5.2主要国の産業貿易の構造と付加価値

ポイント

  • 主要国の貿易額(輸出額)における製品とサービスのバランスに注目すると、各国最新年において、韓国(14.0%)、ドイツ(18.4%)、日本(19.8%)はサービスの割合が小さく、英国(45.5%)、米国(34.9%)、フランス(30.2%)では、サービスの割合が大きい。
  • 主要国の産業貿易の構造を見ると、ミディアムハイテクノロジー産業が最も多くを占める国が多い。各国最新年においてミディアムハイテクノロジー産業の割合が大きな国は日本(55.7%)、次いでドイツ(48.9%)である。中国では、ハイテクノロジー産業が最も多くを占めている(29.9%)。中国は、ミディアムハイテクノロジー産業の割合も27.9%と高く、それぞれの産業が一定の重みを持っている。
  • ハイテクノロジー産業貿易収支比を見ると、日本は長期的に貿易収支を減少させている。2011年以降1を下回り、入超となった。2019年の日本の収支比は0.74であり、英国、米国と同程度となっている。韓国は主要国中、最も収支比が高く、2019年で1.50、これにドイツ1.22、中国1.21が続いている。
  • 2020年の日本のミディアムハイテクノロジー産業貿易収支比は2.50であり、主要国中第1位である。推移を見ると、1990年代中頃に、急激な減少を見せた後は漸減傾向にある。米国、ドイツ、フランス、英国の貿易収支比が大きく変化しない中、貿易収支比を増加させているのは韓国、中国である。ただし、韓国は2014年以降、ほぼ横ばいに推移している。最新年(2019年)の収支比は中国は1.43、韓国は1.76である。
  • 全産業の総付加価値に対する「情報」産業付加価値の割合を見ると、各国最新年では、韓国(13.1%)が最も大きく、米国(8.4%)、英国(7.8%)、日本(6.5%)と続く。
  • 「情報」産業の付加価値の内訳を見ると、日本は「コンピュータ、電子および光学製品」が減少し「ITおよびその他の情報サービス」が増加している。これに対して、韓国では「コンピュータ、電子および光学製品」が最も多く、拡大し続けている。

5.2.1主要国の貿易

 貿易の主たるものは製品であるが、目に見える製品の輸出入以外にも、サービスの貿易が様々な形態によって行われており、各国の国内においてもサービス分野の比重は高まっていると考えられる。ここでは主要国の貿易について、製品とサービスに分類した輸出入額の推移を見る(図表5-2-1)。
 輸出入額全体の推移を見ると、ほとんどの国で、2008年まで増加傾向にあり、2009年に一旦落ち込んだ後、増加に転じている。また、国によって程度の差はあるが、製品の方がサービスより貿易額が多い。
 各国別に状況を見ると、日本の輸出額については、2009年以降、製品、サービスともに年によるゆらぎはあるが、増加傾向にある。サービスの輸出額については、輸出額全体の19.8%(2018年)を占めており、その割合は長期的に見ると、増加傾向にある。
 米国の輸出額については、長期的に見ると、製品、サービスともに増加している。製品の輸出額の伸びは2010年代に入って鈍化している一方で、サービスの輸出額は継続して増加している。サービスの輸出額については、輸出額全体の34.9%(2019年)を占めており、その割合は長期的に増加している。
 ドイツ、フランス、英国については、2009年以降の輸出入額は、継続して増加しており、製品、サービスともに同様の傾向であった。しかし、最新年では、ドイツ、英国は全ての輸出入額が減少した。両国の最新値は2020年の値であり、この減少には新型コロナウイルス感染症が影響している可能性が高い。サービスの輸出額に注目すると、ドイツでは輸出額全体の18.4%(2020年)、フランスでは30.2%(2019年)、英国では45.5%(2020年)をサービスの輸出額が占めている。いずれの国でもサービスの輸出の割合は伸びていたが、近年、その伸びは停滞している。
 韓国については、他の国と異なり、2012年以降は、輸出入額はおおむね横ばいに推移している。サービスの輸出額は、輸出額全体の14.0%(2019年)であり、他の国と比較して、最も小さい割合であり、2010年頃からほぼ横ばいに推移している。


【図表5-2-1】 主要国における貿易額の推移

注:
1) 中国は「製品」と「サービス」に分類されたデータが記載されていなかった。
2) ドイツの2020年、フランスの2018~2019年、韓国の2019年は暫定値である。中国の2017、2018年は見積もり値である。
資料:
OECD,“National Accounts” Gross domestic product (GDP)

参照:表5-2-1


(1)主要国の産業貿易の構造

 ハイテクノロジー産業やミディアムハイテクノロジー産業といった「研究開発集約活動(R&D - intensive activities)」(4) の貿易については、技術貿易のように科学技術知識の直接的なやり取りについてのデータではないが、実際に製品開発に活用された科学技術知識の間接的な指標であると考えられている。ここではまず、OECDの定義による研究開発集約のレベル(研究開発費/粗付加価値)にもとづき、産業を分類し、産業貿易のバランスを見る。
 図表5-2-2では、主要国の産業貿易のうち、輸出額について、①ハイテクノロジー産業(HT産業)、②ミディアムハイテクノロジー産業(MHT産業)、③ミディアムテクノロジー産業(MT産業)、④ミディアムロウテクノロジー産業(MLT産業)、⑤その他の5つに分類し、その構造を見た。
 日本ではMHT産業が最も大きく、2020年では、55.7%を占めている。他国と比較しても最も大きい。次いでHT産業が16.8%、MT産業が14.2%、MLT産業は5.5%である。時系列を見ると、MHT産業は長期的には増加傾向にある。HT産業については、2000年以前は30%程度で横ばいに推移していたが、その後減少し、2010年頃から再び横ばいに推移している。MT産業は2000年代に割合が増加した後、2011年をピークに微減に推移している。
 米国はMHT産業が最も大きく、2019年では、34.7%を占めている。次いでHT産業が24.1%、MLT産業が23.1%、MT産業が8.9%となっている。時系列を見ると、MHT産業はほぼ横ばいに推移している。HT産業は、2000年代に入ると減少した後、2010年以降増加していたが、近年では減少傾向にある。MLT産業は2000年代後半から増加した後、2014年以降減少していたが、近年では再び増加している。MT産業は漸増していたが、2012年をピークになだらかに減少している。
 ドイツはMHT産業が半数を占めており、2019年では48.9%である。次いでHT産業が19.0%、MLT産業が16.8%、MT産業が10.5%となっている。時系列を見ると、ドイツは他国と比較すると変化が少なく、MHT産業、MLT産業、MT産業は横ばい又は微減、HT産業は漸増している。
 フランスはMHT産業が最も多く、2019年では35.4%を占めている。次いでHT産業25.9%、MLT産業が22.0%、MT産業が11.0%である。時系列を見ると、MHT産業は2000年代後半から減少した後、2010年頃からはほぼ横ばい、HT産業は長期的には増加している。MLT産業、MT産業は2010年頃からほぼ横ばいに推移している。
 英国はMHT産業が最も大きく、2019年で32.7%である。次いでHT産業が22.8%、MLT産業が21.0%、MT産業が14.8%である。時系列を見ると、MHT産業は長期的に見れば、微減傾向にある。HT産業は2000年頃まで増加した後は減少に転じ、2013年以降増加、2016年から微減している。MT産業は2013年に大きく増加した後、減少に転じ、近年はほぼ横ばいに推移している。
 中国は1990年ではMLT産業が多くを占めていたが、1990年代にHT産業、MHT産業が増加、それに伴いMLT産業が減少し、2019年ではHT産業が29.9%と他国と比較しても最も大きい。MHT産業が27.9%、MLT産業が26.3%と、研究開発集約型の産業からそうでない産業まで3つの産業がほぼ同程度となっている。
 韓国では、1990年ではMLT産業が最も多くを占めていたが、その後は2010年頃まで継続的に減少が続き、これに代わってMHT産業の増加が見られた。HT産業については、2004年まで漸増した後は減少、2012年を境に増加に転じている。2019年では、MHT産業が最も大きく40.7%である。次いでHT産業29.9%、MT産業14.4%、MLT産業が14.3%である。

 

【図表5-2-2】 主要国の産業貿易輸出割合
(A)日本
(B)米国
(C)ドイツ
(D)フランス
(E)英国
(F)中国
(G)韓国
(H)産業貿易の内訳

資料:
OECD,“STAN Bilateral Trade in Goods by Industry and End-use (BTDIxE), ISIC Rev.4”

参照:表5-2-2


(2)ハイテクノロジー産業貿易

 ハイテクノロジー産業とはOECDの定義(High R&D intensive industries)に基づいている。具体的には「医薬品」、「電子機器」、「航空・宇宙」の3つの産業を指す。
 図表5-2-3は主要国のハイテクノロジー産業貿易額の推移である。ほとんどの国で「電子機器」が多くを占めている。
 日本の輸出額は長期的に見ると、増減を繰り返しながら減少傾向にある。輸入額については、増加傾向が続いた後、2012年以降は、増減しながらおおむね横ばいに推移している。また、輸出、輸入ともに「電子機器」が多くを占めている。「電子機器」の輸出額は2006年をピークに減少傾向にあり、輸入額は2012年以降ほぼ横ばいに推移している。
 米国は輸出、輸入額ともに長期的に拡大傾向にある。ただし伸びは輸入額の方が大きい。2000年代に入り、輸入額が輸出額を大きく上回るようになった。米国の輸出は「航空・宇宙」が他国と比較しても大きいことが特徴である。輸入額については、「電子機器」、「医薬品」が大きい。
 ドイツのハイテクノロジー産業貿易の輸出額については、長期的に見ると増加傾向にある。輸入額については、2005年頃から漸増している。輸出入ともに、「電子機器」の額が大きいが、収支はほぼ均衡している。また、「医薬品」と「航空・宇宙」は、ともに出超である。特に「医薬品」の輸出額は、ここに示した国の中で最も大きい。
 フランスは「航空・宇宙」の輸出額が「電子機器」と2倍程度なのが特徴であり、貿易収支も出超となっている。また、「医薬品」も出超である。
 英国については、輸出額は2012年頃からほぼ横ばい、輸入額は2014年まで増加した後、横ばいに推移している。長期的に見ると、輸出額については「航空・宇宙」が増加しており、「電子機器」は減少傾向にある。「医薬品」については2015年頃から微減している。輸入額については、「電子機器」が一定の規模を保って推移しているため、入超となっている。「医薬品」についても、輸出より輸入の伸びが大きく、近年は額が同程度となっている。
 中国は輸出、輸入額ともに著しく拡大し、2000年代後半に入ると輸出額は米国を上回り、大きく伸びた。2013年を境に、輸出、輸入共にその伸びは停滞していたが、近年は再び増加している。ただし、最新年では減少した。産業の構成を見ると、輸出、輸入ともに「電子機器」が大部分を占めている。
 韓国についても、輸出、輸入額ともに「電子機器」がほとんどを占めている。特に輸出額の増加が著しいが最新年では減少した。
 BRICsのデータを見ると、ロシア、ブラジル、インドともに輸入額が大きい。ブラジルは「航空・宇宙」で、インドは「医薬品」で出超であり、輸出額も増加傾向にある。

 

【図表5-2-3】 主要国におけるハイテクノロジー産業貿易額の推移

資料:
OECD,“STAN Bilateral Trade in Goods by Industry and End-use (BTDIxE), ISIC Rev.4”

参照:表5-2-3


 図表5-2-4に、ハイテクノロジー産業全体の貿易収支比の推移を示した。日本は長期的に貿易収支を減少させている。2011年以降、1を下回り、入超となっている。2020年の日本の収支比は0.74である。
 米国、ドイツ、フランス、英国の収支比は、1990年代は、1前後に推移していた。米国、英国については、2000年前後から1を下回り、入超で推移し続けている。2019年では米国は0.67、英国は0.85となっている。
 ドイツは2000年頃から1を上回り出超となり、2012年以降は横ばいに推移している。2019年では1.22である。
 フランスは1990年代前半には1を上回り、出超で、ほぼ横ばいに推移している。2019年では1.19である。
 中国は収支比を上昇させていたが、2008年以降、微減している。2019年では1.21である。
 韓国は主要国中、最も収支比が高い。2019年で1.50となっている。

 

【図表5-2-4】 主要国におけるハイテクノロジー産業の貿易収支比の推移

資料:
表5-2-3と同じ。

参照:表5-2-4



(3)ミディアムハイテクノロジー産業貿易

 図5-2-2で見たように、ミディアムハイテクノロジー産業は主要国の多くで、輸出額において1番の重みを持っており、その状況を把握する事は、ハイテクノロジー産業貿易の状況を把握する事と同様に重要である。
 ここでいうミディアムハイテクノロジー産業とはOECDの定義(Medium-high R&D intensive activities)に基づいており、国際標準産業分類第4次改訂版(ISIC Rev.4)を用いたデータを使用した。具体的には、「化学品と化学製品」、「電気機器」、「機械器具」、「自動車」、「その他輸送」、「その他」といった産業から構成される。
 図5-2-5を見ると、ミディアムハイテクノロジー産業貿易の輸出額(最新年)ではドイツが最も大きく、これに中国、米国が続く。過去、日本はドイツ、米国に続いて輸出額が多かったが、2011年以降、中国の輸出額が日本を上回っている。
 輸入額を見ると、米国が最も大きい。過去はドイツが続いていたが、2010年以降、中国が上回っている。
 各国の輸出、輸入の内訳を見ると、日本の輸出額の内訳は「自動車」が最も大きく、次いで「機械器具」が大きい。全体の約7割を占めるこれらの産業は、2000年代に入ってから急激な伸びを示した後、2009年に大きく減少した。その後、回復を見せたが、長期的に増減しながら、おおむね横ばいに推移している。輸入額では「化学品と化学製品」が最も大きく、次いで「機械器具」が大きい。
 米国の輸出額では、「化学品と化学製品」が最も大きく、これに「自動車」、「機械器具」が続いている。輸入額では「自動車」が最も大きいが、「機械器具」も大きい。
 ドイツの輸出額は「自動車」が最も大きく、次いで「機械器具」が大きい。輸入額は「自動車」が最も大きく、これに「化学品と化学製品」が続く。
 フランスでは輸出、輸入ともに、産業の種類別の規模のバランスが似通っている。輸出は「化学品と化学製品」、「自動車」の順で大きく、輸入は「自動車」、「化学品と化学製品」の順で大きい。
 英国も輸出、輸入ともに産業の種類別の規模のバランスが似ている。輸出、輸入共に「自動車」が最も大きい。
 中国においては輸出額では「電気機器」、「機械器具」が大きく、輸入額では「化学品と化学製品」、「機械器具」が大きい。
 韓国においては、輸出額では「化学品と化学製品」と「自動車」が大きい。両者とも2010年頃までは大きく伸びていたが、2010年代に入って伸びは鈍化した。輸入額では「化学品と化学製品」、「機械器具」が大きい。
 ロシア、ブラジル、インドについては、その他の国と比較すると規模が小さい。また全ての国で輸入額の方が大きい。輸入額の内訳を見ると、ロシアでは「機械器具」、ブラジル、インドでは「化学品と化学製品」が最も大きい。


【図表5-2-5】 主要国におけるミディアムハイテクノロジー産業貿易額の推移

注:
その他は「磁気、光学メディア」、「医療及び歯科用機器・備品」等である。
資料:
STAN Bilateral Trade in Goods by Industry and End-use (BTDIxE), ISIC Rev.4

参照:表5-2-5


 図表5-2-6に、ミディアムハイテクノロジー産業全体の貿易収支比の推移を示した。
 2020年の日本のミディアムハイテクノロジー産業貿易収支比は2.50であり、主要国中第1位である。推移を見ると、1990年代中頃に、急激な減少を見せた後は漸減傾向にある。
 韓国の収支比は長期的に増加傾向にあったが、2014年以降、ほぼ横ばいに推移している。2019年では1.76を示している。
 ドイツの2019年の収支比は1.59であり、継続的に出超である。2004年に2.03を示した後、微減している。
 中国の収支比は、長期的に見ると、緩やかな増減を繰り返しつつも、増加傾向にある。2019年では1.43となっている。
 フランスの収支比は、長期的に減少しており、2019年では0.88である。
 英国の収支比は、1991年以外は入超で推移している。2019年では0.76である。
 米国の収支比は未だ1を超えたことはなく、2019年では0.65である。


【図表5-2-6】 主要国におけるミディアムハイテクノロジー産業の貿易収支比の推移

資料:
図表5-2-5と同じ。

参照:表5-2-6


5.2.2付加価値

 この節は、特定の産業について、全産業の付加価値に占める重みを見る。ここでいう付加価値とは、その国の居住者による総産出(生産物)から中間投入(5)を控除して算出されたものである。


(1)各産業の付加価値

 全産業の総付加価値に対する6つの産業の重みを見る(図表5-2-7)。
 「電子機器」の付加価値割合は韓国が最も大きく、最新年では8.5%である。日本は1.6%、米国が1.5%と続く。韓国の伸びが著しいのに対して、他の国は微減もしくは横ばいに推移している。
 「医薬品」の付加価値割合は、各国ともに0.4%から1%からの間で推移している。最新年では大きい順に米国、ドイツ、英国、フランス、日本、韓国となっている。
 「自動車」の付加価値割合はドイツが最も大きく、最新年では4.7%である。次いで、日本が2.9%、韓国が2.2%となってる。いずれの国でも増減を繰り返しながらも増加傾向にある。これに対して、英国、米国、フランスは、漸減傾向にあり、最新年では0.7から0.9%を示している。
 「化学と化学製品」の付加価値割合は韓国が最も大きく、最新年では2.3%である。日本とドイツが1.7%と続く。多くの国で2000年代後半まで減少した後、微増もしくは横ばいに推移している。
 「電気機器」の付加価値割合は韓国が最も大きく、長期的に増加傾向にある。最新年では1.7%である。ドイツと日本は1991年時点ではそれぞれ2.4%、2.0%と大きかったがその後は減少し、日本は1.4%、ドイツ1.5%となった。米国、フランス、英国は減少傾向にある。
 「機械器具」の付加価値割合はドイツが最も大きく、最新年では3.5%である。日本は3.2%、韓国は2.5%と続く。ドイツ、日本、韓国は増加傾向であるのに対して、米国、フランス、英国は減少傾向にある。

 

【図表5-2-7】 主要国における総付加価値に対する各産業のシェア
(A)電子機器
(B)医薬品
(C)自動車
(D)化学と化学製品
(E)電気機器
(F)機械器具

注:
電子機器産業とは「コンピュータ、電子および光学製品」である。
資料:
OECD, “STAN Industrial Analysis”

参照:表5-2-7


(2)「情報」産業の付加価値

 「情報」産業について、産業の総付加価値に対する重みを見る。ここでいう「情報」産業とは「コンピュータ、電子および光学製品」、「通信」、「出版、視聴覚および放送」、「ITおよびその他の情報サービス」を合計したものである。本分類については、OECD, “Measuring the Digital Transformation”に依拠した。
 図表5-2-8(A)を見ると、1991年では、米国が7.0%と最も大きかったが、他の国も5~6%台であり、差異は少なかった。その後、韓国は約2倍の伸びを見せているのに対して、その他の国の伸びは少ない。各国最新年における「情報」産業の付加価値のシェアが最も大きい国は韓国(13.1%)であり、米国(8.4%)、英国(7.8%)、日本(6.5%)が続く。
 次に、主要国における「情報」産業の付加価値の内訳を見ると(図表5-2-8(B))、日本は1991年では、「コンピュータ、電子および光学製品」が3.2%と最も大きく「情報」産業全体の半数を占めていたが、その後は減少した。これに対して「ITおよびその他の情報サービス」は1991年時点では0.9%であったが、2017年では2.4%と大きく伸びた。
 米国は1991年時点では、「コンピュータ、電子および光学製品」、「通信」、「出版、視聴覚および放送」の3つが多くを占めていた(それぞれ約2%)。「ITおよびその他の情報サービス」は0.9%であったが、その後は増加し、2018年では3.0%と最も大きくなった。
 ドイツでは、「ITおよびその他の情報サービス」の伸びが著しく、2017年では2.7%を示している。その他は、微減もしくは横ばいに推移しており、「通信」は減少している。
 フランスは、1991年時点で「ITおよびその他の情報サービス」が最も大きく、その後も増加し、2018年では2.9%となった。その他は微減もしくは横ばいに推移しており、「コンピュータ、電子および光学製品」については減少している。
 英国は、1991年時点では「通信」が最も大きかったが、その後は横ばいに推移した。これに対して大きく伸びたのは、「ITおよびその他の情報サービス」である。2018年では3.4%となり、主要国中最も大きな値を示している。
 韓国は1991年時点では、「コンピュータ、電子および光学製品」、「通信」がそれぞれ2.6%、2.1%と大きく、「ITおよびその他の情報サービス」は0.5%と主要国中、最も小さかった。その後、「コンピュータ、電子および光学製品」、「ITおよびその他の情報サービス」は大きく増加した。2018年では「コンピュータ、電子および光学製品」は8.5%と、主要国中最も大きな規模となった。「ITおよびその他の情報サービス」は1.9%となったが、主要国中最も小さい。

 

【図表5-2-8】 「情報」産業付加価値のシェア
(A)主要国における「情報」産業付加価値のシェア


(B)主要国における「情報」産業付加価値の内訳
(a)日本
(b)米国
(c)ドイツ
(d)フランス
(e)英国
(f)韓国

注:
「情報」産業とは「コンピュータ、電子および光学製品」、「通信」、「出版、視聴覚および放送」、「ITおよびその他の情報サービス」である。
資料:
OECD, “STAN Industrial Analysis”

参照:表5-2-8



(5)2019年5月に入手したOECD,“STAN Bilateral Trade in Goods by Industry and End-use (BTDIxE), ISIC Rev.4”では、それまでの「研究開発集約産業(R&D intensive industries)」から「研究開発集約活動(R&D - intensive activities)」に変更されていた。各レベルについて、対象となる産業は今までと同様である。