コラム:日本の企業部門の論文数と産学共著論文の状況

 第5期科学技術基本計画(2016-2020年度)においては、産学の組織的な連携を通じて、オープンイノベーションを推進していくことがより一層求められている。
 そこで、産学の共同研究の成果物の1つと考えられる産学共著論文に注目した分析を行った。ここで、産学共著論文とは、共著論文のうち、共著者の所属に国内企業及び国内大学等(国公私立大学、大学共同利用機関、高等専門学校を含む)の両方が含まれる論文を意味する。図表5-5-1に日本の企業部門における産学共著論文の推移と割合を示す。


【図表5-5-1】日本の企業部門における産学共著論文の状況
(A)推移
(B)割合

注:
分析対象は、Article, Reviewであり、整数カウント法を用いた。3年移動平均値である。
資料:
クラリベイト・アナリティクス社 Web of Science XML (SCIE, 2017年末バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表5-5-1


 日本の企業部門の総論文数は1990年代後半をピークに減少している。なお、企業部門の論文数の減少は、米国においても見られており、NSFの報告書では、ピーク時の2005年時点(33,498件)から2016年時点(24,565件)の減少率が27%であることが示されている(3)。図表5-5-1の日本の産学共著論文は2007年頃まで緩やかに増加し、漸減している。日本の企業部門の論文数に占める産学共著論文割合に注目すると、1982年時点において22%であったが、2015年時点において67%まで大きく増加している。
 図表5-5-2に分野別の状況を示した。企業の論文数がピークである1997年時点から2015年時点への変化を見ると、企業の論文数は、多くの分野で減少していることが分かる。臨床医学及び環境・地球科学では、企業の論文数は増加しているが、それに対する産学共著論文の寄与は大きい。2015年時点の企業の論文数に占める産学共著論文数割合が最も高い分野は、臨床医学(79%)である。これらの結果は、日本の国内企業が自らのみで論文を生み出すような知識生産活動を低下させる中、大学等との連携によって知識生産活動を行うようになってきたことを示唆している。

(村上 昭義)


【図表5-5-2】日本の企業部門における産学共著論文の分野別状況
(A)推移
(B)割合

注:
図表5-5-1と同じ。
資料:
図表5-5-1と同じ。

参照:表5-5-2



(3)National Science Foundation(NSF), Science and Engineering Indicators 2018, Appendix Table 5-41