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この度、撤回論文データベースであるRetraction Watch Data 及び、研究成果書誌データベースであるOpenAlexを活用し、撤回論文の実態に関する分析を行いました。本調査は、学術研究における信頼性確保や研究インテグリティ向上に関する議論に資することを目的として実施されたものです。
撤回論文には、単なる不注意による誤りだけでなく、データの捏造・改ざん・盗用といった不正行為に基づくものも含まれており、研究者や研究機関の信頼性を損なう重大な要因となっています。こうした不正行為の抑止に向けて、撤回論文の実態把握と定量的な分析は、研究政策の観点からも極めて重要です。
本研究では、撤回論文の年別推移や、学術分野別、著者所属機関の国・地域別、撤回理由別など、多角的な視点からデータを整理・分析しました。また、関連する既存研究についても併せて調査し、論文撤回における研究不正の傾向やパターンに関する理解を深めました。
分析の結果、以下のような知見が得られました:
撤回論文の件数は年々増加傾向にある。
- 撤回件数の多い国・地域は、通常の論文数や引用数における上位国とは異なる傾向を示している。
- 特定の著者が突出して多くの撤回論文を出しているケースがあり、国・地域単位の傾向分析を難しくしている。
- 我が国においては、一部の著者による大量撤回が全体の撤回数を押し上げていることが確認された。
詳細につきましては、以下のリンクより御覧ください。
日時等
日時:2025年4月2日(水)16:30-18:30
形式:オンライン(zoom)
言語:英語 (Q&Aは通訳によるサポートあり)
概要
学術コミュニケーションの分野では、研究のインパクト(研究が学術界、産業界、政策、社会全体に与える影響や貢献)が知識の発展、イノベーション、社会の進歩において極めて重要であることが広く認識されています。インパクトのある研究を積み重ねることで、研究者はキャリアを発展させ、研究機関の評価を高めます。また、コラボレーションの促進、イノベーションの創出、研究資金の獲得、政策決定への貢献などにも関連し、社会に利益をもたらします。そして、出版社は論文等の研究成果の発信、あるいは査読を通じて研究インパクトに対して一定の重要な役割を果たしています。
本セミナーでは、国際STM出版社協会(STM)とともに企画するセミナーシリーズの3回目の企画として、研究のインパクトを異なる3つの視点から探ります。小泉客員は、研究コミュニティとその所属機関の観点から研究インパクトの現状と課題を論じます。エルゼビア社のアンドリュー・プルーム氏は、研究成果の出版に関連する出版社の視点を紹介します。そして、サラ・フィブス氏は、国連と出版社のパートナーシップであるResearch4Lifeが中低所得国に与える影響と、世界的な研究の様相の変化について考察します。
講演者
Andrew Plume, VP Research Evaluation, Elsevier, and Honorary Professor of Practice at UCL Department of STEaPP
Sarah Phibbs, Director of Equity and Inclusion, STM, and Director Research4Life Publisher Partnerships.
小泉周(北陸先端科学技術大学院大学)
講演者略歴(外部リンク)
Andrew Plume, VP Research Evaluation, Elsevier, and Honorary Professor of Practice at UCL Department of STEaPP
Sarah Phibbs, Director of Equity and Inclusion, STM, and Director Research4Life Publisher Partnerships.
小泉周(researchmapページ)
講演会の参加申し込み
URL:https://zoom.us/webinar/register/WN_PjcXyKXkR-qzUhW20jMxMQ
講演内容についてのお問い合わせ
科学技術・学術政策研究所 データ解析政策研究室 (担当:林)
Tel:03-5253-4111(内線 7400)
Eメール:d-unit[at]nistep.go.jp
参加の申し込み締め切り:4月2日(水)16:00
本研究では公的資金による研究成果のオープンアクセス(OA)と国・地域の経済状況の関係について調査しました。
近年、公的資金による研究成果のOA化が進み、研究の透明性と成果への平等なアクセスが注目されています。OAは研究論文を無料公開する仕組みであり、オープンサイエンスの中核とされますが、昨今では論文処理料(APC)の高騰による経済負担の増加も指摘されています。
本研究は、オープンな書誌データベースであるOpenAlexを用い、国・地域の所得水準や研究分野を考慮してOA出版と引用状況を分析しました。
その結果、当初の予想とは異なり、低所得国のOA出版率は約70%と高い一方、高所得国では約55%と低いことがわかりました。これは低所得国へのAPC免除制度や高所得国の購読型ジャーナル志向が影響していると考えられます。地域ごとでは、欧州が政策的影響でOA論文を多く引用する一方、中国では非OA論文が自国論文を中心に引用され、OA論文では他国のものを多く引用する傾向が見られました。また、分野間では生命科学・自然科学系でOA率が高く、人文・社会科学系では低い特性が明らかとなりました。
これらの結果は、OA普及の多様性と国際的支援の重要性を示しています。
詳細につきましては、以下のリンクより御覧ください。
ライブラリ:オープンアクセスは誰の研究活動を活性化するのか:OpenAlex による分析「DISCUSSION PAPER No.236」
日時等
日時:2024年12月19日(木)16:30-18:30
形式:オンライン(webex meeting)
言語:英語 (Q&Aは通訳によるサポートあり)
概要
NISTEPでは国際STM出版社協会(STM)と共に、オープンアクセス、オープンサイエンスに関する連続セミナーを開催し、10月にはCEOのCaroline Sutton氏による学術情報流通の全体像とAIの関わりについて話題提供と議論を行いました。
今回のセミナーでは、先の全体像を踏まえ、より具体的なテーマとして倫理と誠実性(Ethics and Integrity)を取り上げます。特に、AIのような新興技術が研究論文の作成、共有、評価の方法をどのように変革しているかという、研究成果公開の進化する状況を探ります。このテーマの核心には、研究活動及びその後の出版のあらゆる段階で、信頼できる研究慣行を維持し、透明性、責任、そして公平性を確保することの重要性があります。スプリンガー・ネイチャー、テイラー&フランシス、STMソリューションの3名の講演者が、AIが出版倫理にもたらす課題と機会について語り、学術的な卓越性(Scholarly Excellence)を守る上で研究の誠実性が果たす重要な役割について論点等を提示し、その後、ディスカッションが行われます。
講演者
Tim Kersjes, Head of Research Integrity Resolutions, Springer Nature
Jason Hu, Director of Research Integrity Engagement, Taylor and Francis
Joris Van Rossum, Program Director, STM Solutions
講演者略歴(外部リンク)
Tim Kersjes, Head of Research Integrity Resolutions, Springer Nature
Jason Hu, Director of Research Integrity Engagement, Taylor and Francis
Joris Van Rossum, Program Director, STM Solutions
講演会の参加申し込み
URL:https://nistep.webex.com/weblink/register/r2b1bbd2729ac3f98e65d353e791ed660
講演内容についてのお問い合わせ
科学技術・学術政策研究所 データ解析政策研究室 (担当:林)
Tel:03-5253-4111(内線 7400)
Eメール:d-unit[at]nistep.go.jp
参加の申し込み締め切り:12月19日(木)16:00
研究活動のデジタルトランスフォーメーション(DX)やオープンサイエンスに関連して、オープンアクセスやオープンデータなど、「研究の在り方」も変わりつつあります。こうした「研究の在り方」が、どのように、どの程度変わっているかを把握することもSTI政策立案の基礎的資料として重要です。
本調査研究では、学術活動の中でのオープンデータ(オープンソースを含む)の利用状況を調査した既存調査を更新し、2023年までの状況を調査しました。また、既存調査で取り上げていた物理・情報系のプレプリントサーバarXivに加えて、生物系のbioRxiv、医学系のmedRxivも加えて調査を行いました。
結果、Zenodoやfigshareなどのオープンデータ言及は増加傾向にはありますが、絶対数は依然として少ないこと、オープンソース利用の代理変数であるgithubの言及はarXivでは2割超でDOIの記載のある原稿数を越えている様子が改めて確認できました。
また、bioRxivでもgithub言及原稿が2割程度、medRxivでも1.5割程度観測され、非情報系分野でもソースコードの利用が進んでいる状況が確認できました。
詳細につきましては以下のリンクより御覧ください。

