6.科学技術とイノベーションから見る日本と主要国の状況

(1)日本の技術輸出入(親子会社以外)の一番の相手先国・地域は米国である。米国(関連会社以外)については、技術輸出は中国、技術輸入は英国が一番の相手先国・地域である。

 日本の親子会社以外での技術輸出額は、米国(2,492億円)が最も多く、中国(2,363億円)が続いている。技術輸入額では、米国が最も多く、また、約6割が親子会社以外での取引(2,503億円)である。
 米国の関連会社以外での技術輸出額は、中国(4,513億円)、日本(3,832億円)への技術輸出額が多い。技術輸入額を見ると、関連会社以外では、英国が最も多く、関連会社では日本が最も多い。米国の技術輸入の相手先国・地域の上位には中国は含まれていない。


【概要図表15】 日本と米国の相手先国・地域別技術貿易額
(A)日本(2019年度)
                                               
(B)米国(2019年)

注:
1) 日本と米国の親子会社(関連会社)については定義が違うので国際比較する際には注意が必要である。両国の違いについては以下のとおり。
2) 日本の技術貿易の種類:①特許権、実用新案権、著作権、②意匠権、③各技術上のノウハウの提供や技術指導(無償提供を除く)、④開発途上国に対する技術援助(政府からの委託によるものも含む)
3) 日本の親子会社とは出資比率が50%超の場合を指す。年度の値である。
4) 米国の技術貿易の種類1)Trademarks, 2)Franchise fees, 3)Outcomes of research and development include patents, industrial processes, and trade secrets, 4)Computer software, 5)Movies and television programming, 6)Books and sound recordings, 7)Broadcasting and recording of live events
5) 米国の関連会社とは直接または間接に10%以上の株式あるいは議決権を保有している関連会社等を指す。年の値である。

参照:科学技術指標2021図表5-1-3


(2)日本のハイテクノロジー産業貿易は入超、ミディアムハイテクノロジー産業貿易は出超である。

 ハイテクノロジー産業貿易は、輸出入額ともに「電子機器」が多くを占めている国が多い。貿易収支比(各国最新年)は、日本、米国は入超、ドイツ、中国、韓国は出超である。ミディアムハイテクノロジー産業貿易の輸出額(各国最新年)を見ると、日本、ドイツでは「自動車」、米国、韓国では「化学品と化学製品」、中国では「電気機器」が多くを占める。貿易収支比は、日本、ドイツ、中国、韓国は出超、米国は入超である。

【概要図表16】 主要国における産業貿易額の推移
(A)ハイテクノロジー産業

参照:科学技術指標2021図表5-2-3

(B)ミディアムハイテクノロジー産業

参照:科学技術指標2021図表5-2-5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)日本において、全産業の総付加価値に占める「電子機器」の割合は減少、「医薬品」は横ばい、「自動車」は増加傾向にある。

 主要国において、全産業の総付加価値に対する「電子機器」、「医薬品」、「自動車」産業の重みを見ると、「電子機器」では韓国が大きく伸びており、「医薬品」では各国とも横ばいに推移、「自動車」では、ドイツ、日本、韓国は長期的に増加傾向、英国、米国、フランスは微減または横ばいに推移している。

【概要図表17】 主要国における総付加価値に対するシェア

注:
1) 付加価値とは、その国の居住者による総産出(生産物)から中間投入(財貨・サービスを生産するために必要となる、コストとして投入される生産物)を控除して算出されたもの。
2) 電子機器産業とは「コンピュータ、電子および光学製品」である。

参照:科学技術指標2021図表5-2-7



(4)日本は技術に強みを持つが、それらの新製品や新たなサービスへの導入という形での国際展開が他の主要国と比べて少ない可能性がある。

 国境を越えた商標出願数と特許出願数について、人口100万人当たりの値で比較すると、最新年で商標出願数よりも特許出願数が多い国は、日本のみである。韓国、英国、ドイツについては2002~2018年にかけて、商標の出願数を大きく増加させた。
 米国への商標出願におけるニース国際分類クラスによる産業分類の構成をみると、日本は「化学薬品」、「輸送とロジスティクス」に関わる商標出願が多い。中国については「家庭用機器」、「テキスタイル?衣類とアクセサリー」に関わる商標出願が多い。

【概要図表18】 国境を越えた商標出願と特許出願(人口100万人当たり)

【商標出願数の指標としての意味】
商標の出願数は、新製品や新サービスの導入という形でのイノベーションの具現化、あるいはそれらのマーケティング活動と関係があり、その意味で、イノベーションと市場の関係を反映したデータであると考えられる。

注:
1) * 国境を越えた商標数(Cross-border trademarks)の定義はOECD,“Measuring Innovation: A New Perspective”に従った。具体的な定義は以下のとおり。
日本、ドイツ、フランス、英国、韓国の商標出願数については米国特許商標庁(USPTO)に出願した数。
米国の商標出願数については①と②の平均値。
① 欧州連合知的財産庁(EUIPO)に対する日本と米国の出願比率を基に補正を加えた米国の出願数=(米国がEUIPOに出願した数/日本がEUIPOに出願した数)×日本がUSPTOに出願した数。
② 日本特許庁(JPO)に対する欧州と米国の出願比率を基に補正を加えた米国の出願数=(米国がJPOに出願した数/EU15がJPOに出願した数)×EU15がUSPTOに出願した数。
2) ** 国境を越えた特許出願数とは三極パテントファミリー(日米欧に出願された同一内容の特許)数(Triadic patent families)を指す。

参照:科学技術指標2021図表5-3-3

【概要図表19】 主要国から米国への商標出願におけるニース国際分類クラスによる産業分類の構成(特化係数)

注:
1) ニース国際分類と産業分類の対応表はWIPO, “World Intellectual Property Indicators 2020”の“Annex B. Composition of industry sectors by Nice goods and services classes”を参照した。日本語訳は科学技術・学術政策研究所が仮訳した。
2) マドリッド制度を利用した国際登録の出願(国際出願)と直接出願である。
3) クラス数を計測している。米国への全出願(クラス数)における産業分類の構成を基準として、それと比べた特化係数を示している(特化係数=各国から米国への商標出願における産業分類A(例:家庭用機器)の構成比/全世界から米国への商標出願における産業分類Aの構成比)。2017~2019年の合計値を使用している。

参照:科学技術指標2021図表5-3-4(C)