コラム:米国で博士号を取る外国人留学生と日本人学生の状況

 「3.5高等教育機関における外国人学生」で、明らかとなっているように、多くの外国人学生を受け入れている国は米国である。特にアジア諸国の学生を多く受け入れている米国で、博士号を取得するべく留学した学生の状況、特に日本人の状況はどのようになっているのかを見る。

1.米国における博士号取得者数の状況

 まず、米国で博士号を取得する者はどのくらいいるのだろうか。本コラムでは、米国における博士号取得者のうち、米国の一時ビザ保有者(Temporary visa holder)を外国人留学生と定義した。図表3-5-3を見ると、2017年の博士号取得者は5.5万人、そのうち外国人留学生は1.6万人である。外国人留学生数は2008年までは大きく増加していたが、2010年に一旦落ち込んだ後は微増で推移している。外国人留学生の割合は全体の30%である。2008年以降、概ね横ばいに推移している。


【図表3-5-3】 米国における博士号取得者

注:
外国人留学生とは一時ビザ保有者(Temporary visa holder)である。
資料:
NSF, “Survey of Earned Doctorates”

参照:表3-5-3


2.国・地域別外国人留学生の博士号取得者数の状況

 図表3-5-4は上位国・地域別に外国人留学生の博士号取得状況を見たものである。ここでは、NSF, “Survey of Earned Doctorates”の報告書で10 largest countriesとして、2000~2017年の間にデータが掲載されたことのある国・地域を抜粋して示している。グラフ中の凡例の順番は、2017年における博士号取得者数の多い順に並んでいる。
 図表3-5-4を見ると、中国の博士号取得者が最も多く、伸びも著しい。2017年で5,564人である。次いでインドの博士号取得者が多く、同年で1,974人である。ただし、2008年以降その伸びは停滞している。韓国が同年で1,126人である。2012年以降減少している。2010年頃から大きく伸びているのはイランである。日本の博士号取得者数は2017年において117人である。2007年時点をピークに大きく減少している。欧州諸国を見ると、ドイツは2017年で154人、フランス、英国は日本より少なく、それぞれ107人と103人である。
 米国で博士号を取得する外国人留学生の国・地域は主にアジアの国・地域が多く、日本や欧州諸国では少ない傾向にある。


【図表3-5-4】 米国における国・地域別外国人留学生の博士号取得者
(A)上位国・地域(抜粋)
(B)2017年時点で1000人以下の国・地域(抜粋)

注:
1)フランス、英国の2000~2009年は科学工学分野、その他の国:地域は全分野を対象とした博士号取得者である。
2)中国は香港を含む。
資料:
NSF, “Survey of Earned Doctorates”

参照:表3-5-4


3.まとめ

 これまで見たように、米国における日本の博士号取得者は減少していることから、米国における日本の存在感は相対的に小さくなっていると言える。しかし、米国ではなく、他の国・地域で博士号を取得している者が増加している可能性も考えられる。残念ながら、他の主要国や、国・地域において日本人の博士号取得の状況を入手することはできなかったため、確認することは現時点ではできない。今後、さらなる統計調査の充実が図られることにより、より詳細な現状を把握することが可能になるかもしれない。

(神田 由美子)