3.研究開発のアウトプットの状況
(6) 日本はパテントファミリー(2か国以上への特許出願)数において、世界第1位を保っている。
特許出願に着目し、各国・地域から生み出される発明の数を国際比較可能な形で計測したパテントファミリー数を見ると、1997-1999年は米国が世界第1位、日本が第2位であったが、2007-2009年、2017-2019年では日本が世界第1位、米国が第2位となっている。ただし、日本の世界シェアは2000年代半ばから低下傾向にある。中国は2017-2019年で世界第3位であり、着実にその数を増やしている。

(7) 日本の技術(特許)は他国と比べて科学的成果(論文)を引用している割合が低い。また、日本の論文が世界の技術に引用されている割合は世界の平均程度である。
科学と技術のつながりを見るために、パテントファミリー(2012-2019年の合計)が引用している論文の情報を用いて分析を行った。論文を引用しているパテントファミリー数を国・地域別に見ると、日本は世界第2位である。しかし、日本のパテントファミリーの中で論文を引用しているものの割合は6.7%であり、日本の技術は他国と比べて科学的成果を引用している割合が小さい。
他方、2012-2019年のパテントファミリーに引用されている論文数(1981-2019年の合計)では世界第4位である。論文数に占めるパテントファミリーに引用されている論文数割合は3.2%であり、ここに示した国・地域の平均程度である。
(8) 電気自動車などの開発に有効な代替エネルギー型のパテントファミリー数は1990年代後半から伸び続け、2018年にはガソリンエンジンに役立つ従来型のパテントファミリー数を上回った。代替エネルギー型の技術は従来型より科学的知識との関係が強い。
従来型パテントファミリー数は1990年代半ばから伸び続けたのち、2015年をピークに減少に転じた。代替エネルギー型パテントファミリー数は1990年代後半から伸び続け、2018年には従来型パテントファミリー数を上回り、2019年では4,519件となった。
論文を引用しているパテントファミリー数の割合を見ると、代替エネルギー型技術では7.2%、従来型技術では1.5%となっている。つまり、代替エネルギー型技術については、従来型技術より科学的知識との関係が強いと言える。
(9) 多くの国・地域において、10年前より代替エネルギー型パテントファミリー数が増加しているのに対して、従来型パテントファミリー数は減少している。
代替エネルギー型パテントファミリー数の上位国・地域を見ると、2017-2019年において日本が世界第1位である。多くの国・地域が10年前よりパテントファミリー数を増加させており、中国の増加が特に著しい。従来型パテントファミリー数では、2017-2019年において日本がトップである。10年前と比較すると代替エネルギー型とは反対に、多くの国・地域のパテントファミリー数が減少している。特にドイツ、イタリアで減少率が大きい。


参照:科学技術指標2024コラム図表6-3
注:
自動車産業に関連する特許を対象としている。代替エネルギー型技術とは電気自動車などの開発に有効な技術であり、
従来型技術とはガソリンエンジンに役立つ技術を指す。具体的な技術分類は本編第4章コラム図表6-1を参照のこと。