STI Hz Vol.7, No.4, Part.7:(ほらいずん)科学技術・学術政策研究所におけるリサーチアシスタント制度STI Horizon

  • PDF:PDF版をダウンロード
  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00274
  • 公開日: 2021.12.20
  • 著者: 黒田 玄、宮地 俊一
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.7, No.4
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

ほらいずん
科学技術・学術政策研究所におけるリサーチアシスタント制度

企画課 黒田 玄、課長 宮地 俊一

概 要

科学技術・学術政策研究所(以下、NISTEP)では、専門的な知識、経験等を有する大学院生をリサーチアシスタント(非常勤の国家公務員)として雇用している。NISTEPの調査研究に参画いただける貴重な機会でNISTEPの研究官やリサーチアシスタント同士との交流など、かけがえのない経験を積む機会にもなっている。特に、文部科学省の直轄研究所で国家公務員の一員として研究活動に従事した経歴は、大学院修了後の多様なキャリアパスを(ひら)く上で評価される制度である。

2021年5月の制度開始以降、これまで(10月現在)のべ6名の方をリサーチアシスタントとして受け入れた。リサーチアシスタントは、公募のほか、必要性から公募によらない場合、また、リサーチアシスタントの募集期間以外にも、受入れ可能な場合があるので、詳細はお問い合わせいただきたい。雇用条件は、雇用開始時点で国内の大学等に在籍する大学院生であることと、在籍機関の同意が必要。

リサーチアシスタントとして雇用された大学院生は、以下の業務内容例のように、特定の研究室やグループにおいて、研究主宰者の指導のもと、調査研究に参画いただく。

キーワード:大学院生,リサーチアシスタント,非常勤国家公務員,雇用,キャリアパス

【リサーチアシスタントの業務内容例】

データ解析政策研究室

データ解析政策研究室では日本におけるデータ公開などオープンサイエンスの実態の把握を行っている。リサーチアシスタントは、このうち、2020年に行われた「研究データ公開と論文のオープンアクセスに関する実態調査」2020年版について集計結果の加工・分析・クロス集計・自由記述の分類を行った。また、同2016年版、2018年版の都合3つの自由記述のデータ等を比較して、研究者のオープンアクセスに関する意識の変化を定量的に示すなどの調査研究にも取り組み、その結果を学会大会で発表した。

科学技術予測・政策基盤調査研究センター(基盤調査研究グループ)

基盤調査研究グループでは多様な分野の研究者が集まる拠点を作ることが研究チームの多様性に与える影響を分析している。リサーチアシスタントは、このうち我が国における研究活動の分野多様性の状況を把握する上で重要な論文書誌データを用いて、我が国の研究組織と共著チームの分野多様性の計測及び両者の分野多様性の関係に関する分析に取り組み、本グループの研究員と定期的な議論、所内有識者への研究相談の機会を設けながら、分析に利用するデータ、分析手法の検討を進めている。

上記のほか、基盤調査研究グループでは、科学計量学の研究にも取り組んでいる。リサーチアシスタントは、このうち自然科学と人文社会科学の間で論文の引用が行われている場合に、それがどのような文脈でなされた引用であるかを判定する作業を行っている。また、引用文脈の判定作業に必要となるデータ(論文の書誌情報や本文データ等)の整備を行うとともに、関連する先行研究を探索している。

科学技術予測・政策基盤調査研究センター(動向分析・予測研究グループ)

動向分析・予測研究グループでは、科学技術をベースとした将来展望の継続的な実施を行うとともに、新しい予測(フォーサイト)手法の開拓にも取り組んでいる。リサーチアシスタントは、このうち「ありうる」又は「ありたい」将来像や、想定される制約条件を前提として、バックキャスト的アプローチに基づき、専門家が将来社会の課題と研究のつながりをどのようにとらえているのか、専門家ネットワークを通じたアンケート調査の分析を行っている。また、フォーサイト(科学技術の未来予測)研究においてサイエンス・フィクションをどのように生かしていくか、文献調査も進めている。

第1調査研究グループ

第1調査研究グループでは、博士号取得者をはじめとする科学技術・イノベーション人材に関する調査研究に取り組んでおり、今年度の前半は、博士課程学生及び修了者を対象に、新型コロナウイルス感染症対応が研究生産性に与える影響について、博士人材データベース(JGRAD)を通じてアンケートを行った。リサーチアシスタントは、このうちアンケート結果を質問項目ごとに集計・加工・分析することや、その結果を専門外の方にも分かりやすく可視化した図・表を作成すること、自由回答を主題別に分類する作業と報告書全体の校正を行った。

リサーチアシスタント交流会について

NISTEPではリサーチアシスタントの方々とNISTEPの多様なバックグラウンドやキャリアを有する研究官等が交流する機会も設けている。本年6月には、当時リサーチアシスタント4名と科学技術予測・政策基盤調査研究センター(動向分析・予測研究グループ)の黒木研究官らとサーチアシスタント交流会をオンラインで実施した。

交流会では、黒木研究官より自身の研究内容の詳細を解説するとともに、リサーチアシスタントが大学院で研究されている内容についてプレゼンテーションとディスカッションを行い、交流を深めた。

以上のように、リサーチアシスタント制度は大学院生に、非常勤の国家公務員としての雇用機会を提供するとともに、御自身の研究に役立つ経験を積むことができる貴重な機会となっている。NISTEPの研究官やリサーチアシスタント同士の交流の輪を広げ、将来のキャリアパスへの展望を拓く契機にもなりえる。意欲ある大学院生の応募をお待ちする。

企画課によるNISTEPの概要説明企画課によるNISTEPの概要説明

黒木研究官による研究内容の説明黒木研究官による研究内容の説明

詳細情報

リサーチアシスタント制度の紹介:https://www.nistep.go.jp/archives/47334