論文数や被引用数は、分野ごとの研究活動において論文生産がどの程度重視されているか、研究者数が多いか少ないか、論文が引用する過去の論文数が平均的に多いか少ないかなどの影響を受ける。したがって、国の比較を行う場合、分野ごとの研究活動を把握することも重要である。
図表4-1-8では、全世界の論文における各分野の論文数割合の推移を示す。1981年と2023年を比べると、基礎生命科学は7.6ポイント、物理学は4.7ポイント、臨床医学は2.8ポイント、化学は2.6ポイント減少している。他方で、工学は7.3ポイント、材料科学は4.8ポイント、環境・地球科学は4.0ポイント、計算機・数学は2.0ポイント増加した。基礎生命科学及び臨床医学といった生命科学系の割合が約半分を占めているが、2023年時点におけるその割合は1981年の53.3%から42.9%に低下している。
注:
分析対象は、Article, Reviewである。分野は図表4-1-4(B)の注釈に準ずる。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。研究ポートフォリオ8分野に分類できない論文を除いた結果。
資料:
クラリベイト社 Web of Science XML (SCIE, 2024年末バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。
参照:表4-1-8
(2)主要国内の分野バランス
次に主要国の内部構造を見るために、図表4-1-9では、主要国内の分野バランスの変化を示す。なお、ここでは各国内の分野ごとの割合を分数カウント法により求めた。
日本は、1980年代前半は、基礎生命科学、化学、物理学の占める割合が大きかった。1981年と2023年を比較すると、化学は11.9ポイント、基礎生命科学は6.4ポイント、物理学は4.7ポイント減少している。他方で、17.3ポイント割合が増加した臨床医学に加え、材料科学(3.6ポイント増)と環境・地球科学(3.4ポイント増)は増加傾向にある。
米国は、基礎生命科学(6.2ポイント減)、物理学(4.1ポイント減)、臨床医学(6.8ポイント増)で変化が見られる。
ドイツは、基礎生命科学(6.2ポイント減)、化学(3.6ポイント減)、物理学(3.4ポイント減)、環境・地球科学(5.1ポイント増)、工学(3.5ポイント増)で変化が見られる。
フランスは、臨床医学(6.0ポイント減)、基礎生命科学(4.6ポイント減)、物理学(3.9ポイント減)、工学(5.5ポイント増)、環境・地球科学(4.5ポイント増)、計算機・数学(3.9ポイント増)で変化が見られる。
英国では、基礎生命科学(10.5ポイント減)、化学(5.1ポイント減)、臨床医学(3.6ポイント増)、工学(3.6ポイント増)、環境・地球科学(3.4ポイント増)で変化が見られる。
中国は、物理学(16.2ポイント減)、臨床医学(3.2ポイント減)、工学(13.3ポイント増)、材料科学(10.4ポイント増)で変化が見られる。
韓国は、化学(20.4ポイント減)、物理学(13.6ポイント減)、臨床医学(15.0ポイント増)、工学(8.0ポイント増)、材料科学(3.7ポイント増)で変化が見られる。中国と韓国に関しては、材料科学及び工学の占める割合が、他の主要国と比較して高い。
注:
分析対象は、Article, Reviewである。分数カウント法による。分野は図表4-1-4(B)の注釈に準ずる。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。研究ポートフォリオ8分野に分類できない論文を除いた結果。
資料:
クラリベイト社 Web of Science XML (SCIE, 2024年末バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。
参照:表4-1-9
(3)世界における主要国の分野バランス
図表4-1-10では、世界における主要国の分野バランスを示す。具体的には、主要国の論文数シェアとTop10%補正論文数シェアの分野ポートフォリオ(2021-2023年(PY)、分数カウント法)を比較した。
Top10%補正論文数シェアに注目してポートフォリオを見ると、日本は物理学、臨床医学の順でシェアが他分野と比べて高く、工学、計算機・数学、環境・地球科学の順で低いというポートフォリオを有している。
米国は臨床医学、基礎生命科学、物理学の順でシェアが高い。英国は臨床医学、物理学、基礎生命科学の順でシェアが高い。ドイツは物理学、臨床医学、基礎生命科学、フランスは臨床医学、物理学、基礎生命科学の順でシェアが他分野と比べて高い。中国は、材料科学、工学、化学の順でシェアが高い。韓国は、材料科学、化学、工学の順でシェアが高い。
論文数シェアとTop10%補正論文数シェアを比較すると、多くの分野でTop10%補正論文数シェアが論文数シェアより高い国(英国、米国、中国)と、多くの分野で論文数シェアよりTop10%補正論文数シェアが低い国(日本、韓国、フランス)に分けられる。Top10%補正論文数シェアを見ると、論文数シェアで見る分野バランスより各国の分野バランスが強調される。
(%、2021-2023年(PY)、分数カウント法)
注:
分析対象は、Article, Reviewである。分数カウント法による。分野は図表4-1-4(B)の注釈に準ずる。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。被引用数は、2024年末の値を用いている。
資料:
クラリベイト社 Web of Science XML (SCIE, 2024年末バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。
参照:表4-1-10
