5.4.3主要国における起業の状況


(1)開廃業率の国際比較

 この節では、企業の開業率、廃業率を見ることにより、企業の新陳代謝が活発に行われているかどうかを見る(8)。
 図表5-4-10に主要国の開業率、廃業率を示した。日本の場合、「雇用保険事業年報」をもとにしており、事業所における雇用関係の成立、消滅をそれぞれ開廃業とみなしている。他国については、各国で計測方法が異なる点には留意が必要である。
 各国最新年の開業率を見ると(図表5-4-11(A))、日本の開業率は4.4%であり他国と比較して最も低い数値である。最も高いのは英国であり13.6%、次いで米国が10.3%、フランスが10.0%となっている。時系列で見ると、日本は漸増しているが(最新年では減少)、他国より低い水準で推移している。英国は2009年頃から増加傾向が続いているのに対して、フランスは同年から減少傾向にある。米国は長期的に見ればほぼ横ばいである。ドイツは継続して減少している。
 各国最新年の廃業率を見ると(図表5-4-11(B))、日本は3.5%であり、開業率と同様に他国と比較して最も低い数値である。最も高いのは英国であり12.5%、次いで米国が8.6%、ドイツが7.6%となっている。
 時系列で見ると、日本や米国、ドイツは微減に推移している。英国は2008年から2009年にかけての増加以外は、ほぼ横ばい推移していたが、最新年では大きく増加した。フランスは2008年度から2013年度にかけて減少した後は微減に推移している。


【図表5-4-10】 主要国における開廃業率の推移 
(A)開業率
(B)廃業率

注:
起業の開廃業率の算出方法は、国によって異なるため、国際比較するには注意が必要である。
資料:
中小企業庁、「中小企業白書」

参照:表5-4-10


(2)ユニコーン企業数

 この節では、米国CB Insightsの調査においてユニコーン企業とされた企業価値が10億ドル以上の未上場企業のデータ(2020年6月16日現在)を使用し、世界におけるユニコーン企業の状況を見る。
 図表5-4-11を見ると、2010年から2019年にかけてユニコーン企業数は大きく増加した。2019年では減少したが128社となっている。CB Insightsによる分類で見ると、2014年、2015年では「EコマースとD2C」のユニコーン企業数が増加、2017年からは、「フィンテック」も増加した。2018年になると、「人工知能」、「インターネットソフトウェアとサービス」が大きく増加しており、また、「サプライチェーン、物流、配送」、「自動車と輸送」のユニコーン企業数も増加している。2019年になると「フィンテック」が最も多くを占めるようになった。
 次に分類別・国別にユニコーン企業数の状況を見ると(図表5-4-12)、最もユニコーン企業数が多いのは米国であり、225社となっている。次いで中国が121社であり、3位の英国(24社)と大きく離れている。日本は3社であり、他国と比較すると少ない数値である。分類別で見ると、米国では「インターネットソフトウェアとサービス」が最も多く、「フィンテック」、「人工知能」がそれに続く。中国では「EコマースとD2C」が最も多く、「モバイル&テレコミュニケーション」、「自動車と輸送」がそれに続く。
 英国では「フィンテック」が最も多く、インドでは「サプライチェーン、物流、配送」が最も多い。
各国におけるユニコーン企業の分類は多様であり、大多数は情報通信サービスに関連したものとなっているが、「人工知能」や「サプライチェーン、物流、配送」も多くを占めるようになった。


【図表5-4-11】 新たなユニコーン企業数の推移

注:
1)CB Insightsの調査においてユニコーン企業とされた、企業価値が10億ドル以上の未上場企業(2020年6月16日現在)のデータを基に科学技術・学術政策研究所が作成。
2)分類についてはCB Insightsが提示した項目を科学技術・学術政策研究所が仮訳した。D2CはDirect-to-Consumerの略である。
3)CB Insightsに企業価値が10億ドル以上と判断された年である。
資料:
CB Insightsのwebサイトより2020/06/23入手。

参照:表5-4-11


【図表5-4-12】 分類別・国別ユニコーン企業数(2010~2019年分)

注:
図表5-4-11と同じ。
資料:
CB Insightsのwebサイトより2020/06/23入手。

参照:表5-4-12



(8)米国、ドイツ、フランス、英国のデータの出典が変更されたため、開業率、廃業率の値は科学技術指標2019とは異なるが、大きな傾向に変化はない。