(1)各国の研究者の部門別内訳
各国の研究者数を研究開発費の使用部門と同様に、「企業」、「大学」、「公的機関」、「非営利団体」に分類し、研究者数の状況、経年変化を見る。
2.1.1で述べたように部門別の研究者数の国際比較は困難が伴うが、この節では現時点で入手可能なデータを使用し、各国の特徴を見てみる。
ほとんどの国で企業部門の研究者数の割合が大きい。韓国では8割、日本、米国が7割、ドイツ、フランス、中国が6割である。英国については、大学部門の割合の方が大きく、5割を占めている。日本、中国では大学部門は2割であり、ドイツ、フランスでは3割である。公的機関部門については中国が最も大きく2割を占めている(図表2-1-6)。
注:
1) 各国の値はFTE値である。
2) 人文・社会科学を含む。
3) 各国の非営利団体は研究者数全体から、企業、大学、公的機関を除いたもの(日本は除く)。
4) ドイツの公的機関は非営利団体を含む。企業、大学の値は見積り値である。
5) フランス及びEU-27の値は見積り値である。
6) 英国の値は暫定値である。
資料:
日本:総務省、「科学技術研究調査報告」 文部科学省、「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」
米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国、EU:OECD,“Main Science and Technology Indicators 2020/2”
参照:表2-1-6
次に、研究者数の部門別の推移を見る(図表2-1-7)。日本(FTE)は長期的に見ると、企業部門は微増、その他の部門はほぼ横ばいに推移している。
米国はOECDによる見積り数値であり、近年、企業部門以外の数値がないため、2008年から企業とそれ以外について数値を示した。企業部門の研究者数は増加している。最新年は前年と比較して、約10%増加している。
ドイツについては、2000年代中頃から研究者数が急増している。まず、大学部門の研究者数が大きく増加し、2015年からは企業部門の研究者数が急増している。
フランスについては、2000年代に入ってから企業部門の伸びが著しい。
英国については2010年代になり、大学部門と企業部門が増加している。特に企業部門の増加が顕著である。
中国については、2009年からOECDのフラスカティ・マニュアルの定義に従って収集し始めたため、2008年値よりかなり低い数値となっていたが、その後はどの部門で見ても増加している。特に最新年での大学部門の増加が著しい。
韓国では、2000年代に入ってからの企業部門の増加が著しい。いずれの部門も長期的には増加している。大学部門では2012年を境にしばらくの間研究者数が減少傾向にあったが、近年は増加している。
注:
1) 国際比較注意については図表2-1-3を参照のこと。
2) 各国の値はFTE値である。
3) 人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
4) 日本の研究者については図表2-1-3を参照のこと。
5) フランス、英国、中国、韓国、EUの非営利団体は研究者数全体から、企業等、大学等、公的機関を除いたもの。
6) 米国の企業以外は、OECDが推計した研究者数全体から企業を除いたもの。
7) ドイツは、1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。企業の1992、1996、1998、2000、2002、2008、2010、2012、2014、2016、2018、2019年は見積り値。大学の1987、1991、2006、2016年において時系列の連続性は失われている。2019年は見積り値。公的機関及び非営利団体の1989年以前と2015年以降は定義が異なり、1991、1993、2014年において時系列の連続性は失われている。
8) フランスは、企業の1992、1997、2001、2006年、大学の1997、2000、2014年、公的機関の1992、1997、2000、2010年において時系列の連続性は失われている。公的機関の1997~2009年値は定義が異なる。大学の2012年は見積り値、2013年は過小評価されるか、過小評価されたデータに基づく。企業、大学、公的機関の2017、2018年は暫定値、2019年は見積り値である。
9) 英国は、企業の1986、1992、1993、2001年、大学の1994、2005年、公的機関の1986、1991~1993、2001年において時系列の連続性は失われている。大学の2005~2008年は見積り値である。企業、大学、公的機関の2019年は暫定値である。
10) 中国は、各部門とも2008年までの研究者の定義は、OECDの定義には完全には対応しておらず、2009年から計測方法を変更した。そのため、時系列変化を見る際には注意が必要である。企業の1991~1999年値は過小評価されたか、あるいは過小評価されたデータに基づいた。
11) EU-27は、見積り値である。
資料:
日本:総務省、「科学技術研究調査報告」 文部科学省、「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」
米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国、EU:OECD,“Main Science and Technology Indicators 2020/2”
参照:表2-1-7
(2)日本における博士号を持つ研究者
2.1.1で述べたように、各国の研究者の定義においては、特に学術的な資格の有無が要件とされているわけではないが、博士号を持っている研究者の数を見る事は、より高度な知識を持つ人材としての研究者数を見る指標の一つと考えられる。
日本の研究者における博士号保持者の状況を見ると(図表2-1-8(A))、2020年で18.1万人である。博士号保持者数が最も多い部門は「大学等」(13.6万人)であり、継続して増加している。最も少ないのは「非営利団体」(0.3万人)であるが、そもそも「非営利団体」の研究者数は他の部門と比較するとかなり少ない。「公的機関」(1.7万人)も、博士号保持者数は少ないが、長期的に見ると増加傾向にある。「企業」についても長期的に増加しており、2020年で2.4万人となっている。
各部門の研究者(博士課程在籍者は除く)のうちの博士号保持者の割合を見ると(図表2-1-8(B))、2020年の全体での割合は21.7%である。部門別で見ると、「大学等」についての割合が大きく、同年で59.9%、次いで「公的機関」が大きく48.7%である。両部門ともに増加傾向にある。「非営利団体」の博士号保持者の割合は、2010年代半ばまでは伸びていたが、近年横ばいに推移している。最も割合が小さいのは「企業」である。博士号保持者の数は、2002年と比較して1.5倍となっているが、2010年代半ばから横ばい傾向である。2020年の博士号保持者の割合は4.3%であり、長期的に見てもほぼ横ばいに推移している。
(A)博士号保持者数の推移
注:
1) 研究者はHC(実数)である。
2) 表2-1-8(B)における「大学等」の研究者は、「教員」、「医局員・その他の研究員」を対象とし「大学院博士課程在籍者」を除いている。博士号保持者はこの内数である。また、学外からの兼務者は除いている。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」
参照:表2-1-8
(3)日本と米国における部門別博士号保持者
この節では、博士号保持者の部門別の状況を日米比較する。日本については、研究者のうちの博士号保持者のデータであり、米国については、科学者と工学者における博士号保持者において、研究開発を一次(Primary)または二次(Secondary)の活動としている者のデータである。
図表2-1-9を見ると、日本では「大学等」で博士号保持者の割合が大きく、全体の75.2%を占める。次いで大きいのは「企業」であり13.5%、「公的機関」は9.4%、「非営利団体」は1.9%である。
米国での博士号保持者の割合は「大学等」が44.6%、「企業」が39.9%と両部門が同程度大きく、日本とは異なる傾向にある。次に「公的機関」が8.1%と続く。「非営利団体」は6.2%と日本と比較すると大きい。
注:
1) 日本と米国の博士号保持者についての条件が異なるため、国際比較する際には注意が必要である。詳細は以下の注記を参照のこと。
2) 日本は研究者のうち博士号保持者である。各部門の対象機関については表1-1-4(B)を参照のこと。
3)米国は、科学者と工学者における博士号保持者において、研究開発を一次(Primary)または二次(Secondary)の活動としている者である。第一職業専門学位(First-professional degree)の数値は除かれている。
4) 米国の部門については、大学等は4年制カレッジ、大学(Universities)、医学部(大学付属病院または医療センターを含む)及び大学附属研究所であり、2年制大学、コミュニティカレッジ、または技術機関、およびその他の就学前教育機関を含む。企業は法人事業に加えて、自営業している者、非法人の自営業者または事業主も含む。公的機関は連邦政府、州または地方政府。その他には個別に分類されていない雇用主を含む。
資料:
日本:総務省、「科学技術研究調査報告」
米国:NSF,“Survey of Doctorate Recipients: 2019”
参照:表2-1-9