1.3.2企業部門の研究開発費

ポイント

  • 日本の企業部門の日本の2016年の研究開発費は13.3兆円である。2009年に落ち込んだ後は漸増傾向にあったが、対前年比は-2.7%である。米国は長期的に世界トップの規模を保っており2016年では36.5兆円である。中国は、2012年にはEUを上回り、2016年では35.0兆円と米国に迫る勢いで増加している。
  • 主要国における企業部門の研究開発費の対GDP比を見ると、日本の2016年の対GDP比率は2.47%である。韓国は2009年以降日本を上回り、2016年は3.29%であり、主要国の中では著しく大きい値となっている。ドイツは、1990年代の中頃から緩やかに増加している。2016年では2.00%であり、米国をわずかに上回っている。米国は長期的に見ると、漸増傾向にあり、2016年では1.95%である。
  • 企業部門の研究開発費のうち、製造業の割合は日本、ドイツ、中国、韓国では約9割である。米国では製造業の割合が約7割であり、上述した国と比較すると、非製造業の割合が大きい傾向にある。フランスでは製造業の割合が5割、英国では4割であり、非製造業の重みが大きい。
  • 最新年の企業部門の研究開発費を産業分類別で見ると、米国は「情報通信業」、日本、ドイツは「輸送用機器製造業」、フランス、英国は「専門・科学・技術サービス業」、韓国は「コンピュータ、電子・光学製品製造業」が大きな規模を持っている。
  • 日本の企業部門において、研究開発費が最も大きいのは「輸送用機械器具製造業」であり、売上高に占める研究開発費の割合が最も大きいのは「医薬品製造業」である。研究開発費から見た研究開発の規模と集約度は産業によって異なる傾向を示している。
  • 研究開発費から見た企業規模別研究開発の集約度は、日本は大規模企業で研究開発の集約度が高いのに対して、米国、韓国では小規模企業において集約度が高い。
  • 政府からの研究開発に対する直接的支援を従業員規模別で見ると、日本や米国では大規模企業に政府からの支援が集中しているが、ドイツや韓国では中小規模企業への支援も一定の重みを持つ。
(1)各国企業部門の研究開発費

 企業部門の研究開発費は各国の研究開発費総額の大部分を占める。従って企業部門での値の増減が、国の研究開発費総額に及ぼす影響は大きい。図表1-3-3(A)を見ると、日本の2016年(12)の研究開発費は13.3兆円である。2009年に落ち込んだ後は漸増傾向にあったが、対前年比は-2.7%である。
 米国は長期的に世界トップの規模を保っている。2008年をピークに一旦、減少していたが、近年は増加しており、2016年では36.5兆円である。
 中国は、2000年代に入り大きく伸びた。2012年にはEUを上回り、2016年では35.0兆円と米国に迫る勢いで増加している。
 ドイツは長期的に見ると増加傾向にあり、2016年では8.1兆円となっている。
 韓国は継続して増加しており、フランス、英国を上回り、2016年では6.2兆円となっている。
 フランスも漸増しており、2016年では4.0兆円である。英国は2000年代に入ると横ばいに推移していたが、2010年頃から増加しており、2016年では3.2兆円となった。
 次に、2000年を1とした場合の各国通貨による研究開発費の名目額と実質額の指数を示し、2000年からの伸びを見る(図表1-3-3(B))。
 名目額で見ると、日本の最新年値は1.2となっているが、その伸びは他国と比較すると少ない。英国は1.9、米国、ドイツは1.8、フランスは1.6である。中国の最新年は22.6であり、急激な伸びを示している。また、韓国の伸びも5.3と著しい。
 一方、実質額の最新年値を見ると、日本、ドイツ、英国は1.4であり、米国、フランスは1.3である。中国、韓国は名目額よりは少ないが、13.0、3.8と他国と比較すると際だって大きな伸びを示している。


【図表1-3-3】 主要国における企業部門の研究開発費
(A)名目額(OECD購買力平価換算)

(B)2000年を1とした各国通貨による企業部門の研究開発費の指数

注:
1)各国企業部門の定義は図表1-1-4を参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3)購買力平価は、参考統計Eと同じ。
4)実質額の計算はGDPデフレータによる(参考統計Dを使用)。
<日本>年度の値を示している。
<米国>2015年は予備値、2016年は見積り値。
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。1982、1984、1986、1988、1990、1992、1994、1996、1998、2016年は見積り値である。1993年値は定義が異なる。
<フランス>1992、1997、2001、2004、2006年において時系列の連続性は失われている。2016年値は暫定値である。
<英国>1986、1992、2001年において時系列の連続性は失われている。
<中国>1991~1999年は過小評価されるか、過小評価されたデータに基づく。2000年、2009年において時系列の連続性は失われている。
<EU>見積り値である。EU-15の1991年において時系列の連続性は失われている。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国>NSF,“National Patterns of R&D Resources: 2015-16 Data Update ”
<ドイツ、フランス、英国、中国、韓国、EU>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2017/2”

参照:表1-3-3


 各国の経済規模の違いを考慮して研究開発費を比較するために、企業部門における研究開発費の対GDP比率を見る(図表1-3-4)。日本の2016年の対GDP比率は2.47%である。1990年以降、主要国第1位であったが、2009年からは韓国が日本を上回った。なお、韓国の2016年は3.29%であり、主要国の中では著しく大きい値となっている。
 ドイツは、1990年代の中頃から緩やかに増加している。2016年では2.00%であり、米国をわずかに上回っている。米国は長期的に見ると、漸増傾向にあり、2016年では1.95%である。
 中国の値は急激に上昇し、英国、EU、フランスの値を超えており、2016年では1.64%となっている。
 フランス、英国については2000年代後半から漸増傾向が見える。2016年ではフランスが1.43%、英国は1.13%である。


【図表1-3-4】  主要国における企業部門の研究開発費の対GDP比率の推移

注:
1)GDPは、参考統計Cと同じ。
2)図表1-3-3と同じ。
資料:
図表1-3-3と同じ。

参照:表1-3-4


(2)主要国における産業分類別の研究開発費

 主要国における企業部門の製造業と非製造業の研究開発費について、各国最新年からの3年平均で見ると(図表1-3-5)、製造業の割合は日本、ドイツ、中国、韓国では約9割であり、製造業の重みが大きい。米国では製造業の割合が約7割であり、上述した国と比較すると、非製造業の割合が大きい傾向にある。フランスでは製造業の割合が5割、英国では4割であり、非製造業の重みが大きい。なお、昨年版の科学技術指標2017と比べると、フランスと英国の非製造業の割合が高くなっている。これは各国の企業部門について、主な経済活動(main economic activity)に応じた分類を採用したためである。
 企業部門の産業分類の方法には、主な経済活動(main economic activity)によるものと、産業方向性別区分(industry orientation)によるものがある(OECD フラスカティ・マニュアル 2015 [7.48-7.50])。前者は企業の経済的アウトプットの重みが最も大きい産業分類に基づく分類であり、後者は研究開発活動を報告する際に、最も適当であると思われる産業分類に分類する方法である。科学技術指標2017のフランス・英国の値は、産業方向性別区分(industry orientation)の値を示していた。


【図表1-3-5】 主要国における企業部門の製造業と非製造業の研究開発費の割合 

注:
1)各国企業部門の定義は図表1-1-4を参照のこと。
2)各国とも研究開発を行う企業の主な経済活動に応じて分類している。
3)<日本>年度の値を示している。
<米国>「Agriculture, Forestry, Fishing and Hunting」及び「Public Administration」は除かれている。よって、他国の非製造業と異なっているため、国際比較する際は注意が必要である。
資料:
OECD,“Structural Analysis (STAN) Databases”

参照:表1-3-5


 さらに詳細な産業分類別での研究開発費を見る(図表1-3-6)。
 米国では、2008年時点では、「コンピュータ、電子・光学製品製造業」が最も大きかったが、その後は微増にとどまっている。これに代わって、非製造業である「情報通信業」が増加し続け、2015年では最も大きくなった(8.2兆円)。また、「輸送用機器製造業」は減少し、「医薬品等製造業」が増加している。
 日本の製造業では、2008年時点では、「コンピュータ、電子・光学製品製造業」が最も大きかったが、その後は減少している。代わって「輸送用機器製造業」は増加し続けており、2015年では最も大きくなっている(3.6兆円)。また、「医薬品等製造業」も微増を続けている。非製造業では、「専門・科学・技術サービス業」が最も大きく、次いで「情報通信業」が大きい。
 ドイツは、継続して「輸送用機器製造業」が最も大きく、増加し続けている。次いで大きいのは「コンピュータ、電子・光学製品製造業」である。非製造業では「専門・科学・技術サービス業」が大きくかつ増加している。
 フランスは非製造業である「専門・科学・技術サービス業」が最も大きく、2008年と比べて増加しているが、近年その伸びは停滞している。製造業では「輸送用機器製造業」が大きい。
 英国も非製造業である「専門・科学・技術サービス業」が最も大きいが、増減を繰り返しながら横ばいに推移している。また、「情報通信業」も大きいが横ばいに推移している。
 韓国は「コンピュータ、電子・光学製品製造業」が最も大きくかつ増加の度合も大きい。非製造業では、「情報通信業」が最も大きい。
 米国では、製造業、非製造業共に拡大している。なかでも「情報通信業」の増加が突出している。日本、ドイツ、韓国は、製造業が大きく、非製造業は小さい傾向にある。ドイツは、米国ほどではないが、製造業、非製造業共に拡大する傾向にある。フランス、英国では、他国と比べて非製造業の重みが大きい傾向にある。


【図表1-3-6】 主要国における企業部門の産業分類別研究開発費

注:
1)国際標準産業分類リビジョン4(ISIC Rev.4)に準拠しているため、各国の産業分類とは異なる。
2)各国とも研究開発を行う企業の主な経済活動に応じて分類している。
3)米国では、「Agriculture, Forestry, Fishing and Hunting」及び「Public Administration」は除かれている。よって、他国の非製造業と異なっているため、国際比較する際は注意が必要である。
資料:
OECD, “Structural Analysis (STAN) Databases”

参照:表1-3-6


(3)日本の産業分類別研究開発費

 日本の研究開発は、どの業種において、より多く実施されているのかを見るために、売上高に占める研究開発費の割合(研究開発の集約度)を産業分類別に見た(図表1-3-7)。
 まず、製造業と非製造業を比較すると、前者が3.0%であるのに対して、後者は0.3%となっており、売上高に占める研究開発費の割合が10倍異なることが分かる。日本の企業部門における売上高に占める研究開発費の割合が最も大きいのは「医薬品製造業」であり8.5%を示している。次いで「情報通信機械器具製造業」が5.9%、「業務用機械器具製造業」が5.2%と大きい。図表1-3-6で示したように研究開発費の規模が大きい「輸送用機械器具製造業」は売上高に占める研究開発費の割合が必ずしも大きいわけではなく、4.3%を示している。研究開発費の規模と集約度は産業によって異なる傾向を示している。


【図表1-3-7】 日本の産業分類別売上高に占める研究開発費の割合(2016年度)

注:
1)研究開発を実施していない企業も含んでいる。
2)全産業及び非製造業は金融、保険業を除く。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-7


(4)研究開発費から見た企業規模別研究開発の集約度

 企業規模による研究開発の集約度を見るために、研究開発を実施している企業を対象に、企業の従業員数を一定数で区切り、企業規模別に売上高に占める研究開発費の割合を見た(図表1-3-8)。
 日本は従業員数1万人以上の企業において、売上高に占める研究開発費の割合が最も大きく、5.1%を示している。従業員数が少なくなるにつれて、その割合が小さくなる傾向にあり、最も小さいのは300~999人の企業であり、1.8%を示している。
 米国では、従業員数5~249人の企業において、売上高に占める研究開発費の割合が最も大きく、5.8%を示している。規模が大きくなるにつれて割合は小さくなる傾向にある。最も小さいのは従業員1万人以上の企業であり、3.5%を示している。
 ドイツでは、従業員数5,000~9,999人の企業おいて、売上高に占める研究開発費の割合が最も大きく、4.8%を示している。次いで大きいのは従業員数0~249人の企業であり、3.7%である。最も小さいのは従業員1,000~4,999人の企業であり、2.7%を示している。
 韓国では、従業員数0~99人の企業において、売上高に占める研究開発費の割合が最も大きく、3.8%を示している。規模が大きくなるにつれて割合は小さくなる傾向にあるが、従業員数1,000人以上の企業で再び大きくなる。最も小さいのは従業員数300~999人の企業であり、1.9%を示している。
 日本は大規模企業で研究開発の集約度が高いのに対して、米国、韓国では小規模企業において研究開発の集約度が高く、国によって集約度が異なる。


【図表1-3-8】 日米独韓における企業の従業員規模別売上高に占める研究開発費の割合
(A)日本(2016年)
(B)米国(2015年)
(C)ドイツ(2015年)
(D)韓国(2016年)

注:
研究開発を実施している企業を対象としている。各国の研究開発統計により従業員数の分類が異なるため、国際比較する際には注意が必要である。
<日本>年度の値を示している。計(全産業)は金融・保険業を除く。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国>NSF, “InfoBriefs(NSF 17-320) ”
<ドイツ>BMBF, “Bundesbericht Forschung und Innovation 2017”
<韓国>韓国科学技術企画評価院、「研究開発活動調査報告書」

参照:表1-3-8


(5)企業への政府による直接的・間接的支援

 企業の研究開発のための政府による支援の状況を示す。
 「直接的支援(企業の研究開発費のうち政府が負担した金額)」及び「間接的支援(企業の法人税のうち、研究開発税制優遇措置により控除された税額)」を対GDP比で見ると(図表1-3-9(A))、日本は結果を示した国の中で直接的支援が最も小さく、間接的支援が大きい。他国を見ると、直接的支援が最も大きいのはロシアであり、次いでハンガリー、米国、韓国と続く。間接的支援が大きいのはアイルランド、ベルギー、フランス、韓国などである。韓国は直接的支援、間接的支援ともに大きい。
 次に、日本についての政府からの直接的、間接的支援の推移を見ると(図表1-3-9(B))、政府から企業への直接的支援は長期的には減少傾向にあり、近年は横ばいである。一方、間接的支援は、2004年に著しく増加し、その後2008年には減少し、2013年には再び増加している。最新年では減少した。
 研究開発税制優遇措置額の変化には、いくつかの要因が考えられる。一つは研究開発税制優遇措置の変更である。大きな制度改正は数年ごとにあるが、細かな制度改正はほぼ毎年実施されている。二つめは特定企業の税制優遇措置額の変化である。例えば、連結法人の法人税額の特別控除額について、2013年のデータ(13)を見ると、上位10社で全体の70%を占めており、対象年における特定企業の研究開発税制優遇措置額によって全体の額が大きく変化する事が分かる。最後に、市場経済(景気・不景気)の変化である。税法上の所得(=益金-損金)がない場合、優遇税制措置の適用が発生しない。間接的支援の2004年の急増については、2003年に導入された「試験研究費の総額にかかる税額控除制度」による制度上の税額控除額の増加が主な理由と考えられ、この制度を活用する企業が2004年に増えたと推測される。2008年の減少については、法人税全額の減少が、控除額の減少につながったと考えられる。2013年の増加については、特定企業による税制優遇措置額の増加によるものと考えられる。


【図表1-3-9】 企業の研究開発のための政府による直接的支援、間接的支援
(A)各国比較(2015年)

注:
1)直接的支援とは、企業の研究開発費のうち政府が負担した金額の対GDP比率である。
2)間接的支援とは、企業の法人税のうち、研究開発税制優遇措置により控除された税額の対GDP比率である。
3)各国からの推計値 (NESTIが行った研究開発税制優遇調査による)、予備値も含まれる。
4)ロシア、米国、中国、オーストラリアは2013年、スウェーデン、ベルギー、フランス、アイスランド、イスラエル、英国、ブラジル、アイルランド、トルコは2014年、その他の国は2015年。
5)スウェーデン、イスラエル、ポーランドは研究開発税制優遇のデータが提供されなかった。
資料:
OECD,“STI Scoreboard”

参照:表1-3-9


(B)日本の推移

資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」、国税庁、「会社標本調査」、2011年以降はOECD, “STI Scoreboard ”及び “R&D Tax In-centive Indicators”の各年

参照:表1-3-9


 次に、政府からの研究開発における直接的支援を従業員規模別で見る(図表1-3-10)。
 日本の場合、政府からの直接的支援は従業員数500人以上の企業の割合が大きく、全体の82.7%を占める。対して従業員数49人以下の企業の割合は5.1%である。
 米国も従業員数500人以上の企業の割合が大きく、全体の84.7%を占め、他国と比較しても最も大きい。次いで従業員数49人以下の企業が大きいが6.5%程度である。
 ドイツは、従業員数500人以上の企業に対する政府による直接的支援の割合が最も大きい。ただし、従業員数49人以下の企業でも21.8%、従業員数50~249人の企業でも21.7%と、この二つの企業規模においても割合が大きい傾向にある。
 フランスでは、従業員数500人以上の企業の割合が最も大きく69.8%を占める。次いで大きいのは従業員数49人以下の企業であり、16.2%を占めている。
 英国は従業員数500人以上の企業の割合が最も大きく、全体の70.4%を占める。次いで大きいのはフランスと同じく、従業員数49人以下の企業であり14.6%を占める。
 韓国では従業員数49人以下の企業が42.8%と他国と比較して大きい。また、従業員数50~249人の企業でも26.6%と大きく、249人以下の企業で政府による直接的支援の約7割を占める。
 日本や米国では大規模企業に政府からの支援が集中しているが、韓国やドイツでは中小規模企業への支援も一定の重みを持つことが分かる。


【図表1-3-10】 主要国における政府から企業への直接的支援(企業の従業員規模別)

注:
<日本>は年度である。
<米国>連邦政府のみの値である。大部分あるいはすべての資本支出を除外している。
購買力平価は、参考統計Eと同じ。
資料:
OECD,“R&D statistics”

参照:表1-3-10


(6)日本企業の外部支出研究費に見る研究活動のオープン化・グローバル化

 企業の製品やサービス等に、人工知能や機械学習等の新しい知識を迅速に導入するには、自社における研究開発活動に加えて、社外の知識や研究開発能力を活用していく(オープン化していく)必要がある。また、企業活動がグローバル化するにつれ、研究開発活動もグローバル化することが予想される。そこで、ここでは企業の外部支出研究開発費の動向に注目することで、研究開発活動のオープン化・グローバル化の状況を把握する。
 図表1-3-11(A)に、企業の外部支出研究開発費の時系列変化とその内訳を示した。2000年代後半に一時的に落ち込む時期があるが、外部支出研究開発費は長期的に増加している。2016年度の外部支出研究開発費は2.3兆円であり、1999年度の1.2兆円と比べると84.1%増加している。同期間における、企業の内部使用研究開発費は25.3%の増加であり、外部支出研究開発費の方が、増加の度合が大きい、つまり企業の研究開発活動のオープン化が進んでいることが分かる。
 国内と海外を比べると2001年度~2016年度にかけて、国内への外部支出の増加率が32.3%であるのに対して、海外への外部支出の増加率は303.7%である。この結果として、外部支出研究開発費における海外への支出分の割合は、2001年度には9.9%であったものが、2016年度には25.1%となっており、研究開発のグローバル化が進展している。
 次に、外部支出先の組織の形態に注目すると、2016年時点では外部支出研究開発費の69.2%が国内の会社、24.1%が海外の会社であり、会社が主要な支出先となっている。図表1-3-11(B)は、外部支出先として大学のみを取り出した結果である。海外への支出の内訳が不明なため、2012年度以前のデータについては、国内大学のみを示している。最新のデータを見ると国内の国公立大学への外部支出が一番多く、これに海外の大学、国内の私立大学が続いており、企業から大学への外部支出という点では、日本の大学が主要な支出先であることが確認できる。


【図表1-3-11】 日本企業における外部支出研究開発費の推移
(A)外部支出研究開発費の内訳
(B)大学への外部支出研究開発費の内訳

注:
国内のその他には国・公営の研究機関、特殊法人・独立行政法人の研究所、公庫・公団、非営利団体など。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-11



(12)この節の日本は、国際比較の際には「年」を用いている。本来は「年度」である。日本のみを記述している節では「年度」を用いている。
(13)財務省、「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」