コラム3:日本における外国人研究関連者数の推移と新型コロナウイルス感染拡大に伴う外国人研究関連者の出入国状況

 本コラムでは、法務省が実施している「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」を使用し、在留資格(在留目的)が研究に関連していると考えられる外国人登録者を外国人研究関連者とし、その数の推移を把握する。また、新型コロナウイルス感染症の感染者数拡大に伴い、世界中での入国制限がなされている中(2020年4月時点)での、日本における外国人研究関連者の月ごとの出入国の動きを追う。
 本コラムにおける外国人研究関連者とは、在留資格のうち、「教授」、「研究」、「高度専門職1号(イ)」の在留資格を交付された者とし、これらの在留資格を持つものは研究活動をしている者と考えた(図表3-1)。

【図表3-1】 外国人研究関連者の在留資格

資料:
法務省、「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」を基に、科学技術・学術政策研究所が作成。

(1)日本の外国人研究関連者数の推移

 図表3-2を見ると、在留目的が「教授」である外国人登録者は、2006年度、在留目的が「研究」である外国人登録者は2002年度をピークに減少している。他方、2015年度から導入された「高度専門職1号(イ)」を目的とする外国人登録者は順調に増加している。高度専門職は、日本の経済発展に貢献し得る外国人のための在留資格であり、他の在留資格にはない優遇措置があるため、高度専門職人材が増えることとなったと考えられる。


【図表3-2】 日本における外国人研究関連者数の推移

注:
該当年の12月のデータである。
資料:
法務省、「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表3-2


(2)新型コロナウイルス発生時期における外国人研究関連者数の動き

 法務省が毎月公表している出入国管理統計の在留資格ごとの出入(帰)国者数を用いて、2018年、2019年、2020年における月単位の動向を見る(図表3-3)。年間を通した外国人研究関連者の従来の動向は、出国者については12月、8月が目立って多い。12月は年末時、故郷に帰る時期であるだろうし、8月は日本の教育機関における夏季休暇時期又は海外の教育機関における学事暦を受けた動向と考えられる。それに合わせて、入国者については、9月、1月、3月が多く、それぞれの行事を済ませた外国人研究関連者が日本へ入国していると考えられる。
 2018年と2019年の出入国者数を比べると、各月を通して(2020年は1月まで)、最新年の方が多い傾向があり、国際流動性が高まっていたとも考えられる。しかし、2020年になると、世界各地で新型コロナウイルス感染症の症例が出始め、瞬く間に世界に広まった。各国・地域で新型コロナウイルス感染防止に係る上陸審査の規制が始まり、日本でも、3、4月になると、感染者数が多い国・地域に滞在歴のある外国人を入国拒否し始めたこともあり、外国人研究関連者の出入国者数は激減した。具体的には、2020年4月の外国人研究関連者の出国者は155人であり、2019年4月の2,852人と比べて94.6%減少した。2020年4月の外国人研究関連者の入国者は21人であり、2019年4月の1,862人と比べて98.9%減少した。
 また、外国人研究関連者については、出入国者のうち、再入国許可のある者が多い(全体の約9割)。再入国許可は、日本に在留する外国人で在留期間の満了の日以前に、再び入国する意図をもって出国しようとする者に与えられる。
 以上の出入国動向と再入国許可のある者の割合を踏まえると、2020年3月~4月にかけて、日本に在留する外国人研究関連者が、母国・地域等に一時帰国できなくなったと考えられる。


(3)まとめ

 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害(東日本大震災)は、日本の研究現場にも衝撃を与え、実際、外国人研究関連者の出入国に影響を及ぼしたことが認められたが、比較的短期間の中で例年並みに落ち着きを取り戻していた(1)。その際、2011年の3月における出国者数は大きく増加したが、入国者についての変化は比較的少なかった。それに対して、2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、日本における外国人研究関連者の動きをほぼストップさせたことが明らかになった。
 外国人研究関連者の中には、母国・地域とは違う環境で、新型コロナウイルス感染症のような未知の感染症への対応を求められ、対応に困難を伴った者も一定数存在すると考えられる。人の国際的な流れが止まってしまうような危機下において、日本に在留している外国人研究関連者を、どのようにサポートしていくかも、今後、研究の国際化を進めていく上で、重要な視点であると言える。
(神田 由美子)

【図表3-3】 日本における外国人研究関連者の出入国者数の変化

 

注:
1)2020年5月25日現在のデータである。
2)在留資格が「教授」、「研究」、「高度専門職1号(イ)」を分析対象とする。
3)再入国許可とは、日本において在留資格を持つ外国人が在留期間内に一時的な用務等により日本を出国した後、再び日本に入国する際に新たに査証(ビザ)を取得する必要がなく、入国の手続きの煩雑さが軽減されるものである。
資料:
法務省、「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表3-2



(1)文部科学省科学技術政策研究所「科学技術指標2011(2011年8月)」及び「科学技術指標2012(2012年8月)」におけるコラム「3.11東日本大震災に伴う外国人研究関連者の出入国状況」