STI Hz Vol.11, No.4, Part.2:(レポート)地域イノベーションの現状と課題 -九州沖縄地域でのヒアリング調査から見えてきたもの(2)-STI Horizon

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  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00416
  • 公開日: 2025.11.25
  • 著者: 藤田 健一、松本 泰彦
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.11, No.4
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

レポート
地域イノベーションの現状と課題
-九州沖縄地域でのヒアリング調査から見えてきたもの(2)-

第2調査研究グループ 総括上席研究官 藤田 健一、上席研究官 松本 泰彦

概 要

九州沖縄地域において、大学とステークホルダーの産学連携などの現況を調査し、地域イノベーションを達成するための課題や成功条件等を明らかにすることを目的に、九州沖縄地域の8県(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)の大学、自治体、公設試験研究機関、財団、企業、銀行の中から計43機関を抽出し、ヒアリング調査を実施した。

前号では、機関種別の特徴、産学連携をより充実させるための課題、大学の地域貢献についての捉え方に関する調査結果を示したが、今号では、大学発ベンチャーやスタートアップ、特許・知財についての調査結果を示す。

キーワード:大学発ベンチャー,スタートアップ,ベンチャーキャピタル,特許,知財

1. はじめに

本稿では、前号(STI Horizon 2025秋号 2025.Vol.11 No.3)1)の続編として、ヒアリング調査結果のうち、大学発ベンチャーやスタートアップ、特許・知財についての調査結果をお知らせする。

また、九州沖縄地域におけるヒアリング調査結果の全体については、NISTEP調査資料として取りまとめ、近日中に公開する予定である。

宮崎県産業振興機構ヒアリング調査(NISTEP撮影)宮崎県産業振興機構ヒアリング調査(NISTEP撮影)

株式会社鹿児島銀行ヒアリング調査(NISTEP撮影)株式会社鹿児島銀行ヒアリング調査(NISTEP撮影)

2. 大学発ベンチャー・スタートアップ関連

大学発ベンチャーは、地域の活性化、研究成果の社会実装、地域の課題解決などに有効であるとの認識が高く、その大学の大学発ベンチャーであるとして認定し支援する制度を持つ大学もある(大学認定ベンチャー)。また、大学発ベンチャーやスタートアップへの支援は、大学以外の自治体等からも多くなされており、ベンチャーキャピタルやファンドによる資金的支援がなされているところもある。さらに、九州沖縄地域では、多くの大学等が参加し、連携してベンチャー支援を行うプラットフォームであるPARKS注1の存在が大きい。

一方、大学発ベンチャーは必ずしも成功するわけではなく、事業継続は厳しい現状があり、立ち上げ支援に加えて事業継続支援の一層の拡充を求める意見や、大学の教員が大学発ベンチャーの経営者を兼務することについては、業務の性質上困難な場合が多く、経営に精通した人材が経営に携わることが望ましいとの意見があった。また、学生による大学発ベンチャーについては、社会を知らない学生に起業させてその後の支援が不十分なのは問題であるとの意見があった。以下に回答の一部を示す。

【大学発ベンチャー・スタートアップの意義】

  • 〇大学発ベンチャーは地域の活性化のための非常に有効な手段の一つであることと、研究成果の社会実装の手段として、元々TLO等で主に技術移転という形でやってきたと思うが、自ら社会実装していくための有効な手段と考えている。
  • 〇大学発のベンチャーが持っている技術と地域のものづくり企業がタッグを組む事例は何件か出てきている。こういったところは、それこそ大学発ベンチャーと、ものづくり企業が連携して、Go-Tech事業に提案したことはある。「産」と「学」というよりも「学」から出た「産」、要するにベンチャーと「産」の方が、親和性は高いと感じられる。事業を行っていく上で「学」から発展したベンチャーの方が少なくとも民間のため、企業ニーズやお客さまに対する意識がそれなりにある。
  • 〇大学発ベンチャーやスタートアップもイノベーションを創出するための手段の一つなので、必ずしも作れというわけではないが、道筋の一つとして重要であると捉えている。
  • 〇大学としては、大学発ベンチャーはどんどん作っていこうとしている。しかしながら、ベンチャーというのは、大学成果の社会実装のための一手段なので、必ずしも全ての大学の成果をベンチャーとして世に出さないといけないとは思っていない。
  • 〇大学発ベンチャーやスタートアップも一つの中小企業になるので、我々も支援させていただいた。現在は県外の企業に買われてしまったが、これからそこが発展的に大きくなれば大学発ベンチャーとしては成功なのかもしれないし、また残った成果については県内の企業に使われているので、意義があったように思う。
  • 〇これまで、大学による研究開発や事業化に向けた取組の支援を行ってきており、大学発ベンチャーが認定されているが、大学発ベンチャーの創出・育成によるイノベーションを創出していくことは、地域産業の発展や地域経済の活性化を図る上で非常に重要と考えている。

【大学認定ベンチャー】

  • 〇大学発ベンチャーを大学として認定する制度があり、大学としてもベンチャーの立ち上げを積極的に支援している。一方で、支援するための体制には限りがあるので、今後どのようにサポートしていくのか、その方法や範囲とその限界を十分吟味しつつ、柔軟に対応していく必要があると感じている。
  • 〇大学発ベンチャー認定制度を設けている。この制度では、例えば大学のマークを使用することができたり、学内のインキュベーション施設を利用できたりといったメリットを提供している。これ以外では、起業を目指す教員や学生を対象にベンチャーキャピタルの方等を審査員としたピッチ大会を開催している。年々レベルが上がっていると講評いただいている。
  • 〇昨年(2023年)のコンベンションの中で大学認定ベンチャーの方に登壇してもらった。その際、ビジョンが明確であり、エネルギッシュな印象を受けた。大学では起業家を育成するようなプログラムもあるようだが、県内で活躍してくれる企業が一つでも多く出てきてくれると喜ばしい。また、大学のベンチャーを見ていると、地域の課題解決を目指すことが軸になっているような印象を受ける。

【大学発ベンチャーへの支援】

  • 〇地元に成功事例があるが、こういった事例をいかに創出していくのか。恐らく、GAFAのような企業を作るのは難しいと思うので、起業して地元に雇用を創出したり、地元で活躍してもらったりすることを願っている。コミュニティの中で支援していこうと考えているが、長く存続する企業となるように県内の企業で支えていこうという機運がある。
  • 〇大学でも、2016年から伴走支援を行っている。起業前は、担当のURAが付いて、起業までの支援を行い、起業後はクロスアポイントで支援するという形もある。
  • 〇県にベンチャー創出の担当部署がある。そこが大学の先生たちと協力して、また、銀行やアクセラレーターと一緒になって、長年ベンチャー創出をしている。幾つかは日の目を見たと思う。できれば、半導体系も今後は支援をしていきたい。この10年計画上は、来年度あたりからは、ベンチャーにも目を向けて、取り組んでいきたいと話している。とはいえ、先生たちは研究に没頭している。アクセラレーターが足しげく通う中で、興味や関心を高めて、ピッチに出てもらうお願いをしている印象である。
  • 〇特に大学発ベンチャーと、そうではないところを余り区別はしていない。ベンチャーのための特別な支援策を持っているわけではなく、普通の県内の事業者として扱っている。
  • 〇起業家支援として事業スペースの提供を行っている。そこに入居されている方のお悩み相談を受けてきたが、貸部屋だけをやってきた状況である。
  • 〇実際、ベンチャーは地域の経済活性化などに貢献しうる存在になると思うので、それはもちろん推進していきたいところである。しかしながら、直接大学発のベンチャーを支援しているということは、今やっていないので、そういった支援があればいい。そのベンチャー企業と、何か大学でまた連携をしていければいいなというところも考えている。
  • 〇大学発ベンチャーも企業の一つであるので、特別な支援を用意しているわけではないが、通常の企業と同じように支援していく。

【ベンチャーキャピタル、ファンド】

  • 〇大学発ベンチャー企業に対し、キャピタルが投資して、銀行ではビジネスマッチング契約を結んで、その販路拡大支援を行っている。銀行は販路拡大支援、そして、キャピタルでは資金の投資をするということで、グループ全体で支援できるような体制を整えている。まだこれからというところだが、今後、もっと販路を拡大する動きができればというところだ。
  • 〇大学発ベンチャーやスタートアップの支援が大きなテーマとなっている中、銀行としては、ファンド、インキュベーション、アントレプレナーシップ教育といった支援をしており、ビジネスマッチングや情報の共有をしている。令和6年には、大学発ベンチャーも投資対象としたファンドを設立した。

【PARKS】

  • 〇PARKSの取組の中でも、経営者のマッチングをかなりやっていて、全国の経営者プラットフォームのような形を施行しているが、どうしても研究と経営の両方を御自身で担いたいというお声があれば、経営スキルを高めるためのプログラムもPARKSの中で提供を行っているので、そういった形で何らかの手段を取って成長していただけるのではないかと思っている。
  • 〇PARKSの枠組みで大学発ベンチャーを支援している。ただし、PARKSでは創業前までしか支援ができず、県の次世代ベンチャー創生支援コンソーシアムのリソースで支援を行っている。発掘、育成、ギャップ資金獲得、創業、育成、資金調達の仕組みは整っている状況である。

【大学発ベンチャーの困難性】

  • 〇大学発ベンチャーが求められているのは重々承知なのだが、まあまあ厳しい。ビジネスが大変だし、研究者が考えたビジネスモデルは往々にして的を得ていないものが多い。大学発ベンチャーをあえて無理やりこちらから作ろうということは言わない。もちろん先生が作りたいとか学生が作りたいというなら支援はする。
  • 〇創業したときだけパッとスポットライトを当てるけれども、あとはお金も含めて勝手にやってということになるので、なかなか継続性がない。
  • 〇学生による大学発ベンチャーは、問題があり、社会も知らない学生をだまして、会社を作らせて、その後どうするのだというその責任を放棄したものではないかと思っている。やりたい人にはそのフォローはするが、こちらからは言わない。
  • 〇全てが100%成功するわけではなく、ベンチャーがうまくいっている先生もいればそうでない先生もいる中で、これを数として目標値を持つのは間違っていると思っている。

【大学教員と経営者】

  • 〇弊学では、教員は経営者になれないことになっており、CTO、技術顧問、最高技術責任者の形で携わっていくのが、ある程度モデルとしてはよろしいのではないかと考えている。研究者は研究のプロとして研究に従事するのがよく、経営と研究の両方ができる人材は非常にまれであり、成功例も少ない。
  • 〇基本、研究者にビジネスモデルは、考えられる人はたまにはいるが、それはごくレアケースである。基本的に考えさせては駄目だと思っている。大学の先生の研究成果を見て、そこからビジネスを思い付くのは研究者ではなくて違う人であるべきである。
  • 〇民間が中に入っていなくて大学の先生だけで構成すると、経営などの目線がないから、もう作って終わりとなる。あとはそれをどう売るか、どう広げていくかというのがノーアイデアなので止まって、それでつぶれていくという感じが非常にする。

3. 特許・知財関連

大学において、特許権の占有の観点から、企業等との共同出願よりも大学の単独出願を推奨しているところが多い。また、特許が呼び水となって共同研究やスタートアップにつながることから、特許を重要と考える向きが強い。一方、大学における特許関連の予算の確保は、特許のライセンス収入によるものも含めて非常に厳しく、既存特許の放棄や新規特許の出願抑制などを行っているという状況である。また、世界的なスタートアップを生み出すためには海外での特許権が必要であり、そのため外国出願の拡大を企図しているが、外国出願に要する費用は高額であり、大学や企業等が独自の財源で手当することは非常に厳しく、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)等からの支援に頼っている現状がうかがえる。以下に回答の一部を示す。

【特許の単独出願、共同出願】

  • 〇収入とも関係してくるが、今は単願特許の方を推奨している。共同研究の場合は企業に費用などを見てもらえるが、持分が非常に少なくなってしまうので、それだったら、これはというものは大学が単願で出した方がいいではないかということである。
  • 〇単願はできないから、どこか企業を連れてこないと出願しないという大学もあるが、それはやらないようにしている。
  • 〇大学単独の特許がないというのは、大学の力が落ちることになる。共同研究を呼び込むのは単独特許だと思っている。
  • 〇共同研究者から出していただくと、大体、持っていかれてしまってもうそこでほとんど終わる。
  • 〇単独出願でも、財源があれば出す。財源というのは、予算を外部資金で取っていたりするときだ。知財委員会があるので、そこで審査をして、出すものと出さないものとを判断している。外部の弁理士の方に、発明相談をしたり、現地技術調査をしてもらったりはしている。

【特許と共同研究、スタートアップ】

  • 〇特許が呼び水になって、共同研究やスタートアップを推進していこうという状況にあるので、スタートアップを作る上においては、単独出願がないと話にならない。これを絞るとスタートアップの面もつぶれていくし、共同研究に限らず、外部資金の申請などにも支障を来すのではないかと思っている。
  • 〇スタートアップに予算がかなり流れてきているので、知財がないとスタートアップが興せないところがあると思う。そこの予算は、どうしてもこれからどんどんかかってくるとは思う。そこをどうしていくかという問題は、結構大きいかもしれない。
  • 〇研究継続のための予算やスタートアップ支援のための予算など様々あるが、その体をなす上で、知財がないと話にならない。それをベースにして動きたいので、そこは私たちにとって非常に大きな課題である。

【特許関連予算】実際の費用は図表参照

  • 〇特許の予算は、1,200万円から1,300万円だ。ただ、特許の数が増えれば増えるだけ、抱えれば抱えるだけ、維持費がかかってくる。それについてはルールを設けて、ライセンスが見込めない特許は放棄も行いながらしないといけないと思っている。
  • 〇特許の予算は、出願、維持管理を含めて毎年1,500万円ぐらいである。また、ライセンス収入は、2,000万円から3,000万円くらいである。
  • 〇特許の予算は、 多分3,000万円くらいでやっていると思う。
  • 〇出願費用、維持費、中間対応経費、込み込みで4,000万円くらいである。それより特に増えないようにという方針。かといって必要となる、これは大事だよねというのを、お金がないから落とすということは余りしていない。
  • 〇知財予算として、確保しているのが維持費を含めて1,000万円だ。年々、効率化係数がかかってくるので、減っている。
  • 〇間接経費込みで2,000万円くらいである。予算削減の中で、審査請求に上げるのを減らしたり、維持を諦めたり、どちらかをするしかない。あとは、一番手っ取り早いのは出願数を減らすことだが、それはできるだけ避けたい。
  • 〇知財と特許については、間接経費から3,000万円から3,500万円ぐらいの間で毎年安定的にいただいているところではある。
  • 〇純粋にライセンス収入で何とかなるとは思えない。

【既存特許の維持】

  • 〇一応、うちは年限で、10年で見て動きがないと、もしかしたらそこから動くかもしれないが、それが来たらもうごめんなさいと。知財を承継しないということで、先生に費用負担をいただければ、というところも、もうだんだんそういうふうに持っていかないとできないというところになっている。研究費から出せる先生はかなり限定的である。寄附金などをたくさん持っている先生だったらよいのだが、どんどん負の歯車が回っていくような印象を持っている。
  • 〇10年目を越えたら、維持費用が増えるので、それまでに何とかライセンスしたり切ったりしている。また、研究室負担というのも行っている。管理は全学的に行うのだが、こちらが切りたいという特許を先生が維持したいというのであれば、研究室で費用は御負担いただくというのはある。

【新規の特許出願】

  • 〇新規の出願においては、相当マーケティングをしっかり行っていると思うし、切る方もきちんとやっていると思う。発明委員会の方で、この特許が大学にとって将来性があるかなどを判断した上で、維持したり出願したりするので、予算がないからしないということにはならないと思う。
  • 〇途中での予算の補塡はできるだけないように、とどめている状況である。数年前はかなり絞られた時期もあって、出願を減らしていたという状況もある。
  • 〇50件ぐらいは国内出願でできる。海外出願が増えれば増えるだけ、圧迫はするところだ。
  • 〇年間で40件弱である。中には外国出願も入っている。

【外国出願】

  • 〇特許庁や文部科学省からサポートの予算があれば考え得るが、今は財布事情が厳しい。そこのお金を担保いただけると有り難い。世界的スタートアップを生み出そうということがPARKSの取組でもあるので、世界的特許を取らなければいけないとは思っている。基本的には、自前ではできないので、JSTの外国出願支援の2割を手当する仕組みを使ったり、特許庁の国内移行費を使ったりしている状況である。本当は外国出願もしないといけないが、外国出願をする金がないという話になっている。スタートアップにつなげるようなところがあったとしても、どうして外国出願しないのかと言ったら、金がないからしないのだと。金があればやっているという話があるので、そこは苦しいところがある。
  • 〇外国出願は基本的にはJSTの方の支援事業を採択された案件に限り、というような前提でやっているけれども、どうしてもスタートアップを絡めたいという先生の場合は、外国出願前提である。なので、何とか特許庁のサポートも最近は得られるようになってきたので、いろいろ工夫しながら、お金を工面しているという状況ではある。
  • 〇外国出願についてはJSTの支援を受けたり、相手方企業の方に出してもらったりしていてなかなか苦労してはいるところではあるが、出願推進を図っている。

図表 訪問大学の過去5年間の特許関連経費(実際の費用)の推移

:千円

図表 訪問大学の過去5年間の特許関連経費(実際の費用)の推移

「文部科学省 大学等における産学連携等実施状況(調査)」より作成

4. まとめ:今後に向けての示唆

大学発ベンチャーやスタートアップは地域活性化・イノベーション創出に資する一方で、「立ち上げはできても継続が難しい」との意見が多く、事業継続支援の強化(立ち上げ後のフォローアップ)が必要であり、このため、ベンチャーキャピタルや銀行などの民間と、国や自治体といった公的機関との連携による官民投資スキームなどで、安定的な資金の導入を図ることが必要ではないかと考えられる。また、「教員が経営者を兼ねることは困難」との意見も多く、研究者はCTOや技術顧問としての関与を主なものとし、経営の担い手は外部から確保するための何らかの支援や制度が必要ではないかと考えられる。さらに、「学生による大学発ベンチャーは詐欺的な側面があり、社会を知らない学生に起業させその後の支援が不十分なのは問題」といった意見も見られ、起業支援に加えて、若年層の保護と起業後の責任ある支援体制の整備が求められる。

特許に関しては、大学単独出願が共同研究やスタートアップ創出の呼び水になっている一方で、予算の逼迫により出願抑制・既存特許放棄が進んでいる現状があり、また、外国出願については、その費用負担が大きな制約になっていることから、これらに対する安定的な支援が必要ではないかと考えられる。

5. 今後の地域イノベーション調査ヒアリングについて

前号と今号において、2024年度に実施した九州沖縄地域でのヒアリング調査の結果を報告した。

2025年度は北陸・中国・四国地域において同様のヒアリング調査を実施しているところであり、その結果については、改めて本誌に記事を掲載する。また、2026年度以降は、残りの北海道・東北・関東甲信・東海・関西地域のヒアリング調査を実施する予定である。

47都道府県全ての調査を実施後に、調査結果を総合的に分析することにより、全国各地域の特徴を類型化し、類型化されたそれぞれの地域の特徴を踏まえた地域イノベーションの実現(具体的には、地域課題の解決、雇用創出、地域産業の活性化など)のための方策を得たい。


注1 PARKS:九州・沖縄圏という地域にあるべき、かつ顧客志向で業界改変を実現可能なベンチャーを持続的に創出していくことを目的として設立されたプラットフォーム、https://www.parks-startup.jp/about/

参考文献・資料

1) STI Horizon 2025秋号 2025.Vol.11 No.3 https://doi.org/10.15108/stih.00406