5.4.3主要国における起業の状況

(1)開廃業率の国際比較

 この節では、企業の開業率、廃業率を見ることにより、企業の新陳代謝が活発に行われているかどうかを見る。
 図表5-4-15に主要国の開業率、廃業率を示した。日本の場合、「雇用保険事業年報」をもとにしており、事業所における雇用関係の成立、消滅をそれぞれ開廃業とみなしている。他国については、各国で計測方法が異なる点には留意が必要である。
 各国最新年の開業率を見ると(図表5-4-15(A))、日本の開業率は4.4%であり他国と比較して最も低い数値である。最も高いのは英国であり12.4%、次いでフランスが11.3%、米国が9.3%、ドイツが7.2%となっている。
 各国最新年の廃業率を見ると(図表5-4-15(B))、日本は3.1%であり、開業率と同様に他国と比較して最も低い数値である。最も高いのは英国であり11.1%、次いでドイツが9.5%、米国が9.4%、フランスは3.9%となっている。


【図表5-4-15】 主要国における開廃業率の推移 
(A)開業率
(B)廃業率

注:
1) 企業の開廃業率の算出方法は、国によって異なるため、国際比較するには注意が必要である。
2) 日本は年度の値。
3) ドイツの2019年において時系列の連続性は失われている。
資料:
日本:中小企業庁、「中小企業白書」
米国:United States Census Bureau, “Business Dynamics Statistics”
ドイツ、フランス:Eurostat, “Structural business statistics”
英国:ONS, “Business demography”

参照:表5-4-15


(2)ユニコーン企業数

 この節では、米国CB Insightsの調査においてユニコーン企業とされた企業価値が10億ドル以上の未上場企業のデータ(2023年5月8日入手)を使用し、世界におけるユニコーン企業の状況を見る。
 図表5-4-16を見ると、ユニコーン企業数は2020年から2021年にかけて大きく増加した後、減少した。2022年は258社であり、2021年の半分である。CB Insightsによる分類で見ると、2017、2018年時点で10%前後の割合を持つ分類が多かったが、2019年になると「フィンテック」が20%と最も多くを占めるようになり、2020年では、「インターネットソフトウェアとサービス」が18%となった。2021年、2022年についても「フィンテック」、「インターネットソフトウェアとサービス」が多くを占めており、最新年ではそれぞれ26%、20%となった。
 次に分類別・国別にユニコーン企業数の状況を見ると(図表5-4-17)、最もユニコーン企業数が多いのは米国であり、645社となっている。次いで中国が168社であり、3位のインド(70社)と大きく離れている。日本は6社であり、他の国・地域と比較すると極めて少ない。
 分類別で見ると、米国では「インターネットソフトウェアとサービス」が最も多く、「フィンテック」、「保健」がそれに続く。中国では「EコマースとD2C」が最も多く、「人工知能」、「ハードウェア」がそれに続く。インドでは「フィンテック」、「EコマースとD2C」が最も多くなってる。英国では「フィンテック」が最も多い。


【図表5-4-16】 新たなユニコーン企業数の推移

注:
1) CB Insightsの調査においてユニコーン企業とされた企業価値が10億ドル以上の未上場企業(2023年4月7日現在)のデータを基に科学技術・学術政策研究所が作成。
2) 分類についてはCB Insightsが提示した項目を科学技術・学術政策研究所が仮訳した。D2Cはdirect-to-consumerの略である。
3) CB Insightsに企業価値が10億ドル以上と判断された年である。
資料:
CB Insightsのウェブサイトより2023年5月8日入手。

参照:表5-4-16


【図表5-4-17】 分類別・国・地域別ユニコーン企業数(2007~2022年の合計)

注及び資料:
図表5-4-16と同じ。

参照:表5-4-17