5.2.2付加価値

 この節は、特定の産業について、全産業の付加価値に占める重みを見る。ここでいう付加価値とは、その国の居住者による総産出(生産物)から中間投入(3)を控除して算出されたものである。


(1)各産業の付加価値

 全産業の総付加価値に対する6つの産業の重みを見る(図表5-2-10)。
 「電子機器」の付加価値割合は韓国が最も大きく、最新年では8.5%である。日本と米国は1.5%、ドイツが1.4%と続く。韓国の伸びが著しいのに対して、他の国は微減もしくは横ばいである。
 「医薬品」の付加価値割合は、各国ともに0.4%から1%からの間で推移している。最新年では大きい順に米国、日本、ドイツ、英国、フランス、韓国となっている。
 「自動車」の付加価値割合はドイツが最も大きく、最新年では4.3%である。これに次いで、日本、韓国が2.2%となっている。ドイツは2009年の落ち込みを除いて長期的に増加傾向、日本と韓国は漸増・横ばい傾向にあったが、いずれの国でも近年減少している。英国、米国、フランスは最新年では0.6から0.9%を示している。
 「化学と化学製品」の付加価値割合は韓国が最も大きく、最新年では2.3%である。ドイツが1.5%、日本が1.3%と続く。多くの国で2000年代後半まで減少した後、微増もしくは横ばいに推移している。
 「電気機器」の付加価値割合は韓国が最も大きく、長期的に増加傾向にある。最新年では1.7%である。ドイツと日本は1991年時点ではそれぞれ2.4%、2.0%と大きかったがその後は減少し、日本は1.3%、ドイツは1.4%となった。米国、フランス、英国は減少傾向にある。
 「機械器具」の付加価値割合はドイツが最も大きく、最新年では3.3%である。日本は3.1%、韓国は2.5%と続く。ドイツ、日本、韓国は増加傾向であるのに対して、米国、フランス、英国は減少傾向にある。

 

【図表5-2-10】 主要国における総付加価値に対する各産業のシェア
(A)電子機器
(B)医薬品
(C)自動車
(D)化学と化学製品
(E)電気機器
(F)機械器具

注:
1) 電子機器とはコンピュータ、電子および光学製品である。
2) 日本の1991~1993年、米国の1991~1996年、英国の1991~1994年、韓国の1991~2006年は国民経済計算やSTANデータの以前のデータに基づく推計。
3) 韓国の2007~2009年、「医薬品」、「自動車」、「化学と化学製品」における日本の1994年以降、韓国の2010~2014年は、詳細な企業構造統計(SBS)や産業センサスデータに基づく推計。
4) 韓国の「電子機器」、「電気機器」、「機械器具」の2010~2014年は最新の定義に従って作成された公式の年次国民経済計算から得られる他の関連指標に基づく推定値。
5) 韓国の2015年以降は国の供給・使用表(SUT)または産業連関表に基づく推計値。
資料:
OECD, “STAN Industrial Analysis”

参照:表5-2-10


(2)「情報」産業の付加価値

 「情報」産業について、産業の総付加価値に対する重みを見る。ここでいう「情報」産業とは「コンピュータ、電子および光学製品」、「通信」、「出版、視聴覚および放送」、「ITおよびその他の情報サービス」を合計したものである。本分類については、OECD, “Measuring the Digital Transformation”に依拠した。
 図表5-2-11(A)を見ると、1991年では、米国が7.0%と最も大きかったが、他の国も5~6%台であり、差異は少なかった。その後、韓国は約2倍の伸びを見せているのに対して、その他の国の伸びは少ない。各国最新年における「情報」産業の付加価値のシェアが最も大きい国は韓国(13.1%)であり、米国(8.6%)、英国(6.9%)、日本(6.4%)が続く。
 次に、主要国における「情報」産業の付加価値の内訳を見ると(図表5-2-11(B))、日本は1991年では、「コンピュータ、電子および光学製品」が3.3%と最も大きく「情報」産業全体の半数を占めていたが、その後は減少した。これに対して「ITおよびその他の情報サービス」は1991年時点では0.9%であったが、2019年では2.3%と大きく伸びた。
 米国は1991年時点では、「コンピュータ、電子および光学製品」、「通信」、「出版、視聴覚および放送」の3つが多くを占めていた(それぞれ約2%)。「ITおよびその他の情報サービス」は0.9%であったが、その後は増加し、2019年では3.1%と最も大きくなった。
 ドイツでは、「ITおよびその他の情報サービス」の伸びが著しく、2019年では3.0%を示している。その他は、微減もしくは横ばいに推移しており、「通信」は減少している。
 フランスは、1991年時点で「ITおよびその他の情報サービス」が最も大きく、その後も増加し、2019年では2.9%となった。その他は微減もしくは横ばいに推移しており、「コンピュータ、電子および光学製品」については減少している。
 英国は、1991年時点では「通信」が最も大きかったが、その後は微減に推移した。これに対して大きく伸びたのは、「ITおよびその他の情報サービス」である。2019年では2.9%とった。
 韓国は1991年時点では、「コンピュータ、電子および光学製品」、「通信」がそれぞれ2.6%、2.1%と大きく、「ITおよびその他の情報サービス」は0.5%と主要国中、最も小さかった。その後、「コンピュータ、電子および光学製品」、「ITおよびその他の情報サービス」は大きく増加した。2018年では「コンピュータ、電子および光学製品」は8.5%と、主要国中最も大きな規模となった。「ITおよびその他の情報サービス」は1.9%となったが、主要国中最も小さい。

 

【図表5-2-11】 主要国における「情報」産業付加価値額の割合
(A)主要国における「情報」産業付加価値のシェア


(B)主要国における「情報」産業付加価値の内訳
(a)日本
(b)米国
(c)ドイツ
(d)フランス
(e)英国
(f)韓国

注:
1) 「情報」産業とは「コンピュータ、電子および光学製品」、「通信」、「出版、視聴覚および放送」、「ITおよびその他の情報サービス」である。
2) 日本の「コンピュータ、電子および光学製品」の1991~1993年、米国の1991~1996年、英国の1991~1994年、韓国の1991~2006年は国民経済計算やSTANデータの以前のデータに基づく推計。
3) 日本の「コンピュータ、電子および光学製品」以外の産業について、1991~2010年は国民経済計算やSTANデータの以前のデータに基づく推計。2011年以降は国の供給・使用表(SUT)または産業連関表に基づく推計値。
4) 韓国の2007~2014年は国の供給・使用表(SUT)または産業連関表に基づく推計値。ただし、「コンピュータ、電子および工学製品」と「通信」の2010~2014年は、最新の定義に従って作成された公式の年次国民経済計算から得られる他の関連指標に基づく推定値。2015年以降は国の供給・使用表(SUT)または産業連関表に基づく推計値。
資料:
OECD, “STAN Industrial Analysis”

参照:表5-2-11



(3) 財貨・サービスを生産するために必要となる、コストとして投入される生産物。