STI Hz Vol.7, No.4, Part.9:(レポート)日本を含む地域枠組みによる科学技術・高等教育政策-欧州との比較から-STI Horizon

  • PDF:PDF版をダウンロード
  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00276
  • 公開日: 2021.12.20
  • 著者: 岩渕 秀樹
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.7, No.4
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

レポート
日本を含む地域枠組みによる科学技術・高等教育政策
-欧州との比較から-

文部科学省研究開発局環境エネルギー課核融合開発室長/科学技術・学術政策研究所企画課 岩渕 秀樹

概 要

日本を含む地域枠組みによる科学技術・高等教育政策についてまとめるとともに、欧州レベルの政策との比較を試みた。欧州には多いリアリズム的な観点からの政策がほとんど見られないこと、リベラリズム的な観点からの政策はあるが科学技術コミュニティからの政策形成等に欧州との差異があること等を見いだした。その上で、今後の日本における政策展開に対する示唆を探った。

キーワード:科学技術政策,高等教育政策,欧州,アジア,比較

1. はじめに

岩渕(2021)1)では、一国ではなく欧州レベル注1で行われる科学技術・高等教育政策注2の現状と成立過程をまとめた一方、異なる地域における地域主義を比較することが困難なこともあり、日本を含む地域枠組み注3との比較分析には立ち入らなかった。日本の政策立案者にとって、欧州レベルの科学技術・高等教育政策から示唆を得ることは大きな課題であり、本稿ではこの比較分析を試みたい。

2. 日本を含む地域枠組み注4

欧州レベルの政策といっても、その地域枠組みは一様ではなく、例えば、EU加盟国、欧州宇宙機関加盟国、ボローニャ・プロセス参加国は一致しない。ただし、欧州レベルの政策においてEUの存在感は大きく、またEU以外の枠組みも、地理的に欧州に位置する国の参加が基本である。では、日本を含む地域枠組みはどうか。それは非常に多様であり、地理的な広がりも極めて大きいという点も欧州と異なる。すなわち、日本を含む地域枠組みには、日中韓のように物理的に近い国同士のものから、アジア太平洋経済協力(APEC)、日米豪印(クアッド、Quad)のように物理的に離れた国々によるものもある。

欧州の政策からの示唆を論じるには、欧州と「我々」の違いを抑える必要がある。欧州は、ラテン語、キリスト教などで形成されたアイデンティティを持つ (岩渕,2021)。一方、例えば、「アジア」は、「ヨーロッパではないもの」(竹内,1993)2)とも言われ、欧州の対概念として意識される。「アジア概念は、必ずしも自省的な概念として定着したのではない」(秋田・工藤,2010)3)。自省的な概念ではないという点に関し、ソウル大学の張(2005)4)は、「日中韓」を念頭に、19世紀欧州の帝国主義が日中韓三国という地域概念を呼び起こしたと論じる。より最近の「東アジア」の事例で言えば、欧米諸国の人権・民主化外交に対抗するための政治的言説として「アジア的価値観」論が生まれた(山田,2003)5)、アジア通貨危機への対応から「ASEAN+3」という地域概念が生まれた(谷口,2004)6)、などと言われる。このように、アジアなど「我々」を示す概念の曖昧性、多義性は、欧州と「我々」の政策の違いの遠因と言える注5

3. 日本を含む地域枠組みによる科学技術・高等教育政策:現状

3.1 日中韓

日中韓三か国間では首脳会議などが開催され、三か国間の協定により2011年に国際機関「日中韓協力事務局」(TCS)が設立された。2007年から日中韓科学技術大臣会合が、2016年から日中韓教育大臣会合が開催されている。日中韓科学技術大臣会合の下では、我が国の科学技術振興機構、中国科学技術省、韓国研究財団の共同により、気候変動、省エネルギー、防災及び水循環分野における日中韓研究交流事業が実施された。

高等教育分野の取組としては、「キャンパス・アジア」事業がある。これは、日中韓三か国の大学がコンソーシアムを形成し、単位の相互認定や成績管理、学位授与等を行う交流プログラムを実施するものである。2011年に10個のコンソーシアムで開始され、2016年から17個に拡充された。第1回日中韓教育大臣会合の成果文書でも、「『キャンパス・アジア』プログラムを賞賛」している。2011-17年の7年間、同事業により、日本の大学の学生が中韓の大学に2,120名派遣され、中韓の大学の学生を日本の大学に2,226名受け入れている。

3.2 APT(ASEAN+3)

APT(ASEAN Plus Three(日中韓))という枠組みは「1997年夏に始まったアジア通貨・経済危機を契機に」注6生まれた。APTの枠組みには、APT教育大臣会合、APT科学技術委員会がある。APT教育大臣会合の下には「高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループ」が運営され、APT域内の学生の流動性を高める観点から、学生交流と流動性に関するガイドラインなどを策定している。

ASEAN+3と並び、ASEAN+1、例えばASEAN+中国などの枠組みもある。ASEAN+日本の枠組みでは、「日ASEAN科学技術イノベーション共同研究拠点」が2015年から活動している。持続可能な社会構築に向けて、地域共通の課題解決に資する研究を推進するもので、タイ、インドネシア、マレーシアに環境・エネルギー、生物資源・生物多様性、防災の3分野のサテライト拠点を設置し、日本とASEANの研究者による国際共同研究を実施している注7

3.3 東アジア首脳会議(EAS)

東アジア首脳会議(EAS)は、ASEAN10か国と日中韓印豪NZの16か国で2005年から開催され、2011年から米国とロシアも参加している。2008年には、EAS当初参加16か国の首脳の合意に基づき、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)がインドネシアに設立された。2012年から実施されている「e-ASIA 共同研究プログラム」は、EAS参加国の公的ファンディング機関が連携し、東南アジアを中心とした地域の研究開発力の強化と地域共通課題の解決を目指し、3か国以上の多国間共同研究・研究交流を推進する事業である。

3.4 アジア太平洋経済協力(APEC)

APECは、アジア太平洋地域の21の国と地域(エコノミー)が参加する経済協力の枠組みであり、1989年に閣僚会議として開始され、シンガポールに事務局がある。科学技術分野では、科学技術イノベーション政策パートナーシップがあり、産業界、学界からの参加も得て、商業化、イノベーション能力の促進及びメンバーエコノミー間のイノベーション協力の促進に取り組んでいる。教育分野は、人材養成作業部会の中で取り扱われている。

具体的な取組としては、APECエンジニア相互承認プロジェクトがある。これは、1995年のAPEC首脳会議において、参加エコノミー間での技術者資格に関する相互承認に基づく有資格技術者の流動化促進が決議されたことを受け、実現したものである。2000年、APECエンジニアの要件が公表され、創設された。当初7エコノミー(日本、豪、加、中国香港、韓国、マレーシア、ニュージーランド(NZ))でAPECエンジニアの登録が開始され、現在は14エコノミーが参加している。

3.5 アジア欧州会合(ASEM)

ASEMは、1994年にシンガポールが提案し、1996年に第1回会合が開始された枠組み。アジア、欧州の合計51か国と2機関により構成されている。オープンで包括的な「対話と協力の枠組み」であり常設の事務局もない。本稿との関連では、ASEMが設立したアジア欧州財団(ASEF)の下、ASEF Summer University等の学生交流が行われている。

3.6 インド太平洋

インド太平洋の枠組みとして日米豪印(クアッド、Quad)の活動が近年活発である。Quadは2007年に端緒を得て、2017年に局長級、2019年に外相級、2021年に首脳級の会談が実現した。初の首脳会談の共同声明では重要・新興技術作業部会の設置が言及されている。2021年7月、国際会議の席上、井上科学技術政策担当大臣は、「基本的価値観を同じくする同志国との連携を密にしながら、AIに限らず、様々な新興技術の研究開発等、科学技術の発展やイノベーションを促進するとともに、自由で民主的な社会を守るために協働していきたい」旨を述べ、議論を通じて、米豪印など同志国との科学技術協力を強化していく方針を確認したとされる注8

3.7 その他

高等教育分野では、欧州のリスボン承認条約のアジア太平洋版と言える「高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約」(東京規約)が2018年に発効しており、日中韓豪NZの5か国が加入している。さらに、政府以外の主体が主導する取組も見られる。例えば、東アジア天文台(EAO)は、日中韓と台湾の天文台により、ハワイのマウナケア山頂にある望遠鏡を運用することを主目的に設立され、ハワイ州の非営利法人として登記されている。

4. 日本を含む地域枠組みによる科学技術・高等教育政策:その特徴

欧州と比べた際、日本を含む地域枠組みによる科学技術・高等教育政策の特徴は何か。

第一に、枠組みの多様性が異なる。欧州の枠組みは物理的に一定の空間に限定されるのが基本であり、EUという支配的な枠組みもある。一方、日本を含む地域枠組みは、北東アジアからインド太平洋まで極めて多様であり、空間的な広がりが大きく、EUのような支配的な枠組みもない。第二に、枠組みの歴史が異なる。欧州レベルの科学技術・高等教育政策は、第一次大戦頃を端緒とし、第二次大戦直後から具現化している。一方、日本を含む地域枠組みでの政策は、古いもので1990年代、多くは21世紀に入って開始されたにすぎない。

更なる特徴を深堀りすべく、岩渕(2021)において欧州の事例を分析したのと同様に、国際関係論と地域主義論/地域統合論をツール注9として、分析したい。

4.1 リアリズムによる分析

欧州では、安全保障上の国益と近い原子力、宇宙等の分野で、米国(冷戦時代には加えて「ソ連」)を意識しつつ、欧州の生存、競争力確保のために欧州レベルの政策を推進してきた。こうした意味での政策は、日本を含む地域枠組みによる科学技術・高等教育政策には皆無である。この違いは、我々の地域ではイデオロギーの対立構造がまだ終焉しておらず、安全保障上の価値を域内で共有できない点から来るのだろう。また、欧州が、米国との関係から欧州の生存を意識するのは、欧州がもつ長い歴史の蓄積にも関わる。我々の地域とは背景が異なる面もある。一方、近年、インド太平洋の枠組みで、安全保障の観点も強く意識しつつ科学技術政策が論じられ始めた点は、新たな政策潮流として注目する価値が高い。

4.2 リベラリズムによる分析

欧州でも、日本を含む地域枠組みでも、域内経済の相互依存関係の大きさは、地域レベルの科学技術・高等教育政策の推進力である。地域内の経済依存関係の強まりが、エラスムス+等の人材育成政策を生んだ点などは共通している。図表に示す通り、ASEAN+3諸国の域内貿易シェアは3-6割程度、ドイツのEU域内貿易シェアは約5割と、域内貿易シェアは共に高い。一方、最近20年間で、域内貿易比率を日本は大幅に増し、中国は減らすなど、国ごとの差異も大きく、域内を見る目線は各様である。また、東アジアの国々は、北米との経済関係の比重が大きい点も注意したい。APECや、2018年発効の環太平洋パートナーシップ協定などの枠組みは、物理的な距離の近さよりも、現実の経済の相互依存関係を意識している。科学技術・高等教育分野でも、現実の経済関係を意識した枠組み選びは重要だろう。

リベラリズムに基づく科学技術・高等教育政策で、欧州には多いが、日本を含む地域枠組みに少ないものとしては、(a) 域外との競争の観点から域内の技術競争力を追求した事例(ESA等)、(b) 巨大科学の経済合理性を追求した事例(欧州原子核研究機構(CERN)等)、(c) 平和安定・信頼醸成を追求した事例(欧州大学院大学等)がある。この違いをどう見るべきか。(a) に関し、東アジア地域の国の政治経済体制は多様であり、域外との関係から域内共通政策を考えるのには限界がある。こうした政策を追求する枠組みは、地理的な近接性ではなく、属する体制に基づかざるを得ない。(b) のような欧州事例が、日本を含む枠組みではごく少数の事例に限定されているのは不思議である。域内の経済・科学技術水準の格差縮小は、こうした取組の価値を高めているのではないか。(c) に関しては、第二次大戦直後の欧州統合を希求する社会運動が政策を生み出した欧州と異なり、冷戦による分断などもあった東アジアなどにはこうした機会がなかったものと思われる。

図表 貿易相手国(地域別シェア)図表 貿易相手国(地域別シェア)

出典:世界銀行WITS統計
【注】All productsの輸出額と輸入額の合計について、貿易相手国の地域別シェアを、日本、中国、タイ、ドイツで比較したもの。
4.3 コンストラクティヴィズムによる分析

欧州では、「文芸共和国」の伝統、戦後の欧州運動、欧州統合論、ド・ゴール主義、「欧州」を米国との対抗意識から捉える伝統等に基づき、欧州レベルの多くの政策が企画、実施されてきた。同様の政策は、日本を含む地域枠組みにはほとんど見られない。この違いの理由は何か。例えば、東アジア概念がアジア通貨危機の1997年からの短い歴史しかなく、共有するアイデンティティが不足しているなどの事情もあろう。時代をさかのぼれば、帝国主義全盛の19世紀末、「同文」などの概念を基に、日本留学論が清国内で説かれ(山室,2001)9)、孫文はアジア主義を唱えた(趙,2013)10)。現代でも域内留学は盛んである。さらに、ライフスタイル、ポップカルチャーの共有が、今後、域内のアイデンティティを深めれば、政策環境も整うだろう。コンストラクティヴィズムのもう一つの兆しは、インド太平洋の枠組みである。「自由で民主的な社会を守る」といった理念重視の政策は、今後の展開が注目される。

4.4 機能主義による分析

欧州レベルの政策では、EUやESAのような国際機関が大きな役割を担っている。日本を含む地域枠組みでは、同様の国際機関はTCS程度しかなく、TCSも科学技術・高等教育政策分野での主体的役割はない。

では、国際機関以外の非政府主体の役割はどうか。欧州レベルの政策は、科学者、研究機関が企画立案し、主導するケースが極めて多い(CERN、欧州分子生物学研究所(EMBL)、欧州共同トーラス(JET)など)。一方、我々の地域では、東アジア天文台のような例外的事例に止まる。域内の留学は盛んで、研究人材の域内流動性も高く、国際共著のような個人レベルでの研究協力も活発なのにも関わらず不思議なことである。「域内」の科学者が「地域」アイデンティティを持たないためか、権威主義、国家主義の傾向が強い東アジアのような地域ではボトムアップの案件形成自体が困難なのか、更なる分析を要する。

ところで、科学者主導の欧州レベルの政策は巨大科学の分野で顕著だが、巨大科学が更に巨大化すれば、「地域」を越えた協力も必要だろう。日欧米など7極が推進するITER(国際熱核融合実験炉)は、「地域」を越えたグローバル協力の先行事例である。

最近のEUの試みも興味深い。EUが2021年に開始した研究開発プログラム「Horizon Europe」では、「ルールに基づく開かれた市場経済」「人権の尊重」「民主的機関により支えられていること」(EU規則2021/695)等を、EU域外国が同プログラムに準参加する要件とした。欧州統合の理念実現を担ってきたEUが、その理念を域外国との科学技術協力に適用してきたとも言える。コンストラクティヴィズムと機能主義の組合せによる新たな政策動向ではないか。

4.5 政府間主義による分析

欧州と比べると、日本を含む地域枠組みでは、国際機関の不在、科学技術・高等教育コミュニティ自身の静寂もあり、国の枠組みを超える取組の推進主体としても各国政府の役割が大きい。政府間主義といっても、欧州の場合、研究機関、大学など非政府主体が政策形成を主導した上で、最終的な意思決定を政府間交渉で確定するスタイルが中心である。一方、日本を含む地域枠組みでは、非政府主体の政策形成力は弱く、EUのような強力な国際機関もなく、構成国の数も多いため、政府間協議には手間と時間がかかる。政府間主義による協力を実効的にするには、二国間協力や、少数の有志国による協力に強みがあろう。

5. 今後の日本における政策展開に対する示唆

最後に、本稿から得られる今後の日本における政策展開に対する示唆をまとめたい。

第一に、日本の科学者、研究機関、大学への示唆である。欧州レベルでの政策の進展とともに、論文被引用度など科学技術・高等教育の質で欧州が日本を引き離しつつある点に、現場の当事者は危機感を抱いているだろう。特に、クリティカルマスが必要な研究分野は、日本一国では欧州や米国に太刀打ちしがたい。欧州の科学者らが長年取り組んだように、世界と肩を並べて研究を実施するには、国を越えた取組を積極的に政府に提案することが重要になろう。

第二に、日本の政策立案者への示唆である。今後、日本の科学者、研究機関、大学が、国を越えた取組を政府に提案する際、こうした提案を検討し、政策として具現化することが政府に求められる。この際、リベラリズム的には域内の相互依存関係に、リアリズム的には安全保障に注目することが鍵だろう。

日本経済は、東アジア域内との相互依存関係を近年強めており、国を越えた政策展開を考える際も、その相互依存関係を意識する必要がある。既にキャンパス・アジア、東京規約などの人材育成政策は、かかる観点から欧州レベルの取組をベンチマークし、推進されてきたが、こうした流れを更に進めることが必要だろう。

自由で民主的な社会を守るためのQuad科学技術協力や、ルール、市場、人権、民主を重視する欧州の「Horizon Europe」など、安全保障を意識したリアリズム的な政策展開も近年のトレンドである。この中でどのような政策を今後展開するのか、知恵を集める価値があろう。

第三に、日本の政治への示唆である。欧州レベルの科学技術・高等教育政策の成立過程では、モネ、ド・ゴールなどの強力な政治的リーダーシップが重要な役割を果たした。リベラリストの機能主義者であるモネと、リアリストの政府間主義者であるド・ゴールでは欧州レベルの政策を求めた理由は全く異なるが、欧州レベルの政策を大きく進展させた点は共通する。今後、日本を含む地域枠組みを用いて国策を検討するような政治局面で、科学技術・高等教育政策に着目する価値は高い。この政策分野が、欧州レベルの政策の効果を示す有力な「マスコット」になったことを、CERN、エラスムスなど欧州の経験は示している。


注1 欧州では、欧州連合(EU)はもちろん、欧州宇宙機関(ESA)のような分野別国際機関や、ボローニャ・プロセスのような政府間枠組みでも科学技術・高等教育政策が実施されている。

注2 岩渕(2021)に述べた通り、科学技術政策と高等教育政策とは異なる由来を持つ一方で、知識社会の実現のために重要な役割を果たす、相互に密接に関連する政策であることから、本稿ではこれら2つの政策を対象とする。

注3 本稿では、欧州、アジア太平洋、東アジアのような地域を対象とし、多国間で構成する国際機関、国際協定、政府間会議体などを地域枠組みと称する。

注4 日本を含む地域枠組みには、日中韓(北東アジア)、東アジア(ASEAN+3)、アジア太平洋、インド太平洋などがあり多様である。

注5 一方、儒学や漢字が北東アジア文化アイデンティティを生んだ(蔡,2013)7)、ポップカルチャーなど現代文化により内発的にアジアが形成されている(白石,2004)8)との議論もある。

注6 外務省ウェブサイト(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/asean/asean3/index.html

注7 日ASEAN科学技術イノベーション共同研究拠点ウェブサイト(http://jastip.org/

注9 国際関係論としては、リアリズム、リベラリズム、コンストラクティヴィズムを、地域主義論/地域統合論としては、機能主義、政府間主義を取り上げた。各理論の補足説明は岩渕(2021)に記載した。

参考文献・資料

1) 岩渕秀樹(2021),欧州レベルの科学技術・高等教育政策~現状と成立過程~,科学技術・学術政策研究所調査資料No.307,2021年5月

2) 竹内好(1993),日本のアジア主義(所収:竹内好(1993),日本とアジア、ちくま学芸文庫、pp.287-354)

3) 秋田道子・工藤献(2010),東アジアにおける政治文化と地域意識:「アジア的価値」論に内在するオリエンタリズムの考察,立命館言語文化研究,21(3),2010-01,pp.119-128

4) 張寅性(2005),近代東アジア国際秩序と近代化(所収:日韓歴史共同研究委員会(編),日韓歴史共同研究報告書第3分科篇上巻,pp.103-123)

5) 山田洋(2003),「アジア的価値観」の意味論,ソシオサイエンス,Vol.9,pp.135-149,2003年3月

6) 谷口誠(2004),東アジア共同体―経済統合のゆくえと日本―,岩波新書

7) 蔡建(2013)(邱燕凌訳),北東アジア文化アイデンティティーの構築―困難な状況とその出口―,北東アジア研究,別冊第2号,2013年5月

8) 白石隆(2004),基調報告①,東アジアとは何か?その歴史的、文化的基盤,東アジア共同体評議会政策本会議第3回会合速記録,2004年9月22日

9) 山室信一(2001),思想課題としてのアジア,岩波書店

10) 趙軍(2013),孫文の理想と東アジア共同体構築への示唆,千葉商大紀要,50巻,2号,pp.1-11