1.2政府の予算

ポイント

  • 2018年の日本の科学技術予算総額は3.8兆円である。科学技術予算は、2000年代に入ると、横ばいに推移していたが、2018年は過去最高値となった。中国は2000年代に入ると大きく増加し、2016年では22.4兆円となった。2012年から米国を抜いて世界トップの規模である。米国は2017年で14.9兆円となっている。ドイツについては2000年代後半から増加し、2017年では3.7兆円となっている。
  • 2000年を1とした場合の各国通貨による科学技術予算の名目額と実質額の指数を見ると、名目額の最新年では、日本は1.1、フランスは1.0とほとんど伸びていない。米国とドイツは1.8、英国は1.5である。一方、中国は13.5であり、韓国の5.1とともに大きな伸びを示している。実質額での伸びを見ると、日本以外の国は名目額より低い数値となっている。最新年を見ると、日本は1.2、米国は1.3、ドイツは1.4、英国は1.1と1以上であるが、フランスは0.8とマイナス成長である。中国は7.8、韓国は3.6である。
  • 国の経済規模による違いを考慮して比較するために、科学技術予算の対GDP比率を最新年で見ると、日本が0.66%、米国が0.78%、ドイツが0.89%、フランスが0.63%、英国が0.52%、中国は1.05%である。韓国は1.17%と主要国中トップである。

 この報告書では、日本の「科学技術関係経費」を科学技術予算としている。
 科学技術関係経費とは、①科学技術振興費(一般会計予算のうち主として歳出の目的が科学技術の振興にある経費)、②一般会計中のその他の研究関係費、③特別会計中の科学技術関係費の合計を指す。
 日本の科学技術関係経費の集計業務については、2014年度に文部科学省から内閣府に業務が移管され、2018年度より、内閣府は行政事業レビューシートを基にした統一的な基準による新方法(6)で、科学技術関係経費を集計するようになった。また、第5期科学技術基本計画の初年度である2016年度まで、遡って新方法による再集計がなされた。そのため、2015年度以前とは、時系列の継続性は失われているため留意されたい。
 以降の議論では、日本は文部科学省や内閣府による集計データ、中国以外の主要国についてはOECDのGBARD(Government Budget Alloca-tions for R&D)の値を用いるが、「フラスカティ・マニュアル 2015」のGBARDの定義と科学技術予算額には、若干の相違があることについて留意する必要がある(7)。一つは、GBARDは「研究開発(R & D)」を対象としているのに対して、科学技術予算額は、それよりは広い科学技術に関係する経費全般を対象としている点である(8)。そのため、研究開発には含まれない科学技術関係経費部分の額が、他国と比較して過大に計上されていると考えられる。

1.2.1各国の科学技術予算

 主要国政府の科学技術予算総額(OECD購買力平価換算)を見ると(図表1-2-1(A))、2018年(9)の日本の金額は3.8兆円である。科学技術予算は2000年代に入ると、横ばいに推移していたが、2018年は過去最高値となった。
 中国は2000年代に入ると大きく増加し、2016年では22.4兆円となった。2012年から米国を抜いて世界トップの規模である。
 米国については、2009年にARRA(American Recovery and Reinvestment Act of 2009)による特別な予算が措置された以降は減少が続いていたが、2014年以降は増加傾向にあり、2017年は14.9兆円となっている。
 ドイツについては2000年代後半から増加し、2017年では3.7兆円となっている。
 韓国については一貫して漸増傾向である。2016年は2.2兆円であり、フランス、英国を上回っている。
 フランスについては2010年代に入ってから漸減している。2016年は1.7兆円である。
 英国については、他国と比較して大きな変化が見えない。2016年は1.5兆円である。
 また、科学技術予算を国防関係の経費(国防用)(日本の場合は防衛省の科学技術予算)とそれ以外の経費(民生用)に分類してみると(図表1-2-1(B))、日本はほとんどが民生用科学技術予算で占めている。一方、米国については、民生用科学技術予算と国防用科学技術予算の割合がほぼ半々となっている。その他の国では、いずれも国防用科学技術予算の割合は民生用と比較して少ないが日本やドイツと比較すると大きい割合である。また、米国を除いて、いずれの国でも2001年に比べて国防用の割合が低下している。
 次に、2000年を1とした場合の各国通貨による科学技術予算の名目額と実質額の指数を示した(図表1-2-1(C))。名目額での最新年を見ると、日本は1.1、フランスは1.0とほとんど伸びていない。米国、ドイツは1.8、英国は1.5である。一方、中国は13.5であり、韓国の5.1とともに大きな伸びを示している。
 実質額を見ると、日本以外の国は名目額より低い数値となっている。最新年を見ると、日本は1.2、米国は1.3、ドイツは1.4、英国は1.1とプラス成長であるが、フランスは0.8とマイナス成長である。中国は7.8、韓国は3.6と順調な伸びを見せている。


【図表1-2-1】 主要国政府の科学技術予算の推移 
(A)科学技術予算総額(OECD購買力平価換算)の推移

(B)民生用と国防用の科学技術予算の割合(3年平均)

(C)2000年を1とした各国通貨による科学技術予算の指数

注:
1)購買力平価換算には参考統計Eを用いた。
2)表1-2-1(C)は3年平均である。たとえば2017年であれば、2016、2017、2018年の平均値。
3)実質額の計算にはGDPデフレータによる(参考統計Dを使用)。
<日本>日本は年度である。2016年度以降の当初予算は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係経費の判定を行う方法に変更されている。
<米国>連邦政府または中央政府のみ。高等教育部門に対する一般支払いのうち、教育と研究が分離できないものは除外している。1999年まで定義が異なる。2000、2009年において時系列の継続性が失われている。2009年度の値にはARRA:American Recovery and Reinvest-ment Act of 2009によって特別に予算が措置された。2017年度値は暫定値である。
<ドイツ>1984、1985、1987、1991、1997年のデータは前年までのデータと継続性が損なわれている。1992年は見積り値、2017年は暫定値である。
<フランス>1984、1986、1992、1997、2006年において時系列の継続性は失われている。2006、2007年見積り値である。
<英国>1985、2001年において時系列の継続性は失われている。
<韓国>2006年まで定義が異なる。2005年において時系列の継続性は失われている。
資料:
<日本>2013年までは文部科学省調べ。2014年からは内閣府調べ。
<米国、ドイツ、フランス、英国、韓国>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2017/2”
<中国>科学技術統計センター、中国科学技術統計(webサイト)、2015、2016年値は中華人民共和国国家統計局、「全国科技経費投入統計広報」の各年版

参照:表1-2-1


 次に、国による経済規模の違いを考慮して比較するために、科学技術予算の対GDP比率を示した(図表1-2-2)。
 日本の値は1990年代に入って上昇し、2000年代は横ばいに推移していた。その後、2000年代後半には微増したが、近年は微減している。最新年でみると、日本は0.66%である。
 米国は1990年代後半に急激に上昇した後は2009年を除いて横ばいであったが、2009年以降減少傾向にある。最新年では0.78%と前年と比較すると0.03ポイント減少した。
 ドイツは2000年代後半まで、減少傾向が続いていたが、その後は上昇し、近年横ばいに推移している。最新年は0.89%である。
 フランスは1990年代まで主要国中、最も大きな値であったが、その後は減少傾向にあり、最新年では、0.63%と日本より低い数値である。
 英国は長期的に見ると、継続して減少傾向にあり、最新年では0.52%と主要国中最も低い数値である。
 中国、韓国ともに2000年代に入ってからの伸びが著しい。最新年の中国は1.05%であり、韓国は1.17%と主要国中トップである。


【図表1-2-2】 主要国政府の科学技術予算の対GDP比率の推移 

注:
<科学技術予算>図表1-2-1と同じ。
<GDP>参考統計Cと同じ。
資料:
<科学技術予算>図表1-2-1と同じ。

参照:表1-2-2


1.2.2各国政府の研究開発費負担割合

 研究開発に対する政府の投入資金を調査する方法には、①研究開発費の使用部門において調査を行い、政府負担分を計上する方法、②政府の歳出の中から研究開発に関する支出(科学技術予算(10)を調べる方法(参照1.2.1節))と二つある。
 これら二つの方法のうち、①使用側において調査する方法は、研究開発費が複雑な流れを経た場合でも、調査対象が国全体を網羅している限り一国の研究開発費の総額を把握することができるが、資金の負担源を必ずしも正確に捉えることができない。一方、②支出源(科学技術予算)側の調査では、実際に研究開発費として使用されたかどうか不明の部分があるため、研究開発費を正確に把握することが困難になる。
 この節では①使用側のデータを用いて政府の研究開発費負担の状況を示すこととする。すなわち、各国の研究開発費総額のうち政府が負担した研究開発費が占める割合を見る。ここでいう政府とは、主に中央政府であるが、国によって違いがある。各国の政府が何を指すかを簡単に図表1-2-3に示した。
 主要国における政府の研究開発費負担割合を見ると(図表1-2-4)、最も大きい国はフランスであり2015年で34.8%である。
 日本はほぼ全期間で7か国中、最も低い割合となっており、2016年の政府負担割合は17.4%(日本(OECD推計)の場合15.0%)である。これは、日本の研究開発費の負担割合を見ると(図表1-1-5(A))、企業(71.8%)に加えて、私立大学(9.3%、主に授業料収入から成り立つと考えられる)の負担割合が他国と比較して高いためである。
 なお、ほとんどの国は2000年頃まで減少傾向にあり、それ以降、横ばい、又は微減傾向が続いている。


【図表1-2-3】 主要国の負担源としての政府

注:
表1-1-4(B)と同じ。
資料:
表1-1-4(B)と同じ。


【図表1-2-4】 主要国における政府の研究開発費負担割合の推移 

注:
1)使用部門側から見た政府の研究開発費負担分は国により中央政府のみの場合と地方政府を含む場合があるため国際比較の際には注意が必要である。各国の政府については図表1-2-3を参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
<日本>年度の値を示している。
<日本(OECD推計)>見積り値である(1990年を除く)。1981~1995年は過大評価されたか、過大評価されたデータに基づく。1996、2008、2013年において時系列の連続性は失われている。
<米国>定義が異なる。1998、2003年において時系列の継続性は失われている。2015、2016年は暫定値。
<ドイツ>1982、1984、1986、1988、1990、1992、1994、1996、1998、2000、2002年は見積り値。1991年において時系列の継続性は失われている。2012~2015年値は定義が異なる。
<フランス>1992、1997、2000、2004、2010年の値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。
<英国>1981、1983、2010、2012、2014年は見積り値。1986、1992年において時系列の継続性は失われている。
<中国>2009年において時系列の連続性は失われている。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<日本(OECD推計)、米国、ドイツ、フランス、中国、韓国>OECD,“Research & Development Statistics”

参照:表1-2-4


 次に、政府が負担する研究開発費の支出先別の内訳、すなわち政府の資金がどの部門で使用されているかについて見る(図表1-2-5)。
 日本は、図に示した期間を通じて各部門での大きな変化は見られず、「大学」部門と「公的機関」部門が大きな割合を占めている。「大学」部門への支出は半数を占めている。また、他の国と比較して「企業」部門への支出が少ない点が日本の特徴である。なお、日本(OECD推計)では、大学部門の人件費分をFTEした研究開発費を使用しているため、新規のFTE調査結果が反映された場合、その都度データが変化している。
 米国では、以前は「企業」部門への研究開発費の支出割合が高かったが、1980年代後半以降、その割合が大幅に減少する一方で「大学」部門の割合が増加した。2002年以降、「企業」部門への支出割合は増加傾向にあったが2009年を頂点に大きく減少している。代わって増加したのは「公的機関」部門である。
 ドイツは、1980年代の中頃から「企業」部門への支出割合が減少する一方で、「大学」部門と「公的機関及び非営利団体」部門への支出割合が増加しており、その傾向は継続している。
 フランスでは、1980年代は「公的機関」部門への支出割合の方が、「大学」部門と比べて大きかったが、1990年代に入り「大学」部門への支出割合は増加する一方で、「公的機関」部門と「企業」部門の割合は減少した。2000年代に入ると「企業」部門への支出割合は横ばいに推移している。
 英国では、2000年代中頃まで「大学」部門への支出割合は大幅な増加傾向にあるのに対し、「企業」部門への支出が減少傾向にあった。2000年代後半から「企業」部門への支出割合は増加傾向であり、「公的機関」部門の割合は減少傾向にある。「大学」部門は半数以上を占めるようになった。
 中国では「公的機関」部門への研究開発費の支出割合が大きいが、減少傾向にあった。ただし、2010年頃から横ばいに推移している。「企業」部門への支出割合は増加していたが、近年は減少傾向にある。「大学」部門への支出割合は継続して約2割である。
 韓国でも1990年代半ばには「公的機関」部門への研究開発費の支出割合が大きかったが、2000年代半ばにかけて減少した。それと並行して、「大学」部門への支出割合が増加している。2010年代に入ると、「大学」部門はほぼ横ばい、「公的機関」部門は増加、「企業」部門は微減に推移している。


【図表1-2-5】 主要国における政府負担研究開発費の支出先の内訳の推移 
(A)日本
(B)日本(OECD推計) 
(C)米国
(D)ドイツ
(E)フランス
(F)英国
(G)中国
(H)韓国

注:
1)国際比較注意については図表1-2-4と同じ。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
<日本>政府は、国、地方公共団体、国営、公営及び特殊法人・独立行政法人の研究機関、国立及び公立大学(短期大学等を含む)。
<日本(OECD推計)>
1)政府は、国、地方公共団体、国営、公営及び特殊法人・独立行政法人の研究機関。
2)大学は見積り値である。1981~1995年値は過大評価されたか、過大評価されたデータに基づく。1990、1996、2008、2013年において、時系列の連続性は失われている。
3)企業の1996年値、非営利団体の2001年において、時系列の継続性は失われている。
<米国>
1)政府は、連邦政府。
2)定義が異なる(公的機関の2009~2016年を除く)。企業の2008年、公的機関の2009年、大学の1998、2003年において時系列の連続性は失われている。企業の2016年は見積り値。大学の2016年は暫定値。
<ドイツ>
1)1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。政府は、連邦及び州政府。
2)1982~1990年までの偶数年値(全部門)、企業の1991~2010、2012、2014年は見積り値。大学の1981~1991年は別のカテゴリーのデータを含み、1992~2015年は定義が異なる。公的機関及び非営利団体の2012~2015年は定義が異なる。企業の1991、1992、1994、1998年、公的機関及び非営利団体の1991、1992年において時系列の連続性は失われている。
<フランス>
1)政府は、省庁・公的研究機関及び地方自治体。
2)企業の1992、1997、2001、2004、2006年、公的機関の1992、1997、2000、2001、2010年、大学の1981、2000、2004年、非営利団体の1992年において時系列の連続性は失われている。
<英国>
1)政府は、中央政府(分権化された政府も含む)、リサーチ・カウンシル、Higher Education Funding Councils。
2)企業の1986、1992、2001年、公的機関の1985、1986、1991、2001年、大学の1985、1993年、非営利団体の1985年において、時系列の連続性は失われている。 公的機関の1981、1983年値、非営利団体の2010、2012、2014年値は見積り値。
<中国>企業と公的機関の2009年において時系列の連続性は失われている。
<韓国>政府は政府研究機関及び政府出捐研究機関。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<日本(OECD推計)、米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国>OECD,“Research & Development Statistics”

参照:表1-2-5


1.2.3日本の科学技術予算(科学技術関係経費)

 科学技術基本計画は、1995年11月に公布・施行された科学技術基本法に基づき、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画であり、今後10年程度を見通した5年間の科学技術政策を具体化するものとして、政府が策定するものである。ここでは、科学技術基本計画(以下、基本計画という)ごとの科学技術関係経費の推移をみる(図表1-2-6)。
 第1期基本計画は1996~2000年度を対象としており、科学技術関係経費の総額の規模を約17兆円とすることが必要であると明記された。第1期基本計画の5年間の予算額を合計すると、当初予算で15.3兆円、補正予算を含めると17.6兆円である。5年間の推移を見ると、当初予算は増加傾向にあり、補正予算も多く組まれた。
 第2期基本計画は2001~2005年度を対象としており、政府研究開発投資の総額を約24兆円とすることが必要であると明記された。5年間の予算額を合計すると、当初予算で17.8兆円、補正予算を含めると18.8兆円である。当初予算の推移は微増、補正予算は2001、2002年度には多く組まれている。
 第3期基本計画では、2006~2010年度の5年間の総額の規模を約25兆円とすることが必要とされた。5年間の予算額を合計すると、当初予算では17.8兆円、補正予算を含めると19.6兆円である。5年間の推移をみると、当初予算については横ばいであるが、2009年度は約1兆円の補正予算がつき、補正予算が5年間の合計予算額に大きく寄与している。
 2011年度からの5年間を対象とする第4期基本計画については、同期間中の政府研究開発投資の総額の規模を約25兆円とすると明記されていた。5年間の当初予算額の合計は18.1兆円である。2011~2015年度の補正予算額を合わせると20.6兆円となる。
 2016年度からの5年間を対象とする第5期基本計画では、同期間中に必要な政府研究開発投資の総額の規模は約26兆円とされている。2018年度の科学技術関係経費は当初予算額で3.8兆円である。なお、2018年度に予算の集計方法が変更になったのに伴い、2016年度までさかのぼって再集計が行われた結果、2016、2017年度についても、従来の方法よりも金額が増加している。また、当初予算での競争的資金の割合を見ると、2018年度では11.1%である。


【図表1-2-6】 科学技術基本計画のもとでの科学技術関係経費の推移 

注:
1)補正予算は追加額のみである。
2)科学技術基本計画(第1期~第4期)の策定に伴い、1996年度、2001年度、2006年度及び2011年度に対象経費の範囲が見直されている。
3)競争的資金の割合は当初予算での数値である。
4)競争的資金の割合は当初予算での数値である。2018年度の競争的資金は2018年4月1日現在の値である。
5)科学技術関係経費の2016年度以降の当初予算は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係経費の判定を行う方法に変更されている。
資料:
2013年度までは文部科学省調べ。2014年度からは内閣府調べ(2016~2018年度の値は2018年5月時点の数値である)。

参照:表1-2-6

 政府の科学技術関係経費についての基本的な指標をいくつか示す。
 図表1-2-7は、科学技術関係経費の対前年度伸び率を一般歳出と比較したものである。ここでいう一般歳出とは、一般会計歳出から、国債費、地方交付税交付金等を除いた額であり、景気や経済の状況に応じて、政府の裁量で内容や規模が決められることから、政策的経費とされている。これと科学技術関係経費の伸び率を比較することによって、予算編成の中で科学技術関係経費がどれだけ重要視されてきたかを見ることができる。
 1990年代には科学技術関係経費の伸び率は、一般歳出の伸び率を上回っていることが多く、かつ伸び率も大きかった。しかし、2000年代中頃からは一般歳出の伸び率と同程度となり、2010年度を過ぎると下回ることもあった。科学技術関連経費の「科学技術イノベーション転換」が推奨された2018年度は、科学技術関係経費の伸びが、一般歳出の伸びを大きく上回っている。


【図表1-2-7】 日本の科学技術関係経費の総額と一般歳出相当額の伸び率の推移 

注:
1)当初予算である。
2)科学技術基本計画(第1期~第4期)の策定に伴い、1996年度、2001年度、2006年度及び2011年度に対象経費の範囲が見直されている。
3)一般歳出のデータは、一般会計歳出から国債費及び地方交付税交付金等を除いた額を使用している。
4)科学技術関係経費の2016年度以降の当初予算は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係経費の判定を行う方法に変更されている。
資料:
科学技術関係経費は、2013年度までは文部科学省調べ。2014年度からは内閣府調べ(2016~2018年度の値は2018年5月時点の数値である)。その他は、財務省、財政統計(予算・決算等データ)(webサイトより)

参照:表1-2-7


 日本の2018年度の科学技術関係経費は、一般会計分が79.4%、特別会計分が20.6%となっている(図表1-2-8)。一般会計分は、国立大学や公的研究機関等の経費、各種の助成費等からなる「科学技術振興費」とそれ以外からなる。一方、特別会計分は、エネルギー対策(電源開発促進勘定)等が含まれる。新方法による集計では、国立大学法人運営費交付金等の額が従来よりも小さくなっている。


【図表1-2-8】  科学技術関係経費の内訳(2018年度)

注:
1)国立大学法人等については、自己収入(病院収入、授業料、受託事業等)を含まない算定方法である。
2)国立大学法人運営費交付金等とは、国立大学法人等運営費交付金及び国立高等専門学校機構運営費交付金の合計。
3)行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係経費の判定を行う方法により算出したものである。
資料:
内閣府調べ(2018年5月時点の数値である)。

参照:表1-2-8


 科学技術関係経費を府省別の割合で見ると、文部科学省が一貫して最大である。ただし、2016年度以降は減少傾向にある。2018年度では54.4%であり、次いで経済産業省では17.1%となっている。この二つの省で全体の約7割を占める。他の府省は5%以下である(図表1-2-9)。


【図表1-2-9】  府省別の科学技術関係経費の割合の推移 

注:
1)各年度とも当初予算である。
2)財務省所管である産業投資特別会計中の科学技術関係経費における各特殊法人等に対する出資金等は、各特殊法人等を所管している府省に計上している。ただし、財務省と農林水産省の共管である生物系特定産業技術研究推進機構については、農林水産省に計上している。
3)2016年度以降は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係経費の判定を行う方法に変更されている。
資料:
2013年度までは文部科学省調べ。2014年度からは内閣府調べ(2016~2018年度の値は2018年5月時点の数値である)。

参照:表1-2-9


 図表1-2-10は、県及び政令指定都市の科学技術関係経費を示したものである。2017年度における47都道府県及び20政令指定都市の科学技術関係経費の当初予算合計は、5,071億円であり、同年度の国の科学技術関係経費当初予算額(3.6兆円)の14.1%に相当する。
 推移を見ると、都道府県等の科学技術関係経費は2009年度まで減少傾向にあったが、その後は増加傾向にある。また、国の科学技術関係経費に対する割合も同様の傾向にあるが、2015年度からは同程度に推移している。


【図表1-2-10】 国と都道府県等の科学技術関係経費の状況 

注:
1)当初予算額である。
2)政令指定都市の数は、2002年度が12、2003、2004年度が13、2005年度が14、2006年度が15、2007、2008年度が17、2009年度が18、2010、2011年度が19、2012年度以降が20である。
3)国の科学技術関係経費の2016年度以降は、行政事業レビューシートの記載内容に基づき予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係経費の判定を行う方法に変更されている。
資料:
国の科学技術関係経費は2013年度までは文部科学省調べ。2014年度からは内閣府調べ(2016~2017年度の値は2018年5月時点の数値である)。都道府県等の科学技術関係経費は文部科学省調べ。

参照:表1-2-10



(6)行政事業レビューシート(政府が実施している約5,000の各事業について、各府省において、事業の執行状況や資金の流れ等を統一した様式に記載するもの。内閣官房行政改革推進本部事務局ホームページより)の記載内容に基づき、予算事業を詳細に分類し、その分類内容に基づく統一的な基準で科学技術関係経費の判定を行う方法により算出したものである。新方法では、2018年度の金額は2018年度概算要求時、2017、2016年度の金額は2017年度概算要求時の行政事業レビューシート等に基づいて集計を行っている。
(7) 伊地知 寛博, 科学技術・イノベーションの推進に資する研究開発に関するデータのより良い活用に向けて:OECD『Frascati Manual 2015(フラスカティ・マニュアル2015)』の概要と示唆(後編), STI Horizon. 2016. Vol.2, No.4 : DOI:http://doi.org/10.15108/stih.00048
(8) これに加えて、2018年度の予算においては、「科学技術イノベーション転換」(既存の事業に科学技術イノベーションの要素を導入すること)が推奨された。
(9) この節の日本は、国際比較の際には「年」を用いている。本来は「年度」である。日本のみを記述している節では「年度」を用いている。
(10) 本来は、科学技術予算のうち、研究開発のために向けられた予算(研究開発予算)のみを調べるべきであるが、日本には研究開発予算のデータが無いため、本報告書では科学技術関係経費のデータを用いている。これまでは、日本の科学技術関係経費の大部分を研究開発予算が占めていると考えられていたが、科学技術予算の「科学技術イノベーション転換」が推奨された2018年度以降は、科学技術予算と研究開発予算の差が大きくなる可能性がある。なお、日本以外のほとんどの国においては、研究開発予算についてのデータがとられている。