1.2政府の予算

ポイント

  • 2020年の日本の科学技術予算(当初予算)は4.4兆円である。2000年代に入ると、横ばいに推移していたが、近年は増加し、過去最高値となっている。中国は、2018年では28.0兆円となり、世界トップの規模となっている。米国は2019年では15.3兆円である。ドイツは2000年代後半から増加し、2019年では4.7兆円となっている。
  • 科学技術予算を国防用と民生用に分類してみると、日本やドイツは9割以上が民生用で占めている。米国については、国防用の割合が他国と比較すると大きく46%である。その他の国では、いずれも国防用科学技術予算の割合は民生用と比較して少ないが、日本やドイツと比較すると大きい割合である。
  • 国の経済規模による違いを考慮して比較するために、科学技術予算の対GDP比率を最新年で見ると、中国は1.06%、韓国は1.04%であり、主要国中トップクラスである。次いで、ドイツが0.98%と両国に迫っている。日本は0.70%、米国が0.69%と同程度であり、フランスは0.59%、英国は0.56%である。

 ここでは、政府の科学技術予算について述べる。
 日本については、「科学技術関係予算」を科学技術予算としている。日本の科学技術関係予算は、①科学技術振興費(一般会計予算のうち主として歳出の目的が科学技術の振興にある経費)、②一般会計中のその他の研究関係費、③特別会計中の科学技術関係費の合計から成る。
 日本の科学技術関係予算の集計業務については、2014年度に文部科学省から内閣府に業務が移管され、2018年度より、科学技術関係予算の集計方法が変更された(6)。また、第5期科学技術基本計画の初年度である2016年度まで遡って、新方法による再集計がされている。本報告書には新方法による集計結果を示している。

 内閣府による科学技術関係予算の集計は、『「行政事業レビューシートが作成されている事業のうち科学技術予算に該当すると判定した事業」及び「行政事業レビューシートの作成を要しない事業のうち、各省から申告された内容に基づき科学技術予算に該当すると判定した事業」から構成されている』(7)とある。

 中国以外の主要国についてはOECDの政府研究開発予算配分額(GBARD:Government Budget Al-locations for R&D)の値を用いている(8)。中国については、国家統計局による公表値等を参照した。
 米国については、米国行政管理予算局(OMB)による連邦政府の予算編成・提出・執行についての政府通達であるOMB Circular A-11(Preparation, Sub-mission and Execution of the Budget)において、2016年度に研究開発の分類(Basic research, Ap-plied research, Development)の「Development」が「Experimental development」に変更された(9)(10)。これは、NSFの研究開発統計や国際的な標準とより整合的になることを意図したものとされている(11)。この変更に伴って、米国の研究開発予算の集計方法も2018年から変更され、OECDに報告される値も2000年までさかのぼって変更されている。具体的には、「防衛(2000年から)」、「宇宙の探査と活用(2017年から)」の予算から「Preprodution development(生産前開発)」に対応する部分が除外されている。

1.2.1各国の科学技術予算

 主要国政府の科学技術予算(OECD購買力平価換算)を見ると(図表1-2-1(A))、2020年(12)の日本の補正予算等も含めた金額は5.2兆円(当初予算は4.4兆円)である。科学技術予算は2000年代に入ると、大規模な補正予算が組まれた年以外は、横ばいに推移していたが、2016年以降は増加している。
 中国は2000年代に入ると大きく増加し、2018年では28.0兆円となり、世界トップの規模である。
 米国については、2009年にARRA(American Recovery and Reinvestment Act of 2009)による特別な予算が措置された以降は減少が続いていたが、2014年以降は増加傾向にあり、2019年は15.3兆円となっている。
 ドイツは2000年代後半から増加し、2019年では4.7兆円となっている。
 韓国は一貫して漸増傾向である。2018年は2.4兆円であり、フランス、英国を上回っている。
 フランスは2010年代に入ってから漸減していたが、近年は概ね横ばいであり、2018年は1.9兆円となっている。
 英国は、近年増加しており、2018年は1.8兆円、対前年比は9.4%増である。
 また、科学技術予算を国防関係の経費(国防用)(日本の場合は防衛省の科学技術関係予算)とそれ以外の経費(民生用)に分類してみると(図表1-2-1(B))、日本(当初予算)は9割以上が民生用科学技術予算で占めている。米国については、国防用科学技術予算の割合が他国と比較すると大きく、46%である。フランス、英国、韓国では、いずれも国防用科学技術予算の割合は民生用と比較して少ないが日本やドイツと比較すると大きい割合である。また、ほとんどの国で2001年に比べて国防用の割合が低下している。
 次に、2000年を1とした場合の各国通貨による科学技術予算の名目額と実質額の指数を示した(図表1-2-1(C))。名目額での最新年を見ると、最も伸びが低い国は、フランス(1.0)である。日本は当初予算では1.3、補正予算等込の場合1.4である。英国は1.8、米国は2.0、ドイツは2.1と約2倍の伸びを見せている。中国は16.5であり、韓国の5.3とともに大きな伸びを示している。
 実質額を見ると、日本以外の国は名目額より低い数値となっている。最新年を見ると、日本(当初予算)と米国は1.4、日本は補正予算等込の場合は1.5となっている。ドイツは1.6、英国は1.3である。中国は8.9、韓国は3.6と順調な伸びを見せている。一方、フランスは0.8とマイナス成長である。


【図表1-2-1】 主要国政府の科学技術予算の推移 
(A)科学技術予算総額(OECD購買力平価換算)の推移

(B)民生用と国防用の科学技術予算の割合(3年平均)

(C)2000年を1とした各国通貨による科学技術予算の指数

注:
1)購買力平価換算には参考統計Eを用いた。
2)図表1-2-1(B)は3年平均である。たとえば2019年であれば、2018、2019、2020年の平均値。
3)実質額の計算にはGDPデフレータによる(参考統計Dを使用)。
4)中国については、民生用と防衛用の数値は入手できなかった。
<日本>日本は年度である。2016年度以降の当初予算は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法に変更されている。
<米国>連邦政府または中央政府のみ。高等教育部門に対する一般支払いのうち、教育と研究が分離できないものは除外している。2000年以降、Preproduction development(生産前開発)が除かれた。2009年の値にはARRA:American Recovery and Reinvestment Act of 2009によって特別に予算が措置された。2019年は暫定値である。
<ドイツ>1984、1985、1987、1991、1997年において時系列の継続性は失われている。1992年は見積り値、2019年は暫定値である。
<フランス>1984、1986、1992、1997、2006年において時系列の継続性は失われている。2006、2007年は見積り値である。民生のみの2006年以降の値は定義が異なる。
<英国>1985、2001年において時系列の継続性は失われている。
<韓国>2006年まで定義が異なる。2005年において時系列の継続性は失われている。民生のみの2008から2011年までは見積り値、2008年において時系列の継続性は失われている。
資料:
<日本>2013年までは文部科学省調べ及び文部科学省「科学技術要覧(各年版)」。2014年からは内閣府調べ(2016~2020年の値は2020年7月時点の数値である)。
<米国、ドイツ、フランス、英国、韓国>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2019/2”
<中国>科学技術統計センター、中国科学技術統計(webサイト)、2015年以降は中華人民共和国国家統計局、「全国科技経費投入統計広報」の各年版

参照:表1-2-1


 次に、国による経済規模の違いを考慮して比較するために、科学技術予算の対GDP比率を示した(図表1-2-2)。
 補正予算等込の日本は、2009年、2012年に大きく増加した後減少し、2016年以降増加している。最新年では0.78となっている。当初予算で見ると、日本は1990年代に入って上昇し、2000年代は横ばいに推移していた。2000年代後半に微増した後、2012年以降は減少傾向にあったが、2016年以降増加傾向にある。最新年は0.70%である。
 米国は2000年~2004年にかけて急激に増加した後は、2009年を除いて2015年まで減少傾向にあったが、近年は微増している。最新年では0.69%である。
 ドイツは2000年代後半まで、減少傾向が続いていたが、2009年に急増した。その後は、ほぼ横ばいに推移していたが、2014年頃から増加し、最新年は0.98%である。
 フランスは2005年まで主要国中、最も大きな値であったが、長期的に減少傾向にあり、最新年では0.59%である。
 英国は長期的に見ると、継続して減少傾向にあり、主要国中最も低い数値である。しかし、近年では増加し、最新年では0.56%となっている。
 中国、韓国ともに2000年代に入ってからの伸びが著しい。最新年の中国は1.06%であり、韓国は1.04%と主要国中トップクラスである。ただし、両国ともに2010年以降の伸びは緩やかとなり、韓国の2016年以降は減少している。


【図表1-2-2】 主要国政府の科学技術予算の対GDP比率の推移 

注:
<科学技術予算>図表1-2-1と同じ。
<GDP>参考統計Cと同じ。
資料:
<科学技術予算>図表1-2-1と同じ。<GDP>参考統計Cと同じ。

参照:表1-2-2


1.2.2各国政府の研究開発費負担割合

 研究開発に対する政府の投入資金を調査する方法には、①研究開発費の使用部門において調査を行い、政府負担分を計上する方法、②政府の歳出の中から研究開発に関する支出(科学技術予算を調べる方法(参照1.2.1節))の二つがある。
 これら二つの方法のうち、①使用側において調査する方法は、研究開発費が複雑な流れを経た場合でも、調査対象が国全体を網羅している限り一国の研究開発費の総額を把握することができるが、資金の負担源を必ずしも正確に捉えることができない。これに対して、②支出源(科学技術予算)側の調査では、実際に研究開発費として使用されたかどうか不明の部分があるため、研究開発費を正確に把握することが困難になる。
 この節では①使用側のデータを用いて政府の研究開発費負担の状況を示すこととする。すなわち、各国の研究開発費総額のうち政府が負担した研究開発費が占める割合を見る。ここでいう政府とは、主に中央政府であるが、国によって違いがある。各国の政府が何を指すかを簡単に図表1-2-3に示した。
 主要国における政府の研究開発費負担割合を見ると(図表1-2-4)、最も大きい国はフランスであり最新年で32.4%である。次いで、ドイツが27.7%、英国が26.3%となっている。
 日本はほぼ全期間で7か国中、最も低い割合となっており、最新年の政府負担割合は16.8%(日本(OECD推計)の場合14.6%)である。これは、日本の研究開発費の負担割合を見ると(図表1-1-5(A))、企業(72.8%)に加えて、大学(9.2%、主に私立大学であり、授業料収入から成り立つと考えられる)の負担割合が他国と比較して高いためである。
 なお、ほとんどの国は2000年頃まで減少傾向にあり、それ以降、横ばい又は微減傾向が続いている。


【図表1-2-3】 主要国の負担源としての政府

注:
表1-1-4(B)と同じ。
資料:
表1-1-4(B)と同じ。


【図表1-2-4】 主要国における政府の研究開発費負担割合の推移 

注 :
1)使用部門側から見た政府の研究開発費負担分は国により中央政府のみの場合と地方政府を含む場合があるため国際比較の際には注意が必要である。各国の政府については図表1-2-3を参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
<日本>年度の値を示している。
<日本(OECD推計)>見積り値である。1981~1995年は過大評価されたか、過大評価されたデータに基づいており、日本の数値とほぼ同様のため割愛している。1996、2008、2013年において時系列の連続性は失われている。
<米国>定義が異なる。1998、2003年において時系列の継続性は失われている。2017、2018年は暫定値。
<ドイツ>定義が異なる。1991年において時系列の継続性は失われている。
<フランス>1992、1997、2000、2004、2010年の値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。2017年は暫定値である。
<英国>1981、1983、2010、2012、2014、2016年は見積り値。1986、1992年において時系列の継続性は失われている。
<中国>2009年において時系列の連続性は失われている。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<日本(OECD推計)、米国、ドイツ、フランス、中国、韓国>OECD,“Research & Development Statistics”

参照:表1-2-4


 次に、政府が負担する研究開発費の支出先別の内訳、すなわち政府の資金がどの部門で使用されているかについて見る(図表1-2-5)。
 日本は、「大学」部門と「公的機関」部門が大きな割合を占めており、「大学」部門への支出は約半数である。また、他の国と比較して「企業」部門への支出が少ない点が日本の特徴である。2000年頃から、「大学」部門への支出は微増している。
 日本(OECD推計)では、「大学」部門の人件費分を研究専従換算した研究開発費を使用しているため、新規のFTE調査結果が反映された場合、その都度データが変化している。1996年以降は「公的機関」の割合が一番大きい。
 米国では、過去は「企業」部門への研究開発費の支出割合が高かったが、1980年代後半以降、その割合が大幅に減少する一方で「大学」部門の割合が増加した。2002年以降、「企業」部門への支出割合は増加傾向にあったが、2009年を頂点に大きく減少している。代わって増加したのは「公的機関」部門である。「大学」部門はほぼ横ばいに推移している。
 ドイツは、1980年代の中頃から「企業」部門への支出割合が減少する一方で、「大学」部門と「公的機関及び非営利団体」部門への支出割合が増加しており、その傾向は継続している。
 フランスでは、1980年代は「公的機関」部門への支出割合の方が、「大学」部門と比べて大きかったが、1990年代に入り「大学」部門への支出割合は増加する一方で、「公的機関」部門と「企業」部門の割合は減少した。2010年頃からは「大学」部門は横ばい、「企業」部門は微増、「公的機関」部門は微減している。
 英国では、2000年代中頃まで「大学」部門への支出割合は大幅な増加傾向にあるのに対し、「企業」部門への支出が減少傾向にあった。2000年代後半から「企業」部門への支出割合は増加傾向であり、「公的機関」部門の割合は減少傾向にある。「大学」部門は半数以上を占めるようになった。
 中国では「公的機関」部門への研究開発費の支出割合が大きいが、減少傾向にあった。ただし、2010年頃から横ばいに推移している。「企業」部門への支出割合は増加していたが、近年は減少傾向にある。「大学」部門への支出割合は約2割で推移しているが、近年微増している。
 韓国でも1990年代半ばには「公的機関」部門への研究開発費の支出割合が大きかったが、2000年代半ばにかけて減少した。それと並行して、「大学」部門への支出割合が増加した。2010年代に入ると、各部門の割合に大きな変化は無い。


【図表1-2-5】 主要国における政府負担研究開発費の支出先の内訳の推移 
(A)日本
(B)日本(OECD推計) 
(C)米国
(D)ドイツ
(E)フランス
(F)英国
(G)中国
(H)韓国

注:
1)国際比較注意については図表1-2-4と同じ。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
<日本>政府は、国、地方公共団体、国営、公営及び特殊法人・独立行政法人の研究機関、国立及び公立大学(短期大学等を含む)。
<日本(OECD推計)>1)政府は、国、地方公共団体、国営、公営及び特殊法人・独立行政法人の研究機関。
2)大学は見積り値である。1981~1995年値は過大評価されたか、過大評価されたデータに基づく。1990、1996、2008、2013、2018年において、時系列の連続性は失われている。
3)企業の1996年値、非営利団体の2001年において、時系列の継続性は失われている。
<米国>1)政府は、連邦政府。
2)定義が異なる(公的機関の2009年以降を除く)。企業の2008年、公的機関の2009年、大学の1998、2003年において時系列の連続性は失われている。企業の2018年は見積り値。大学の2018年、非営利団体の2017、2018年は暫定値。
<ドイツ>1)1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。政府は、連邦及び州政府。
2)1982~1990年までの偶数年値(大学を除く全部門)、企業の1991~2010、2012、2014、2016年は見積り値。大学は定義が異なる。企業の1991、1992、1994、1998年、公的機関及び非営利団体の1991、1992年、大学の2016年において時系列の連続性は失われている。
<フランス>企業の1992、1997、2001、2004、2006年、公的機関の1992、1997、2000、2001、2010年、大学の2000、2004年、非営利団体の1992年において時系列の連続性は失われている。2017年は見積り値である(全部門)。
<英国>1)政府は、中央政府(分権化された政府も含む)、リサーチ・カウンシル、Higher Education Funding Councils。
2)企業の1986、1992、2001年、公的機関の1985、1986、1991、2001年、大学の1985、1993年、非営利団体の1985年において、時系列の連続性は失われている。 公的機関の1981、1983年値、非営利団体の2010、2012、2014、2016年は見積り値。
<中国>企業と公的機関の2009年において時系列の連続性は失われている。
<韓国>政府は政府研究機関及び政府出捐研究機関。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<日本(OECD推計)、米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国>OECD,“Research & Development Statistics”

参照:表1-2-5


1.2.3日本の科学技術予算(科学技術関係予算)

 科学技術基本計画は、1995年11月に公布・施行された科学技術基本法に基づき、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画であり、今後10年程度を見通した5年間の科学技術政策を具体化するものとして、政府が策定するものである。ここでは、各期の科学技術基本計画(以下、基本計画という)ごとの科学技術関係予算の推移をみる(図表1-2-6)。
 第1期基本計画は1996~2000年度を対象としている。第1期基本計画の5年間の予算額を合計すると、当初予算で15.3兆円、補正予算等を含めると17.6兆円である。5年間の推移を見ると、当初予算は増加傾向にあり、補正予算等も多く組まれた。
 第2期基本計画は2001~2005年度を対象としている。5年間の予算額を合計すると、当初予算で17.8兆円、補正予算等を含めると18.8兆円である。当初予算の推移は微増、補正予算は2001、2002年度には多く組まれている。
 第3期基本計画は2006~2010年度を対象としている。5年間の予算額を合計すると、当初予算では17.8兆円、補正予算等を含めると19.6兆円である。5年間の推移をみると、当初予算については横ばいであるが、2009年度は約1兆円の補正予算等が組まれ、補正予算等が5年間の合計予算額に大きく寄与している。
 第4期基本計画は2011~2015年度を対象としている。5年間の当初予算額の合計は18.1兆円である。補正予算等を合わせると20.6兆円となる。5年間の推移を見ると、当初予算額についてはほぼ横ばいに推移し、2015年度では減少している。補正予算は2012年度に多く組まれ、同年には、経済危機対応・地域活性化予備費もついている。
 第5期基本計画では、2016~2020年度の5年間を対象としている。2020年度の科学技術関係予算は当初予算額で4.4兆円であり、基本計画期間中、増加し続けている。補正予算等も含めた5年間の合計は22.6兆円であり、過去最高の値を示している。


【図表1-2-6】 科学技術基本計画のもとでの科学技術関係予算の推移 

注:
1)科学技術基本計画(第1期~第4期)の策定に伴い、1996年度、2001年度、2006年度及び2011年度に対象経費の範囲が見直されている。
2)科学技術関係予算の2016年度以降の当初予算は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法に変更されている。2018年度に変更が行われ2016年度までさかのぼって再集計がなされた。
資料:
2013年度までは文部科学省調べ及び文部科学省「科学技術要覧(各年版)」。2014年度からは内閣府調べ(2016~2020年度の値は2020年7月時点の数値である)。

参照:表1-2-6

 政府の科学技術関係予算についての基本的な指標をいくつか示す。
 2020年度の科学技術関係予算(当初予算と補正予算等の合計値)は、一般会計分が84.2%、特別会計分が15.8%となっている(図表1-2-7)。一般会計分は、「科学技術振興費」(33.6%)とそれ以外(50.6%)からなる。それ以外の中には、国立大学法人運営費交付金等が含まれる(16.7%)。特別会計分は、エネルギー対策(電源開発促進勘定)等が含まれる(図表1-2-7)。


【図表1-2-7】 科学技術関係予算の内訳(2020年度)

注:
1)当初予算と補正予算等の合計値である。
2)国立大学法人等については、自己収入(病院収入、授業料、受託事業等)を含まない算定方法である。
3)国立大学法人運営費交付金等とは、国立大学法人運営費交付金及び国立高等専門学校機構運営費交付金の合計。
4)行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法により算出したものである。
資料:
内閣府調べ(2020年7月時点の数値である)。

参照:表1-2-7


 科学技術関係予算を府省別の割合で見た。なお、2016年度からは当初予算と補正予算等の合計値も示している(図表1-2-8)。当初予算と補正予算等の合計値では、文部科学省が一貫して最大である。2020年度では46.3%であり、経済産業省が17.8%、厚生労働省が9.6%、国土交通省が7.5%と続く。2016年度と比較すると、文部科学省(9.0ポイント)、経済産業省(1.1ポイント)は減少している。これに対して厚生労働省、国土交通省(ともに5.5ポイント)、総務省(1.1ポイント)は増加している。


【図表1-2-8】 府省別の科学技術関係予算の割合の推移 

注:
2016年度以降は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法に変更されている。
資料:
2013年までは文部科学省調べ及び文部科学省「科学技術要覧(各年版)」。2014年度からは内閣府調べ(2016~2020年度の値は2020年7月時点の数値である)。

参照:表1-2-8


 図表1-2-9は、県及び政令指定都市の科学技術関係予算(当初予算と補正予算等の合計値)を示したものである。2018年度における47都道府県及び20政令指定都市の科学技術関係予算は、4,899億円であり、同年度の国の科学技術関係予算額(4.3兆円)の11.4%に相当する。
 推移を見ると、都道府県等の科学技術関係予算は2009年度まで減少傾向にあったが、その後は増加傾向にある。国の科学技術関係予算に対する割合も同様の傾向にあるが、2009年度、2012年度と大きく減少した。これは国の科学技術関係予算において、大規模な補正予算等が組まれたためである。2012年度以降は国の科学技術関係予算に対する割合は増加していたが、2015年度以降減少している。

 


【図表1-2-9】 国と都道府県等の科学技術関係予算の状況 

注:
1)当初予算と補正予算等の合計値である。
2)政令指定都市の数は、2002年度が12、2003、2004年度が13、2005年度が14、2006年度が15、2007、2008年度が17、2009年度が18、2010、2011年度が19、2012年度以降が20である。
3)国の科学技術関係予算の2016年度以降は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法に変更されている。
4)都道府県等の科学技術関係予算の値は、「都道府県等における科学技術に関連する予算調査」における「都道府県等の科学技術に関連する予算」を用いた。
資料:
国の科学技術関係予算は2013年までは文部科学省調べ及び文部科学省「科学技術要覧(各年版)」。2014年度からは内閣府調べ(2016~2018年度の値は2020年7月時点の数値である)。都道府県等の科学技術関係予算は文部科学省「都道府県等における科学技術に関連する予算調査」調査報告書。

参照:表1-2-9



(6)行政事業レビューシート(政府が実施している約5,000の各事業について、各府省において、事業の執行状況や資金の流れ等を統一した様式に記載するもの。内閣官房行政改革推進本部事務局ホームページより)の記載内容に基づき、予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係予算の判定を行う方法により算出したものである。
(7) https://www8.cao.go.jp/cstp/budget/kekkaichiran.pdf (内閣府のWebより2019/5/24アクセス)
(8) 他国では、日本と同様の科学技術関係予算のデータが無いため、OECDの政府研究開発予算配分額(GBARD:Government Budget Allocations for R&D)を使用している。なお、OECD,“Main Science and Technology Indicators 2019/2”でのGBARDのデータには、日本の値も計上されており、日本政府が発表してきた科学技術関係予算と同じ数値ではあるが、「Definition differs」(定義が異なる)という注記が付与されている。本報告書での日本の2016~2020年の値は2020年7月時点の数値であるため、OECDの値とは異なる年がある。国ごとの詳細の日本の欄には「GBARD data represent the budget for S&T」(GBARDは科学技術予算を示している)との注記がある。
(9) Circular No. A-11, Executive Office of the President, Office of Management and Budget, 2015年6月,
https://obamawhitehouse.archives.gov/sites/default/files/omb/assets/a11_current_year/a11_2015.pdf (2019/6/10アクセス)
(10) Circular No. A-11, Executive Office of the President, Office of Management and Budget, 2016年7月,
https://www.whitehouse.gov/sites/whitehouse.gov/files/omb/assets/a11_current_year/a11_2016.pdf (2019/6/10アクセス)
(11)https://www.whitehouse.gov/sites/whitehouse.gov/files/omb/budget/fy2018/ap_18_research.pdf (2019/6/10アクセス)

(12)この節の日本は、国際比較の際には「年」を用いている。本来は「年度」である。日本のみを記述している節では「年度」を用いている。