3.主要国における研究開発のアウトプットと科学技術・イノベーションの状況

(1) 日本の論文数(分数カウント法)は世界第5位、注目度の高い論文を見るとTop10%・Top1%補正論文数で第13位・第12位である。中国は全ての論文種別で世界第1位である。

 論文の生産への貢献度を見る分数カウント法では、日本の論文数(2019-2021年の平均)は、中、米、印、独に次ぐ第5位である。注目度の高い論文を見るとTop10%補正論文数で第13位であるが、12位との差は3件程度である。Top1%補正論文数は第12位である。中国は論文数、Top10%、Top1%補正論文数において世界第1位である。
 Top10%補正論文数シェアの分野バランスを見ると、日本は「物理学」、「臨床医学」、「化学」のシェアが他分野と比べて高い。米国は「臨床医学」、「基礎生命科学」、「物理学」のシェアが高い。中国は「材料科学」、「化学」、「工学」のシェアが相対的に高い。


【概要図表12】 国・地域別論文数、Top10%及びTop1%補正論文数:上位25か国・地域
(自然科学系、分数カウント法)


参照:科学技術指標2023図表4-1-6(B)

 


【概要図表13】 主要国の分野毎の論文数シェアとTop10%補正論文数シェアの比較
(%、2019-2021年(PY)、分数カウント法)


参照:科学技術指標2023図表4-1-10

注:
分析対象は、Article, Reviewである。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。被引用数は、2022年末の値を用いている。 


(2) 日本はパテントファミリー(2か国以上への特許出願)数において、世界第1位を保っている。35技術分類でみると、「織物および抄紙機」、「光学」のシェアが高い。被引用数が高いパテントファミリーでは多数の技術分類で米国のシェアが世界第1位であり、それに日本が続く。

 特許出願に着目し、各国・地域から生み出される発明の数を国際比較可能な形で計測したパテントファミリー数を見ると、1996-1998年は米国が世界第1位、日本が第2位であったが、2006-2008年、2016-2018年では日本が世界第1位、米国が第2位となっている。ただし、日本の世界シェアは2000年代半ばから低下傾向にある。中国は2016-2018年で世界第3位であり、着実にその数を増やしている。
 日本のパテントファミリーを35技術分類で見ると、「織物および抄紙機」、「光学」、「表面技術、コーティング」のシェアが高い。被引用数が高いパテントファミリーでは米国が多数の技術分類でシェアが世界第1位であり、それに日本が続いている。


【概要図表14】 主要国・地域別パテントファミリー数:上位10か国・地域


参照:科学技術指標2023図表4-2-5(B)


【概要図表15】 35技術分類を用いたパテントファミリー分析:2017年(2016-2018年平均)
(A)パテントファミリー数世界シェア              (B)Top10%パテントファミリー数世界シェア

注:
Top10%パテントファミリーとは、他のパテントファミリーからの被引用数が上位10%に入る注目度が高いパテントファミリー。 

参照:科学技術指標2023図表4-2-14



(3) 産業別のプロダクト・イノベーション実現企業割合を比較すると、産業分類によってその割合が異なる。日本は産業分類による差異が他国より小さい傾向が見られる。

 OECD加盟国を中心とした40か国を対象として、産業分類ごとのプロダクト・イノベーション実現企業割合(国全体の平均からの差分)を見ると、「コンピュータ・電子製品・光学製品製造業」、「コークス・精製石油製品・化学製品製造業」などで、国全体より20~30%ポイント高く、これらの産業では新しい製品・サービスの導入が相対的に多くなされている。日本については産業分類による差異が他国より小さい傾向が見られた。


【概要図表16】 産業分類ごとのプロダクト・イノベーション実現企業割合

注:
OECD加盟国を中心に40か国を対象に産業分類ごとのプロダクト・イノベーション実現企業割合(国全体の平均からの差分)の分布を箱ひげ図で示している。箱の底・上辺は第1・3四分位値、赤色の線は中央値、ひげの上・下端は最大・最小値(外れ値を除く)、赤色マーカは日本の値を示している。 

参照:科学技術指標2023図表5-4-7