STI Hz Vol.2, No.2, Part.10: (科学技術の社会実装・社会イノベーション展開の新潮流)『聞き書きマップ』を利用した子どもの防犯活動の普及に向けてSTI Horizon

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  • DOI: http://doi.org/10.15108/stih.00030
  • 公開日: 2016.06.25
  • 著者: 梅沢 加寿夫、相馬 りか
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.2, No.2
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

科学技術の社会実装・社会イノベーション展開の新潮流
『聞き書きマップ』を利用した子どもの防犯活動の普及に向けて

科学警察研究所 犯罪行動科学部犯罪予防研究室 原田 豊 特任研究官


聞き手:科学技術予測センター 特別研究員 梅沢 加寿夫、上席研究官 相馬 りか

JST社会技術研究開発センター(RISTEX)研究開発プロジェクト「子どもの被害の測定と防犯活動の実証的基盤の確立」(H19-H23) (以下、「本プロジェクト」という)では、犯罪から子どもを守る取組の実証的基盤の確立を目指して、『聞き書きマップ』を含む防犯活動支援ツールの開発とポータルサイトの構築を行い、これらを用いるための手引書やマニュアル類を開発した。『聞き書きマップ』は人工衛星による測位データを、ICレコーダ、デジタルカメラのデータとともにPCに取り込んでGIS上に表示するためのソフトウェアで、これにより子どもが出会いがちな地域の様々な危険を誰でも簡単に地図上に記入して共有できる。これらの研究成果は、プロジェクト期間中に茨城県つくば市内の複数の小学校で展開され、一定の成果を得た。

折しも、政府の「宇宙基本計画」(H27)には「次世代を担う人材のすそ野拡大に幅広く貢献するため、小中学校等における体験型の教育機会の提供等、宇宙教育を始めとした様々な取組を進める。」という記述があり、文部科学省(以下「文科省」という)の「学校安全の推進に関する計画」(H24)には、「学校現場では、(中略)地域との連携を一層図り、より効果的に体験的な学習を行うようにすることが必要である。」「学校や学校の設置者においては、必要に応じ道路管理者、警察等と協働して、交通安全、防犯、防災等の観点から通学路を定期的に点検し、その結果に応じて適切な措置を講じるよう努めることが期待される。」と記載があるとおり、本プロジェクトは我が国の大方針に先駆けた活動であったと言える。

本プロジェクト終了後、その研究成果を引き継いだ活動は平成27年度から文科省「実践的安全教育総合支援事業」に採用され、現在もなお活発な様相を呈している。しかし、これまで道のりは決して平たんではなかったという。そこで、本プロジェクトの研究代表者であった科学警察研究所(以下「科警研」という)犯罪予防研究室の原田特任研究官にお話を伺った。


原田 豊 科学警察研究所 犯罪行動科学部犯罪予防研究室特任研究官

草の根型社会実装の着想

我々は、本プロジェクトで『聞き書きマップ』を含む防犯活動支援ツールの開発とポータルサイトの構築を行い、これらを用いるための手引書やマニュアル類を開発しました。『聞き書きマップ』は人工衛星による測位データを、ICレコーダ、デジタルカメラのデータとともに PCに取り込んでGIS上に表示するためのソフトウェアで、これにより子どもが出会いがちな地域の様々な危険を誰でも簡単に地図上に記入して共有できます。本プロジェクトを含むRISTEX「犯罪からの子どもの安全」研究開発領域そのものは平成19年度から平成24年度までの6年間続きましたが、本プロジェクトはその前年度末に終了し、同じRISTEXによる「研究開発成果実装支援プログラム(公募型)」に応募する予定でした。ところがその矢先、プロジェクトの中核機関であった科警研の私のグループが活動を続けられない状況に陥ったのです。科警研の研究体制は非常勤職員が中心で、彼らを引き留められなかったことが一因です。その他の科警研のメンバーも、論文の執筆に結び付かない社会実装には消極的で、研究体制が崩壊してしまいました。

本研究開発領域では、研究開始当初から、論文を書くだけではなく、結果を社会に還元するところまでが活動の範囲と言われてきました。しかし、研究体制が維持できなくなった以上、RISTEXプロジェクトとして社会実装のための更なる予算を頂くことは不可能でした。それまでの研究成果がお蔵入りする寸前にまで追い詰められたわけです。だからといってビジネスとしてこの研究成果を実装することも非常に困難だと思いました。我々の活動の引き受け手は元々資金のない防犯ボランティア等ですから、そもそもビジネス立ち上げ型の社会実装はなじまないのです。ぜい弱な体制と限られた資金でムリに事業を拡大したり宣伝したりすれば、一部の顧客には手厚く対応できても、他の多くの顧客には手が回らないといったムラが生じます。子どもを守る取組にはムリとムラは大敵です。ビジネス立ち上げ型の社会実装では、ビジネスが成り立つ一部の地域にだけ実装され、その他の地域がないがしろにされることが容易に想像できました。

この状況で考えを巡らせて、たどり着いたのが「草の根型社会実装」の着想でした。提供側も利用側も予算が不足している状況で、何ができるかを考えました。それで、平成24年度はウェブ上の本プロジェクト成果公開サイト1)(以下「ポータルサイト」という)をとにかく維持することだけを当座の必須業務としたのです。

予防犯罪学推進協議会(CPPC)の設立

このポータルサイトは、研究成果としての手引書等を公開するだけでなく、まだプロトタイプではありましたが『聞き書きマップ』というツールでユーザが作成したデータを、WebGIS注1にアップロードして可視化・共有する仕組みも実装していました。

ポータルサイトの運営費は、共同研究者や委託先と自分を含む有志5人が個人の資金を持ち寄って負担しました。自分からはそれに加えて原稿料等を寄附し、それで少なくとも1年間は維持できる計算でした。2年目以降は科学研究費助成事業(以下「科研費」という)に応募し、採択されればそこから費用を捻出できるだろうということになりました。

ところで近年、病気については「予防医学」(Preventive Medicine)として、治療から予防へという大きな流れがあります。これは、病気になってから治療するよりも、未然に防いだ方が社会的なコストは安く上がる、というところからきているのでしょう。病気の場合は患者さんも治療費を3割負担します。では、犯罪についてはどうでしょうか。犯罪にあった被害者が、自分の心のケアに3割負担するなんて理不尽な話はありません。一方で加害者が負担するかというと、加害者にそんな余裕があったらそもそも犯罪は起きません。要するに、犯罪後のケアにはそれと無関係な国民が全額を税金で負担しているわけです。だとすると、社会的なコストという観点では、病気の予防よりもむしろ犯罪の予防の方が大きな意味があるのではないでしょうか。そこで、こういった考え方を我々は「予防犯罪学(Preventive Criminology)」と名付け、このときのたった5人の有志連合が、「予防犯罪学推進協議会(CPPC:Council for the Promotion of Preventive Criminology)」としてこのポータルサイトの運営主体となりました。予防犯罪学という言葉や考え方は、今のところ予防医学ほど普及していませんが、この活動を通じて広めていければよいのではないかと考えています。

『聞き書きマップ』の新バージョンの開発

平成25年度からは科研費(挑戦的萌芽)課題「予防犯罪学の開拓を目指した子どもの被害防止ツールキットの実証実験」(H25-H27)が採択され、ポータルサイトの維持費はこれで賄えるようになりました。

一方、RISTEXの「研究開発成果実装支援プログラム(成果統合型)」において「犯罪からの子どもの安全」研究開発領域の成果に基づく実装プロジェクト(H25-H27)が始まったのも平成25年度からですが、我々に割り当てられた予算は全体の3.5%で、しかも、初年度は予算が付きませんでした。

当時の『聞き書きマップ』にはGPSデータをPCに自動で取り込む機能がなく、普及の障害になっていました。この機能を実装した新バージョンの開発を一から行うのは負担が大き過ぎたため、フリーソフト「GPS Babel」のモジュールを利用することにしたのですが、それでも獲得した科研費だけでは開発費を賄いきれず、再び個人負担を余儀なくされることになりました。実は委託先の企業も同じくらい負担してくださっています。その結果、晴れて自動でGPSデータをPCに取り込む機能が付加された新バージョンの『聞き書きマップ』(バージョン2)が完成したというわけです。

高精度衛星測位サービス利用促進協議会(QBIC)への参画

準天頂衛星はその名前のとおり日本上空のほぼ天頂に長くとどまる軌道に投入された測位衛星です。この衛星と米国のGPS衛星を組み合わせて利用することで、山間部や高層ビル街等、空が広く見えない場所でも測位が可能になることが期待されています。

『聞き書きマップ』新バージョンの開発と並行して、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「みちびく人々」のサイト4)にインタビューを掲載していただいた頃から、とにかく準天頂衛星システムを身近な地域の防犯に役立てられるようにしようと奔走してきました。この衛星システムは、税金を投入して作る以上、分け隔てなく国民一人一人に便益を返す必要があるし、大都会のビル街で使えるようにならないと、防犯の仕組みとしては不十分であるとの思いが強かったからです。それで、衛星測位利用推進センター(SPAC:Satellite Positioning Research and Application Center)のシンポジウム等があるたびに出掛けて行って、アンケートをぎっしり書いた上に当時書いた自分の原稿と名刺を張り付けて出すようなことまでしていました。

それが功を奏したのか、準天頂衛星システムの利用拡大に向けて、企業が知恵を出し合う場を作るということで、高精度衛星測位サービス利用促進協議会(QBIC:QZSS Business Innovation Council)が立ち上がったとき、私もアドバイザーの一人として参加することになりました。そこでは、安価で単体の準天頂衛星対応ロガーをどこかの企業で作ってくれないかと働きかけました。現在地を地図上に表示する機能等は要りません。機能を最小限に絞り、高品質を維持した上で、極力小さく軽く安く作ってください。そうすれば、既に『聞き書きマップ』という利用ソフトはあるのだし、防犯活動の現場ですぐにでも利用可能だと。その結果、サブメートル級の準天頂衛星対応GPSロガーをSPACから何台か借り受けて、実証実験をさせていただくことができました。

準天頂衛星初号機「みちびき」の実証実験

実証実験では、お借りした準天頂衛星対応ロガーを2台、自転車のハンドルに取り付けて、片方を準天頂モード、もう片方を普通のGPSモードとし、押して歩くということをしました。そうすると、10 cm足らずの間隔で並んでいる2台のロガーの位置関係は全く変わりませんから、同時に取得したデータがどのくらいずれるかを見れば、どういう環境でどのくらい差が出るかが分かります。ビデオカメラを同じハンドルに取り付けて、同時に動画に撮りましたので、その映像を見れば、その時点でどちらのデータがもっともらしいかということも分かるはずです(写真1)。ビデオカメラは個人で所有していたものを使いました。このやり方ならお金も全くかかりません。

実験場所は千葉県浦安市の住宅街でした。地元住民の防犯まち歩きに同行する形でデータを取得しました。そこであえて高層マンションのすぐ脇を通る遊歩道に乗り入れると、両者のデータに明らかな差が出ました。ビデオの映像から実際の通行位置を確認すると、準天頂モードの測位点の方が、普通のGPSモードの測位点より実際の経路により近いことが分かりました(写真2)。

写真1 自転車のハンドルに取り付けたロガーとビデオカメラ

出典:科学警察研究所

写真2 ロガーデータから取得したまち歩きの軌跡

出典:科学警察研究所

全国共同利用研究発表大会CSIS DAYS 2014でこの研究結果を発表したところ、簡便な装置で結果の可視化と計量分析まで行ったことが評価されて、主催者の東京大学空間情報科学研究センターより優秀研究発表賞を頂きました。このことは我々の活動をSPACに強く印象付けることにもつながったのではないかと思います。

転機となった実践的安全教育総合支援事業

文科省「実践的安全教育総合支援事業」(以下「モデル事業」という)は元々東日本大震災を契機に始まったもので、防災を目的として通学路の点検等を実施する事業でした。その後、安全教育の対象として防災に交通安全が追加され、平成27年度からは更に防犯が加えられる形で始まったのですが、これは『聞き書きマップ』の普及という意味で、千載一遇のチャンスでした。

震災以来、社会の大方の関心は防犯よりむしろ防災に大きく偏っていました。そんな中、平成26年7月に岡山県倉敷市で小学5年生の女子児童が誘拐される事件が起きました。本プロジェクトは正にこのような事件を未然に防ぐことが目的であったわけですが、実際に起きてしまいました。我々は自分たちの研究成果でどれだけ社会貢献できたかを改めて自問自答し、その年の9月に文科省に乗り込んで行って、これだけの成果があるのだから使ってほしいと嘆願したのです。その翌週にも兵庫県神戸市で小学1年生の女子児童が殺害される事件が起きてしまいました。これ以上犠牲者を増やしてはいけない。我々の一心不乱の思いがうまく伝わったかは分かりません。でも、このモデル事業への採用が『聞き書きマップ』の社会実装に向けた大きな転機になりました。

このモデル事業は、対象となる小学校が全部を抱え込むのではなく、自治体やPTA、教育委員会、地元の警察まで連携した、地域ぐるみの活動として、通学路の点検等を実施することが大きな特徴です。

平成27年度は科警研最寄りの柏市立十余二小学校の4年生を対象に社会科の授業の一環として行いました。約80人の児童を対象に『聞き書きマップ』による安全点検活動として、フィールドワーク、パソコンへのデータの取り込み、プリントアウトした地図を使った安全点検マップ作り等を行いました。『聞き書きマップ』の導入によって、人工衛星による測位といった宇宙技術を体験的に学習するとともに、通学路の安全点検マップ作りを大幅に省力化することができたと自負しています。導入後の維持経費がほとんどかからないことも評価されました。

平成28年度は同じく千葉県内の船橋市立西海神小学校で実施する予定です。

エンドユーザへの『聞き書きマップ』関連ツール無償提供

『聞き書きマップ』にはGPSロガーが欠かせません。一方で、準天頂衛星システムの優位性にはQBICの皆さんも同意してくださるのですが、じゃあ我が社で単体の準天頂対応ロガーを作りましょうと名乗りを上げてくださる企業はまだ出てきていません。準天頂衛星の4機体制が整えば、地上から高仰角で常に1機は見通すことができるようになりますが、それは平成30年と聞いているので、数年後にそれがいよいよ実用段階になれば、こちらから積極的に働きかけなくても、ありとあらゆる大企業が乗り込んでくるのは必至です。でもそのとき、準天頂衛星システムの利用が仮にスマホありきで、運用に月々5〜6,000円かかるということになると、我々が対象としているPTAや防犯ボランティアの隅々にまでは行き渡りません。特に防犯ボランティアは半数が60代、残りの1割強が70代以上といったように年金暮らしをされている方々がほとんどですから、そのような出費は見込めません。このような状況は何としても避けたいと思っています。現在市場にある単体のGPSロガーは外国製品ばかりですが、これなら通信費は一切かかりませんし、維持費は充電に必要な数mAの電気代だけで済みます。日本の高品質を低価格で隅々にまで届けることが重要なのです。

GPSロガーとICレコーダ、PC等への接続装置をまとめた「『聞き書きマップ』まちあるきセット」を自治体等に消耗品として購入してもらい、それらを防犯ボランティア等に無料で貸し出すことができれば、エンドユーザへの無償提供は十分に実現可能です。

研究終了後のビジネスモデル

「『聞き書きマップ』まちあるきセット」の価格にソフト開発会社へのマージンとCPPCへのライセンス料を含める形にすれば、研究費が途絶えた後にも現在の活動を維持できます。

平成27年度は全国防犯協会連合会の「次世代防犯ボランティアリーダー育成事業」に採用していただいたこともあって、合計で80セットほど売れました。これでポータルサイト維持費の半分を賄える計算になります。

学校現場での需要も見込めますので、教育委員会や文科省から補助金が出るようになれば、売上げは一桁以上伸びるでしょう。そうすれば、サイトを維持するだけでなく、『聞き書きマップ』の更なるバージョンアップ等にも対応できます。

『聞き書きマップ』を使った研修やワークショップ開催の依頼を受けることも増えてきているので、これを有償化できれば、ビジネスとしてもより魅力的なものになるのではないでしょうか。

研究費が途絶えた後、この活動自体も終了してしまったら、結局は現場の期待と信頼を裏切ることになってしまいます。研究は終わっても防犯の現場の活動は終わらないのです。

より良い活用のために

『聞き書きマップ』を作成するに当たって、その利用手順を説明したマニュアルと、それがどんな考えに基づくもので、それを使うと何がどう変わるのかといったことを解説した手引書も準備しました。徹底的に懇切丁寧に分かりやすく、しかもページ数を少なくすることにこだわって作っています。

この手引書では、最初のまち歩きで地域の問題の「改善計画マップ」を作り、それに基づいて問題解決の取組を行った上で、例えば一年後にもう一度まち歩きをして「問題解決マップ」を作ることを提案しています。そして、前回作成した「改善計画マップ」と見比べるのです。そうすれば、取組の成果を、誰にでも分かる形で「見える化」することができます(図表1)。

『聞き書きマップ』の利用には、犯罪学研究者としての考えが根底にありますので、単に地図を作るだけでなく、それをその地域の環境をより良くするためのツールとして使っていただければよいのではないかと考えています。

図表1 改善計画マップと問題解決マップ

出典:科学警察研究所
社会実装に向けた着眼点と今後の可能性

研究成果を社会実装するという観点で、アメリカ犯罪学会から学んだことがあります。平成23年の秋の大会でした。研究と実践の間に橋をかけるというタイトルのセッションがあって、研究者の立場で現場に売り込んでも、現場にニーズがないと受け入れられない、そういうときはどうすればよいか、というような議論があったのです。そのときの議論によると、現場で動き始めたにもかかわらず、煮詰まって動けないところに目を向けるべきだというのです。現場に既に任務ができてしまっているのに、具体的な方法が明確になっていないというようなことです。

「宇宙基本計画」(H27)や「学校安全の推進に関する計画」(H24)でうたわれているとおり、「宇宙教育」や「防犯」のための「通学路の安全点検」を「体験型の学習」を通して行うという方針は決まっています。では具体的にどうすればよいか。そう考えたときに、我々の『聞き書きマップ』はピッタリこれにはまります。我々は、近年全国の小中学校等で行われている「通学路の安全点検」の試みに、衛星測位技術を応用することで、そのような「体験型の学習」が効果的に進められると考えています。

例えば、経済産業省等の予算で維持費のかからない日本製の高品質の準天頂対応ロガーが開発されたり、それらを自治体等で購入できるような補助金が文部科学省で予算化されたりすれば、今後も継続的に我々の活動を支える大きな仕組みが出来上がるのではないでしょうか。国の大きな方針に沿うものなので、実現は十分可能なのではないかと期待しています。

取材を終えて

取材に先立ち、記事を今後の展開や後に続く自治体等に示唆を与える内容にしたいので、事業を進める上での課題を含む苦労話は大歓迎と申し上げたのだが、正直なところ、これほど苦労されていたとは想像していなかった。

社会実装に乗り出そうとした矢先に予算と体制を維持できなくなり、ポータルサイトは有志の個人負担で継続。その後科研費を取得するも、『聞き書きマップ』新バージョンの開発費はまたもや個人で捻出。それでも粘り強く活動を続け、機会を見付けては自ら乗り込んで行って成果を売り込む姿勢には頭が下がる。そのような地道な活動があったからこそ、小さなきっかけを大きなチャンスに変えることができたのではないか。QBICへのアドバイザーとしての参加にしても、文科省のモデル事業への採用にしても、めげずに自ら打って出なければ、決して今のような形にはならなかったはずだ。後に続く者はこの姿勢に見習うべき点が多いのではないかと思う。

さらに、本文では触れなかったが、『聞き書きマップ』の最大の危機は、平成27年の3月に、それまでソフト開発を委託していた企業が突然倒産してしまったことだという。「仮にソースコードが破産管財人に没収されていれば、開発継続は文字通り不可能でした。このときは、個人の知り合いのつて等を通じて必死に関係者と連絡を取り、辛うじて事なきを得ました。冷静になって後から考えれば、ソースコードは納入品に加えておくべきだし、開発中も第3者が有償でソースコードを管理する仕組みが既にあります。今後他のグループでソフト開発をする場合は、これを教訓にしてほしいと思います。」貴重な助言として心にとどめておきたい。


* 所属はインタビュー当時


注1 WebGIS:地理情報システム(GIS)をインターネット上で操作できるようにしたシステム

参考文献

1)科学が支える子どもの被害防止:http://www.skre.jp/

2)子どもの被害の測定と防犯活動の実証的基盤の確立:http://www.anzen-kodomo.jp/pj_harada/index.html

3)「子どもの被害の測定と防犯活動の実証的基盤の確立」研究開発実施終了報告書:
http://www.ristex.jp/examin/criminal/pdf/20120308-3.pdf

4)インタビュー みちびく人々 科学警察研究所 犯罪行動科学部 部長 原田 豊:
http://qz-vision.jaxa.jp/READ/interview06.html

5)自主防犯活動の実環境下における準天頂システムの測位精度改善効果の検証 利用実証計画書:
http://www.eiseisokui.or.jp/media/pdf/demonstration/situation/90-01-1.pdf

6)準天頂衛星システム初号機を利用した実証実験について:
http://qz-vision.jaxa.jp/USE/is-qzss/UMmaterials/QZSSUM_08_03.pdf

7)原田 豊「『聞き書きマップ』を用いた安全点検地図作り」,測位航法学会ニューズレターⅦ-1,
2016年3月28日,4-6

8)学校安全の推進に関する計画:
http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/__icsFiles/afieldfile/2012/05/01/1320286_2.pdf

9)宇宙基本計画:http://www8.cao.go.jp/space/plan/plan2/plan2.pdf

10)柏市報道資料 平成27年11月10日 公開授業「科警研と『聞き書きマップ』を情報道具をもって作ろう」:
http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/020300/p025700_d/fil/271110_press_releas.pdf

11)『聞き書きマップ』を用いた通学路の安全点検地図の作成:
http://www.esrij.com/industries/case-studies/81529/