ポイント
- 日本の大学学部の入学者数は2000年頃からほぼ横ばいに推移していた。2014年度を境に緩やかな増加が見られたが、近年はほぼ横ばいに推移している。2024年度では62.9万人となった。
- 大学院修士課程の入学者数は2010年度をピークに減少に転じた。一時的な増加はあったが、減少傾向が続いた後、2020年度を境に増加している。2024年度は対前年度比2.8%増の7.9万人となった。また、社会人修士課程入学者数は全体の10~11%で推移していたが、2020年代に入ってからは微減している。
- 大学院博士課程の入学者数は、2003年度をピークに長期的な減少傾向にあったが、2023年度から増加し、2024年度は対前年度比4.9%増の1.6万人となった。うち社会人博士課程入学者数は長期的に増加傾向にあった。2018年度を境に減少していたが、2023年度以降増加し2024年度では0.6万人となった。全体に占める割合は2024年度では39.8%であり、2020年度を境に減少している。
- 大学院修士課程修了者の進学率は減少傾向が続いたが2019年度を境に微増傾向となり、2024年度は10.4%となった。
- 大学学部の全入学者数に占める女性の割合は着実に増加し、2024年度では46.4%を占めるようになった。分野別では「保健」系が大きく伸びており、2024年度で67.0%と最も大きい。
- 博士課程の入学者数は、女性は2004年度をピークに長期的に微減傾向、男性は2003年度まで急増した後、長期的に減少していたが、男女ともに2023、2024年度は続けて増加した。
- 社会人博士課程在籍者を専攻分野別に見ると、「保健」系が約6割を占める。長期的にも大きく伸びていた。2020年度をピークに減少に転じたが2024年度では対前年度比で2.7%増加した。「工学」系は、2008年度を境として減少していたが、2018年度から微増している。社会人以外でも「保健」系は多い。2000年度から2008年度にかけて大きく減少し、その後も漸減していたが、2020年度以降は微増している。2024年度では1.0万人となった。「工学」系は2011年度から微減していたが、2019年度以降は微増しており、2024年度では1.1万人であり、「保健」系を上回った。
3.2.1大学学部の入学者
日本の大学学部の入学者数は2000年頃からほぼ横ばいに推移していた。2014年度を境に緩やかな増加が見られたが、近年はほぼ横ばいに推移している。2024年度では62.9万人となった(図表3-2-1(A))。2024年度の入学者数の内訳を見ると、「社会科学」系で20.4万人、「人文科学」系は8.4万人である。「自然科学」系では「工学」系で9.1万人、「保健」系は7.4万人、「理学」系、「農学」系は1.9万人である。また、「その他」は13.8万人である。
経年変化を見ると、2000年度から2010年度にかけて「農学」系、「保健」系、「その他」が増加した一方で、それ以外の学部は減少傾向にあった。2010年代に入ると、「保健」系と「その他」は増加し、「人文科学」系では減少している。
入学者数を国・公・私立大学別で見ると(図表3-2-1(B))、私立大学の入学者数が多く、全体の8割を占める。2000、2010、2024年度と継続して入学者数が減少しているのは国立大学である。公立大学、私立大学の入学者数は増加している。
分野別に見ると、国立大学では「自然科学」系、特に「工学」系の入学者数が多く、私立大学の入学者数は「社会科学」系が多い。ただし、私立大学全体で見た構成比では「社会科学」系が減少傾向にある。また、「保健」系、「その他」の入学者数は、2000年度と比べると国・公・私立大学ともに増加している。なかでも私立大学については、2000年度と比較して2024年度はいずれも約3倍となっている。
(A)関係学科別の入学者数の推移
注:
その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-1
3.2.2大学院修士課程入学者
大学院修士課程への入学者数は1990年以降に大学院重点化が進んだこともあって、1990~2000年代前半にかけて大きく増加した。その後、2000年代半ばに入ると、その伸びは鈍化し、2010年度をピークに減少に転じた。一時的な増加はあったが、減少傾向が続いた後、2020年度を境に増加している。2024年度は対前年度比2.8%増の7.9万人となった(図表3-2-2(A))。
2024年度の専攻別の内訳を見ると、「工学」系が3.4万人と最も多い。「社会科学」系が0.7万人、「理学」系が0.6万人、「保健」系が0.5万人である。また、「その他」は1.8万人である。ピーク時の2010年度から2020年度にかけて、「保健」系と「その他」以外は減少した。2020年度と2024年度を比較すると「理学」系以外は増加している。
社会人修士課程入学者数は2024年度で0.7万人、全体に占める割合は8.8%である。2003年度から10~11%程度で推移していたが、2020年代に入ってからは微減している(図表3-2-2(B))。
国・公・私立大学別で見ると、修士課程入学者数は学部入学者数とは傾向が違い、国立大学が多く、全体の55%を占めている(2024年度)。専攻別で見ると国・公・私立大学ともに「自然科学」系が多く、なかでも「工学」系が多い(図表3-2-2(C))。

注:
1) その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
2) 「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-2
3.2.3大学院博士課程入学者
大学院博士課程入学者数は、2003年度をピークに一時的な増加を除いて、長期的な減少傾向にあったが、2023年度から増加し、2024年度では1.6万人となった。対前年度比4.9%の増である(図表3-2-3(A))。
2024年度の専攻別の内訳を見ると、「保健」系が0.6万人、「工学」系0.3万人と多くを占め、「理学」系、「人文科学」系、「社会科学」系は1,000人前後である。経年変化を見ると、「保健」系や「その他」以外は減少傾向にあった。その中で「工学」系については、2010年代後半から増加傾向に転じた。2024年度は全専攻で増加したが、増加率が大きかったのは順に「その他」、「理学」系、「農学」系である。
博士課程入学者のうち社会人入学者数は長期的に増加傾向にあった。2018年度を境に減少していたが、2023年度以降増加し2024年度では0.6万人となった(図表3-2-3(B))。全体に占める割合は、2024年度では39.8%であり、2020年度を境に減少している。社会人以外の博士課程入学者数は、2003年度から2022年度にかけて約0.6万人減少したが、2023、2024年度では増加している。
国・公・私立大学別で見ると(図表3-2-3(C))、国立大学が全体の約7割を占める。ただし、その割合は2000年度から2024年度にかけて減少している。専攻別では、国・公・私立大学ともに「自然科学」系を専攻する入学者が多く、特に「保健」系の入学者数が多い。

注:
1) その他は「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
2) 「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-3
3.2.4修士課程修了者の進学率
修士課程修了者のうち、大学院等に進学した者の割合を見る(図表3-2-4)。ここでは専修学校・外国の学校等へ入学した者は除いている。
修士課程修了者の進学率(全分野)は1981年度時点では18.7%であった。その後、長期的に減少傾向にあったが、2019年度を境に微増傾向となり、2024年度では10.4%となった。分野別に見ると、多くの分野で長期的に減少していたが、2010年代後半に入ると、横ばいや微増に転じる分野も出てきた。継続して減少傾向にあるのは「社会科学」系である。
注:
1) 修士課程修了者の進学率とは各年の3月時点の修士課程修了者のうち、大学院等に進学した者の割合。専修学校・外国の学校等へ入学した者は除く。
2) その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-4
3.2.5女性入学者の状況
大学学部の全入学者数に占める女性の割合は着実に増加している。2024年度では、46.4%を占めている(図表3-2-5)。
分野別に見ると、2024年度では「保健」系が最も大きく、67.0%である。次いで「人文科学」系が64.3%である。「人文科学」系は1981年度から60~70%で推移し、最も大きかったが、2019年度以降は「保健」系が上回っている。「工学」系は最も小さい割合であるが(18.7%)、1981年度と比較すると、8.5倍となっており、着実に増加している。
注:
その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-5
日本の大学学部、修士課程、博士課程別入学者数の男女別の内訳を見る(図表3-2-6)。
学部の入学者数は、女性については継続して増加していたが、近年はほぼ横ばいに推移している。男性は1990年代後半から減少し始め、2010年代に入ってから横ばいに推移、近年は微減している。分野別に見ると、男女ともに、「自然科学」系より「人文社会科学・その他」系での入学者数が多い。この傾向は、特に女性で顕著である。1990年度と比べると、女性は「自然科学」系が4倍、「人文社会科学・その他」系が2倍に増加しているのに対して、男性は両分野ともに大きな変化は見られない。
修士課程の入学者数は、女性は2000年代半ばまで、男性は2000年代初めまで増加した。いずれも2010年代に入ってから一時減少したが、女性は2010年代半ばから、男性は2020年度を境に増加している。分野別を見ると、女性は「人文社会科学・その他」系の方が「自然科学」系より多いが、その差は縮まりつつある。1990年度と比較すると「人文社会科学・その他」系は4倍、「自然科学」系は8倍に増加している。男性は「自然科学」系の方が「人文社会科学・その他」系より多い(およそ7:3)。男性は1990年度と比べて「人文社会科学・その他」系は3倍、「自然科学」系は2倍に増加している。
博士課程の入学者数は、女性は2004年度をピークに長期的に微減傾向、男性は2003年度まで急増した後、長期的に減少していたが、男女ともに2023、2024年度は続けて増加した。男女ともに「自然科学」系の方が「人文社会科学・その他」系より多い。男性はピーク時(2003年度)と比べて両分野ともに20%減少しているのに対して、女性はピーク時(「人文社会科学・その他」系は2004年度、「自然科学」系は2003年度)と比べて、「人文社会科学・その他」系は18%減少しているが、「自然科学」系は17%増加した。
注:
その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-6
3.2.6高等教育機関の社会人学生
高等教育機関を活用し、社会人の学習意欲の高まりに対応した再教育の機会を充実させることは、高度人材の育成促進・活用に役立ち、さらには社会全体の活性化にもつながる。ここでは、再教育の機会として、大学院における社会人学生に注目し、日本の状況を詳細に見る。
(1)社会人大学院生(在籍者)
全大学院生数、社会人大学院生数の推移を見ると(図表3-2-7)、2010年度までは、ともに増加していた。2011年度をピークに全大学院生数は一旦減少に転じ、2015年度を境に微増している。社会人大学院生数については、長期的に増加しているが、近年頭打ちの傾向が見える。
日本の全大学院生(在籍者)に占める社会人大学院生割合は、2000年度の12.1%から2024年度の23.1%に増加した。
このように大学院に在籍している学生の構成には、長期的に変化が生じている。
注:
1) 「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
2) ここでの大学院生とは、修士課程または博士前期課程、博士課程または博士後期課程、専門職大学院課程のいずれかに在籍する者をいう。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-7
(2)理工系の社会人大学院生(在籍者)
「理工」系の修士・博士課程における社会人大学院生数を学位別で見ると(図表3-2-8)、2024年度の社会人博士課程学生は4,632人、社会人修士課程学生は1,113人であり、社会人の博士課程学生は修士課程学生の4倍の規模である。
「理工」系の社会人博士課程学生は2008年度まで継続的に増加した。その後は減少傾向にあったが、2017年度を境に微増に転じ、近年はほぼ横ばいに推移している。
社会人修士課程学生は2004年度にピークとなり、その後は減少傾向が続いていた。2014年度以降は年による増減がありつつも増加傾向にあった。ただし、2024年度は前年度と比較すると32.8%減少した。
注:
「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-8
(3)社会人と社会人以外の専攻別博士課程在籍者
この項では、社会人と社会人以外の博士課程の専攻に注目し、博士課程在籍者の状況を見る。
社会人博士課程在籍者を専攻別に見ると(図表3-2-9(A))、「保健」系が大きく伸びていた。2020年度をピークに減少に転じたが、2024年度では対前年度比2.7%増の1.9万人となった。全体の約6割を占める。これに「その他」が0.5万人、「工学」系が0.4万人、「社会科学」系が0.2万人と続く。「理学」系は約500名であり、「工学」系の1/8程度の規模である。「その他」は漸増している。「工学」系は2008年度まで増加した後は減少に転じていたが、2018年度から微増している。
社会人以外でも(図表3-2-9(B))、「保健」系が多い。「保健」系は2000年度から2008年度にかけて大きく減少し、その後も漸減していたが、2020年度以降は微増している。2024年度では1.0万人となった。「工学」系は2010年度頃までは緩やかに増減を繰り返し、2011年度から微減していた。2019年度以降は微増しており、2024年度では1.1万人となり、「保健」系を上回った。「その他」については、2010年代半ばから増加し、「工学」系の在籍者数に近づいている。2024年度では1.0万人である。また、社会人以外の「理学」系は0.4万人であり、「工学」系の半数程度の在籍者がいる。
注:
1) その他は「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
2) 「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-9
