が全体の約90%と、一貫して極めて多くを占めている。その内訳を見ると、「技術者」が多くを占めており、全体の80%程度で推移している。「技術者」の中では「製造技術者(開発)」が最も多くを占める。「研究者」については、4~6%台で推移している。また、「教員」の割合は長期的に見て減少し続けており、2021年では0.8%になっている。「事務従事者」は2010年頃まで微増していたが、その後は減少傾向にある(図表3-3-8)。


【図表3-3-8】 理工系修士課程修了者の職業別の就職状況

注及び資料 :
図表3-3-7と同じ。

参照:表3-3-8


(3)大学院博士課程修了者のうちの就職者

 「理工」系博士課程修了者の職業分類別就職割合について見ると「専門的・技術的職業従事者」の割合は概ね90%の水準で推移している。この内訳を見ると、「技術者」が30~40%で推移している。「研究者」の割合は1980年代では20%より小さかったのが、2000年頃から増加し始め、近年では40%程度まで増加しており、「技術者」よりも多くなっている。ただし、2020年、2021年と減少し37.6%となった。「教員」の割合は、1980年代に40%程度だったものが減少しており、2021年では16.5%となっている(図表3-3-9)。

【図表3-3-9】 理工系博士課程修了者の職業別の就職状況

注及び資料 :
図表3-3-7と同じ。

参照:表3-3-9



(1)博士の学位を取得した者又は所定の単位を修得の上博士課程を退学した者(いわゆる「満期退学者」)のうち、任期付で採用されている者で、①大学や大学共同利用機関で研究業務に従事している者であって、教授・准教授・助教・助手等の学校教育法第92条に基づく教育・研究に従事する職にない者、又は、②独立行政法人等の公的研究機関(国立試験研究機関、公的試験研究機関を含む。)において研究業務に従事している者のうち、所属する研究グループのリーダー・主任研究員等の管理的な職にない者をいう。