5.2ハイテクノロジー産業貿易及びミディアムハイテクノロジー産業貿易

ポイント

  • 日本のハイテクノロジー産業貿易における輸出額は、横ばいに推移していたが、近年、減少傾向にある。輸入額については増加傾向が続いていたが、近年、減少している。また、輸出、輸入ともに「電子機器」が多くを占めている。
  • 主要国のハイテクノロジー産業貿易額の状況を見ると、中国は輸出、輸入額ともに著しく拡大し、2000年代後半に入ると輸出額は米国を上回り、大きく伸び続けている。産業の構成を見ると、輸出、輸入ともに「電子機器」が大部分を占めている。
  • ハイテクノロジー産業貿易収支比を見ると、日本は継続して貿易収支を減少させている。2011年以降1を下回り、入超となった。2015年の日本の収支比は0.75であり、元々低かった英国、米国と同程度となっている。一方、中国、韓国は長期的に見れば、収支比を上昇させており、韓国は主要国中、最も収支比が高い(1.66)。
  • 2015年の日本のミディアムハイテクノロジー産業貿易収支比は2.64であり、主要国中第1位である。推移を見ると、1990年代中頃に、急激な減少を見せた後は漸減傾向にある。米国、ドイツ、フランス、英国が横ばいに推移している中で、貿易収支比を増加させているのは韓国(1.84)と中国(1.43)である。

(1)ハイテクノロジー産業貿易

 ハイテクノロジー産業の貿易額は、技術貿易のように科学技術知識の直接的なやり取りについてのデータではないが、実際に製品開発に活用された科学技術知識の間接的な指標である。なお、ここでいうハイテクノロジー産業とはOECDの定義(「研究開発集約産業(R&D - intensive industries)」と呼ばれる場合もある)に基づいている。具体的には「医薬品」、「電子機器」、「航空・宇宙」の3つの産業を指す。
 図表5-2-1に、ハイテクノロジー産業の貿易額(輸出額と輸入額)のOECD加盟国35と非加盟国・地域7(3)についての合計額(4)の推移を示した。これを全世界のハイテクノロジー産業貿易と考えることとする。これを見ると、2009年にはハイテクノロジー産業貿易の規模が縮小したが、その後の規模は大きくなっている。しかしながら2015年については、輸出入共に減少している。内訳を見ると、「電子機器」の貿易額が最も大きく、その割合も全体の約7割を占める。


【図表5-2-1】 OECD加盟国34と非加盟国・地域7のハイテクノロジー産業の貿易額の推移

注:
非加盟国・地域はアルゼンチン、中国、ロシア、シンガポール、ルーマニア、南アフリカ、台湾。
資料:
OECD,“Main Science and Technology Indicators 2016/2”

参照:表5-2-1


 図表5-2-2は主要国のハイテクノロジー産業貿易額の推移である。ほとんどの国で「電子機器」産業が多くを占めている。
 国別に状況を見ると、日本の輸出額は横ばいに推移していたが、近年、減少傾向にある。一方、輸入額については増加傾向が続いていたが、近年、漸減している。また、輸出、輸入ともに「電子機器」が多くを占めている。
 米国は輸出、輸入額ともに拡大している。2000年代に入り、輸入額が輸出額を大きく上回るようになった。米国の輸出は「航空・宇宙」が他国と比較しても大きいことが特徴である。輸入額については、「電子機器」、「医薬品」の輸入額が大きい。
 ドイツのハイテクノロジー産業貿易の輸出額については増加傾向が続いていたが、最新年は減少した。輸入額については、2000年代後半からほぼ横ばいに推移している。輸出入ともに、「電子機器」の額が大きいが収支は均衡している。また、「医薬品」と「航空・宇宙」は、ともに出超である。特に「医薬品」の輸出額は、ここに示した国の中で最も大きい。
 フランスは「航空・宇宙」の輸出額が「電子機器」よりも大きいのが特徴であり、貿易収支も出超となっている。また、「医薬品」も出超である。
 英国については、2000年代後半から輸出額は横ばい、輸入額は漸増傾向にある。輸出額については「医薬品」、「航空・宇宙」が増加しており、「電子機器」は減少している。輸入額については、「電子機器」が一定の規模を保って推移しているため、「電子機器」が入超となっている。
 中国は輸出、輸入額ともに著しく拡大し、2000年代後半に入ると輸出額は米国を上回り、大きく伸びている。産業の構成を見ると、輸出、輸入ともに「電子機器」が大部分を占めている。
 韓国についても、輸出、輸入額ともに「電子機器」がほとんどを占めており、特に輸出額での増加が著しい。
 昨今、経済発展が著しいBRICsのデータを見ると、ロシア、ブラジル、インドともに輸入額が大きく、増加も著しい。ブラジルについては「航空・宇宙」のみ出超である。インドでは「医薬品」の輸出額が著しく伸びており、「医薬品」の黒字幅を広げている。


【図表5-2-2】 主要国におけるハイテクノロジー産業貿易額の推移

資料:
<日本、米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2016/2”
<ロシア、ブラジル、インド>OECD,“STAN Bilateral Trade in Goods by Industry and End-use (BTDIxE), ISIC Rev.4”

参照:表5-2-2


 図表5-2-3に、ハイテクノロジー産業全体の貿易収支比の推移を示した。日本は継続して貿易収支を減少させている。2011年以降、1を下回り、入超となっており、2015年の日本の収支比は0.75である。
 米国、ドイツ、フランス、英国の収支比は、1前後に推移していたが、米国、英国は2000年前後から、1を下回り、入超で横ばいに推移している。米国の2015年では0.73、英国は0.82となっている。
 ドイツは2000年頃から、1を上回り、出超で横ばいに推移している。
 フランスは1990年代前半には1を上回り、出超で横ばいに推移している。
 中国は長期的に見れば、収支比を上昇させていたが、2008年以降、横ばいに推移している。2015年では1.28である。
 韓国は主要国中、最も収支比が高い。2015年で1.66となっている。


【図表5-2-3】 主要国におけるハイテクノロジー産業の貿易収支比の推移

資料:
図表5-2-2と同じ。

参照:表5-2-3


(2)ミディアムハイテクノロジー産業貿易

 ミディアムハイテクノロジー産業貿易の状況を把握する事は、ハイテクノロジー産業貿易の状況を把握する事と同様に重要である。
 ここでいうミディアムハイテクノロジー産業とはOECDの定義に基づいており、ISIC(国際標準産業分類)Rev.4を用いたデータを使用した。具体的には、「化学品と化学製品」、「電気機器」、「機械器具」、「自動車」、「その他輸送」、「その他」といった産業から構成される。
 図5-2-4を見ると、ミディアムハイテクノロジー産業貿易の輸出額ではドイツが最も大きく、これに中国、米国が続く。日本も存在感を示していたが、2011年以降、中国の輸出額が日本を上回っている。一方、輸入額を見ると、米国が最も大きい。次いでドイツが大きかったが、近年では中国が上回っている。
 各国の輸出入の内訳を見ると、日本の輸出額の内訳は「自動車」が最も大きく、次いで大きいのは「機械器具」である。輸出額全体の推移を見ると、2000年代後半から急激な伸びを示していたが、近年、減少している。輸入額では「化学品と化学製品」が最も大きく、次いで「機械器具」である。
 米国の輸出額では「機械器具」が最も大きく、次いで「化学品と化学製品」が大きい。輸入額では「自動車」が最も大きいが「機械器具」も大きい。
 ドイツの輸出額は「自動車」が最も大きく、次いで「機械器具」が大きい。輸入額も同様の傾向にある。
 フランスでは輸出、輸入ともに、産業の種類別の規模のバランスが似通っている。「化学品と化学製品」及び「自動車」が同程度大きい。
 英国も輸出、輸入ともに産業の種類別の規模のバランスが似ている。「自動車」が最も大きく、次いで「化学品と化学製品」である。
 中国においては輸出額では「電気機器」、「機械器具」が多く、輸入額では「化学品と化学製品」「機械器具」が多い。なお「自動車」は急激な増加を見せているが、最新年では輸入額が減少した。
 韓国においては、輸出額では「自動車」と「化学品と化学製品」が大きくかつ伸びている。輸入額では「化学品と化学製品」、「機械器具」が大きい。
 ロシア、ブラジル、インドについては、その他の国と比較すると規模が小さい。また全ての国で輸入額の方が大きい。輸入額の内訳を見ると、ロシアでは「機械器具」、ブラジル、インドでは「化学品と化学製品」が最も大きい。


【図表5-2-4】 主要国におけるミディアムハイテクノロジー産業貿易額の推移

注:
その他は「磁気、光学メディア」、「医療及び歯科用機器・備品」等である。”
資料:
STAN Bilateral Trade in Goods by Industry and End-use (BTDIxE), ISIC Rev.4

参照:表5-2-4


 図表5-2-5に、ミディアムハイテクノロジー産業全体の貿易収支比の推移を示した。
 2015年の日本のミディアムハイテクノロジー産業貿易収支比は2.64であり、主要国中第1位である。推移を見ると、1990年代中頃に、急激な減少を見せた後は漸減傾向にある。
  韓国の収支比は長期的に増加傾向にあったが、近年横ばいに推移しており、2015年では1.84を示している。
 ドイツの2015年の収支比は1.80である。継続的に出超であり、ほぼ横ばいに推移している。
 中国の収支比は、長期的に見ると増加しており、2015年では、1.43である。
 フランスの収支比は、推移を見ても大きな変化は見られず、1.0前後で推移している。
 英国の収支比は、1991年以外は入超で推移している。
 米国の収支比は未だ1を超えたことはない。


【図表5-2-5】 主要国におけるミディアムハイテクノロジー産業の貿易収支比の推移

資料:
図表5-2-4と同じ。

参照:表5-2-5



(3)アルゼンチン、中国、ロシア、シンガポール、ルーマニア、南アフリカ、台湾。
(4)各国が自国以外に対して貿易を行った額を合計したもの。