STI Hz Vol.9, No.4, Part.8:(レポート)科学技術に関する国民意識調査-人的国際交流について-STI Horizon

  • PDF:PDF版をダウンロード
  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00355
  • 公開日: 2023.12.20
  • 著者: 細坪 護挙、加納 圭、渡邊 英一郎
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.9, No.4
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

レポート
科学技術に関する国民意識調査
-人的国際交流について-

第1調査研究グループ 上席研究官 細坪 護挙、客員研究官 加納 圭、総括上席研究官 渡邊 英一郎

概 要

15歳から69歳までの男女合計6,600人に対し、我が国の科学技術分野における人的国際交流がどの程度行われているかについてインターネット調査を実施したところ、性別に関係なく、比較的否定的な見解が強いように思われた(「(あまり)十分には行われていない」:男性53%・女性51%、「わからない」:男性24%・女性33%)。一方で、肯定的見解に絞って見ると、性別では男性の方が女性よりも高く(「(まあ)十分に行われている」:男性23%・女性16%)、年代別では若い世代(24歳以下)で高いことが判明した。

キーワード:人的国際交流,インターネット調査,国民意識調査

1. はじめに

科学技術・学術政策研究所(以下NISTEP)では、科学技術に関する国民意識データを収集し、科学技術イノベーション政策の立案・推進に資することを目的として、2009年度から、「科学技術に関する国民意識調査」を継続的に実施している。

本2022年度調査(2022年10月調査実施)は、15歳から69歳までの男女合計6,600人にインターネットを使って調査したものである。

2. 調査の概要

2-1 調査目的

今般の調査では特に人的国際交流に対する重要度を把握することが目的である。

2-2 調査対象

インターネット調査会社にモニター回答者として登録している者。

2-3 調査期間及び調査方法

サンプル数はN=6,600で、回答者年齢は15-69歳、サンプリングの層化として、男女同数(男性3,300名、女性3,300名)、15-19歳、20-24歳、25-29歳…60-64歳、65-69歳で同数(11の年齢層、1年齢層当たり600名)とした。

2-4 調査期間

2022年10月14日から10月26日にかけて実施した。

3. 調査結果

本調査の質問は科学技術一般について問う過去調査から継続して調査している質問、及び人的国際交流について問うアドホックに設定した質問から構成されている。人的国際交流に関する質問は「国際文化交流に関する世論調査」1)を参考に作成した質問と、NISTEP独自で検討し作成した質問から成る。本稿では人的国際交流に関する回答結果について概要を紹介する。

3-1 人的国際交流に関する国民の意識
(1)人的国際交流の意義

人的国際交流の意義について()いたところ、「性別」(図表1)に関係なく、男女ともに「お互いに刺激し合うことにより、より豊かな科学技術が創造され、世界の科学技術の向上につながる」(男女ともに47%)、「日本と諸外国との間の相互理解や信頼関係が深まり、国際関係の安定につながる」(男性34%、女性30%)などで高くなっている。

図表1 人的国際交流の意義(性別)図表1 人的国際交流の意義(性別)

選択肢対応関係:
1)日本と諸外国との間の相互理解や信頼関係が深まり、国際関係の安定につながる
2)お互いに刺激し合うことにより、より豊かな科学技術が創造され、世界の科学技術の向上につながる
3)人的国際交流を通じて、日本の科学技術の状況を世界に発信でき、日本の国際地位の向上につながるとともに、世界各国で高まりつつある様々な日本への関心に応えることができる
4)日本の国際化が進み、日本が国際的に開かれた国に発展できる
(2)人的国際交流を進める上で、最も重点を置くべき地域

人的国際交流を進める上で、どの地域の国々との交流に、最も重点を置くべきかを訊いたところ、図表2となり、男性では北アメリカが40%と最も高く、次いでわからない(19%)、どの地域とも同じように進める(14%)、西ヨーロッパ(10%)、その他のアジア(6%)、中国(5%)などとなる一方、女性ではわからない(32%)が最も高く、次いで北アメリカ(27%)、どの地域とも同じように進める(20%)、西ヨーロッパ(6%)、その他のアジア(5%)、中国(4%)などとなった。

図表2 人的国際交流を進める上で、どの地域の国々との交流に、最も重点を置くべきか(性別)図表2 人的国際交流を進める上で、どの地域の国々との交流に、最も重点を置くべきか(性別)

(3)日本の研究成果を利用した製品等の日本への流入

次に、日本の研究成果を利用した製品等が日本へ流入することについてどう思うかを訊いたところ、図表3-1となり、「日本でも負けずに優れた製品を開発して対抗すればよい」が男性では36%、女性では28%がそのように考えている。次いで、「そういうことが起こらないように人的国際交流を実施する前に確認すべき」が男性では29%、女性では31%がそのように考えている。

年代別に見ると(図表3-2)、年代が上がるほど、「日本でも負けずに優れた製品を開発して対抗すればよい」の割合が僅かではあるが高くなっており、「わからない」が減少している。

図表3-1 日本の研究成果が国際交流を通じて海外へ渡り、その成果を利用した製品等が

日本へ流入することについてはどう思いますか(性別)

図表3-1 日本の研究成果が国際交流を通じて海外へ渡り、その成果を利用した製品等が日本へ流入することについてはどう思いますか(性別)

図表3-2 日本の研究成果が国際交流を通じて海外へ渡り、その成果を利用した製品等が

日本へ流入することについてはどう思いますか(年代別)

図表3-2 日本の研究成果が国際交流を通じて海外へ渡り、その成果を利用した製品等が日本へ流入することについてはどう思いますか(年代別)

(4)論文数等における日本の科学技術における地位低下

次に日本の科学技術における地位が論文数等で国際的に低下しているとの報道がされていることについて訊いたところ、図表4-1となり、全体で7割を超える人が(どちらかというと)心配していると回答した。性別では、男性((どちらかというと)心配している75%)の方が女性((どちらかというと)心配している72%)よりも僅かに高い。

また年代別に見ると(図表4-2)、年代が上がるほど、心配している人の割合が高くなっていることが分かる。

図表4-1 日本の科学技術における地位が論文数等で国際的に低下しているとの報道がされていること(性別)図表4-1 日本の科学技術における地位が論文数等で国際的に低下しているとの報道がされていること(性別)

図表4-2 日本の科学技術における地位が論文数等で国際的に低下しているとの報道がされていること(年代別)図表4-2 日本の科学技術における地位が論文数等で国際的に低下しているとの報道がされていること(年代別)

(5)中国や韓国が製品開発において日本を圧倒している分野(IT等)があること

次に近年、中国や韓国が製品開発において日本を圧倒している分野(IT等)があることについて訊いたところ、図表5-1となり、全体で7割を超える人が(どちらかというと)心配していると回答した。性別では、男性と女性はほぼ同じである。(男性74%・女性73%)。

また年代別に見ると(図表5-2)、年代が上がるほど、心配している人の割合が高くなっていることが分かる。

図表5-1 近年、中国や韓国が製品開発において日本を圧倒している分野(IT等)があること(性別)図表5-1 近年、中国や韓国が製品開発において日本を圧倒している分野(IT等)があること(性別)

図表5-2 近年、中国や韓国が製品開発において日本を圧倒している分野(IT等)があること(年代別)図表5-2 近年、中国や韓国が製品開発において日本を圧倒している分野(IT等)があること(年代別)

(6)科学技術に関する経済安全保障

次に、科学技術に関する次の経済安全保障等について、あなたはどうお考えですかを訊いたところ、図表6-1となり、「わからない」が最多を占める一方、「日本の技術が海外で軍事技術に活用される懸念がある以上、経済安全保障の考えは理解できる」が男性では39%、女性では27%がそのように考えている。「科学技術交流は研究者同士が自由に実施すべきものであり、経済安全保障の考えにより特定の国との科学技術交流に制約がかかることについては懸念がある」が男性では27%、女性では24%がそのように考えている。

年代別に見ると(図表6-2)、年代が上がるにつれて、「日本の技術が海外で軍事技術に活用される懸念がある以上、経済安全保障の考えは理解できる」と回答する者の割合が高くなっていることが分かる。

図表6-1 科学技術に関する次の経済安全保障等について、あなたはどうお考えですか(性別)図表6-1 科学技術に関する次の経済安全保障等について、あなたはどうお考えですか(性別)

図表6-2 科学技術に関する次の経済安全保障等について、あなたはどうお考えですか(年代別)図表6-2 科学技術に関する次の経済安全保障等について、あなたはどうお考えですか(年代別)

4. おわりに

人的国際交流を進める上で、どの地域の国々との交流に、最も重点を置くべきかを訊いたところ、男性では北アメリカが40%と最も高く、次いでわからない(19%)、どの地域とも同じように進める(14%)、西ヨーロッパ(10%)、その他のアジア(6%)、中国(5%)などとなる一方、女性ではわからない(32%)が最も高く、次いで北アメリカ(27%)、どの地域とも同じように進める(20%)、西ヨーロッパ(6%)、その他のアジア(5%)、中国(4%)などとなった。

次に、日本の研究成果を利用した製品等が日本へ流入することについてどう思うかを訊いたところ、「日本でも負けずに優れた製品を開発して対抗すればよい」が男性では36%、女性では28%がそのように考えている。次いで、「そういうことが起こらないように人的国際交流を実施する前に確認すべき」が男性では29%、女性では31%がそのように考えている。年代別に見ると、年代が上がるほど、「日本でも負けずに優れた製品を開発して対抗すればよい」の割合が僅かではあるが高くなっており、「わからない」が減少している。

本調査の実施に際し、多大な御協力を頂いた皆様をはじめとする関係者の方々に心から感謝申し上げる。

参考文献・資料

1) 「国際文化交流に関する世論調査」(平成5年2月27日~平成5年3月9日)、内閣府
https://survey.gov-online.go.jp/h04/H05-02-04-18.html