3.5高等教育機関における外国人学生

ポイント

  • 日本における外国人大学院生(「自然科学」分野)については、中国が最も多く、2021年度では約1.4万人である。次いでインドネシアが約1,300人であり、1位と2位以降に大きな差がある。
  • 主要国・地域の外国人学生を見ると、海外に数多くの学生を送り出している中国、韓国は、逆に受け入れている学生は少ない。これに対して、海外に学生をあまり送り出していない米国、英国は、受け入れている学生が多い。日本は、海外に学生をあまり送り出していない国・地域ではあるが、受け入れている学生も多いとは言いがたい。

3.5.1日本と米国における外国人大学院生

 この節では、高等教育のグローバル化を示す指標の一つとして、研究者や高度専門家の養成を行っている大学院における外国人大学院生の状況を見る。
 図表3-5-1は、日本と米国の大学院に在籍する外国人大学院生の数を、最新年のランキングで10位程度の国と主要国・地域について掲載したものである。分野については、日本は「自然科学」分野、米国は「科学工学」分野を対象としている。
 日本における外国人大学院生数を見ると(図表3-5-1(A))、中国が最も多く、2021年度では約1.4万人である。次いでインドネシアが約1,300人であり、1位と2位以降に大きな差がある。10位以内に欧米諸国はなく、全てアジアの国・地域が占めている。米国は14位、フランスは16位、ドイツは28位、英国は35位である。
 米国における外国人大学院生数を見ると(図表3-5-1(B))、2007~2010年にはインドが最も多かったが、2011年、2012年と大きく減少した(同時期において非EC国の学生に対して学生ビザの取得が厳密になったためと考えられる)。その後は増加に転じたが、2017年で再び大きく減少した。一方、継続して増加している中国はインドを追い越し、2018年で8.4万人、インドは7.5万人となった。日本ほど1位と2位に大きな差はないが、3位のイラン以降には大きな差がある。
 また、日本と同様に10位以内に入っているのはアジアの国・地域であり、ドイツ、英国、フランスといった欧州諸国はトップ10には入っていない。
 米国における日本人大学院生に注目すると、2007年の2,508人から2018年では990人と大きく減少した。外国人大学院生に占めるシェアは1.8%(2007年)から0.4%(2018年)に低下している。中国のシェアは22.7%(2007年)から36.2%(2018年)に増加している 。

【図表3-5-1】 日本と米国における外国人大学院生の状況
(A)日本:自然科学分野


(B)米国:科学工学分野

注:
1) 日本の場合の外国人とは、日本国籍を持たない者。2012年7月に新しい在留管理制度が導入されたことにより、中国と台湾の学生を分けて集計している。
2) 米国の場合の外国人とは、米国国籍を持たない者。ドイツは2018年値が掲載されていないため2017年の順位を示した。2015年の値は入手できなかった。
資料:
日本:文部科学省、「学校基本調査報告書」
米国:NSF,“Science and Engineering Indicators 2006,2008,2010,2012,2014,2016”, “Science and Engineering Indicators: Higher Education in Science and Engineering” (https://ncses.nsf.gov/pubs/nsb20197, 2020年6月23日アクセス)

参照:表3-5-1


3.5.2主要国の高等教育機関における外国人学生

 図表3-5-2は高等教育レベル(ISCED(4)レベル5~8)における外国人学生の出身国・地域と受入国・地域の関係を見た図表である。ここでいう外国人学生とは「受入国の国籍を持たない学生」、「留学生」を指す。なお、本図表はOECD, “Education at Glance 2021”を使用しているが、「科学技術指標2021」作成時に用いた“Education at Glance 2020”と比べて、対象国・地域が増加している(主にその他のアジアが増えており、総数で約450万人から約600万人となった)。
 主要国の中で、最も多くの学生を世界に送り出している国・地域は中国であり、全世界の17.3%を占めている。中国の学生は米国に最も多くいるが、日本や英国にもいる。次に多く送り出しているのはドイツ(全世界の2.0%)であるが、中国と比較すると少ない。
 ドイツの学生は主にヨーロッパにいる。また、韓国の学生(同1.7%)は主に米国に、フランスの学生(同1.7%)は主にヨーロッパにいる。米国の学生は主にその他の北米・中南米にいる(同1.7%)。英国は0.6%、日本は0.5%と、海外に送り出している学生数が主要国では極めて少ない国・地域である。
 受入国・地域の側から見ると、最も多くの外国人学生を受け入れているのは米国であり、全世界の16.0%である。次いで英国であり、全世界の8.0%である。これにドイツ(全世界の5.5%)、フランス(同4.0%)、日本、中国(同3.3%)が続き、韓国(同1.6%)となっている。なお、中国が受入国・地域となっている外国人学生については、出身国・地域の情報がないため、「分類無・その他」となっている。このため、例えば、日本から中国に留学している者も「分類無・その他」が出身国・地域となっているのに留意されたい。
 海外に数多くの学生を送り出している中国、韓国は、受け入れている学生は少ない。これに対して、海外に学生をあまり送り出していない米国、英国は、受け入れている学生が多い。日本は、海外に学生をあまり送り出していない国・地域ではあるが、受け入れている学生も多いとは言いがたい。

【図表3-5-2】 高等教育レベル(ISCED 2011レベル5~8)における外国人学生の出身国・地域と受入国・地域
(2019年)


注:
1) ISCED2011におけるレベル5~8(日本でいうところの「大学等」に加えて専修学校が含まれる)に該当する学生を対象としている。
2) 外国人学生とは、受入国・地域の国籍を持たない学生を指す。
3) 中国には香港も含む。
4) 中国が受入国・地域となっている外国人学生については、出身国・地域の情報がないため、「分類無・その他」となっている。このため、例えば、日本から中国に留学している者も「分類無・その他」になっている。なお、中国教育部の2019年4月12日付けの発表によると(http://www.moe.gov.cn/jyb_xwfb/gzdt_gzdt/s5987/201904/t20190412_377692.html, 2019年6月12日アクセス)、中国(香港、マカオ、台湾は含まない)の高等教育機関(1,004機関)における留学生のうち日本の数は14,230人(2018年)である。
資料:
OECD, “Education at Glance 2021”を基に科学技術・学術政策研究所が作成。

参照:表3-5-2

 


(4)UNESCOが開発した教育の国際教育標準分類(ISCED:International Standard Classification of Education)であり、最新版はISCED2011である。