概 要

 「科学技術指標」は、我が国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき、体系的に把握するための基礎資料であり、科学技術活動を「研究開発費」、「研究開発人材」、「高等教育と科学技術人材」、「研究開発のアウトプット」、「科学技術とイノベーション」の5つのカテゴリーに分類し、約170の指標で日本及び主要国の状況を表している。本概要では「科学技術指標2023」の注目すべき指標を紹介する。

1.主要な指標における日本の動向

 主要な指標における日本の動向は、以下の通りである。おおむね科学技術指標2022と同様の順位であるが、大学、公的機関の研究者数、注目度の高い論文数において順位を下げた。日本は多くの指標で、米国や中国、英国やドイツに続く第3位もしくは第4位に位置しているが、伸びでは他の主要国と比べて小さいものが多い。英国と中国については研究開発費及び研究開発人材データの見直しが生じた。その結果として、英国は企業や大学の研究開発費が増加し、中国は近年のデータのOECDによる公表が控えられている。また、米国は20年近く値が示されていなかった大学、公的機関の研究者数がOECDで公表された。日本の研究者数の順位変動はこの影響によるものである。

【概要図表1】 主要な指標における日本の動向

注:
※:研究開発費とは、ある機関で研究開発業務を行う際に使用した経費であり、科学技術予算とは異なる。予算については本編参照。
1) 日本の順位の変化は、昨年との比較である。数値は最新年の値である。
2) 論文数、Top1%・Top10%補正論文数、特許数以外は、日本、米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国の主要国における順位である。 

 

(1) 日本の大学部門や企業部門の研究開発費及び研究者の伸びは他の主要国と比べて小さい。

 企業及び大学部門の研究開発費は、米国が主要国中1番の規模である。両部門ともに2010年代に入って伸びが大きくなった。中国も研究開発費を伸ばしている。日本は企業部門では主要国で3番目の規模であるが、他の主要国と比べて伸びは緩やかである。大学部門では、日本は2000年代に入ってから、ほぼ横ばいに推移しており、中国、ドイツが日本を上回っている。


【概要図表2】 企業部門と大学部門の研究開発費名目額(OECD購買力平価換算)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:
研究開発費について、中国の企業は2019年、大学は2018年が最新値。英国の大学は2018年から2020年まで掲載。科学技術指標2022以前の報告書で示した値とは異なることに留意されたい。 

 

 企業及び大学部門の研究者数は、中国が主要国中1番の規模である。企業部門では、米国と中国が拮抗しつつ、両国ともに急速な伸びを見せている。日本の企業部門の研究者数は2000年代後半からほぼ横ばいに推移していたが、2017年以降は微増している。また、韓国の企業部門の研究者数は長期的に増加している。大学部門では、ドイツは2000年代中頃から研究者数が増加している。日本の伸びは緩やかであり、最近は横ばい傾向である。

 

【概要図表3】 企業部門と大学部門の研究者数の推移

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:
研究者について、中国の企業は2019年、大学は2018年が最新値。英国の企業は2015~2017年を改訂、2017年が最新値である。米国の大学のデータが掲載されてない期間は点線で示した。最新値は2021年である。科学技術指標2022以前の報告書で示した値とは異なることに留意されたい。