STI Hz Vol.9, No.2, Part.5:東京大学生産技術研究所 講師 杉原 加織 氏インタビュー-脂質を使ったバイオエンジニアリング-STI Horizon

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  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00333
  • 公開日: 2023.07.12
  • 著者: 相原 佑康、蒲生 秀典
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.9, No.2
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

ナイスステップな研究者から見た変化の新潮流
東京大学生産技術研究所 講師 杉原 加織 氏インタビュー
-脂質を使ったバイオエンジニアリング-

聞き手:企画課 課長 相原 佑康
科学技術予測・政策基盤調査研究センター 特別研究員 蒲生 秀典

自己組織化は自然が生命を生み出すために選んだ高効率・低エネルギーのナノファブリケーション手法である。しかし、その人為的制御はまだ難しいため、産業応用は限られている。杉原加織氏は、脂質やペプチド、タンパク質など生体分子の自己組織化をつかさどる物理を綿密に追求し、超分子構造と機能、人体内での生理的な役割を突き止める途上で得た知見をもとに、材料工学やバイオメディカル・エンジニアリング分野への応用を目指して研究を推進してきた。今回のインタビューでは、研究者を志したきっかけ、研究成果の創出につながったと感じる要因、今後の研究の展望、研究環境に関する御意見などの話を伺った。

- 研究者を志したきっかけについて教えてください

○父親が大学の教員で、研究者になりたいと思った

父が大学の教員で幼少のときから大学に良く行っていました。保育園に母が迎えに来られないときは父が迎えに来て、そのまま大学の研究室に行って絵を描いたりしていました。そういう環境で育って、父が毎日非常に楽しそうでしたので、自分も研究者になりたいと思っていました。修士課程に入り周囲が就活を始めたのを見て、研究者以外の道を全く考えなくて良いのだろうかと気付きました。それで、日本企業の研究所の見学に幾つか行きました。そのときの印象は、企業での研究生活は大学の研究生活と似ていると感じました。それと全く異なるジャンルの職業も経験してみようと思い、ブルガリアの不動産企業でアルバイトもしました。インターンを紹介する学生団体のようなものがあり、そこに登録しました。人気のある英国や米国などはすぐに埋まってしまうのですが、残っていたブルガリアを紹介されました。当時私は、ブルガリアに関してはヨーグルトぐらいしか知りませんでしたが、2、3か月間行ってみることにしました。私は小さいときアメリカに1年間住んでいて、その後高校のときに1か月ぐらい夏休みを利用してカナダに語学留学しましたが、それ以外では1人での長期海外滞在は初めてで、非常に刺激を受けました。

○ブルガリアでの不動産アルバイトで研究者向きであると実感

当時、ブルガリアがEUに加盟する直前で国が発展していて、不動産の価格もすごく上がっている時期で、そこで不動産を売る仕事を経験しました。投機筋が買いに来るので、英国人やロシア人などの大金持ちの人が来て、そういう人たちに物件を見せながら、お酒を飲みながら売るというような仕事で、私は衝撃を受けました。言語に関しては、ブルガリア語は挨拶や買物ができる程度は勉強しましたが、仕事はボスがスコットランド人で会社内は全て英語でした。結論を言うと、このような経験は非常に楽しかったのですが、私はセールスマンとしては非常に成績が悪く、向いていないと思いました。日本に帰り、やはり研究の方が自分は向いていると考え、納得して研究の道を選びました。

- 進路選択に当たって給与面について何かお考えはありましたか

進路選択の時には、給料については余り調べていませんでした。それに当時は企業も初任給が低い時代でしたので、恐らく研究者として残るのと企業への就職とでは、大きな差はないように感じていました。また、私は海外、特にヨーロッパを進路として考えていたので、博士課程でも給料がもらえると想定していました。ただ、ヨーロッパや米国の博士課程の給料が幾らかは場所によるので、行ってみないと分かりません。当時は初任給が高い方というよりも、いろいろな経験を積んで最終的にやりたいと思える職業に就きたいと考えていました。

- 職業の安定性みたいな意識はありましたか

私たちの時代は、インターネットがまだ普及し始めた頃で、そんなに多くの情報はなかったと思います。アカデミアに残ると、この先どうなるのかといった情報がなかったというか、私がそこまで考えていなかっただけなのかもしれません。余り言いたくありませんが、多分自信があって、何とかなるさみたいなところがあったので、余り深く考えなかったように思います。しかし後になって女性と男性で少し考え方が違うのかなと思い始めています。私と同世代の男性ですとまだ日本では家庭で大黒柱の方が多いので、任期付きですと家族の生活に関わるみたいな方はたくさんいらっしゃると思います。それに対して女性研究者は旦那さんが働いている場合が多いので、最悪少しの間無職になっても大丈夫と無意識に思うのかもしれません。その点で女性研究者の方が海外に行かれる方、リスクを取る方が、私の周りでも多いと今になって感じます。

- これまでの研究において印象に残ったことについて教えてください

○実験を失敗したことで新しい現象を発見した経験

6、7年前ですが、私たちの研究室では、抗菌ペプチドの研究をしていて、これは私たちの体がバクテリアに感染したときに作り出す天然の抗菌薬です。バクテリアの細胞膜に着いてぐちゃぐちゃにすることで、バクテリアを殺すペプチドです。当時、シナジーと呼ばれる現象が知られていて、2つのペプチドを混ぜると抗菌作用が向上するというものですが、そのメカニズムは分かっていませんでした。先行論文では異種の2つのペプチドをバクテリアに載せると、より多く死滅すると報告されていましたが、私たちはそのメカニズムを調べたかったため、バクテリアの細胞膜だけ人工的に作りました。この人工の細胞膜に2つのペプチドを載せたところ、むしろ細胞膜が保護されるような現象が見られ、先行論文とは真逆の結果が得られました。同じ実験を何度も行い、更に手法も変えて実験を行い確認しました。結果、誰がどの手法で行っても同じ結果が出ました。よく考えてみると、私たちが使っていた人工の細胞膜は、POPC(1-Palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)という脂質を使っていまして、実はこれはバクテリアの細胞膜ではなく、人間の細胞膜に似ている膜でした。私たちの実験は、2つのペプチドをバクテリアに載せるというよりも、2つのペプチドを混ぜて人間の細胞膜に載せる実験をしていたことに気付きました。2つのペプチドは混ぜてバクテリアに載せると殺菌作用が上がるけれど、混ぜて人間の細胞に載せると毒性が下がるダブル・コオペラティブ効果、すなわち敵と味方で、2つのペプチドを混ぜたときの機能が守備と攻撃にスイッチングするという現象を、初めて発見しました。これは本当に偶然の発見で、失敗と思ったところから始まった発見なのです。このときのように予想と違う結果が出たときは、何かを見落としています。これは、自分たちが知らないことがあり、今まで理解できなかった部分を見つけることにつながるのだと思います。私は学生が真逆の結果を持ってくると、あっ来たかという感じで、自暴自棄にならずに丁寧に調べることで、そういう発見がまたあるだろうと期待しています。

図表1 ペプチドと脂質によるナノディスク構造(左)。ペプチドが膜に穴を開ける様子を電気生理手法で観測した様子(右)。

図表1 ペプチドと脂質によるナノディスク構造(左)。ペプチドが膜に穴を開ける様子を電気生理手法で観測した様子(右)。

出典:Biophysical Journal 2020, 119(12), 2440-2450.
○思いがけない実験結果が出たときこそチャンスと捉える

私たちもうまくいかなかった実験の全てを、良い成果につなげられているわけではありません。私が面白いと思うのは、まず1人が実験をした結果と、2人目の人の結果が異なったとき、つまり実験の再現性が取れなかったときに、私は少しワクワクします。それは1回目と2回目でパラメータが違う、それは湿度かもしれないし、地球の磁場かもしれない、分かりませんが、何かが違うから結果が違うわけで、しかしそれが何かは明らかではありません。私たちが今まで気付いてないものなので、そういうときは、これまで自分たちは考えていなかった、その系を支配している重要な要素があるということなのです。それを見つけることができるとその系をコントロールしているコアとなるようなものが見えてきます。再現性が取れない実験は、本当にイライラしますし、学生もくじけてしまうこともありますが、私はそういうときは、ピンチはチャンスと捉え、丁寧に全部パラメータを調べて、これだというのが分かったときには、面白い発見につながる可能性があると思っています。

○時間をかけても解明できないときは

これまでの研究で、本当に知りたいと思ったものは、幸運にも時間をかければ分かることが多かったですが、確かに行き詰まることはあります。そういうときはそれだけをやらないで、例えば、学生であればテーマを2つ出して、再現性が取れない理由を探すテーマと、もう少し成功確率が高いような実験を並立してやることで、1年後に最悪一方で何も出なくても一方で修論が書けるような状況にはしています。それと、全く違う発想で見たときに答えが浮かぶこともあるので、1つのテーマよりは他のことをやっている最中に、もしかしてこれじゃないかと思いついて、もう一方の実験に戻るとうまくいくこともよくあります。実験に行き詰まった学生には、じゃあちょっと気分を変えるために、他のことをやってみようかと言うのは非常に有効だと思っています。

○未解決問題の方がはるかに多い

私は成功したときの印象が強くて、あたかも自分は解けているような気がしていますけど、実際は未解決問題みたいなものを、人生の中でたくさん残してきています。感覚的には8割ぐらいは未解決ではないでしょうか。この8割の未解決の課題に時間をかけてここに止まるべきなのか、もうそれはいいとして前へ進むべきなのかという決断を研究者は日々迫られています。私は前に進むタイプかもしれないですが、これは面白いというところは時間をかけます。だからといってそれが成功するわけでもありませんが、感覚的には取り組んでも分からないことの方が、分かることよりもはるかに多いです。

○物理学の思考で実験を組み立てる

私は元々物理出身ですので、非常に抽象的な話になってしまいますが、実験を組み立てたりするときには、頭の中でモデルみたいなものを考えます。私の卒論の指導教員である慶應義塾大学の江藤幹雄先生は、『理論というのは、別に実験の数値を完全に再現するためにあるのではなく、実験の数値を大体再現することで、その系では何が一番重要なのかという要素を抽出し、実験家に直感を与えるのが仕事だ』と言っていました。私はこれを名言だと思っています。例えば、一番効いているのは濃度なのか温度なのかとか、この系で何の要素が一番現象を支配しているのかを、ある程度理論的に理解することで、その系に対する直感が生まれます。やはりその系で一番コアとなっているエレメントを見つけることで直感を身につけるのは大切だと思います。

- 耐性菌に対応した新たな抗生物質の開発について

2つのペプチドを混ぜるだけで、多くのバクテリアを殺せる一方で人間に対する副作用を軽減させる抗菌薬、抗生物質ができる可能性を先ほど話しました。現在、耐性菌と呼ばれて、抗生物質が効かないバクテリアが出始めています。日本は非常に衛生観念が良いので、余り聞かないかもしれませんが、米国やインドでは、多くの方が亡くなっています。最悪の場合、COVID-19と同じぐらいの感染力で、致死率が50%というようなパンデミックが起こるのではないかと危惧されています。このような耐性菌は、抗生物質が効かなくなっているので、他に何か探す必要があり、これまで話をしていた抗菌ペプチドはその代わりになる可能性があると言われています。それで現在研究しているダブル・コオペラティブ効果という原理を使って、高い効果と低い副作用の新しい抗生物質を作り、耐性菌そしてパンデミックに備えることが、私たちの長期的な目標です。

○基礎研究から共同研究へ

この研究を進めるためには共同研究が不可欠です。物理科学の実験は良いのですが、生物のバックグラウンドがない人間にとっては、細胞を使う実験はハードルが上がります。それでも、細胞実験は自分たちで頑張ってやりますが、その後のマウスモデルになるとお手上げで、基礎研究をしている人はどうしてもそこで止まってしまって一歩先へ行けない人が多いのです。幸いにも、私のいる生産技術研究所にはそのような分野の研究者がたくさんいますので、その方たちに助けていただいて共同研究をしてプロジェクトを基礎研究で止まらずに動物実験まで行ってみようと思っています。

○応用研究は手間がかかるが

共同研究は断られることは余りありません。研究者同士は、やはり他の人の研究にも興味がありますし、持ちつ持たれつのところもありますので、そういう意味では研究者のやる気次第だと思います。なかなか前に進まないと言いましたが、できないというよりも、やらない人が、私も含めて多い気がします。基礎実験をやっている限りは自分の安全ゾーンから出なくていいけれども、その外へ出ると訳の分からないこともたくさんあります。動物実験となると倫理などの関係書類も多くなって、1回の実験をするのに3年かかったりしますので、論文も全く出ないし成果も出ない、そして多くの研究費も必要です。そんなことをしているぐらいなら、基礎研究をやって論文を出したいと思う人は、私も含めてたくさんいると思います。しかし、そういった手間のかかることをかいくぐってやる実験だからこそ、成功したときのインパクトが高いのだと思います。1人ではできないけれども、助けてくれる共同研究者が見つかれば進めていきたいと考えています。

- メカノクロミックポリマーを用いたバイオセンサの開発

ここまでお話ししたペプチドは、バクテリアの細胞膜の中の脂質という分子に着いて穴を開けてぐちゃぐちゃにするものでした。私の専門は脂質ですが、自己組織化と言いますが、ある環境に置くと勝手な形になる性質を持つもので、紫外線を当てるとポリマーになる特殊な脂質を使うことで、様々な形のポリマーを作ることができます。この脂質ポリマーはメカノクロミックポリマーといって、力を加えると色が変化したり、発光したりします。私たちの研究室には、原子間力顕微鏡という、極小のレコード針のようなもので、ナノスケールで力をコントロールする装置があって、それでポリマーに力を局所的に与えることで、ポリマーのどの向きにどのぐらい力をかけると、どのぐらい発光するかという力と発光の相関を定量的にナノスケールで計測することができます。このような基礎研究を進めることで、ポリマーに力を加えたり、刺激を加えたりすることで色が変わったり、発光したりするメカニズムを解明して、将来的には何かのセンサを作りたいと考えています。例えば力のセンサでしたら、摩擦のセンサなどです。またある種のペプチドが着くことでも色が変わります。これは生体分子がポリマーに着くときに微小な力が加わるからです。したがってより微小なスケールの生態分子同士の力も観測できる可能性があるので、そういったものを検知するバイオセンサも作りたいと思っています。更にペプチドの機能をカテゴライズするためのファンクショナルアッセイもこのポリマーで作りたいと考えています。

○バイオセンサの応用例~パッケージングによるヒストリー管理~

応用研究例として現在、包装紙に組み込んでパッケージングのプロジェクトを進めています。パッケージングすると、例えば荷物を落としたときに衝撃が加わるので、そこだけ赤くなり、配送中に落としたことが分かるなど、荷物の衝撃のヒストリーを記録することができます。またメカノクロミックポリマーは、温度によっても色が変わります。例えば、コロナワクチンが5℃以下で管理されなければならないのに、冷蔵庫が一瞬切れて20℃に上がって廃棄したという報道がありましたが、そういった温度管理もできます。箱に一周りこのメカノクロミックポリマーで作ったシールみたいなものを貼っておけば、5℃のときは青、20℃になった瞬間赤になり、その後5℃に下がっても赤のまま残り続けるようなセンサも作ることできます。そうすると商品が運搬されているときに、その温度のヒストリーが記録されるので、一度でも20℃を超えたら色が変わるので分かります。コロナワクチンであれば温度ロガーをつければ良いかもしれませんが、野菜とか魚とか、コストをかけられないような用途にも安価ですので使えます。

図表2 メカノクロミックポリマーを用いたセンサの開発図表2 メカノクロミックポリマーを用いたセンサの開発

出典:Nano Lett 2021, 21(1), 543-549.

- 先生は何に自分のリソースを一番の重きをおかれていますか

正直に言うと、第1は資金の獲得です。十分なお金を確保して、学生にこの実験をやりたいと言われたらできるようにしてあげること。例えばペプチドのNMR(核磁気共鳴)分析などは1回で30万円程度かかります。学生がこういう理由でやってみたいと言ってきたときはできるように、十分なお金を取ることは大切だと思っています。次に、学生や他の研究者とのディスカッションです。研究者としてはこれが一番楽しい時間なのですが、大学関連の打合せや事務作業などが入り、時間の確保はなかなか大変なのが実情です。

- 研究に専念するために改善すべき点があれば教えてください

挙げ始めたらきりがないですが、私はスイスでもずっと研究室を持っていましたので、日本との差は大きいことは実感しています。まず、教授会のようなものの頻度が多分スイスと比べると日本は5倍ぐらい多いと思います。とにかく集まってミーティングみたいなものの数がすごく多いですし、委員会とかタスクフォース的なもの、とにかく何かあるとコミティ(委員会)を組んで満足するみたいなものが大量にあって、これは何とかすべきだと思います。それと競争資金に関しては、取った後のレポートの数が日本の方が多いイメージがあります。例えば3年のプロジェクトでは、ヨーロッパは3年後に1回レポートを書けば終わりですが、日本の場合には毎年書かなければならないのもあったり、ひどいのになると毎月書かなければいけないものもあったりするので、その辺も改良の余地があると思います。

○研究支援事務の大変さ

他には、私の研究室は留学生がたくさんいて、留学生を誘致するときの手続が、スイスにいるときは、すべてバックグラウンドで事務がやってくださって、私は一切何もしていませんでした。今はすべて研究室でやるように言われて、最初はすべて自分でやって大変でしたが、秘書を雇えるようになって、先ほど言ったようにお金があればその人を雇うことができるようになるので、それでかなり楽になりました。ただ、秘書を雇っても、まだ教員が書かなければいけない書類もたくさんあります。

- 若手研究者を目指す方々の研究環境について御意見があればお願いします

私は好きなだけで来てしまった例ですが、やはり最近、私の研究室の学生を見ると、もっと慎重というか、先ほど話されていましたけど、職業が安定しないとか、そういったことを気にしているのが分かります。私の時代はメーカーに就職するか、博士に行くかというほぼ2択でしたが、今は博士に行くかGoogleのようなIT大手か、あるいはボストンコンサルティングかみたいな、オルターナティブキャリアが、昔と違ってきている気がします。Googleに行けば給料は2倍とかですから、オルターナティブチョイスが魅力的すぎるというのが博士に行ってくれない理由かなと思います。そこをどうやって説得するかと言われても、彼らの人生ですので、無理に止めるのは難しいです。

○改善されつつある博士課程学生に対する支援

博士のサポートに関しては今すごく広がっていて、例えば私の研究室では今4人、来年の4月で5人目の博士が来ますが、全員お金をもらっています。私の研究室ではスカラーシップを全て出してくださいと言っていて、全て落ちたら私が払いますという約束で来てもらうので、無給の博士は取らないことにしています。博士課程の経済的な不安は、大分日本でも改善されていると感じています。

○研究の面白さをもっと発信していくことが大切

最後になりましたが、私が学生の頃は、研究者って何かかっこいい、というサイエンスに対するイメージも最後のひと押しとなって、博士課程に進むことを決めたような気もします。これからも私たち研究者が、もっと研究の面白さを発信していくことがとても大切なのだと思います。

(2023年3月3日オンラインインタビュー)

インタビューの様子インタビューの様子 杉原 加織氏(NISTEP撮影)

杉原 加織氏(NISTEP撮影)