概 要

 「科学技術指標」は、我が国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき、体系的に把握するための基礎資料であり、科学技術活動を「研究開発費」、「研究開発人材」、「高等教育と科学技術人材」、「研究開発のアウトプット」、「科学技術とイノベーション」の5つのカテゴリーに分類し、約170の指標で日本及び主要国の状況を表している。
 本概要では「科学技術指標2022」において、注目すべき指標を紹介する。

1.主要な指標における日本の動向

 主要な指標における日本の動向は、以下の通りである。おおむね科学技術指標2021と同様の順位であるが、論文数、注目度の高い論文数において順位を下げた。日本は多くの指標で、米国や中国に続く第3位に位置するが、以降で述べるように伸びという点では他の主要国と比べて小さいものが多い。

【概要図表1】 主要な指標における日本の動向

注:
※:研究開発費とは、ある機関で研究開発業務を行う際に使用した経費であり、科学技術予算とは異なる。予算については本編参照。
1) 日本の順位の変化は、昨年との比較である。数値は最新年の値である。
2) 論文数とTop1%・Top10%補正論文数以外は、日本、米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国の主要国における順位である。
3) 研究者数について、米国の公的機関は2003年以降、大学は2000年以降、研究者数が発表されていないため除いている。なお、米国の全体の研究者数はOECDによる見積り値である。

 

(1) 日本の大学部門や企業部門の研究開発費の伸びは他の主要国と比べて小さい。

 企業及び大学部門の研究開発費は、米国が主要国中1番の規模である。両部門ともに2010年代に入って伸びが大きくなった。中国も研究開発費を伸ばしている。日本は企業部門では主要国で3番目の規模であるが、同時期の伸びは緩やかである。大学部門では、日本は2000年代以降、ほぼ横ばいに推移しており、2010年代に入り急速に伸びた中国、ドイツが日本を上回っている。


【概要図表2】 企業部門と大学部門の研究開発費名目額(OECD購買力平価換算)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(2) 日本、中国、韓国、ドイツでは製造業の重みが大きく、フランス、英国では非製造業の重みが大きい。米国は製造業の重みが大きいが非製造業も一定の規模を持っている。

 最新年の企業部門の研究開発費を見ると、米国は「情報通信業」、日本やドイツは「輸送用機器製造業」、フランスや英国は「専門・科学・技術サービス業」、中国や韓国は「コンピュータ、電子・光学製品製造業」が大きな規模を持っている。なお、米国の「情報通信業」の研究開発費(2019年で13.9兆円)は日本の企業部門全体(2020年で13.9兆円)と同程度である。


【概要図表3】 主要国における企業部門の産業分類別研究開発費

注:()内の数値は、各国最新年の非製造業の割合。

参照:科学技術指標2022図表1-3-6