1.3部門別の研究開発費

1.3.1公的機関部門の研究開発費

ポイント

  • 日本の公的機関部門の研究開発費は、2021年で1.5兆円である。中国は1990年代中ごろから急速に増加しはじめ、2014年に米国を上回り、2019年では8.5兆円と主要国の中で1番の規模となっている。米国の2021年の値は6.8兆円である。ドイツは2000年代中ごろから増加傾向にあり、2010年以降日本を上回り、2021年では2.4兆円である。
  • 2000年を1とした場合の各国通貨による研究開発費の指数(名目額)を見ると、最新値では日本は1.0と横ばいである。米国は2.3、ドイツは2.5である。中国は12.2であり、韓国の5.4とともに大きな伸びを示している。実質額での伸びを見ると、日本は1.1と名目額とほぼ同様である。米国が1.5,ドイツが1.8であり、中国は6.4、韓国は3.6と大きく伸びている。フランス、英国は0.9とマイナス成長である。
(1)各国公的機関部門の研究開発費

 本節では公的機関部門について述べる。ここで対象としている各国の公的機関には以下のような研究機関が含まれる(図表1-1-4(B)参照)。日本は「国営」(国立試験研究機関等)、「公営」(公設試験研究機関等)、「特殊法人・独立行政法人」(国立研究開発法人等)といった公的研究機関である。
 米国については連邦政府の研究機関(NIH等)とFFRDCs(政府が出資し、企業・大学・非営利団体部門が研究開発を実施)の研究機関であり、退役軍人病院、疾病対策予防センター等が含まれる。
 ドイツでは連邦、地方(連邦州)及び地方自治体の研究機関、例えばマックスプランク、フラウンホーファー協会、ブルーリスト機関、科学博物館及び図書館、非営利団体(16万ユーロ以上の公的資金を得ている機関)などが含まれる。ドイツについては、「公的機関」部門と「非営利団体」部門が分離されていないことに注意が必要である。
 フランスは、科学技術的性格公施設法人(EPST)(ただし、CNRSを除く)や商工業的性格公施設法人(EPIC)等といった設立形態の研究機関である。
 英国は、英国研究・イノベーション機構(UKRI)、政府部局および政府外公共機関(NDPB)、地方政府および中央政府、国防省、民生部局及びリサーチカウンシルが含まれる。
 中国は政府研究機関、韓国は国・公立研究機関、政府出捐研究機関及び国・公立病院である。
 図表1-3-1(A)に主要国における公的機関部門の研究開発費(OECD購買力平価換算)の推移を示した。日本の公的機関部門の研究開発費は、2021年(16)で1.5兆円である。2000年までは増加傾向であった。その後は増減を繰り返しながら、長期的には減少傾向にあったが、2016年を境に増加している。
 中国の「公的機関」部門の研究開発費については、OECDが公表を控えたため(1.1.1節参照)、科学技術指標2022よりも以前の値が最新値(2019年値)となっていることに留意されたい。中国は1990年代中ごろから急速に増加しはじめ、2014年に米国を上回り、2019年では8.5兆円と、主要国の中で1番の規模である。
 米国は長期的に増加傾向にあったが、2010年を境に減少に転じた。その後は増減しながら横ばいに推移していたが、近年は増加しており2021年では6.8兆円となっている。
 ドイツ、韓国は2000年代中ごろから増加傾向にあり、特にドイツは、2010年以降日本を上回り、増加し続けている。2021年のドイツは2.4兆円、韓国は1.2兆円である。
 フランスは2010年代に入ると微増しており、2021年で1.0兆円である。英国は長期的に見ると漸減傾向であるが、近年は増加しており、2020年では0.5兆円となっている。
 図表1-3-1(B)に、2000年を1とした場合の各国通貨による研究開発費の名目額と実質額の指数を示した。2021年の名目額を見ると、日本は1.0と横ばいである。フランスは1.3、英国は1.4、米国は2.3、ドイツは2.5である。中国は12.2であり、韓国の5.4とともに大きな伸びを示している。
 実質額での伸びを見ると、日本以外の国では名目額より実質額の方が低い。日本は1.1、米国が1.5、ドイツが1.8である。中国は実質値でも6.4、韓国は3.6と大きく伸びている。フランス、英国はマイナス成長であり、0.9である。


【図表1-3-1】 主要国における公的機関部門の研究開発費の推移
(A)名目額(OECD購買力平価換算) 

(B)2000年を1とした各国通貨による公的機関部門の研究開発費の指数

注:
1) 公的機関部門の定義には国によって違いがあるため、国際比較の際には注意が必要である。各国の部門の定義については、図表1-1-4参照のこと。
2) 研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3) 購買力平価は、参考統計Eと同じ。
4) 実質額の計算はGDPデフレータによる(参考統計Dを使用)。
5) 日本は2011年度から営利を伴う特殊法人・独立行政法人を含む。
6) 米国は定義が異なる。2006年において時系列の連続性は失われている。2021年は暫定値。
7) ドイツは1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。1982、1984、1986、1988、1990年は見積り値である。1991年以降は定義が異なる。1991、1992年において時系列の連続性は失われている。2021年は暫定値である。
8) フランスは1992、1997、2000、2010年において時系列の連続性は失われている。
9) 英国は1986、1991、2001年において時系列の連続性は失われている。
10) 中国は2009年において時系列の連続性は失われている。
11) EU-27は見積り値である。
資料:
日本:総務省、「科学技術研究調査報告」
その他の国:“Main Science and Technology Indicators March 2023”

参照:表1-3-1


(2)日本の公的機関の研究開発費

 図表1-3-2に日本の公的機関部門における研究開発費の推移を機関の種類別に示す。
 国営研究機関と特殊法人の独立行政法人化により、2001年度以降は、「国営」と「特殊法人・独立行政法人」のデータの連続性が失われている。また、2011年度から「特殊法人・独立行政法人」には営利を伴う機関も含まれている。
 公的機関全体としてみると、2000年度までは、増加傾向にあった。その後は増減を繰り返しながら、長期的には減少傾向にあったが、2017年度以降は増加している。
 これらのなかでは、「特殊法人・独立行政法人」の金額が最も大きく、最新年度で1兆1,366億円である。そのうち、多くを占めるのが「国立研究開発法人」であり1兆128億円、公的機関全体の約7割を占める。国営研究機関は2,178億円、公営研究機関は1,586億円である。
 「国営」と「特殊法人・独立行政法人」は2000年度、「公営」は1990年代初め頃までは、増加傾向にあった。2000年代に入ると「国営」と「特殊法人・独立行政法人」は増減を繰り返している。長期的には「国営」は微減、「特殊法人・独立行政法人」は横ばいに推移していたが、2017年度以降は増加している。「公営」については1990年代半ばから長期的に減少していたが、2010年代に入って以降横ばいに推移している。


【図表1-3-2】 日本の公的機関の研究開発費の推移 


注:
1) 2001年度に、国営の研究機関の一部が独立行政法人となっているので時系列変化を見る際には注意が必要である。
2) 2000年度までは「特殊法人・独立行政法人」は「特殊法人」のみの値。
3) 2011年度から特殊法人・独立行政法人には営利を伴う機関も含まれている。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-2


(16)この節の日本は、国際比較の際には「年」を用いている。本来は「年度」である。日本のみを記述している節では「年度」を用いている。