第1章 研究開発費

 研究開発活動の基本的な指標である研究開発費について、日本及び主要国の状況を概観する。研究開発費とは、ある機関で研究開発業務を行う際に使用した経費であり、研究開発活動のインプットに関する定量データとして広く用いられている。本章では、各国の研究開発費の総額や部門別、性格別などの内訳、研究開発費の負担構造など、様々な角度から研究開発費のデータを見ていく。また、政府の科学技術予算についても一部記載している。

1.1各国の研究開発費の国際比較

ポイント

  • 2016年の日本の研究開発費総額(名目額)は、18.4兆円(OECD推計では16.9兆円)であり、対前年比は-2.7%である。
  • 日本の研究開発費総額の対GDP比率は2008年を頂点とし、減少傾向にあったが、増減を繰り返しつつ、2016年では3.42%となっている(日本(OECD推計)では3.14%)。韓国は2000年代に入ると急速に増加した。2016年では4.24%であり、主要国中第1位である。
  • 各国の負担部門から使用部門への研究開発費の流れを見ると、いずれの国でも「企業」の負担割合が大きいが、ほとんどは同部門の「企業」に流れている。ただし、ドイツ、中国については、「大学」への研究開発費の流れが他国と比較すると大きい。
  • 「政府」からは、「公的機関」及び「大学」に流れている国が多く、「大学」に最も多く流れている国は、日本、ドイツ、フランス、英国である。「政府」から「企業」への流れはほとんどの国でそれほど大きくはないが、米国、英国、フランスでは「政府」の約2割が企業に流れている。
  • 「外国」からの研究開発費の流れを見ると、英国での負担割合が比較的大きい。また、その多くが「企業」へ流れる研究開発費であることが特徴である。

1.1.1各国の研究開発費の動向

 はじめに、主要国の研究開発の規模とその傾向を概観するために、各国の研究開発費の総額をとりあげる。研究開発費の調査方法に関しては、国ごとに差異があり、厳密な比較は困難であるが、国ごとの経年的変化は各国の動向を表していると考えられる。なお、各国の研究開発費を比較するためには通貨の換算が必要である。しかし、その換算によって、その国の経済状況の影響を受けることは避けられない。ここでは、原則的に、各国の研究開発費の規模を国際比較するときは換算値を使用し、各国の研究開発費の経年変化を見るときは各国通貨を使用した。
 なお、日本の研究開発費については2つの値を示した。ひとつは総務省「科学技術研究調査」から発表されている値、もうひとつはOECD(1)から発表されている値である。両者で異なる点は大学部門の人件費の取扱いである。大学部門の経費は研究と教育について厳密に分けることが困難であるという背景があり、「科学技術研究調査」における大学部門の研究開発費は、大学の教員の人件費部分に研究以外の業務(教育等)分を含んだ値となっている。一方、OECDは日本の大学部門の人件費部分をフルタイム換算にした研究開発費の総額を提供している(詳細は1.3.3節、大学部門の研究開発費を参照のこと)。
 この節ではOECDが発表しているデータ(図表では「日本(OECD推計)」と示す)も使用し、各国の研究開発費の状況を見る。
 主要国における研究開発費名目額(2)を見ると(図表1-1-1(A))、日本の研究開発費総額は、2016年(3)(平成28年)において18.4兆円(OECD推計では16.9兆円)である。対前年比は-2.7%である。
 米国は世界第1位の規模を保っている。長期的に増加傾向が続いているが、2016年では51.1兆円であり、昨年と同程度である。
 中国は2009年に日本を上回り、その後も増加し続けている。2016年では45.2兆円となり、長期的に増加傾向にあるEUを超えている。
 ドイツは長期的に増加傾向が続いており、2016年では11.9兆円である。韓国も長期的に増加傾向にあり、近年では、フランス、英国を上回っている。2016年では8.0兆円である。
 フランス、英国は漸増傾向である。2016年のフランスは6.2兆円、英国は4.7兆円である。
 物価水準の変化を考慮した研究開発費を見る事のできる実質額(4)で見ても(図表1-1-1(B))、主要国の順位や時系列変化に大きな変動は見られない。
 次に、2000年からの研究開発費の変化に注目する。2000年を1とした場合の各国通貨による研究開発費の名目額と実質額を指数で示し、各国の研究開発に対する投資の伸びを見る(図表1-1-1(C))。
 名目額での各国最新年を見ると、日本及び日本(OECD推計)は1.1とその伸びは小さいことがわかる。他国を見ると欧米諸国は1.6から1.9の伸びを示している。中国は17.5、韓国は5.0と極めて大きな伸びを示している。
 実質額での各国最新年を見ると、日本は1.3、日本(OECD推計)は1.2と名目額よりも大きな伸びを示している。また、米国、英国は1.4、フランス、は1.3と、日本と同程度の伸びを示している。中国、韓国については、物価補正を考慮した場合であっても、10.1、3.6と極めて大きな伸びを示している。


【図表1-1-1】 主要国における研究開発費総額の推移
(A)名目額(OECD購買力平価換算) 
(B)実質額(2010年基準;OECD購買力平価換算)
(C)2000年を1とした各国通貨による研究開発費の指数

注:
1)研究開発費総額は各部門の合計値であり、国により部門の定義が異なる場合があるため、国際比較の際には注意が必要である。各国の部門の定義については図表1-1-4参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3)1990年までは西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。
4)購買力平価換算は参考統計Eを使用した。
5)実質額の計算はGDPデフレータによる(参考統計Dを使用)。
<日本>年度の値を示している。
<日本(OECD推計)>1995年までOECD基準に合うように、当該国の値をOECD事務局が調整。大学部門については、研究開発費のうち人件費をFTEにした総研究開発費である。1996、2008、2013年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。
<米国>2015年は予備値、2016年は見積り値。
<ドイツ>1982、1984、1986、1988、1990、1992、1995、1996、2016年は見積り値である。1993、1994、1997、1998年値は定義が異なる。
<フランス>1997、2000、2004、2010、2014年においては時系列の連続性は失われている。2016年は暫定値。
<英国>1985、1992年においては時系列の連続性は失われている。2008~2010、2012、2014年は見積り値、2016年は暫定値である。
<中国>1991~1999年までは過過小評価されるか、過小評価されたデータに基づく。2000年、2009年においては時系列の連続性は失われている。
<EU>各国資料に基づいたOECD事務局の見積り・算出。EU-15の1991年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国>NSF,“National Patterns of R&D Resources: 2015-16 Data Update”
<日本(OECD推計)、ドイツ、フランス、英国、EU>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2017/2”
<中国>1990年まで中華人民共和国科学技術部、中国科技統計数値2013(webサイト)、1991年以降はOECD,“Main Science and Technology Indicators 2017/2”
<韓国>国家科学技術知識情報サービス(webサイト)

参照:表1-1-1


 次に、各国・地域の経済規模の違いを考慮して研究開発費を比較するために、「研究開発費総額の対GDP比率」(国内総生産に対する研究開発費の割合)を示す(図表1-1-2)。
 2015年における日本の研究開発費総額の対GDP比率は、世界の中で見ると、比較的高い水準にあるといえる。最も高い国はイスラエル、次いで韓国であり、4%を超えている。


【図表1-1-2】  各国・地域の研究開発費総額の対GDP比率(2015年)

注:
1)シンガポールは2014年値
2)EU、オーストラリアは見積り値。
3)デンマーク、米国は暫定値。
4)イスラエルと米国は定義が異なる。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<その他の国・地域>OECD,“Main Science and Technology In-dicators 2017/2”

参照:表1-1-2


 また、研究開発費総額の対GDP比率の経年変化により、各国の研究開発への投資水準がどのように推移してきたかを見る(図表1-1-3)。
 日本は2008年までは長期的に増加していたが、その後、増減を繰り返しつつ、2016年では3.42%となっている。また、日本(OECD推計)でも同様の傾向にあり、2016年では3.14%である。主要国の中でも高い水準を保っているが、近年、減少傾向にある。
 韓国は主要国中第1位である。2000年代に入ると急速に増加した。2016年では4.24%である。
 ドイツは、1990年代中盤に一旦減少したが、その後は増加し続けており、2010年代に入ると米国を上回っている。2016年は2.94%である。
 米国は2000年代後半からほぼ横ばいである。2016年は2.74%である。
 EUは漸増傾向が続いている。フランス、英国は1990年代後半から、ほぼ横ばいである。中国は、1996年を境に増加が続き、2010年には英国を上回り、2016年では2.12%とEUを上回った。
 2000年以降の日本のGDPは一時的な減少も含め、微増に推移している一方で、他国のGDPは増加傾向にある(参考統計C参照のこと)。特に、韓国、中国、ドイツでは、経済規模が拡大すると同時に研究開発費総額の対GDP比率も上昇している。


【図表1-1-3】  主要国の研究開発費総額の対GDP比率の推移 

注:
国際比較注意及び研究開発費については図表1-1-1と同じ。GDPは参考統計Cと同じ。なお、日本のGDPは1993年まで1993SNAに基づいた数値であり、1994年以降は2008SNAに基づいているため、時系列比較をする際は注意が必要である。
資料:
研究開発費は図表1-1-1と同じ。GDPは参考統計Cと同じ。

参照:表1-1-3


1.1.2各国の部門別研究開発費の動向

 国全体の研究開発のシステムを理解するためには、各国の研究開発活動の状況を部門別で見ることも必要である。
 ただし、各国の部門分類については、研究開発活動を国際比較する際に、国の制度や調査方法、または対象機関の範囲に違いが生じてしまうという問題点がある。よって各国の差を踏まえた上での比較をすべきである。
 この節では、研究開発活動を実施している機関を部門分類し、各国の違いを踏まえて研究開発費の構造を見る。


(1)研究開発費の負担部門と使用部門の定義

 図表1-1-4は、研究開発活動を実施している機関を、OECD「フラスカティ・マニュアル(5)」に基づいた部門に分類し、研究開発費の負担部門(5部門)及び使用部門(4部門)に対応する各国の具体的な内訳(機関)が何であるかを簡単に示したものである。表中には、自国の研究開発統計及びOECDの資料等で使用されている名称を用いているが、表題の部門名は日本の研究開発統計である総務省「科学技術研究調査」で使用されている部門名を用いている。


【図表1-1-4】 主要国における研究開発費の負担部門と使用部門の定義
(A)負担部門

(B)使用部門

注:
1)英国、中国に関しては部門ごとの詳細な情報は得られなかった。
2)EUについては各国の合計であるため、ここには記載しない。
3)負担部門の外国の内訳において、「外国の組織**」についてはOECD,“Research & Development Statistics”に使用されている項目を記載した。国によっては、全ての項目の値が得られない事もある。
<米国>FFRDCs:Federally Funded Research and Development Centers(連邦出資研究開発センター)
<ドイツ>
1)IfG:Institutions for co-operative industrial research and experimental development.
2)負担部門に「大学」はない。
<中国>負担部門に「大学」はない。
資料:
科学技術政策研究所、「主要国における研究開発関連統計の実態:測定方法についての基礎調査」(調査資料-143)
総務省、「科学技術研究調査報告」
BMBF,“Bundesbericht Forschung und Innovation 2008”
OECD,“Research & Development Statistics”


(2)主要国の研究開発費の負担部門と使用部門

 この節では、各国の研究開発費について、負担部門から使用部門へ、どのように配分されているか、また、どの部門でどの程度、研究開発費が使用されているのかを見る。図表1-1-5は各国の研究開発費を部門別の割合にし、その流れを見たものである。負担部門、使用部門の内容については前述の図表1-1-4を参照されたい。負担部門、使用部門ともに、各国の制度や調査方法、対象機関の範囲に差異があるため、比較には注意が必要である。
 各国の負担部門から使用部門への研究開発費の流れを見ると、いずれの国でも「企業」の負担割合が大きいが、ほとんどは同部門の「企業」に流れている。ただし、ドイツ、中国については、「大学」への研究開発費の流れが他国と比較すると大きい。
 「政府」については、「公的機関」及び「大学」に流れている国が多い。「大学」に最も多く流れている国は、日本、ドイツ、フランス、英国である。「公的機関」に最も多く流れている国は、日本(OECD推計)、米国、中国、韓国である。「政府」から「企業」への流れは、ほとんどの国でそれほど大きくはないが、米国、英国、フランスでは「政府」の約2割が企業に流れている。
 「大学」は、負担部門としての大きさはごくわずかである。特に、ドイツ、中国については負担部門に「大学」は想定されてない。また、日本の場合、負担部門としての「大学」は私立大学のみである。日本は、「大学」の負担割合が他国と比較すると大きい。
 「非営利団体」はいずれの国でも、その負担の割合は小さいが、米国や英国では4~5%を占める。
 「外国」については英国の負担割合が大きい。また、その多くが「企業」へ流れる研究開発費であることが特徴である。
 各国ごとに見ると、日本については、「企業」から「企業」への研究開発費の流れが大きく、その他の部門にはほとんど流れていない。「政府」は「大学」への流れが大きいが「公的機関」への流れも大きい。なお、負担部門の「大学」は、上述したとおり私立大学が対象であり、そのほとんどは使用部門の「大学」に流れている。ただし、この流れは、ほぼ私立大学の研究開発費の自己負担分である。
 日本(OECD推計)では、「企業」間での研究開発費の流れが大きい。日本では「政府」に分類されている「国・公立大学」は、日本(OECD推計)では大学部門に入っている。「政府」からの他部門への研究開発費は「公的機関」への流れが最も大きい。
 米国では、「企業」から「企業」への研究開発費の流れが大きい。「政府」から「公的機関」や「大学」への流れが3/4程度を占めるが、「企業」への流れも比較的大きい。また、「外国」からの流れはそのほとんどが「企業」へ向かっている。
 ドイツについては、「企業」部門間の流れが主流を占めているのは他国と同様であるが、他国と比較すると、「企業」から「大学」、「公的機関・非営利団体」への研究開発費の流れが大きい。特に「企業」から「大学」への流れは、主要国の中でも大きい(使用側で見た「企業」の負担割合は13.9%)。
 フランスでは、「企業」の負担割合が最も大きく、これに「政府」が続く。特に「政府」の負担割合は34.8%と他国と比較しても、最も大きいことが特徴である。また、「外国」の負担割合が比較的大きく、その研究開発費は「企業」へ多く流れている。
 英国は、「外国」の割合が17.1%と、他国と比較すると、群を抜く大きさである。また、「外国」の研究開発費の流れは、多くが「企業」に行っているが、「大学」にも多く流れている。また、英国は負担部門のうち「企業」の割合が49.0%と、他国と比較すると最も小さい。
 中国では、「非営利団体」にあたる部門は「その他」である。「企業」の負担割合が大きく、そのほとんどが「企業」へ流れている。また、「大学」への流れも大きく、「大学」が使用する研究開発費の29.0%を負担している。「政府」負担の研究開発費は「公的機関」に最も多く流れている。使用部門から「大学」と「公的機関」を見ると、後者の割合が顕著に高い。
 韓国では、「企業」の負担割合が大きく、そのほとんどが「企業」へ流れている。次いで「政府」の負担割合が大きく、その約半数は「公的機関」に流れている。また、大学への負担割合も大きく、「大学」が使用する研究開発費の約8割を「政府」が負担している。


【図表1-1-5】 主要国の負担部門から使用部門への研究開発費の流れ 
(A)日本(2016年)

(B)日本(OECD推計)(2016年)

(C)米国(2016年)

(D)ドイツ(2015年)

(E)フランス(2015年)

(F)英国(2015年)

(G)中国(2016年)

(H)韓国(2016年)

注:
負担・使用部門については図表1-1-4を参照のこと。
<日本(OECD推計)>負担側の政府、大学は見積り値である。
<米国>定義が異なる。暫定値である。非営利団体は見積り値であり、別のカテゴリーのデータを含む。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<その他の国>OECD,“Research & Development Statistics”

参照:表1-1-5


(3)主要国の使用部門における研究開発費の推移

 図表1-1-6は主要国の総研究開発費の使用額を部門別に分類し、その割合の推移を示したものである。
 各国とも「企業」部門が一番大きな割合を示している。最新年の使用割合は、日本、米国、ドイツ、フランス、英国は6~7割を占めている(日本(OECD推計)は約8割)。また、中国の「企業」部門の割合は1990年はじめ、4割程度であったが、近年では約8割を占めるほど増加している。韓国も約8割を占める。
 日本の場合、長期的には、「企業」部門が増加傾向にある一方で、その他の部門は減少しつつある。2009年に「企業」部門の割合が一時減少したが、その後の「企業」部門は微増し、他部門は微減している。
 日本(OECD推計)は、「大学」部門の人件費分をFTEした研究開発費を使用しているため、「大学」部門の割合が日本のデータと比較すると小さくなっている。なお、新規のFTE調査結果が反映された場合、その都度データが変化することに留意が必要である。前述した日本と、他の部門の推移については同様の傾向である。
 米国については、「企業」部門は増減がありながらも長期的に見れば横ばいに推移している。「大学」部門については長期的には増加しているが、2010年代に入って漸減している。「公的機関」部門は、1980年代から長期的に減少しつつあったが、2000年代後半に入ると横ばいに推移し、近年は漸減している。また、「非営利団体」部門は小さいものの長期的に漸増傾向であったが、2000年代半ばから、ほぼ横ばいに推移している。
 ドイツについては「公的機関」部門及び「非営利団体」部門の区分がされてないため一緒になっている。1990年代に入ると、「企業」部門の減少、その他の部門の増加が見られたが、その後、「企業」部門が増加し、それに伴い他の部門は減少した。2009年に「企業」部門が減少した後は、各部門とも横ばいに推移している。
 フランスは、「公的機関」部門の割合が比較的大きな国であったが、その割合には長期的な減少傾向が見られる。一方で、「企業」、「大学」部門の割合は増加傾向にある。
 英国は、1990年代以降、「公的機関」部門の割合が減少する一方で、「大学」部門の割合の増加が見られた。2010年代に入ると、「企業」部門が増加し、他部門の減少が見える。
 中国は、1990年代初めには、「公的機関」部門の占める割合が4~5割もあったが、1999年以降、減少傾向にある。代わって「企業」部門が増加しており、近年では約8割を占めている。また、「大学」部門より「公的機関」部門の使用割合が大きい。
 韓国は、近年は「大学」、「公的機関」部門とも横ばいに推移している。
 EU-15、28については、英国、フランスと同様の特徴が見られる。すなわち「公的機関」部門の割合が長期的に減少傾向にあること、「大学」部門の割合の増加傾向が見られることである。ただし、2010年代に入ってから、全ての部門でほぼ横ばいに推移している。


【図表1-1-6】 主要国における部門別の研究開発費の割合 
(A)日本 
(B)日本(OECD推計) 
(C)米国
(D)ドイツ
(E)フランス
(F)英国
(G)中国
(H)韓国
(I)EU-15
(J)EU-28

注:
1)研究開発費総額は各部門の合計値であり、国により部門の定義が異なる場合があるため、国際比較の際には注意が必要である。各国の部門の定義については図表1-1-4参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3)日本(OECD推計)、フランス、英国、中国、韓国、EUの非営利団体は合計から企業、大学、公的機関を除いたもの。
<日本>年度の値を示している。
<日本、日本(OECD推計)>2001年に、非営利団体の一部は企業部門になった。
<日本(OECD推計)>1995年までOECD基準に合うように、当該国の値をOECD事務局が調整。大学部門については、研究開発費のうち人件費をFTEにした総研究開発費である。1996、2008、2013年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。
<米国>2015年は予備値、2016年は見積り値。
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。全ての部門の1982、1984、1986、1988、1990年、企業の1992、1994、1996、1998、2016年、大学の1992年は見積り値。企業、大学の1993年、公的機関及び非営利団体の1991~2016年は定義が異なる。全ての部門の1991年、大学の2016年、公的機関及び非営利団体の1992年において時系列の連続性は失われている。
<フランス>企業の1992、1997、2001、2004、2006年、大学の1997、2000、2004、2014年、公的機関の1992、1997、2000、2010年において時系列の連続性は失われている。2016年値は暫定値である。
<英国>企業の1986、1992、2001年、大学の1985、1993年、公的機関の1986、1991、2001年において時系列の連続性は失われている。大学の2016年は暫定値である。
<中国>企業の1991~1999年までは過小評価されるか、過小評価されたデータに基づく。 企業の2000年、2009年、公的機関の2009年において時系列の連続性は失われている。
<EU>見積り値である。EU15の1991年において時系列の連続性は失われている。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<日本(OECD推計)、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国、EU>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2017/2”
<米国>NSF,“National Patterns of R&D Resources: 2015-16 Data Update”

参照:表1-1-6



(1)経済協力開発機構(OECD)は、民主主義と市場経済を支持する諸国が①経済成長、②開発途上国援助、③多角的な自由貿易の拡大のために活動を行っている機関。現在35カ国が加盟。国際比較可能な統計、経済・社会データを収集し、予測、分析をしている。
(2)他国と共通のその時点の通貨価値(図表1-1-1(A)の場合、OECD購買力平価換算を使用した円)で、研究開発費を見る事ができる。
(3)研究開発費を集計する際の年度の範囲は国によって異なるため、本書では、国際比較にあたって基本的に「年」を用いている。この節の日本の場合、本来は「年度」である。
(4)図表1-1-1(B)の場合、他国と共通の通貨価値で、物価水準の変化を考慮して研究開発費を見る事ができる。物価水準の基準年は2010年であり、OECD購買力平価換算値は2010年値を使用している。
(5)研究開発統計の調査方法についての国際的標準を提示している。1963年、イタリアのフラスカティに於いて、OECD加盟諸国の専門家による研究・実験開発(R&D)の調査に関しての会合が行われた。その成果としてまとめられたのがフラスカティ・マニュアル-研究・実験開発調査のための標準実施方式案である。現在は第7版(2015)が発行されており、各国の研究開発統計調査は主にこのマニュアルに準じて行われていることが多い。


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