STI Hz Vol.11, No.4, Part.10:(レポート)偽情報・誤情報の認知や判断 -科学技術に関する国民意識調査から-STI Horizon

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  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00422
  • 公開日: 2025.12.22
  • 著者: 伊藤 伸、橋本 俊幸
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.11, No.4
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

レポート
偽情報・誤情報の認知や判断
-科学技術に関する国民意識調査から-

第1調査研究グループ 上席研究官 伊藤 伸、総括上席研究官 橋本 俊幸

概 要

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は科学技術に関する国民の意識を把握するため国民意識調査を継続実施している。2025年7月に実施したインターネット調査では、社会的な課題になっているSNS、テレビ等のメディアを通じた、意図を持った虚偽の情報である偽情報や誤った情報である誤情報を取り上げた。科学技術への関心度が高いと、偽情報・誤情報に関して基礎的な用語の理解が深く、接触頻度も高く、真偽を確かめようとした割合も高いという関係が確認された。科学技術への高関心層は低関心層と比較して情報に対して積極的な態度を取っていた。偽情報・誤情報への反応として「他の情報源を探した」との回答割合は高かったが、インターネットを使った投稿・コメントや情報の共有に関する項目でも実行したとの回答割合が高かった。

キーワード:偽情報・誤情報,科学技術,国民意識調査,メディア,インターネット調査

1. はじめに

スマートフォンやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、生成AI等の急速な発展と普及、それらに伴う情報発信者が顕著に多様化している。これを背景に、意図を持った虚偽の情報である偽情報(disinformation)や誤った情報である誤情報(misinformation)が顕著に拡散するようになった。偽情報や誤情報と接触する機会が急増することで、情報の受け手が状況を正しく把握し、適切に判断することが困難になり、ビジネスや日常生活を問わず、深刻な影響が生じることが懸念されている。

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は、科学技術イノベーション政策の立案・推進に資することを目的に2009年度から「科学技術に関する国民意識調査」1)を実施し、関心や期待、不安といった科学技術に関する国民の意識を把握し、今後の進展が予想される社会的に注目の高いテーマを取り上げ、そうしたテーマに関連する認識と科学技術に関する意識の関係を分析してきた。今回の2025年度調査では、偽情報や誤情報の認知や判断をテーマに取り上げた。

一般的には偽情報や誤情報を指すためにフェイクニュースという言葉を使う傾向がある。しかし、恣意的にフェイク(偽物)であると判断する表現が多数見られたことなどにより、学術的には「偽情報・誤情報」を使用することが多い。偽情報と誤情報の定義は明確だが、差異は発信者の悪意の有無であって、受け手には判別しにくい。本調査でも用語の理解以外は「偽情報・誤情報」と両者をまとめた質問にしている。

偽情報や誤情報が爆発的に増加したのは2016年の米大統領選挙の際であることが分かっており23)、以降、偽情報や誤情報を対象にした研究も急速に拡大した。日本では、総務省が日本、米国、英国、フランス、韓国、オーストラリアを対象としたインターネット調査の結果から国際比較を実施している4)。偽情報・誤情報を週1回以上見かけたメディアでは、日本は米英仏豪と同様にSNSの割合が最も高かった。偽情報・誤情報を知人と共有や不特定多数へ拡散した理由として、日本では「特に意味はない」が3割弱を占めて最多だったが、米英では「情報が正しいと信じ、他の人に役立つと思ったから」、仏韓では「情報の真偽は分からなかったが、他の人に役立つと思ったから」の割合が最も高かった。

同様にインターネット調査を使った国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの実証分析5)では、コロナワクチンと政治に関して偽情報・誤情報を拡散する人の特徴として、正しい情報だと誤って判断することやメディアからの発信を批判的思考で読み解く能力であるメディアリテラシーが低いことを報告している。インターネット利用歴が長いと拡散しない傾向もあった。

本報告では、国民意識調査のデータを基に偽情報・誤情報の認知や判断と科学技術への関心の程度との関係を分析した結果を示す。

2. 調査研究方法

質問票によるインターネット調査を2025年7月に実施した。インターネット調査は、調査会社に登録しているモニターを回答者とするため母集団代表性などの課題を伴う。しかし、実施の迅速性やコストに優れるため広く利用されている。本調査では、調査の継続性を維持するため、回答者の50%以上を過去の回答経験者で占めるようにしている。更にデータの頑健性と安定性を高めるために、同一の調査を同時に調査会社2社に依頼し、両データを統合して分析している。分析には統計ソフトR version 4. 4. 2を利用した。

サンプリングは国内居住者を対象に15歳から69歳まで5歳刻みの11年齢層に1調査会社あたり男女各150人を割り当てた。1社の合計は3,300人であり、全体として男女同数計6,600人のサンプルになった。

質問票は、回答者属性、科学技術に関する意識を尋ねる定型の設問、偽情報・誤情報の認知や判断に関する設問で構成した。偽情報・誤情報に関する設問は、総務省4)や国際大学グローバル・コミュニケーション・センター5)の調査項目を参考にした。

3. 分析結果

3.1 回答者属性

回答に欠損値はなく、サンプリング時の割り付けの結果、性別は男女ともに3,300人(50%)、5歳間隔の11年齢層はいずれも600人(9.1%)である。最終学歴(中退した場合は卒業とみなす)については、大学が3,039人(46%)と最も多く、高等学校・専修学校高等課程が1,673人(25.3%)と続いた。以降、専門学校・専修学校専門課程680人(10.3%)、短期大学503人(7.6%)、大学院修士課程287人(4.3%)の順となる。大学院博士課程は63人(1%)だった。

職業については事務的職業の割合が男性(14.2%)、女性(20.3%)とも最も高かった。以降、男性は学生(11.9%)、労務的職業(10.3%)、サービス的職業(8.9%)、科学技術的職業(8%)が続くが、女性は家事(18.5%)、サービス的職業(11.5%)、学生(10.8%)、無職(7.1%)の順に割合が高く、明確な違いがある。

3.2 科学技術に関する関心

国民意識調査では長期にわたり同一の質問を使って回答者の科学技術に関する意識を把握している。基本となる設問として科学技術に関するニュースや話題に関心があるかどうかを4段階で尋ねている。インターネット調査では金銭インセンティブにより短時間で回答する志向が強いこともあり、「どちらでもない」や「わからない」に回答が集中する傾向がある。そのため、この設問では、「どちらでもない」や「わからない」を選択肢に含めていない。今回の結果は図表1に示すとおりである。男女とも「どちらかというと関心がある」の割合が一番高いが、男性は「関心がある」の割合が比較的に高く、女性は「どちらかというと関心がない」の割合が比較的に高かった。

科学技術に関するニュースや話題への関心の年齢層による分布は図表2のとおりである。全年齢層で「どちらかというと関心がある」が最も高いが、「関心がある」については15-19歳と60-69歳の割合が高かった。30-39歳は他の年齢層と比較して関心が弱かったが、全体的には性別による分布ほどの差異はなかった。以降、科学技術への関心の程度と偽情報や誤情報の認知や判断との関係を分析するため、「関心がある」と「どちらかというと関心がある」の回答者を「高関心層」、「どちらかというと関心がない」と「関心がない」の回答者を「低関心層」と二分して分析した。

図表1 科学技術に関するニュースや話題への関心(全体・性別)図表1 科学技術に関するニュースや話題への関心(全体・性別)

図表2 科学技術に関するニュースや話題への関心(年齢層別)図表2 科学技術に関するニュースや話題への関心(年齢層別)

3.3 科学技術に関する関心と偽情報・誤情報の認知

偽情報や誤情報に関する基本的な用語について「内容や意味を具体的に知っている」、「漠然と内容や意味を知っている」、「言葉は聞いたことがある」、「知らない」の4段階で知っている程度を尋ねた。用語は、偽情報、誤情報、ファクトチェック、フェイクニュース、プロパガンダ、生成AI、ディープフェイク、ニセ科学・疑似科学の8つである。この用語の理解の程度を高関心層と低関心層の間で比較した。図表3は偽情報、図表4はディープフェイクについての回答割合を示している。8つの用語すべてに関して高関心層の方が「内容や意味を具体的に知っている」の割合が高く、「知らない」の割合が低かった。「内容や意味を具体的に知っている」の割合の差は、特にフェイクニュースや生成AIで大きかった。「知らない」の割合の差は、ファクトチェックやディープフェイク、プロパガンダで顕著だった。

質問票では過去1か月の間にネット上と実生活にかかわらず、偽情報・誤情報だと思う情報にどれくらいの頻度で接触したかを尋ねている。選択肢は「毎日または、ほぼ毎日」から「2~3日に1回くらい」、「週に1回くらい」、「月に1回くらい」、「ほとんどない」、「一度も接触がない」までの6段階である。図表5は接触頻度を高関心層と低関心層の間で比較したグラフである。全体に高関心層は低関心層と比較して接触頻度が高い。特に「一度も接触がない」は高関心層では3.9%にとどまったが、低関心層では18.1%に達した。

過去1か月の間で偽情報・誤情報だと思う情報に多く接触したメディア(複数回答)について、高関心層と低関心層の間で比較した結果が図表6である。偽情報・誤情報だと思う情報に「一度も接触がない」と回答した652人を除いて集計している。「わからない」を除き、高関心層の回答割合が高い順に並べ替えている。関心層を問わず、突出して高い割合だったメディアはSNS(動画投稿を含む)である。テレビ、ニュース系アプリ・サイト、ネット掲示板・各種サイトのコメント欄、検索サービスが続いた。一方、雑誌やラジオ、書籍、ポスター・チラシという伝統的なメディアと、対面・電話などでの直接のやり取りを挙げた回答は少なかった。

メディアの種類にかかわらず、高関心層の方が偽情報・誤情報と接触したと回答した割合が高かった。しかし、「わからない」の回答は低関心層が高関心層を大きく上回った。

偽情報・誤情報だと思う情報に「一度も接触がない」回答者を除き、過去1か月の間で接触した偽情報・誤情報だと思う情報の該当分野についても複数回答で尋ねている。高関心層と低関心層の間で比較した結果が図表7である。「わからない」を除き、高関心層の回答割合が高い順に並べ替えている。両関心層とも最も割合が高い分野は政治で、以降は生活、社会・事件、健康・疾病の順であった。一方で、環境や教育・子育を挙げた回答はともに少なかった。

メディアの分野にかかわらず高関心層の方が偽情報・誤情報と接触したと回答した割合が高く、特に政治、健康・疾病、社会・事件の分野で、その差が大きかった。一方、スポーツ・芸能・文化では、その差が小さかった。「わからない」の回答は低関心層で30%に至り、高関心層を大きく上回った。

図表3 科学技術への関心と用語の理解(偽情報)図表3 科学技術への関心と用語の理解(偽情報)

図表4 科学技術への関心と用語の理解(ディープフェイク)図表4 科学技術への関心と用語の理解(ディープフェイク)

図表5 科学技術への関心と偽情報・誤情報との接触頻度図表5 科学技術への関心と偽情報・誤情報との接触頻度

図表6 科学技術への関心と偽情報・誤情報に多く接触したメディア図表6 科学技術への関心と偽情報・誤情報に多く接触したメディア

図表7 科学技術への関心と接触した偽情報・誤情報の分野図表7 科学技術への関心と接触した偽情報・誤情報の分野

3.4 科学技術に関する関心と偽情報・誤情報の判別

図表5の接触頻度に関する設問で、偽情報・誤情報と「一度も接触がない」と回答した者を取り除き、過去1か月以内に「偽情報・誤情報だと思う情報」と接触した際に、その情報の真偽を確かめようとした割合を5段階で尋ねている。この設問の対象者は5,948人であり、回答を科学技術への高関心層と低関心層で比較した結果が図表8である。高関心層は高い確率で疑わしい情報の真偽を調べたと回答しており、一方で低関心層では「疑わしい情報のうち0~20%の真偽を調べた」の回答が過半を占めた。

質問票調査では、過去1か月以内に偽情報・誤情報と正しいと思われた情報に接触した結果、回答者が取った反応について、それぞれ複数回答で尋ねている。図表9は偽情報・誤情報への反応、図表10は正しいと思われた情報への反応であり、いずれも比較可能なように高関心層と低関心層に分けて回答した割合を記載している。項目は「何もしなかった」を除き、高関心層の回答割合が高い順に並べ替えている。

偽情報・誤情報への反応では「何もしなかった」の回答割合が突出して高く、特に低関心層では83.6%に達した。「他の情報源を探した」、「友人・知人・家族に直接話した」が後続するが、いずれも高関心層の回答割合が高かった。割合は低いもののインターネットを使った投稿・コメントや情報の共有に関する項目にも回答があった。

正しいと思われた情報への反応でも「何もしなかった」の回答割合が際立って高く、低関心層では83.1%に至った。以降、「友人・知人・家族に直接話した」、「他の情報源を探した」が続くが、いずれも高関心層の回答割合が高かった。「情報を基にコンテンツを利用した」と「情報を基に購入・支払いをした」の回答は、関心層を問わず、偽情報・誤情報への反応と比較して高い割合となった。

図表8 科学技術への関心と偽情報・誤情報の真偽確認図表8 科学技術への関心と偽情報・誤情報の真偽確認

図表9 科学技術への関心と偽情報・誤情報への反応図表9 科学技術への関心と偽情報・誤情報への反応

図表10 科学技術への関心と正しいと思われた情報への反応図表10 科学技術への関心と正しいと思われた情報への反応

4. おわりに

国民意識調査として国内の居住者を対象に質問票によるインターネット調査を実施し、本報告では偽情報や誤情報に関する用語の理解、接触頻度、真偽の確認に関して、科学技術への関心の度合いとの関係を探った。科学技術への関心度が高いと、偽情報・誤情報に関する基礎的な用語の理解が深く、偽情報・誤情報との接触頻度も高く、偽情報・誤情報の真偽を確かめようとした割合も高いという関係が確認された。近年の偽情報・誤情報の急速な広がりは、スマートフォンやSNS、生成AI等の新しい技術の急速な発展と普及に伴う市民の行動変容が要因と思われる。この結果は、そうした事情の反映と考えられる。

加えて注目すべきは、偽情報・誤情報と正しいと思われた情報にかかわらず、高関心層が情報に対して積極的な態度を取っていたことである。偽情報・誤情報の真偽確認割合や偽情報・誤情報への反応としての「他の情報源を探した」における低関心層との差異は、真理を探究する科学の本質との結びつきが表出した結果かもしれない。半面、偽情報・誤情報への反応でインターネットを使った投稿・コメントや情報の共有に関する項目でも高関心層の実行割合が高いことには留意すべきだろう。もちろん、こうしたコメントや共有には批判的・否定的な立場からの発信も含まれるため、評価も容易ではない。

政策的な視点では、低関心層にどのように働きかけをしていくかが課題となろう。低関心の理由や背景を探る意義は大きいと考えられる。科学技術への関心の度合いと結びついていた偽情報・誤情報に関連する基礎的用語の理解を促進する活動も広く有益であろう。偽情報・誤情報に多く接触したメディアとして突出したSNSの特性把握の重要性も認識すべきである。なお、結果の解釈にはインターネット調査による回答者の選択バイアスを慎重に考慮する必要がある。

参考文献・資料

1) 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)、科学技術に関する国民意識の調査研究
https://www.nistep.go.jp/research/the-relationship-of-science-and-technology-with-society、(参照 2025-10-16)

2) Allcott, H., & Gentzkow, M. (2017). Social media and fake news in the 2016 election. Journal of Economic Perspectives, 31(2), 211-236.

3) Vosoughi, S., Roy, D., & Aral, S. (2018). The spread of true and false news online. Science, 359(6380), 1146-1151.

4) 総務省(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)(2024)、令和5年度 国内外における偽・誤情報に関する意識調査
https://www.soumu.go.jp/main_content/000945550.pdf、(参照 2025-10-16)

5) 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)(2022)、わが国における偽・誤情報の実態の把握と社会的対処の検討―政治・コロナワクチン等の偽・誤情報の実証分析―
http://www.innovation-nippon.jp/reports/2021IN_report_full.pdf、(参照 2025-10-16)