STI Hz Vol.2, No.2, Part.8: (世界各国の科学技術予測活動)ブラジルの予測を担うNPO組織CGEESTI Horizon

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  • DOI: http://doi.org/10.15108/stih.00028
  • 公開日: 2016.06.25
  • 著者: 相馬 りか
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.2, No.2
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

世界各国の科学技術予測活動
ブラジルの予測を担うNPO組織CGEE

科学技術予測センター 上席研究官 相馬 りか

2016年3月2日、当研究所 科学技術動向研究センター(現 科学技術予測センター)は、世界各国から有識者を招き、「第7回予測国際会議~減災と高齢社会の未来を展望する」を開催した(共催:東京理科大学)。会議では、「チャンスを捉えリスクに備えるフォーサイト」、「高齢社会の未来」、「オープンサイエンスが持つ可能性」と題した三つのセッションが行われた。

本誌ではこの会議での発表及びインタビュー等を通じて得られた情報を基に、各国の科学技術予測活動を今後紹介する。初回である本号ではリオデジャネイロオリンピックを目前に控えるブラジルのMarcio de Miranda Santos科学技術・イノベーション戦略研究・管理センター長の発表に基づき、ブラジル及び南米における科学技術予測について紹介する。


Marcio de Miranda Santos
科学技術・イノベーション戦略研究・管理センター長

全体概要

ブラジルには政府やアカデミア、企業を対象とした幾つか科学技術予測活動・戦略立案を行う組織がある。その中で、Santos氏がセンター長を務める“科学技術・イノベーション戦略研究・管理センター Centro de Gestão e Estudos Estratégicos”(以下CGEE)(英語名:Center for Strategic Studies and Management of Science, Technology and Innovation)というNPO組織が最大かつ中心的な役割を果たしている。

CGEE概要

CGEEはブラジルの経済成長と国際競争力の向上を目的として2001年に発足し、90名の職員のほか、毎年2,000名程度の国内外の専門家の協力を得て様々な調査を実施している。この組織の主な業務は、将来予測、戦略評価、情報分析の三つである。「将来予測」については、石油、ガス、繊維といったブラジルの産業の基幹をなす分野を中心とした予測を行っている。ここでは、収集した情報から、SWOT分析等によりトレンドを見いだし、デルファイ調査やシナリオプランニングによってキーとなる技術を抽出した後、ステークホルダーによるワークショップを開催した結果を基に、戦略を立案する(図表)。CGEEでは、エネルギー、サステナビリティ、食料、アマゾン地域の開発などの課題についてこれまで400ほどのレポートを公表してきた。

図表 CGEEのアプローチの手法

CGEEはまた、企業への情報提供も行っている。代表的な例として、ブラジル国営石油会社ペトロブラス社(Petrobras : 正式名称Petróleo Brasileiro S.A.)からの委託で、石油、ガス、太陽光など各種のエネルギーに関する研究戦略提案を行った。現在、CGEEでは民間企業10社からの委託を受け、将来の研究投資への助言を行っており、こういった民間企業のための業務が全体に占める割合は決して大きくはないが、将来的にはその比率を増大させる予定である。

CGEEは予測や戦略立案のほかに、人材育成、分析ツールの開発なども行っている。2014年に開発したテキスト分析・情報可視化ツールは、国内外の様々な文書のテキストのネットワーク分析や用語の出現頻度分析などを行うもので、トレンドやウィークシグナルの発見といった将来予測、海外との比較による各種戦略の評価などに活用されている。

また、CGEEは当研究所のほか国連をはじめとして、米国ランド研究所、韓国科学技術評価・企画院(KISTEP)、フランス持続可能な開発と国際関係研究所(IDDRI)、ロシア国立研究大学高等経済学院等とも連携して国際活動を行っている。

南米諸国における科学技術予測活動

ブラジル以外の南米諸国にも科学技術予測や戦略立案といった活動を行う組織が複数あり、メキシコでは、Fundación Javier Barros Sierra A.C.と、Universidad Nacional Autónoma de México(UNAM)が政治とよく連動した予測活動を行っている。ウルグアイでは、Facultad Latinoamericana de Ciencias Sociales (FLACSO)という組織が活発に活動を行っている。また、チリには国連機関であるEconomic Commission for Latin America and the Caribbean(ECLAC)が置かれている。