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日時等
日時:2025年7月23日(水)16:00-18:00
形式:オンライン(zoom)
言語:英語 (Q&Aは通訳によるサポートあり)
概要
世界最大の学術出版者団体であるSTM Associationでは、毎年、出版社、学者、技術者など、学術出版の最前線にいる専門家を集めて、研究及び出版の将来像を描き出している。最近発行された最新のレポート『STM Trends 2029』は、2029年における将来の可能性を見据えて作成されたものである。このグループは、技術のトレンドとその影響、オープンリサーチの進展、研究の誠実性及び社会的責任といったテーマを検討し、人工知能(AI)が主要なテーマとして浮かび上がった。
また、本レポートは、昨年の『STM Trends 2028』レポートの主要テーマ――人工知能、細分化、信頼性の新たな捉え方――を引き継ぎ、それらの戦略的な相互作用及び社会技術的な意味を検証している。現代社会を見渡すと、社会の内外において分断が深まっている。また、現実世界と仮想世界の乖離(かいり)も拡大しており、データや事実、証拠を軽視した虚偽情報が広まりやすい土壌が形成されている。個人が処理しきれないほどの情報が氾濫し、その情報の洪水を利用して自己の利益を追求する強力なアクターも存在する。さらに、AIによって、世界中の知識とのパーソナライズされた高度な相互作用が可能となった現在、我々は「何が本物で、何が信頼できるのか」をいかに判断すべきかが問われている。多くの人々にとって、21世紀の情報環境は混乱と困惑に満ちた空間となっている。
STM Association のCEOであるサットン博士は、2029年版『Trends』がどのように作成されたのか、そしてどのような結論に至ったのかについて、昨年10月のNISTEPセミナーと同様に、今回も解説する予定である。
講演者
Caroline Sutton博士(STM Association CEO)
講演者略歴
STM AssociationのCEOである氏は、STM以前は、テイラー&フランシス社でオープンリサーチ担当ディレクターを務めた。オープンアクセス出版のパイオニアであるCo-Action Publishingを共同設立し、OASPAの設立者の一人であり初代会長として2008年から2021年まで理事を務めた。また、Dryadの理事(2017-2023年)、Directory of Open Access Journals(DOAJ)の運営組織であるInfrastructure Services for Open Access(IS4OA)(2013-2022年)など、学術コミュニケーション分野における数多くの理事を務めている。スウェーデンのウプサラ大学で社会学の博士号を取得。
参照:The STM Trends 2029
講演会の参加申込み
URL:https://zoom.us/meeting/register/9V2z2o6kStCSPLVapNxxdA

講演内容についてのお問合せ
科学技術・学術政策研究所 データ解析政策研究室 (担当:林)
Tel:03-5253-4111(内線 7400)
Eメール:d-unit[at]nistep.go.jp
参加の申込み締切り:7月23日(水)15:00
この度、人工知能分野の主要国際会議(AAAI, AAMAS, ICML, IJCAI, NeurIPS)を対象に、2015年から2024年の10年間における研究発表の動向を分析しました。
本調査は、研究活動の国際的な構造変化や日本の立ち位置を把握することを目的としたものです。
各発表の著者所属機関の所在国・地域を整理・集計するとともに、発表タイトルをもとにワードクラウドを作成し、研究テーマの推移を可視化しました。国・地域の推定には、LLMによる著者・所属抽出とROR APIを組み合わせた半自動化手法を導入しています。
分析の結果、以下の知見が得られました:
- 発表件数は大きく増加し、NeurIPSでは2015年の403件から2024年には4,538件と約11倍に。
- 増加を牽引したのは中国と米国で、AAAI・IJCAIでは中国が首位。一方、ICML・NeurIPS・AAMASでは米国が最多ながらシェアは低下傾向。
- AAMASでは2024年に中国が英国を抜いて2位、インドも4位に浮上するなど、地理的構図に変化。
- 国際共著では米中共著が最大であり、シンガポール・韓国・インドのハブ化が進む中、日本は件数を増やす一方で周縁的な位置にとどまる。
- 研究テーマは深層学習中心からLLM・生成AI、倫理・公平性、医療・ロボティクスなど応用へと広がりを見せている。
この度、撤回論文データベースであるRetraction Watch Data 及び、研究成果書誌データベースであるOpenAlexを活用し、撤回論文の実態に関する分析を行いました。本調査は、学術研究における信頼性確保や研究インテグリティ向上に関する議論に資することを目的として実施されたものです。
撤回論文には、単なる不注意による誤りだけでなく、データの捏造・改ざん・盗用といった不正行為に基づくものも含まれており、研究者や研究機関の信頼性を損なう重大な要因となっています。こうした不正行為の抑止に向けて、撤回論文の実態把握と定量的な分析は、研究政策の観点からも極めて重要です。
本研究では、撤回論文の年別推移や、学術分野別、著者所属機関の国・地域別、撤回理由別など、多角的な視点からデータを整理・分析しました。また、関連する既存研究についても併せて調査し、論文撤回における研究不正の傾向やパターンに関する理解を深めました。
分析の結果、以下のような知見が得られました:
撤回論文の件数は年々増加傾向にある。
- 撤回件数の多い国・地域は、通常の論文数や引用数における上位国とは異なる傾向を示している。
- 特定の著者が突出して多くの撤回論文を出しているケースがあり、国・地域単位の傾向分析を難しくしている。
- 我が国においては、一部の著者による大量撤回が全体の撤回数を押し上げていることが確認された。
詳細につきましては、以下のリンクより御覧ください。
日時等
日時:2025年4月2日(水)16:30-18:30
形式:オンライン(zoom)
言語:英語 (Q&Aは通訳によるサポートあり)
概要
学術コミュニケーションの分野では、研究のインパクト(研究が学術界、産業界、政策、社会全体に与える影響や貢献)が知識の発展、イノベーション、社会の進歩において極めて重要であることが広く認識されています。インパクトのある研究を積み重ねることで、研究者はキャリアを発展させ、研究機関の評価を高めます。また、コラボレーションの促進、イノベーションの創出、研究資金の獲得、政策決定への貢献などにも関連し、社会に利益をもたらします。そして、出版社は論文等の研究成果の発信、あるいは査読を通じて研究インパクトに対して一定の重要な役割を果たしています。
本セミナーでは、国際STM出版社協会(STM)とともに企画するセミナーシリーズの3回目の企画として、研究のインパクトを異なる3つの視点から探ります。小泉客員は、研究コミュニティとその所属機関の観点から研究インパクトの現状と課題を論じます。エルゼビア社のアンドリュー・プルーム氏は、研究成果の出版に関連する出版社の視点を紹介します。そして、サラ・フィブス氏は、国連と出版社のパートナーシップであるResearch4Lifeが中低所得国に与える影響と、世界的な研究の様相の変化について考察します。
講演者
Andrew Plume, VP Research Evaluation, Elsevier, and Honorary Professor of Practice at UCL Department of STEaPP
Sarah Phibbs, Director of Equity and Inclusion, STM, and Director Research4Life Publisher Partnerships.
小泉周(北陸先端科学技術大学院大学)
講演者略歴(外部リンク)
Andrew Plume, VP Research Evaluation, Elsevier, and Honorary Professor of Practice at UCL Department of STEaPP
Sarah Phibbs, Director of Equity and Inclusion, STM, and Director Research4Life Publisher Partnerships.
小泉周(researchmapページ)
講演会の参加申し込み
URL:https://zoom.us/webinar/register/WN_PjcXyKXkR-qzUhW20jMxMQ

講演内容についてのお問い合わせ
科学技術・学術政策研究所 データ解析政策研究室 (担当:林)
Tel:03-5253-4111(内線 7400)
Eメール:d-unit[at]nistep.go.jp
参加の申し込み締め切り:4月2日(水)16:00
本研究では公的資金による研究成果のオープンアクセス(OA)と国・地域の経済状況の関係について調査しました。
近年、公的資金による研究成果のOA化が進み、研究の透明性と成果への平等なアクセスが注目されています。OAは研究論文を無料公開する仕組みであり、オープンサイエンスの中核とされますが、昨今では論文処理料(APC)の高騰による経済負担の増加も指摘されています。
本研究は、オープンな書誌データベースであるOpenAlexを用い、国・地域の所得水準や研究分野を考慮してOA出版と引用状況を分析しました。
その結果、当初の予想とは異なり、低所得国のOA出版率は約70%と高い一方、高所得国では約55%と低いことがわかりました。これは低所得国へのAPC免除制度や高所得国の購読型ジャーナル志向が影響していると考えられます。地域ごとでは、欧州が政策的影響でOA論文を多く引用する一方、中国では非OA論文が自国論文を中心に引用され、OA論文では他国のものを多く引用する傾向が見られました。また、分野間では生命科学・自然科学系でOA率が高く、人文・社会科学系では低い特性が明らかとなりました。
これらの結果は、OA普及の多様性と国際的支援の重要性を示しています。
詳細につきましては、以下のリンクより御覧ください。
ライブラリ:オープンアクセスは誰の研究活動を活性化するのか:OpenAlex による分析「DISCUSSION PAPER No.236」

