1.2政府の予算

ポイント

  • 2021年の日本の科学技術予算(補正予算と地域の当初予算も含めた額)は8.2兆円である。他国の2021年の値を見ると、中国は24.4兆円、米国は16.0兆円である。ドイツは2000年代後半から増加し、2021年では5.2兆円となっている。
  • 科学技術予算の対GDP比率をみると、日本(地域を含む最終予算)は、2016年以降増加している。2020年は1.72%であり、主要国中第1位の規模である。第2位は韓国(2021年:1.34%)、第3位はドイツ(2021年:1.10%)である。
  • 地域の科学技術関係予算を性格別に分類してみると、「公設試験研究機関」に係る予算の割合が最も大きい。2020年度で見ると、全体の30.3%に当たる。次に「企業支援(同22.7%)」、「高等教育機関(16.8%)」と続く。推移を見ると、「公設試験研究機関」が減少している。「企業支援」は増加していたが、2016年度を境に減少傾向にある。「高等教育機関」については、年による変動はあるが2005年度を境に微減傾向にある。

 ここでは、政府の科学技術予算について述べる。
 日本については、「科学技術関係予算」を科学技術予算としている。日本の科学技術関係予算は、①科学技術振興費(一般会計予算のうち主として歳出の目的が科学技術の振興にある経費)、②一般会計中のその他の研究関係費、③特別会計中の科学技術関係費の合計から成る。
 日本の科学技術関係予算の集計業務については、2014年度に文部科学省から内閣府に業務が移管され、2018年度より、科学技術関係予算の集計方法が変更された(6)。また、第5期科学技術基本計画の初年度である2016年度まで遡って、新方法による再集計がされている。本報告書には新方法による集計結果を示している。内閣府による科学技術関係予算の集計は、『「行政事業レビューシートが作成されている事業のうち科学技術予算に該当すると判定した事業」及び「行政事業レビューシートの作成を要しない事業のうち、各省から申告された内容に基づき科学技術予算に該当すると判定した事業」から構成されている』(7)とある。

 中国以外の主要国についてはOECDの政府研究開発予算配分額(GBARD:Government Budget Allocations for R&D)の値を用いている(8)。中国については、国家統計局による公表値等を参照した。
 米国については、米国行政管理予算局(OMB)による連邦政府の予算編成・提出・執行についての政府通達であるOMB Circular A-11(Preparation, Submission and Execution of the Budget)において、2016年度に研究開発の分類(Basic research, Applied research, Develop-ment)の「Development」が「Experimental devel-opment」に変更された(9)(10)。これは、NSFの研究開発統計や国際的な標準とより整合的になることを意図したものとされている(11)。この変更に伴って、米国の研究開発予算の集計方法も2018年から変更され、OECDに報告される値も2000年までさかのぼって変更されている。具体的には、「防衛(2000年から)」、「宇宙の探査と活用(2017年から)」の予算から「Preproduction development(生産前開発)」に対応する部分が除外されている。

1.2.1各国の科学技術予算

 主要国政府の科学技術予算(OECD購買力平価換算)を見ると(図表1-2-1(A))、2021年(12)の日本の地域も含めた最終予算(13)は8.2兆円である。日本の地域も含めた最終予算の推移を見ると、大規模な補正予算が組まれた年以外は、横ばいに推移していた。2016年以降は増加し、2020年には過去最大の9.2兆円となった。なお、2020年の補正予算には、第3次補正で措置された「グリーンイノベーション基金事業(2兆円)」及び「10兆円規模の大学ファンド(0.5兆円)」を含んでいる。
 中国は2000年代に入ると大きく増加していたが、最新年では減少している。2020年は24.4兆円であり、世界トップの規模である。
 米国については、2009年にARRA(American Recovery and Reinvestment Act of 2009)による特別な予算が措置された以降は減少が続いていた。2013年を境に増加傾向であったが、2021年は減少し16.0兆円となった
 ドイツは2000年代後半から増加し、2021年では5.2兆円となっている。
 韓国は一貫して漸増傾向である。2021年は3.3兆円であり、フランス、英国を上回っている。
 フランスは2010年代に入ってから漸減していたが、近年は増加傾向にあり、2020年は2.4兆円となった。
 英国は、2010年代に入ると増加傾向となり2020年は1.8兆円となった。
 また、科学技術予算を国防関係の経費(国防用)(日本の場合は防衛省の科学技術関係予算)とそれ以外の経費(民生用)に分類してみると(図表1-2-1(B))、日本(当初予算)は9割以上が民生用科学技術予算で占めている。米国については、国防用科学技術予算の割合が他国と比較すると大きく、46.0%である。英国、韓国では、いずれも国防用科学技術予算の割合は民生用と比較して少ないが日本やドイツと比較すると大きい割合である。また、米国以外の国では、2001年に比べて国防用の割合が低下しており、特にフランス、英国の減少が著しい。
 次に、2000年を1とした場合の各国通貨による科学技術予算の名目額と実質額の指数を示した(図表1-2-1(C))。名目額での最新年を見ると、日本は地域を含む最終予算の場合1.9(当初予算は1.3)である。米国は2.3、ドイツは2.4、英国は1.9である。最も伸びが低い国はフランス(1.2)である。中国は17.5であり、韓国の7.3とともに大きな伸びを示している。
 実質額を見ると、日本以外の国は名目額より低い数値となっている。最新年を見ると、日本は地域を含む最終予算の場合2.1(当初予算は1.4)である。米国は1.5、ドイツは1.8、英国は1.2である。中国は9.1、韓国は4.9と順調な伸びを見せている。主要国の中では、フランスのみ0.9とマイナス成長である。



【図表1-2-1】 主要国政府の科学技術予算の推移 
(A)科学技術予算総額(OECD購買力平価換算)の推移

(B)民生用と国防用の科学技術予算の割合(3年平均)

(C)2000年を1とした各国通貨による科学技術予算の指数

注:
1) 購買力平価換算には参考統計Eを用いた。
2) 図表1-2-1(B)は3年平均である。たとえば2020年であれば、2019、2020、2021年の平均値。日本については当初予算である。
3) 実質額の計算はGDPデフレータによる(参考統計Dを使用)。
4) 日本は年度である。日本(当初予算)とは国の科学技術関係予算である。日本(地域を含む最終予算)とは、①国の当初予算、②国の補正予算等、③都道府県と政令指定都市の最終予算の合計値である。なお、2021年の日本(地域を含む最終予算)は、③について最終予算ではなく、当初予算を使用している。
5) 日本について、2016年度以降の当初予算は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係経費の判定を行う方法に変更されている。図表1-2-1(B)は当初予算額である。2020年度補正予算には第3次補正で措置された「グリーンイノベーション基金事業(2兆円)」及び「10兆円規模の大学ファンド(0.5兆円)」を含む。
6) 米国は連邦政府のみ。高等教育部門に対する一般支払いのうち、教育と研究が分離できないものは除外している。2000年以降、Preproduction development(生産前開発)が除かれた。2009年の値にはARRA:American Recovery and Reinvestment Act of 2009によって特別に予算が措置された。
7) ドイツは1983、1984、1985、1987、1991、1997年において時系列の継続性は失われている。1992年は見積り値、2021年は暫定値である。
8) フランスは1983、1984、1986、1992、1997、2006年において時系列の継続性は失われている。2006、2007年は見積り値である。 2006~2015年の民生、国防の値は定義が異なる。
9) 英国は1985、2001年において時系列の継続性は失われている。2020年は暫定値である。
10) 韓国は2006年まで定義が異なる。2005年において時系列の継続性は失われている。民生、国防の値の2008~2011年までは見積り値、2008年において時系列の継続性は失われている。
資料:
日本:国の科学技術関係予算(当初予算及び補正予算)については2013年までは文部科学省調べ及び文部科学省「科学技術要覧(各年版)」。2014年からは内閣府調べ(2016~2022年の値は2022年3月時点の数値である)。地域(都道府県と政令指定都市)の科学技術関係予算については、2000年は(公財)全日本科学技術協会(JAREC)から提供された「地域の科学技術振興状況の総合的調査研究」のデータを元に、科学技術・学術政策研究所が集計した。2001、2002年は(公財)全日本科学技術協会(JAREC)から提供された「地域の科学技術振興状況の総合的調査研究」の集計値、2003年以降は文部科学省「都道府県等における科学技術に関連する予算調査」調査報告書の集計値を使用した。
米国、ドイツ、フランス、英国、韓国:OECD,“Main Science and Technology Indicators March 2022”
中国:科学技術統計センター、中国科学技術統計(webサイト)、2015年以降は中華人民共和国国家統計局、「全国科技経費投入統計広報」の各年版

参照:表1-2-1


 次に、国による経済規模の違いを考慮して比較するために、科学技術予算の対GDP比率をみる(図表1-2-2)。
 日本(地域を含む最終予算)は、2009年、2012年に大きく増加した後減少し、2016年以降増加している。2020年は1.72%であり、主要国中第1位の規模である。当初予算で見ると、日本(当初予算)は1990年代に入って上昇し、2000年代は横ばいに推移していた。2000年代後半に微増した後、2012年を境に減少傾向にあったが、2016年以降増加傾向にある。2020年は0.82%である。
 米国は2000年~2004年にかけて急激に増加した後は、2009年を除いて2015年まで減少傾向にあった。近年は増加していたが、2021年では減少し0.72%である。
 ドイツは2000年代後半まで、減少傾向が続いた後、2009年に急増した。その後は、ほぼ横ばいに推移していたが、2014年頃から増加した。2021年は1.10%である。
 フランスは2005年まで主要国中、最も大きな値であった。長期的に減少傾向にあったが、近年は増加している。2020年は0.74%である。
 英国は長期的に見ると、継続して減少傾向にあった。ただし、近年では増加し、2020年では0.58%となったが、主要国の中で最も低い値である。
 中国、韓国ともに2000年代に入ってからの伸びが著しいが、中国は2010年代に入るとほぼ横ばいに推移し、2020年は0.99%となった。韓国については2010年代半ばまで増加した後はいったん減少し、再び大きく増加した。2021年の韓国は1.34%であり、主要国中第2位となっている。
 なお、韓国を除いた主要国のGDPは、2019年から2020年にかけて減少した後に増加している(韓国では横ばい)。それに伴い、同時期の科学技術予算の対GDP比は上昇した後、減少している。これらの動きは新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴うGDPの変動の影響を反映したものと考えられる。


【図表1-2-2】 主要国政府の科学技術予算の対GDP比率の推移 

注及び資料:
科学技術予算は図表1-2-1と同じ。GDPは参考統計Cと同じ。

参照:表1-2-2


1.2.2各国政府の研究開発費負担割合

 研究開発に対する政府の投入資金を調査する方法には、①研究開発費の使用部門において調査を行い、政府負担分を計上する方法、②政府の歳出の中から研究開発に関する支出(科学技術予算を調べる方法(1.2.1節参照))の二つがある。
 これら二つの方法のうち、①使用側において調査する方法は、研究開発費が複雑な流れを経た場合でも、調査対象が国全体を網羅している限り一国の研究開発費の総額を把握することができるが、資金の負担源を必ずしも正確に捉えることができない。これに対して、②支出源(科学技術予算)側の調査では、実際に研究開発費として使用されたかどうか不明の部分があるため、研究開発費を正確に把握することが困難になる。
 この節では①使用側のデータを用いて政府の研究開発費負担の状況を示すこととする。すなわち、各国の研究開発費総額のうち政府が負担した研究開発費が占める割合を見る。ここでいう政府とは、主に中央政府であるが、国によって違いがある。各国の政府が何を指すかを簡単に図表1-2-3に示した。
 主要国における政府の研究開発費負担割合を見ると(図表1-2-4)、最も大きい国はフランスであり最新年で31.4%である。次いで、ドイツが27.8%、英国が27.1%、韓国が22.4%、米国が20.1%である。韓国を除く4か国ともに2000年頃まで減少傾向にあり、2010年頃まで横ばいに推移していた。その後、大きく減少したのは米国であり、他の3か国の減少は緩やかである。
 日本(OECD推計)は全期間で7か国中、最も低い割合となっており、2020年の政府負担割合は15.2%(日本の場合17.5%)である。これは、日本(OECD推計)の研究開発費の負担割合を見ると(図表1-1-5(B))、企業(78.3%)に加えて、大学(5.2%)の負担割合が他国と比較して高いためである。中国、韓国についても企業が多くを占めており、同様の日本と同様の傾向にある。最新年の中国は19.8%である。


【図表1-2-3】 主要国の負担源としての政府

注及び資料:
図表1-1-4(B)と同じ。


【図表1-2-4】 主要国における政府の研究開発費負担割合の推移 

注:
1) 使用部門側から見た政府の研究開発費負担分は国により中央政府のみの場合と地方政府を含む場合があるため国際比較の際には注意が必要である。各国の政府については図表1-2-3を参照のこと。
2) 研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3) 日本:年度の値を示している。
4) 日本(OECD推計):見積り値である。1981~1995年は過大評価されたか、過大評価されたデータに基づいており、日本の数値とほぼ同様のため割愛している。1996、2008、2013、2018年において時系列の連続性は失われている。
5) 米国:定義が異なる。1998、2003年において時系列の継続性は失われている。2020年は暫定値である。
6) ドイツ:1991年を除いて定義が異なる。1991年において時系列の継続性は失われている。
7) フランス:1981、1992、1997、2000、2004、2010年の値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。
8) 英国:1981、1983、2010、2012、2014、2016年は見積り値。1981、1986、1992年において時系列の継続性は失われている。
9) 中国:2009年において時系列の連続性は失われている。
資料:
日本:総務省、「科学技術研究調査報告」
日本(OECD推計)、米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国:OECD,“Research & Development Statistics”

参照:表1-2-4


 次に、政府が負担する研究開発費の支出先別の内訳、すなわち政府の資金がどの部門で使用されているかについて見る(図表1-2-5)。
 日本は、「大学」部門と「公的機関」部門が大きな割合を占めており、「大学」部門への支出は約半数である。また、他の国と比較して「企業」部門への支出が少ない点が日本の特徴である。2000年頃から、「大学」部門への支出は微増していたが、2011年頃からほぼ横ばいに推移している。
 日本(OECD推計)では、「大学」部門の人件費分を研究専従換算した研究開発費を使用しているため、新規のFTE調査結果が反映された場合、その都度データが変化している。1996年以降は「公的機関」の割合が一番大きい。
 米国では、過去は「企業」部門への研究開発費の支出割合が高かったが、1980年代後半以降、その割合が大幅に減少する一方で、「大学」部門の割合が増加した。2002年以降、「企業」部門への支出割合は増加傾向にあったが、2009年を境に減少している。これに代わって増加したのは「公的機関」部門である。2010年代に入ってから「大学」部門はほぼ横ばいに推移している。
 ドイツは、1980年代から継続して「企業」部門への支出割合が減少する一方で、「大学」部門と「公的機関及び非営利団体」部門への支出割合が増加している。「大学」部門の割合は継続して増加する一方で、「公的機関」部門の割合は2000年代に入ってからおおむね横ばいである。
 フランスでは、1980年代は「公的機関」部門への支出割合の方が、「大学」部門と比べて大きかった。1990年代に入り「大学」部門への支出割合は増加する一方で、「公的機関」部門と「企業」部門の割合は減少した。2010年頃からは「大学」部門は微減、「企業」部門は微増、「公的機関」部門は横ばいである。
 英国では、2000年代中頃まで「大学」部門への支出割合は大幅な増加傾向にあるのに対し、「企業」部門や「公的機関」部門への支出が減少傾向にあった。2000年代後半から「企業」部門の増加、「公的機関」部門の減少が見られていたが、近年は逆の傾向が見られる。「大学」部門は約6割を占めている。
 中国では「公的機関」部門への研究開発費の支出割合が大きい。2000年代初めから減少傾向にあったが、2010年頃から横ばいに推移している。「企業」部門への支出割合は増加していたが、近年は減少傾向にある。「大学」部門への支出割合は約2割で推移しているが、近年増加している。
 韓国でも1990年代半ばには「公的機関」部門への研究開発費の支出割合が大きかったが、2000年代半ばにかけて減少した。それと並行して、「大学」部門への支出割合が増加した。2010年代に入ると、各部門の割合に大きな変化は無い。


【図表1-2-5】 主要国における政府負担研究開発費の支出先の内訳の推移  
(A)日本
(B)日本(OECD推計) 
(C)米国
(D)ドイツ
(E)フランス
(F)英国
(G)中国
(H)韓国

注:
1) 使用部門側から見た政府の研究開発費負担分は国により中央政府のみの場合と地方政府を含む場合があるため国際比較の際には注意が必要である。各国の政府については図表1-2-3を参照のこと。
2) 研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3) 日本(OECD推計)は1996年からOECDが補正し、推計した値(大学部門の研究開発費のうち人件費をFTEにした研究開発費)を使用しているため、時系列変化を見る際には注意が必要である。大学は見積り値であり、1981~1995年値は過大評価されたか、過大評価されたデータに基づく。また、1990、1996、2008、2013、2018年において、時系列の連続性は失われている。企業の1996年値、非営利団体の2001年において、時系列の継続性は失われている。
4) 米国は、企業の2015年以降、公的機関の2009年以降を除いて定義が異なる。企業の2008年、公的機関の2009年、大学の1998、2003年とすべての部門の1981年において時系列の連続性は失われている。企業の2020年は見積り値、大学の2020年、非営利団体の2019、2020年は暫定値。
5) ドイツは、1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。 1982~1990年までの偶数年値(大学を除く全部門)、企業の1991~2010、2012、2014、2016、2018年は見積り値。大学は定義が異なる。企業の1991、1992、1994、1998年、公的機関及び非営利団体の1991、1992年、大学の2016年において時系列の連続性は失われている。
6) フランスは、企業の1992、1997、2001、2004、2006年、公的機関の1992、1997、2000、2001、2010年、大学の1981、2000、2004年、非営利団体の1992年において時系列の連続性は失われている。
7) 英国は、企業の1986、1992、2001年、公的機関の1985、1986、1991、2001年、大学の1981、1985、1993年、非営利団体の1985年において、時系列の連続性は失われている。 公的機関の1981、1983年値、非営利団体の2010、2012、2014、2016年は見積り値。
8) 中国は企業と公的機関の2009年において時系列の連続性は失われている。
資料:
日本:総務省、「科学技術研究調査報告」
日本(OECD推計)、米国 、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国:OECD,“Research & Development Statistics”

参照:表1-2-5


1.2.3日本の科学技術予算(科学技術関係予算)

(1)基本計画のもとでの科学技術関係予算

 日本の科学技術・イノベーション行政は「科学技術・イノベーション基本法」に基づき、政府が5年ごとに策定する科学技術・イノベーション基本計画(以下、基本計画という)にのっとり推進されている(14)。ここでは、各期の基本計画における科学技術関係予算の推移をみる(図表1-2-6)。
 第1期基本計画(1996~2000年度)の5年間の予算額を合計すると、当初予算で15.3兆円、補正予算等を含めると17.6兆円である。5年間の推移を見ると、当初予算は増加傾向にあり、補正予算等も多く組まれた。
 第2期基本計画(2001~2005年度)の5年間の予算額を合計すると、当初予算で17.8兆円、補正予算等を含めると18.8兆円、地域の最終予算も含めると21.1兆円である。
 第3期基本計画(2006~2010年度)の5年間の予算額を合計すると、当初予算では17.8兆円、補正予算等を含めると19.6兆円、地域の最終予算も含めると21.7兆円である。5年間の推移をみると、当初予算については横ばいであるが、2009年度は約1兆円の補正予算等が組まれ、補正予算等が5年間の合計予算額に大きく寄与している。
 第4期基本計画(2011~2015年度)の5年間の当初予算額の合計は18.1兆円である。補正予算等を合わせると20.6兆円、地域の最終予算も含めると、22.9兆円となる。5年間の推移を見ると、当初予算額はほぼ横ばいに推移し、2015年度では減少している。補正予算は2012年度に多く組まれ、同年には経済危機対応・地域活性化予備費もついている。
 第5期基本計画(2016~2020年度)の5年間の推移をみると、当初予算は継続して増加しており、補正予算等も多く組まれた。2020年度補正予算には、第3次補正で措置された「グリーンイノベーション基金事業(2兆円)」及び「10兆円規模の大学ファンド(0.5兆円)」を含んでいる。5年間の当初予算額の合計は19.6兆円、補正予算等を含めると23.7兆円(先で述べた2.5兆円を含めて26.2兆円)、地域の最終予算も含めると26.1兆円(先で述べた2.5兆円を含めて28.6兆円)である。
 2021年度から第6期基本計画が始まった。2021年度の当初予算は4.1兆円、補正予算と地域の当初予算も含めた額は8.2兆円である。


【図表1-2-6】 基本計画のもとでの科学技術関係予算の推移 

注:
1) 国の予算とは政府の科学技術関係予算である。地域の予算とは都道府県と政令指定都市の科学技術関係予算である。
2) 第1期については、地域の値は掲載していない。
3) 科学技術基本計画(第1期~第4期)の策定に伴い、1996年度、2001年度、2006年度及び2011年度に対象経費の範囲が見直されている。
4) 科学技術関係予算の2016年度以降の当初予算は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法に変更されている。2018年度に変更が行われ2016年度までさかのぼって再集計がなされた。
5) 2020年度補正予算には第3次補正で措置された「グリーンイノベーション基金事業(2兆円)」及び「10兆円規模の大学ファンド(0.5兆円)を含む。
資料:
国の科学技術関係予算(当初予算及び補正予算)については2013年までは文部科学省調べ及び文部科学省「科学技術要覧(各年版)」。2014年からは内閣府調べ(2016~2022年の値は2022年3月時点の数値である)。地域(都道府県と政令指定都市)の科学技術関係予算については、2000年は(公財)全日本科学技術協会(JAREC)から提供された「地域の科学技術振興状況の総合的調査研究」のデータを元に、科学技術・学術政策研究所が集計した。2001、2002年は(公財)全日本科学技術協会(JAREC)から提供された「地域の科学技術振興状況の総合的調査研究」の集計値、2003年以降は文部科学省「都道府県等における科学技術に関連する予算調査」調査報告書の集計値を使用した。

参照:表1-2-6

 

(2)科学技術関係予算の内訳

 政府の科学技術関係予算についての基本的な指標をいくつか示す。
 2021年度の科学技術関係予算(当初予算と補正予算の合計値)は、一般会計分が86.9%、特別会計分が13.1%となっている(図表1-2-7)。一般会計分は、「科学技術振興費」(48.2%)とそれ以外(38.7%)からなる。それ以外の中には、国立大学法人運営費交付金等が含まれる(11.1%)。特別会計分は、エネルギー対策(電源開発促進勘定)等が含まれる(図表1-2-7)。


【図表1-2-7】 科学技術関係予算の内訳(2021年度)(当初予算と補正予算)

注:
1) 当初予算と補正予算の合計値である。
2) 国立大学法人等については、自己収入(病院収入、授業料、受託事業等)を含まない算定方法である。
3) 国立大学法人運営費交付金等とは、国立大学法人運営費交付金及び国立高等専門学校機構運営費交付金の合計。
4) 行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法により算出したものである。
資料:
内閣府調べ(2022年3月時点の数値である)。

参照:表1-2-7


(3)府省庁別の科学技術関係予算

 科学技術関係予算を府省別の割合で見た。なお、2016年度からは当初予算と補正予算等の合計値も示している(図表1-2-8)。2021年度の当初予算と補正予算等の合計値を見ると、文部科学省が41.8%、経済産業省が29.9%であり、厚生労働省が6.2%と続く。前年度と比較すると、文部科学省は5.5ポイント増加し、経済産業省は8.0ポイント減少した。厚生労働省については1.3ポイントの減少である。


【図表1-2-8】 府省別の科学技術関係予算の割合の推移 

注:
1) 2016年度以降は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法に変更されている。
2) 2020年度補正予算には第3次補正で措置された「グリーンイノベーション基金事業(2兆円)」及び「10兆円規模の大学ファンド(0.5兆円)」を含む。
資料:
2013年までは文部科学省調べ及び文部科学省「科学技術要覧(各年版)」。2014年度からは内閣府調べ(2016~2022年度の値は2022年3月時点の数値である)。

参照:表1-2-8


(4)地域の科学技術関係予算

 図表1-2-9は、地域の科学技術関係予算(15)(最終予算)を示したものである。2020年度における地域の科学技術関係予算は4,962億円である。推移を見ると、都道府県等の科学技術関係予算は2009年度まで減少傾向にあったが、その後は増加し、2017年度以降は横ばいに推移している。

 


【図表1-2-9】 地域の科学技術関係予算(最終予算)の推移

注:
1) 最終予算である。
2) 47都道府県及び政令指定都市(数は、2002年度が12、2003、2004年度が13、2005年度が14、2006年度が15、2007、2008年度が17、2009年度が18、2010、2011年度が19、2012年度以降が20)を対象としている。
資料:
2000年度は(公財)全日本科学技術協会(JAREC)から提供された「地域の科学技術振興状況の総合的調査研究」のデータを元に、科学技術・学術政策研究所が集計した。2001、2002年度は(公財)全日本科学技術協会(JAREC)から提供された「地域の科学技術振興状況の総合的調査研究」の集計値、2003年度以降は文部科学省「都道府県等における科学技術に関連する予算調査」調査報告書の集計値を使用した。

参照:表1-2-9

 

 地域の科学技術関係予算を性格別に分類してみると(図表1-2-10)、「公設試験研究機関」に係る予算の割合が最も大きい。2020年度で見ると、全体の30.3%に当たる。次に「企業支援(同22.7%)」、「高等教育機関(16.8%)」と続く。推移を見ると、「公設試験研究機関」が減少している。「企業支援」は増加していたが、2016年度を境に減少傾向にある。「高等教育機関」については、年による変動はあるが2005年度を境に微減傾向にある。
 次に、性格別の科学技術関係予算を地域区分で分類して見た(図表1-2-11)。「公設試験研究機関」の割合が最も大きいのは北海道、次いで北陸であり、約半数を占めている。多くの地域で、「公設試験研究機関」の占める割合が大きい。「企業支援」の割合が最も大きいのは北関東・甲信であり、全体の半数を占める。次いで、東北、南関東、東海が全体の約3割を占める。「高等教育機関」の割合が最も大きいのは近畿であり、約4割を占めている。このように地域区分により、科学技術関係予算の内容に差異が見られる。

【図表1-2-10】 地域の科学技術関係予算(最終予算)の内訳の推移

注:
1) 「その他」とは、「総合推進」、「医療機関」、「研究交流」、「情報整備」、「人材育成」、「国際交流」、「その他」である。
2) 1)以外の注は図表1-2-9と同じ。
資料:
図表1-2-9と同じ。

参照:表1-2-10

 

【図表1-2-11】 地域区分別の性格別科学技術関係予算(最終予算)
(A)2018~2020年度平均

 

(B)地域区分

注:
図表1-2-10と同じ。
資料:
文部科学省、「都道府県等における科学技術に関連する予算調査」調査報告書

参照:表1-2-11

 


(6)行政事業レビューシート(政府が実施している約5,000の各事業について、各府省において、事業の執行状況や資金の流れ等を統一した様式に記載するもの。内閣官房行政改革推進本部事務局ホームページより)の記載内容に基づき、予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法により算出したものである。
(7) https://www8.cao.go.jp/cstp/budget/kekkaichiran.pdf (内閣府のWebより2019/5/24アクセス)
(8) 他国では、日本と同様の科学技術関係予算のデータが無いため、OECDの政府研究開発予算配分額(GBARD:Government Budget Allocations for R&D)を使用している。なお、OECD,“Main Science and Technology Indicators March 2022”でのGBARDのデータには、日本の値も計上されており、日本政府が発表してきた科学技術関係予算と同じ数値(地域を含む最終予算)ではあるが、「Definition differs」(定義が異なる)という注記が付与されている。国ごとの詳細の日本の欄には「GBARD data represent the budget for S&T」(GBARDは科学技術予算を示している)との注記がある。本報告書での日本の2016~2022年の値は2022年3月時点の数値であるため、OECDの値とは異なる年がある。
(9) Circular No. A-11, Executive Office of the President, Office of Management and Budget, 2015年6月,
https://obamawhitehouse.archives.gov/sites/default/files/omb/assets/a11_current_year/a11_2015.pdf (2019/6/10アクセス)
(10) Circular No. A-11, Executive Office of the President, Office of Management and Budget, 2016年7月,
https://www.whitehouse.gov/sites/whitehouse.gov/files/omb/assets/a11_current_year/a11_2016.pdf (2019/6/10アクセス)
(11)https://www.whitehouse.gov/sites/whitehouse.gov/files/omb/budget/fy2018/ap_18_research.pdf (2019/6/10アクセス)
(12)この節の日本は、国際比較の際には「年」を用いている。本来は「年度」である。日本のみを記述している節では「年度」を用いている。
(13)日本の地域も含めた最終予算とは、①国の当初予算、②国の補正予算等、③都道府県と政令指定都市の最終予算の合計値である。なお、2020年については、③の最終予算が確定していないため、当初予算を使用している、
(14)第1期~第5期までは科学技術基本計画
(15)都道府県及び政令指定都市の施策(国からの補助金関連及び自治体の単独事業の両方を含む。)のうち、①公設試験研究機関等に係る予算、②高等教育機関や医療機関における研究の推進に係る予算、③研究・技術開発に関する補助金、交付金及び委託費その他研究・技術開発に関する行政に係る予算、④科学技術行政を専門的に行う課(室)あるいは係(担当グループ)の人件費等である。ここでいう予算には、人件費(共済等福利厚生のための費用も含む)、謝金、旅費、試験研究費、庁費、設備費、施設費、委託費、補助金、出資金等の全てが含まれる。