3.2高等教育機関の学生の状況

ポイント

  • 日本の大学学部の入学者数は2000年頃からほぼ横ばいに推移していたが、2014年度を境にやや増加し、2018年度では62.9万人となった。
  • 2018年度の大学院修士課程入学者数は、全体で7.4万人である。2010年をピークに減少に転じていたが2015年度を境に増加している。また、社会人修士課程入学者数は全体の約10%であり、割合に大きな変化は見られない。
  • 大学院博士課程の入学者数は、2003年度をピークに減少傾向にあり、2018年度は1.5万人となっている。2017年度と比べて0.9%増加したが、「工学」系の寄与が大きい。社会人博士課程入学者数については継続して増加している。全体に占める割合は42.7%と2003年度と比較すると約2倍となった。
  • 大学院修士課程修了者の進学率は減少傾向が続いており、2018年度では9.3%である。分野別で見ると「理学」、「人文科学」、「社会科学」の減少が著しい。
  • 大学院博士課程別入学者数を男女別に、4時点(1990、2000、2010、2018年度)で見ると、女性の入学者数は2010年度、男性の入学者数は2000年度と比べて減少している。なお、女性については「自然科学」系での博士課程入学者数は増加している

3.2.1大学学部の入学者

 18歳人口について見ると、1991年における206.8万人をピークに減少に転じている。今後も減少傾向で推移するものとみられ、2030年頃にはピーク時の半分まで減少するものと推計されている(図表3-2-1)。
 大学学部への入学者数は、進学意欲の高まりと定員拡大の下、増加し続けていたが、2000年代に入るとほぼ横ばいに推移している。進学率(18歳人口に対する大学入学者数の割合)については、2018年で51.8%であり、2010年代に入り、その伸びは鈍化している。


【図表3-2-1】 18歳人口と大学入学者数の推移

注:
1)18歳人口は中位推計による。
2)大学入学者数は、当該年度に大学に入学し、かつ翌年5月1日(調査実施時期)に在籍する者の人数である。
3)進学率は、18歳人口に対する大学入学者数の割合である。
資料:
1)18歳人口:<2018年まで>総務省統計局,「人口推計」(各年10月現在)
<2019年以降>厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所、「日本の将来推計人口」(平成29年推計)
2)大学入学者数:文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-1


 大学学部への入学者数の推移を、関係学科別に見たものが図表3-2-2(A)である。
 日本の大学学部の入学者数は2000年頃からほぼ横ばいに推移していた。2014年度を境にやや増加し、2018年度では62.9万人となった。2018年度の入学者数の内訳を見ると「社会科学」系で20.3万人、「人文科学」系は8.8万人となっている。「自然科学」系では「工学」系で8.9万人、「保健」系は7.1万人、「理学」系、「農学」系は1.8万人となっている。また、「その他」は14.1万人である。
 経年変化を見ると、2000年代に入り、「農学」系、「保健」系、「その他」が増加する一方で、それ以外の学部の入学者数は減少傾向にある。
 入学者数を国・公・私立大学別で見てみると(図表3-2-2(B))、2018年度では私立大学の入学者数が全体の約8割を占めている。
 分野別に見ると、国立大学では「自然科学」系、特に「工学」系の入学者数が多く、私立大学や公立大学の入学者数は「社会科学」系が多い。ただし、私立大学全体で見た構成比では「社会科学」系が減少傾向にある。また、「保健」系の入学者数は、国・公・私立大学ともに増加し続けている。なかでも私立大学については、2000年度と比較して約3倍となっている。


【図表3-2-2】 大学(学部)入学者数
(A)関係学科別の入学者数の推移

(B)国・公・私立別大学の入学者数の推移(大学学部)

注:
その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-2


3.2.2大学院修士課程入学者

 大学院修士課程への入学者数は1990年以降に大学院重点化が進んだこともあって、1990~2000年代前半にかけて大きく増加した。その後、2000年代半ばに入ると、その伸びは鈍化し、2010年をピークに減少に転じた。ただし、2015年度を境に入学者数が増加しており、2018年度の大学院修士課程入学者数は7.4万人である(図表3-2-3(A))。
 最新年度の専攻別の内訳を見ると、「工学」系が3.2万人と最も多く、次いで「理学」系0.7万人、「社会科学」系0.7万人、「保健」系0.6万人となっている。ピーク時の2010年度から2015年度にかけて、多くの専攻が減少したが、2016年度から最新年度では、再び増加している(「人文科学」系は除く)。なかでも「理学」系の増加率が大きい。
 社会人修士課程入学者数は2018年度で0.8万人である。2003年度から同程度に推移しており、全体に占める割合も10%程度で推移している(図表3-2-3(B))。
 国・公・私立大学別で見ると、修士課程入学者数は学部入学者数とは傾向が違い、国立大学が多く、全体の約6割を占めている(2018年度)。専攻別で見ると国・公・私立大学ともに「自然科学」系が多く、なかでも「工学」系が多い(図表3-2-3(C))。


【図表3-2-3】 大学院(修士課程)入学者数
(A)専攻別入学者数の推移(修士課程)
(B)社会人入学者数の推移(修士課程)
(C)国・公・私立別大学入学者数の推移(修士課程)

注:
その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-3


3.2.3大学院博士課程入学者

 大学院博士課程入学者数は、2003年度をピークに減少が続いていたが、2010年度は前年度と比較して3.6%増加した。その後は減少傾向にあるが、2018年度では前年から0.9%増加し、1.5万人となった(図表3-2-4(A))。
 最新年度の専攻別の内訳を見ると、「保健」系が0.6万人、「工学」系0.3万人と多くを占め、「理学」系、「人文科学」系、「社会科学」系は0.1万人程度である。経年変化を見ると、ほとんどの専攻で2000年代に入ると、減少もしくは横ばいに推移している。ただし、「保健」系については2000年代に入って一旦減少したものの、その後は増加傾向にある。最新年度の増加は「工学」系の増加の寄与が大きい。
 博士課程入学者のうち社会人入学者数は増加傾向にあり、2018年度では0.6万人である(図表3-2-4(B))。全体に占める割合は、2003年度で21.7%であったが、2018年度では42.7%と約2倍となった。社会人以外の博士課程入学者数の減少の度合いは社会人以外の修士課程入学者数よりも著しい。
 国・公・私立大学別で見ると(図表3-2-4(C))、国立大学が全体の約7割を占める。ただし、その数は2000、2010、2018年度と減少している。専攻別では、国・公・私立大学ともに「自然科学」系を専攻する入学者が多く、特に「保健」系の入学者数が多い。


【図表3-2-4】 大学院(博士課程)入学者数
(A)専攻別入学者数の推移(博士課程)
(B)社会人入学者数の推移(博士課程)
(C)国・公・私立別大学入学者数の推移(博士課程)

注:
その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-4


3.2.4修士課程修了者の進学率

 修士課程修了者のうち、大学院等に進学した者の割合を見る(図表3-2-5)。ここでは専修学校・外国の学校等へ入学した者は除いている。
 修士課程修了者の進学率(全分野)は1981年度時点では18.7%であり、その後、減少傾向にあるが、2018年度では前年から0.1ポイント上昇し9.3%であった。どの分野で見ても長期的に減少しており、特に「理学」、「人文科学」、「社会科学」の減少が著しい。なお、もともと進学率の低かった「工学」は減少の度合いも小さい傾向にある。

 


【図表3-2-5】 修士課程修了者の進学率

注:
修士課程修了者の進学率とは各年の3月時点の修士課程修了者のうち、大学院等に進学した者の割合。専修学校・外国の学校等へ入学した者は除く。
その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-5


3.2.5女性入学者の状況

 2018年度の大学学部の女性入学者数は、全入学者数の46.0%を占め、着実に増加しているのが見える(図表3-2-6)。
 分野別に見ると、「人文科学」系が最も大きく、1981年度から60~70%で推移している。2018年度では66.3%である。次いで「保健」系が多く、継続して増加している。2018年度では65.6%となっており、「人文科学」系と同程度となっている。最も小さい割合は「工学」系ではあるが、1981年度と比較すると、約8倍の伸びとなっている。


【図表3-2-6】 大学学部の入学者数に占める女性の割合

注:
その他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-6

 

 日本の大学学部、修士課程、博士課程別入学者数の男女別の内訳を見る(図表3-2-7)。
 学部の入学者数は、女性については継続して増加しているが、男性は2000年度と比べて減少している。男女ともに、「自然科学」系より「人文・社会科学・その他」系での入学者数が多い。特に女性で顕著である。分野別に見ると、女性は「自然科学」系、「人文・社会科学・その他」系ともに増加しているのに対して、男性は2000年度と比べて両分野ともに減少している。
 修士課程の入学者数は、男女ともに2010年度と比べて減少している。男性は、「自然科学」系の方が「人文・社会科学・その他」系より多い。女性は「人文・社会科学・その他」系の方が「自然科学」系より多いが、その差は縮まりつつある。男性は2010年度と比べて両分野ともに減少しているのに対して、女性は「自然科学」系については、横ばいに推移している。
 博士課程の入学者数は、女性は2010年度、男性は2000年度と比べて減少している。男女ともに「自然科学」系のほうが「人文・社会科学・その他」系より多い。男性は2000年度と比べて両分野ともに減少しているのに対して、女性は「自然科学」系については、増加し続けている。

【図表3-2-7】 学部・修士課程・博士課程別入学者数(女性と男性)
(A)女性入学者

(B)男性入学者

資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-7


3.2.6高等教育機関の社会人学生

 高等教育機関を活用し、社会人の学習意欲の高まりに対応した再教育の機会を充実させることは、高度な人材育成の促進、活用に役立ち、さらには社会全体の活性化にもつながる。
 2010年度までは、全大学院生数、社会人大学院生数ともに増加をみせていた。2011年度をピークに全大学院生数は減少に転じたが、近年は微増している。社会人大学院生数については、増加度合いは小さくなったが、増加傾向は続いている。
 この結果として、日本の全大学院生(在籍者)に占める社会人大学院生割合は、2000年度では12.1%であったが、2018年度では24.0%と、約2倍となった。
このように大学院に在籍している学生の構成に変化が生じていると考えられる(図表3-2-8)。


【図表3-2-8】 日本の社会人大学院生(在籍者)の状況

注:
1)「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
2)ここでの大学院生とは、修士課程または博士前期課程、博士課程または博士後期課程、専門職大学院課程のいずれかに在籍する者をいう。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-8


 「理工」系の修士・博士課程における社会人大学院生数を学位レベルで見ると(図表3-2-9)、2018年度の社会人博士課程学生は4,335人、社会人修士課程学生は1,147人であり、社会人の博士課程学生は修士課程学生の約4倍の規模である。
 「理工」系の社会人博士課程学生は2008年度まで継続的に増加していたが、その後は減少傾向にある。社会人修士課程学生は2004年度に一旦ピークを迎え、その後は減少傾向が続いていた。2014年度以降再び増加していたが、2018年度では前年度と比較すると13.3%減少した。


【図表3-2-9】 理工系修士・博士課程における社会人大学院生数の推移

注:
「社会人」とは、各5月1日において①職に就いている者(給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事に現に就いている者)、②給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を得る仕事から既に退職した者、③主婦・主夫を指す。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-9