5.研究開発のアウトプットから見る日本と主要国の状況

(1)日本の論文数は横ばいであり、他国・地域の増加により順位を下げている。Top10%補正論文数で日本の順位低下が顕著である。中国はTop10%補正論文数でも、世界第1位となった。

 論文の生産への貢献度を見る分数カウント法では、日本の論文数(2017-2019年の平均)は、中、米、独に次ぐ第4位である。日本はTop10%補正論文数では第10位である。前年と比べて順位を1つ下げた。中国は米国を抜き、Top10%補正論文数でも世界第1位になった。
 Top10%補正論文数シェアの分野バランスを見ると、日本は、「物理学」、「臨床医学」、「化学」のシェアが他分野と比べて高い。米国は、「臨床医学」、「基礎生命科学」、「物理学」のシェアが高い。中国は、「材料科学」、「化学」、「工学」、「計算機・数学」のシェアが高い。


【概要図表10】 国・地域別論文数、Top10%補正論文数:上位10か国・地域(自然科学系、分数カウント法)

注:
分析対象は、Article, Reviewである。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。被引用数は、2020年末の値を用いている。

参照:科学技術指標2021図表4-1-6


【概要図表11】 主要国の分野毎の論文数シェアとTop10%補正論文数シェアの比較
(%、2017-2019年(PY)、分数カウント法)

注:
分析対象は、Article, Reviewである。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。被引用数は、2020年末の値を用いている。

参照:科学技術指標2021図表4-1-10



(2)日本はパテントファミリー(2か国以上への特許出願)数において、世界第1位を保っている。中国のシェア増加に伴い、「情報通信技術」、「電気工学」における日本のシェアは低下している。

 特許出願に着目し、各国・地域から生み出される発明の数を国際比較可能な形で計測したパテントファミリー数を見ると、1994-1996年は米国が第1位、日本が第2位であったが、2004-2006年、2014-2016年では日本が第1位、米国が第2位となっている。中国は2014-2016年で第5位であるが、着実にその数を増やしている。
 技術分野のバランスを見ると、日本は「電気工学」、「一般機器」、米国は「バイオ・医療機器」、「バイオテクノロジー・医薬品」、中国では「情報通信技術」、「電気工学」のシェアが高い。10年前と比較して、中国のシェアは拡大しているのに対して、日本の「情報通信技術」、「電気工学」のシェアは縮小している。

【概要図表12】 主要国・地域別パテントファミリー数:上位10か国・地域

注:
パテントファミリーとは優先権によって直接、間接的に結び付けられた2か国以上への特許出願の束である。通常、同じ内容で複数の国に出願された特許は、同一のパテントファミリーに属する。

参照:科学技術指標2021図表4-2-5


【概要図表13】 主要国の技術分野毎のパテントファミリー数シェアの比較
(%、2004-2006年と2014-2016年、整数カウント法)

注:
概要図表12と同じ。概要図表13の項目「バイオ・医薬品」は「バイオテクノロジー・医薬品」の略であり、「情報通信」は「情報通信技術」の略である。

参照:科学技術指標2021図表4-2-12



(3)各国のパテントファミリーが最も引用しているのは米国の論文である。

 科学と技術のつながりを見るために、パテントファミリー(2009-2016年の合計)が引用している論文の情報を用いて分析を行った。日本のパテントファミリーから論文への引用の29.8%が日本の論文に対するものである。しかし、日本のパテントファミリーが最も引用しているのは米国の論文(40.6%)である。いずれの主要国においても、各国のパテントファミリーが最も引用しているのは米国の論文である。米国において自国の次に多く引用しているのは英国の論文である(10.2%)。
 中国のパテントファミリーでは自国の論文を引用している割合が、他の主要国に比べて低い傾向がみられる(7.8%)。また、パテントファミリーから引用されている中国論文のシェアは、論文数におけるシェアに比べると小さい。


【概要図表14】 主要国間の科学と技術のつながり

参照:科学技術指標2021図表4-3-4