イノベーションの主要な決定要因は、イノベーションを実施した企業にとっての利益の専有可能性と、企業の研究開発がイノベーションに結び付く技術機会の獲得にあるとされてきました。科学技術・学術政策研究所は、日本の製造業におけるそれらの実態を明らかにするための調査を1994年に実施しており、2020年にはその調査データと比較可能な質問項目を登載して「民間企業の研究活動に関する調査」を実施しました。
本論文では、この二度に亘る調査により取得されたデータを用いて、四半世紀の間に専有可能性と技術機会に生じた変化を分析しています。この分析により、企業が実施したイノベーションから利益を確保するための各種の方法の有効性が減退し、利益の専有可能性が顕著に低下したこと、自社のイノベーションを競合他社が模倣するまでの時間(模倣ラグ)はかなり長期化したこと、技術機会を提供する情報源として大学や公的研究機関の重要性が顕著に増大する一方、情報源としての競合他社の重要性は低下したこと、との結果を得ました。これらのファインディングスは、イノベーションをめぐる企業間競争の衰退と、科学技術イノベーション政策にとっての新たな課題を示唆しています。
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日本の産業におけるイノベーションの専有可能性と技術機会の変容;1994-2020 [DISCUSSION PAPER No.210]