STI Hz Vol.8, No.4, Part.10:(レポート)科学技術に関する国民意識調査STI Horizon

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  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00317
  • 公開日: 2022.12.20
  • 著者: 細坪 護挙、加納 圭、須藤 憲司
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.8, No.4
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

レポート
科学技術に関する国民意識調査
-SDGsについて-

第1調査研究グループ 上席研究官 細坪 護挙、客員研究官 加納 圭
総務研究官 須藤 憲司

概 要

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では例年、科学技術に関する国民の意識について調査している。今回、2022年6月に6,600人のモニター回答者を対象に、社会の関心が高まっているSDGsについて、その認知状況や科学技術・イノベーションのSDGsへの貢献に関する意識について調査したので、本稿ではその主なポイントを報告する。SDGsの認知度や把握手段、SDGsに対する科学技術・イノベーションの貢献について男女において有意な差が見られる。また、認知度に関しては年齢差も見られる。

キーワード:国民意識調査,インターネット調査,SDGs

1. はじめに

科学技術・学術政策研究所(以下NISTEP)では、科学技術に関する国民意識データを収集し、科学技術イノベーション政策の立案・推進に資することを目的として、2009年度から、「科学技術に関する国民意識調査」を実施している。

本2022年度調査(2022年6月調査)は、15歳から69歳までの男女合計6,600人にインターネットを使って調査したものである。

2. 調査の概要

本調査は、科学技術イノベーション政策の立案・推進に資する基礎データの提供を目的として、2009年度以来、NISTEPが科学技術に関する国民意識を把握するために継続的に実施している。

2-1 調査対象

インターネット調査会社にモニター回答者として登録している者である。

2-2 調査期間及び調査方法

2022年6月にインターネットによって実施した。

サンプル数はN=6,600で、回答者年齢は15-69歳、サンプリングの層化として、男女同数(男性3,300名、女性3,300名)、15-19歳、20-24歳、25-29歳…60-64歳、65-69歳で同数(11の年齢層、1年齢層当たり600名)とした。

2-3 調査時点

2022年6月1日から6月8日にかけて実施した。

2-4 調査項目

科学技術に関する国民意識調査に関しては、2009年から2012年までは毎月、調査を実施してきたが、標本数が少なく、毎月の変動が有意なものかどうか判定が難しいため、現在では標本数を増やし、1年に2回程度の実施としている。

SDGsに関しては、昨今、持続可能性に向けた国際的な目標として様々な場面で注目を浴びており、科学技術からの貢献を調べる意義があると考えられる。

今般の調査では特にSDGsに対する認知度、科学技術・イノベーションによるSDGsに対する貢献への期待を把握することが目的である。

3. 調査結果の概要

概要では、調査結果1)のうち、SDGsに関する国民の意識の主な結果について示す。

【SDGsに関する国民の意識】
①SDGsに関する認知状況

SDGsへの認知について伺ったところ、「性別」(図表1-1)では男性(内容を(ある程度)知っている58%)の方が女性(内容を(ある程度)知っている54%)よりも高い一方、「年代別」(図表1-2)では若い世代(24歳以下)とシニア世代(60歳以上)で高いことが判明した。

図表1-1 SDGsに関して、あなたは御存じですか(性別)図表1-1 SDGsに関して、あなたは御存じですか(性別)

図表1-2 SDGsに関して、あなたは御存じですか(年代別)図表1-2 SDGsに関して、あなたは御存じですか(年代別)

②SDGsの把握手段

SDGsをどんな場面で聞いたことがあるか()いたところ、こちらも「性別」(図表2)では男性はインターネットや新聞などが高く、女性はテレビや家族や友人、知人、職場の人で多くなっている。

図表2 SDGsをどんな場面で聞いたことがありましたか
(性別。%は総計の値。以下同じ)図表2 SDGsをどんな場面で聞いたことがありましたか(性別。%は総計の値。以下同じ)

③「世界全体」、「日本国内」、「身近な生活」の3つのスケールでの科学技術・イノベーションのSDGsへの貢献に関する意識

「世界全体」、「日本国内」、「身近な生活」の3つのスケールで考えたときに、「科学技術・イノベーションの貢献が重要であると思うSDGsの課題はどれですか」について訊いたところ、「性別」でみると、「世界全体」では女性は全ての項目で男性を上回っており、男性より科学技術・イノベーションの貢献に対する意識が強い。特に高いのは貧困、食糧問題(共に73%)、次いで気候変動・地球温暖化、平和(共に70%)などである(図表3-1)。平和が特に高いのはウクライナ問題等の事情があると考えられる。

「日本国内」でも女性は全ての項目で男性を上回っており、男性より科学技術・イノベーションの貢献に対する意識が強い。特に高いのは健康・介護福祉(58%)、次いでエネルギー問題(57%)である(図表3-2)。

「身近な生活」でも女性は全ての項目で男性を上回っており、男性より科学技術・イノベーションの貢献に対する意識が強い。特に高いのは健康・介護福祉(47%)、次いで環境に配慮した消費(36%)である(図表3-3)。

図表3-1 「世界全体」で科学技術・イノベーションの貢献が重要である
と思うSDGsの課題はどれですか(性別)図表3-1 「世界全体」で科学技術・イノベーションの貢献が重要であると思うSDGsの課題はどれですか(性別)

図表3-2 「日本国内」で科学技術・イノベーションの貢献が重要である
と思うSDGsの課題はどれですか(性別)図表3-2 「日本国内」で科学技術・イノベーションの貢献が重要であると思うSDGsの課題はどれですか(性別)

図表3-3 「身近な生活」で科学技術・イノベーションの貢献が重要である
と思うSDGsの課題はどれですか(性別)図表3-3 「身近な生活」で科学技術・イノベーションの貢献が重要であると思うSDGsの課題はどれですか(性別)

④SDGsにおける科学技術・イノベーションの役割に関する意識

「SDGsのために科学技術・イノベーションは全体として重要な役割を果たすと思うか」について訊いたところ、性別では図表4-1となり、女性((やや)思う62%)が男性((やや)思う61%)よりも僅かに大きい。

年代別で見る(図表4-2)と60歳以上のシニア世代で科学技術・イノベーションは全体として重要な役割を果たすと強く思われている。

図表4-1 SDGsのために科学技術・イノベーションは全体として重要な
役割を果たすと思うか(性別)図表4-1 SDGsのために科学技術・イノベーションは全体として重要な役割を果たすと思うか(性別)

図表4-2 SDGsのために科学技術・イノベーションは全体として重要な
役割を果たすと思うか(年代別)図表4-2 SDGsのために科学技術・イノベーションは全体として重要な役割を果たすと思うか(年代別)

⑤SDGsへの国の取組に関する意識1)

加えて、「SDGsのために国は積極的に取り組んでいると思うか」を訊いたところ、女性((やや)思う30%)の方が男性((やや)思う26%)より多いという結果となった。

年代別に見ると、24歳以下の若い世代で、SDGsのために国は積極的に取り組んでいると思っている。

⑥科学技術・イノベーションによるSDGsの達成に取り組む企業の製品・サービスに対する意識1)

一方、「科学技術・イノベーションによるSDGsの達成に取り組んでいる企業の製品・サービスを利用したいと思うかどうか」を訊いたところ、性別では、女性((やや)思う54%)は男性((やや)思う41%)よりもはるかに高く、企業の製品・サービスについて高い意識を持っていることが分かる。

年代別に見ると、24歳以下の若年層、60歳以上のシニア世代に加えて、40-44歳の中間層でも高くなっている。

⑦主体別の科学技術・イノベーションによるSDGs達成への取組状況に対する意識1)

「科学技術・イノベーションによるSDGsの達成について、以下の主体は既に積極的に取り組んでいると思いますか」について訊いたところ、わからない(40%)が最多となってしまっているが、次点で企業や民間団体(34%)となっており、企業等の活動が国民の目に多く映っている。企業に次いで、国や地方の行政機関、国立や公立、独立行政法人などの公的研究機関、科学館や博物館など科学技術関連施設(いずれも14%)が並んでいる。

⑧科学技術・イノベーションによるSDGs達成に積極的に取り組むべき主体に対する意識1)

「科学技術・イノベーションによるSDGsの達成について、誰が積極的に取り組むべきだと思いますか」について訊いたところ、性別では、国や地方の行政機関が49%とトップとなり、次いで政治家や国会等の立法機関、企業や民間団体(共に44%)などとなっている。

⑨SDGsに取り組む企業の製品・サービスに対する意識1)

「SDGsに取り組んでいる企業の製品・サービスを利用したいと思いますか」を訊いたところ、性別では、女性((やや)思う57%)は男性((やや)思う44%)よりもはるかに高く、企業の製品・サービスについて高い意識を持っていることが分かる。

年代別に見ると、24歳以下の若年層、60歳以上のシニア世代において高い値となっており、企業の製品・サービスについて高い意識を持っていることが分かる。

⑩各主体に関し、特に貢献してほしいSDGsの目標に対する意識1)

「国や地方の行政機関」、「大学」、「公的研究機関」、「企業や民間団体(公益法人、NPO、NGOなど)」の4つの主体で考えたときに、「達成に特に貢献してほしいSDGsの目標は何ですか」について訊いたところ、国や地方の行政機関については、貧困(64%)、次いで平和(57%)となっており、他の課題も多く上がっており、国や地方の行政機関への期待は大きく、全般的な支援が求められていると考えられる。平和が特に高いのはウクライナ問題等の事情があると考えられる。

一方、大学については、教育問題(40%)、次いで海洋とその生態系の保護(31%)などとなっている。中長期的な課題・視野についてSDGsの課題から出てきている。日本全体の研究者でSDGsの課題に取り組めそうである。

また、公的研究機関に関してはエネルギー問題(38%)に次いで、気候変動・地球温暖化、海洋とその生態系の保護、森林と陸上生態系の保護(共に37%)などとなっている。科学技術政策的に重要な文脈となっている。

加えて、企業や民間団体(公益法人、NPO、NGOなど)に対しては、食糧問題、持続可能な労働、雇用と経済成長、環境に配慮した消費(共に35%)などとなっている。大学との対比において教育問題が低い。

最後にまとめると、SDGsへの認知についてでは、男性の方が女性よりも高い。SDGsをどんな場面で聞いたことがあるか訊いたところ、男性はインターネットや新聞などが高く、女性はテレビや家族や友人、知人、職場の人で多くなっていることが分かる。

4. おわりに

本調査の実施に際し、多大な御協力を頂いた皆様をはじめとする関係者の方々に心から感謝申し上げる。

参考文献・資料

1) 細坪護挙、加納圭、須藤憲司、科学技術・学術政策研究所、Discussion Paper No.211, 「科学技術に関する国民意識調査-SDGsについて-」、2022年7月、https://doi.org/10.15108/dp211.