2.1.2各国の研究者数の動向

 図表2-1-3を見ると、日本の研究者数は2021年において69.0万人、HC値は95.2万人であり、中国(2020年:228.1万人)、米国(2019年:158.6万人)に次ぐ第3位の研究者数の規模である。その他の国の最新年の値を多い順に見ると、ドイツ(2020年:45.2万人)、韓国(2020年:44.7万人)、フランス(2020年:32.2万人)、英国(2019年:31.6万人)となっている。
 日本のFTE研究者数は2002年から計測されており、2008年、2013年及び2018年において、FTEの研究者数を計算するための係数を変更している。そのため2009年、2013年及び2018年のFTE研究者数は、前年からの継続性が損なわれている。
 米国の研究者数は、OECDによる見積り数値である。OECD統計では大学部門の数値は1999年まで、公的機関・非営利団体部門は2002年までしか、示されていない。また、企業部門の数値は2008年から示されている。
 ドイツは企業部門、公的機関・非営利団体部門では研究開発統計調査を実施している。大学部門に関しては教育統計を用いて計測しており、研究者の研究専従換算値は、学問分野毎の研究専従換算係数を使用して計測している。1990年の東西統一の影響を受けて1991年に研究者数が増加したため、データの継続性は損なわれている。その後の研究者の増加傾向は続いている。
 フランスはすべての部門で研究開発統計調査を行い、研究者数を計測しており、長期的には漸増している。
 英国では、1999~2004年にかけて大学部門の研究者数が公表されていないため、OECDの見積り値であり、2005年以降も見積り値である年が多いが、長期的に漸増している。
 中国は研究開発統計データが公表されているが、統計調査の詳細は不明である。また、2009年からはOECDのフラスカティ・マニュアルの定義に従って研究者数を収集し始めたため、2008年値よりかなり低い数値となった。その後は継続的に増加しており、主要国の中では一番の規模となっている。近年は特に増加しており、対前年比は8.1%の増加率である。
 韓国は部門ごとに研究開発統計調査を実施しているが、2006年までは対象分野を「自然科学」に限っており、2007年から全分野を対象とするようになった。研究者数は継続的に増加しており、2000年代後半以降では、まずフランス、次に英国を上回り、最新年ではドイツに次ぐ値となっている。


【図表2-1-3】 主要国の研究者数の推移  

注:
1) 国の研究者数は各部門の研究者の合計値であり、各部門の研究者の定義及び測定方法は国によって違いがあるため、国際比較する際には注意が必要である。各国の研究者の定義の違いについては図表2-1-1を参照のこと。
2) 各国の値はFTE値である(日本についてはHC値も示した)。
3) 人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
4) 日本:2001年以前の値は該当年の4月1日時点の研究者数、2002年以降の値は3月31日時点の研究者数を測定している。「日本*」は図表2-1-2(A)①の値。「日本(HC)」は図表2-1-2(B)、(C)の③の値。「日本(FTE)」の2002年から2008年までは図表2-1-2(B)②の値。「日本(FTE)」の2009年以降は、図表2-1-2(C)②の値。
5) 米国:見積り値である。 1985、1987、1993年において時系列の連続性は失われている。
6) ドイツ:1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。1987年において時系列の連続性は失われている。1996、1998、2000、2002、2008、2010年は見積り値。2020年は暫定値。
7) フランス:1997、2000、2010、2014年において時系列の連続性は失われている。2008、2009年値の定義は異なる。2012、2013、2020年は見積り値。2020年は暫定値。
8) 英国:1991、1992、1994、2005年において時系列の連続性は失われている。1999~2010、2012、2014、2016~2018年は見積り値。
9) 中国:1991~2008年まで定義が異なる。1991~1999年までは過小評価されたか、あるいは過小評価されたデータに基づいた。そのため、時系列変化を見る際には注意が必要である。2000年、2009年において時系列の連続性は失われている。
10) EU-27:見積り値である。
資料:
日本:総務省、「科学技術研究調査報告」 文部科学省、「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」
米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国、EU-27:OECD,“Main Science and Technology Indicators March 2022”

参照:表2-1-3


 次に、人口1万人当たりの研究者数(図表2-1-4)によって各国の規模を考慮した国際比較を試みる。
 2020年の日本(FTE)は54.1人である。2009年までは、主要国の中で、最も高い数値であったが、2010年には韓国、2019年にはドイツが日本(FTE)を上回った。2020年の韓国は86.3人である。次いで、ドイツが54.3人、米国が48.3人(2019年)、英国が47.4人(2019年)、フランスが47.4人、中国が16.2人である。
 伸び具合を見ると一番大きく伸びているのは韓国であり、特に2004年以降の伸びは著しい。欧州諸国を見ると、長期的には漸増傾向にある。なかでも、ドイツの伸びが大きく、近年では日本(FTE)を僅かではあるが、上回っている。英国については、2000年代前半に急激に増加した後、2000年代後半から横ばいに推移し、2010年代に入り、増加傾向にある。
 労働力人口1万人当たりの研究者数(図表2-1-5)について見ても、人口当たりの研究者数と同様の傾向にある。ほとんどの国で人口当たりの研究者数の推移との差はあまりないように見えるが、フランスについては、労働力人口当たりの研究者数は、他の欧州諸国よりも大きな値となっている。2020年において、多い順に見ると、韓国が160.4人、フランスが109.4人、ドイツが103.8人、日本(FTE)が98.8人、米国が97.0人(2019年)、英国が93.1人(2019年)、中国が29.1人となっている。


【図表2-1-4】 主要国の人口1万人当たりの研究者数の推移  

注:
国際比較注意、時系列注意及び研究者数についての注記は表2-1-3、人口は参考統計Aと同じ。
資料:
表2-1-3、人口は参考統計Aと同じ。

参照:表2-1-4


【図表2-1-5】 主要国の労働力人口1万人当たりの研究者数の推移  

注:
国際比較注意、時系列注意及び研究者数についての注記は図表2-1-3、労働力人口は参考統計Bと同じ。
資料:
図表2-1-3、労働力人口は参考統計Bと同じ。

参照:表2-1-5