5.4.3主要国における起業の状況

(1)開廃業率の国際比較

 この節では、企業の開業率、廃業率を見ることにより、企業の新陳代謝が活発に行われているかどうかを見る。
 図表5-4-13に主要国の開業率、廃業率を示した。日本の場合、「雇用保険事業年報」をもとにしており、事業所における雇用関係の成立、消滅をそれぞれ開廃業とみなしている。他国については、各国で計測方法が異なる点には留意が必要である。
 各国最新年の開業率を見ると(図表5-4-10(A))、日本の開業率は5.1%であり他国と比較して最も低い数値である。最も高いのはフランスであり12.1%、次いで英国が11.9%、米国が9.2%、ドイツが9.1%となっている。
 時系列で見ると、日本は長期的に見れば横ばいに推移している。フランスは継続して増加している。英国、米国は減少傾向にある。ドイツは2017年から増加している。
 各国最新年の廃業率を見ると(図表5-4-13(B))、日本は3.3%であり、開業率と同様に他国と比較して最も低い数値である。最も高いのはドイツであり12.5%、次いで英国が10.5%、米国が8.5%、フランスは4.6%となっている。
 時系列で見ると、ドイツは2018年から2019年にかけて大きく増加しているが、他国はほぼ横ばいで推移している。


【図表5-4-13】 主要国における開廃業率の推移 
(A)開業率
(B)廃業率

注:
企業の開廃業率の算出方法は、国によって異なるため、国際比較するには注意が必要である。また、科学技術指標2021とは数値が異なるので注意されたい。
資料:
中小企業庁、「中小企業白書」

参照:表5-4-13


(2)ユニコーン企業数

 この節では、米国CB Insightsの調査においてユニコーン企業とされた企業価値が10億ドル以上の未上場企業のデータ(2022年5月16日現在)を使用し、世界におけるユニコーン企業の状況を見る。
 図表5-4-14を見ると、2020年から2021年にかけてユニコーン企業数は大きく増加した。2021年では522社、2020年の約5倍である。CB Insightsによる分類で見ると、年によってばらつきがあるが、増加率を見ると、2017年から2018年にかけて、「サプライチェーン、物流、配送」、「インターネットソフトウェアとサービス」、「人工知能」のユニコーン企業数が増加し、2020年から2021年にかけて、「ハードウェア」、「サプライチェーン、物流、配送」、「人工知能」が大きく増加した。
 次に分類別・国別にユニコーン企業数の状況を見ると(図表5-4-15)、最もユニコーン企業数が多いのは米国であり、495社となっている。次いで中国が171社であり、3位のインド(54社)と大きく離れている。日本は5社であり、他の国・地域と比較すると極めて少ない。2020年から2021年にかけて大きく増加した国は米国(240社)、中国(32社)、インド(27社)、ドイツ(16社)、カナダ(14社)、英国(13社)である。
分類別で見ると、米国では「インターネットソフトウェアとサービス」が最も多く、「フィンテック」、「保健」がそれに続く。中国では「EコマースとD2C」が最も多く、「人工知能」がそれに続く。インドでは「フィンテック」、「EコマースとD2C」が最も多くなってる。英国では「フィンテック」が最も多い。
 各国・地域におけるユニコーン企業の分類は多様であり、大多数は情報通信サービスに関連したものとなっているが、「EコマースとD2C」や「サプライチェーン、物流、配送」も多くを占めるようになった。新型コロナウイルス感染症がもたらしたライフスタイルの変容による影響も感じられる。


【図表5-4-14】 新たなユニコーン企業数の推移

注:
1) CB Insightsの調査においてユニコーン企業とされた企業価値が10億ドル以上の未上場企業(2022年5月3日現在)のデータを基に科学技術・学術政策研究所が作成。
2) 分類についてはCB Insightsが提示した項目を科学技術・学術政策研究所が仮訳した。D2Cはdirect-to-consumerの略である。
3) CB Insightsに企業価値が10億ドル以上と判断された年である。
資料:
CB Insightsのウェブサイトより2022年5月16日入手。

参照:表5-4-14


【図表5-4-15】 分類別・国・地域別ユニコーン企業数(2007~2021年の合計)

注及び資料:
図表5-4-14と同じ。

参照:表5-4-15