2.高等教育と科学技術人材の状況

(1)日本の大学院において、入学者数は伸び悩んでいたが、修士課程入学者数は2020年度を境に増加、博士課程入学者数は2023年度に対前年度比4.4%増加した。

 日本の大学院修士課程の入学者数は2010年度をピークに減少に転じていたが、2020年度を境に増加し、2023年度は対前年度比1.4%増の7.7万人となった。そのうち社会人の割合は9.3%である。
 大学院博士課程の入学者数は2003年度をピークに長期的には減少傾向にあったが、2023年度は増加し1.5万人、対前年度比4.4%増である。うち社会人は0.6万人、対前年度比は3.9%である (1)。専攻別に見ると2022年度から2023年度にかけて、ここで示した全ての分野で増加した。「工学」8.8%増、「社会科学」6.1%増、「その他」5.0%増、「保健」3.1%増、「農学」3.0%増である。


【概要図表4】 大学院(修士課程)入学者数
            (A)専攻別入学者数の推移(修士課程)              (B)社会人入学者数の推移(修士課程)

参照:科学技術指標2024図表3-2-2

 

【概要図表5】 大学院(博士課程)入学者数
            (A)専攻別入学者数の推移(博士課程)              (B)社会人入学者数の推移(博士課程)

参照:科学技術指標2024図表3-2-3

注:
修士及び博士課程の専攻の「その他」は、「教育」、「芸術」、「商船」、「家政」、「その他」である。そのうちの「その他」とは「学校基本調査」の「学科系統分類表」のうちのその他であり、専攻名を構成する単語には「環境」、「人間」、「情報」、「国際」等が多くみられた。

(2)日本の男女別大学院博士課程の入学者数は、ピーク時と比較すると、女性は4%減であるのに対して、男性は24%減となっている。

 大学学部入学者数は、女性が継続して増加している一方で、男性は1990年代後半から減少し、2010年代半ばから横ばいに推移している。1990年度と比べると、女性は「自然科学」系が4倍、「人文社会科学・その他」系が2倍に増加しているのに対して、男性は両分野ともに変化は見られない。
 修士課程の入学者数は、女性は2000年代半ばまで、男性は2000年代初めまで増加した。2010年代に入ってから一時減少したが、女性は2010年代半ばから、男性は2020年度を境に増加している。1990年度と比較すると、女性は「自然科学」系は8倍、「人文社会科学・その他」系は4倍に増加している。男性は「人文社会科学・その他」系は3倍、「自然科学」系は2倍に増加している。
 博士課程の入学者数は、女性は2004年度、男性は2003年度をピークに減少傾向にある。ピーク時と比較すると女性は4%減であるのに対して、男性は24%減である。男女ともに「自然科学」系の方が「人文社会科学・その他」系より多い。男性はピーク時と比べて両分野ともに減少しているのに対して、女性は「人文社会科学・その他」系は減少したが、「自然科学」系は12%増加した。
 2023年度の入学者における女性比率は、学部46%、修士課程31%、博士課程34%である。1990年度と比較するといずれも増加しており、修士、博士課程においてはほぼ2倍となった。

【概要図表 6】 学部・修士課程・博士課程別入学者数(女性と男性)
(A)女性入学者
(B)男性入学者



参照:科学技術指標2024図表3-2-6


(3)日本の博士号取得者数は、2006年度をピークに減少傾向、2010年代半ばからほぼ横ばいに推移していたが、近年微増している。

 2021年度の日本の博士号取得者数は15,767人、主要専攻別に見ると「保健」が最も多く6,796人と全体の43.1%を占める。次いで「工学」3,436人(21.8%)、「その他」1,873人(11.9%)が多い。
 課程博士数は継続して増加していたが、2000年代半ばから減少傾向にあり、2015年度以降は増加している。2021年度では14,010人となった。論文博士数は1990年前半までは課程博士数を上回っていた。その後は減少し続けていたが、2021年度には対前年度比で1.9%増加し、1,757人となった。

【概要図表 7】 日本の博士号取得者数の推移
(B)課程博士/論文博士別

注:
課程博士とは大学院博士課程修了によるもの、論文博士とは論文提出によるものである。

参照:科学技術指標2024図表3-4-6


(4)日本の企業における高度研究人材活用度(研究者に占める博士号保持者の割合)は、米国と比べて低い。

 米国では研究者に占める博士号保持者の割合(高度研究人材活用度)が5%未満の産業は無いが、日本では多くの産業で5%未満となっており、米国と比べて高度研究人材の活用度が低い傾向にある。

【概要図表 8】 産業別の研究人材集約度と高度研究人材活用度の関係
(A)日本(2023年)
(B)米国(2021年)

注:
研究開発を実施している企業を対象としている。オレンジは製造業、黄色は非製造業を示す。ヘッドカウントによる集計である。
参照:科学技術指標2024図表2-2-9


(5)人口動態を考慮しても大学教員の高齢化は進んでおり、特に男性において顕著である。

 人口100万人当たり大学教員数の年齢分布を見ると、男性教員については国立、私立ともに高齢化が進んでいる。女性教員は、国立大学では若手教員が多い傾向にあるが、私立大学では全ての世代でおおむね同様の規模にある。
 約20年前と比較して、人口100万人当たりで見た教員数は、国立大学よりは私立大学で増加しており、両大学ともに男性よりは女性で増加している傾向にある。国立大学の男性若手教員については人口動態を考慮しても減少している(30歳代後半については、人口100万人当たりで500人以上減少)。


【概要図表 9】人口100万人当たり大学教員数の男女別年齢分布

参照:科学技術指標2024コラム図表3-1

【概要図表 10】 人口100万人当たり大学教員の男女別年齢分布の差異(2001年度と2022年度の差)
(A)国立大学
(B)私立大学

参照:科学技術指標2024コラム図表3-2
注:
男女ごとに該当年齢の教員数と該当年齢の人口を用いた。



(1) 博士課程入学者のうち留学生について、2023年度では0.3万人、対前年度比は10.8%増である。