4.2特許

ポイント

  • 全世界における特許出願数は、1990年代半ばから年平均成長率5.2%で増加し、2015年には289万件となった。
  • 日本への出願数は2000年代半ばから減少傾向にある。特に、2009年の出願数は2008年と比べて10.8%減少した。2015年は31.9万件である。そのうち、居住者からの出願数の割合は81.2%である。
  • 米国への出願数は2007~2009年は横ばい傾向であったが、2010年以降、連続して増加し58.9万件となった。また、居住者からの出願数と非居住者からの出願数の割合は、ほぼ半数ずつとなっている。
  • 中国への出願数は2015年で110.2万件であり、米国への出願数を大きく上回っている。居住者からの出願数は87.9%となり、中国国内の出願人からの出願が特に増加している。
  • 日本、米国、中国、韓国からの出願をみると、他国への出願数より、自国への出願数の方が多い。日本の自国への出願数は近年減少しており、2015年で25.9万件と、ピーク時(2000年)の67.4%の出願数となっている。
  • パテントファミリー数シェアを見ると、米国と日本の順位は1990年代後半に入れ替わり、2000年代は日本のシェアが第1位となっている。これは、日本から複数国への特許出願が増加したことを反映している。
  • 2012年時点の日本の技術分野バランスを見ると、世界全体と比べて電気工学と一般機器の比率が高くなっている。他方、バイオテクノロジー・医薬品とバイオ・医療機器の割合は、世界全体と比べて低くなっている。
  • 日本からのパテントファミリーの出願先は、1981年時点では約90%が米国及びヨーロッパとなっていたが、1990年代に入って中国への出願が増加している。2011年時点では米国への出願が41.7%、中国への出願が25.5%、欧州特許庁への出願が11.7%となっている。

4.2.1世界における特許出願

(1)世界での特許出願状況

 4.2.1節では、WIPO(世界知的所有権機関),“WIPO statistics database”を使用している。図表4-2-1は、世界における特許出願数を、出願人が、自らが居住している国・地域へ行った特許出願(Resident Applications; 居住者からの出願)、出願人が、自らが居住していない国・地域へ行った特許出願(Non-Resident Applications; 非居住者からの出願)に分けて示している。
 出願数として、各国・地域の特許官庁に、直接なされた特許出願、PCT(Patent Cooperation Treaty)出願によってなされた特許出願の両方をカウントしている。PCT出願については、各国・地域の特許官庁へ国内移行されたものをカウントしている。
 全世界における特許出願数は、1990年代半ばから年平均成長率5.2%で増加し、2015年には289万件となった。1980年代半ばに約3割であった非居住者からの出願は、居住者からの出願よりも早いペースで増加し、2000年代半ばには全出願数の約4割を占めていた。しかし、2010年代に入ってから、その割合は低下しており、2015年時点における非居住者からの出願割合は31.7%となっている。
 世界の特許出願数は、リーマンショックに端を発する不況の影響で2009年には一時的な減少を見せたが、2010年以降は再び増加に転じている。


【図表4-2-1】 世界の特許出願数の推移

注:
1)居住者からの出願とは、第1番目の出願人が、自らが居住している国・地域に直接出願もしくはPCT出願すること。
2)非居住者からの出願とは、出願人が、自らが居住していない国・地域に直接出願もしくはPCT出願すること。
3)PCT出願とはPCT(特許協力条約)国際特許出願を通じた出願のこと。
資料:
WIPO,“WIPO statistics database”(Last updated: February 2017)

参照:表4-2-1


(2)主要国の特許出願状況

 主要国への特許出願状況と主要国からの特許出願状況についてみる。ここでは、日本、米国、欧州、中国、韓国、ドイツ、フランス、英国への特許出願状況を対象とした。この8特許官庁への出願で、全世界の特許出願の86.2%を占める。
 図表4-2-2(A)に、主要国への出願数の内訳を、居住者からの出願、非居住者からの出願の2つに分けて示した。これを見ると日本への出願数は中国、米国に次ぐ規模であるが、2000年代半ばから減少傾向にあり、両国との差は広がっている。特に、2009年の出願数は2008年と比べて10.8%減少した後、減少傾向が続き、2015年は31.9万件である。内訳を見ると日本に居住する出願人からの日本特許庁への出願が81.2%を占めている。
 米国への出願数は、2007~2009年は横ばい傾向であったが、2010年以降、連続して増加し58.9万件となった。また、居住者からの出願数と非居住者からの出願数の割合は、ほぼ半数ずつとなっている。これは米国の市場が海外にとって常に魅力的であることを示していると考えられる。
 欧州特許庁への出願数は、2000年代半ばから横ばい傾向にあったが、近年、微増している。2015年は16.0万件である。ドイツ、フランス、英国への出願数は他国と比較すると、大きな変化はなく、ほぼ横ばいである。欧州特許条約の締結国における特許化は、欧州特許庁への出願及び審査により、一括して行うことができるので、各国への出願数はほぼ横ばいであると考えられる。
 中国への出願数は激増している。この10年(2005~2015年)で中国への出願数は、年平均成長率20.3%で上昇している。2015年の出願数は110万件であり、米国への出願数を大きく上回っている。居住者からの出願数は2000年代前半では約5割であったのが2015年では87.9%となり、中国国内の出願人からの出願が特に増加していることが分かる。
 図表4-2-2(B)にPCT出願数を示した。PCT出願は各国・地域の特許官庁への特許出願の束と考えることができ、一つの出願で一括して指定した国・地域への出願が可能な点が特徴である。PCT出願数は、2000年代後半の横ばい傾向の後、近年は増加基調にあり、2016年は23.3万件となった。


【図表4-2-2】 主要国への特許出願状況と主要国からの特許出願状況
  (A)主要国への特許出願数
(B)PCT特許出願数の推移

注:
出願数の内訳は、日本への出願を例に取ると、以下に対応している。
 「居住者からの出願」:日本に居住する出願人が日本特許庁に直接出願したもの。
 「非居住者からの出願」:日本以外に居住(例えば米国)する出願人が日本特許庁に直接出願したもの。
資料:
WIPO,“WIPO statistics database”(Last updated: February 2017)、(PCT出願数:Last updated: March 2017)

参照:表4-2-2


 次に主要国からの特許出願状況(図表4-2-2(C))を見る。ここでは出願数の内訳を、居住国への出願、非居住国への出願の2つに分けて示している。出願数として、各国・地域の特許官庁への直接出願、国内移行したPCT特許出願の両方をカウントしている。なお、欧州特許庁への出願は、すべての国で非居住国への出願としてカウントした。
 この分析では、複数の出願人がいる場合、第1番目の出願人(applicants又はassignee)が属している国を用いて、各国の出願数を計算している。たとえば、日本(第1番目)と米国(第2番目)の出願人による共同出願の場合、日本のみがカウントされる。
 日本、米国、中国、韓国からの出願は居住国への出願数が、非居住国への出願数より多い。日本からの全出願数のうち、56.9%(2015年)が居住国(日本特許庁)への出願である。
 居住国への出願数の推移に注目すると、日本は近年減少しており、2015年で25.9万件と、ピーク時(2000年)の67.4%の出願数となっている。他方、中国は増加が著しく2015年で96.8万件となっている。米国、韓国は2009年以降増加傾向にあったが、米国は近年横ばいとなり、韓国は増加傾向が続いている。フランスにおける居住国への出願数は、長期的に漸増傾向にあり、ドイツは横ばい、英国については漸減傾向にある。
 非居住国への出願数に注目すると、日本からの出願数は、米国と同程度であったが、2015年では19.6万件となり、近年減少傾向にある。他方、米国は24.1万件と増加傾向にある。なお、国内への特許出願を増加させている中国であるが、海外への出願数は、2015年で4.2万件と、まだ少ない。ただし、その数は着実に増加している。


【図表4-2-2】 主要国への特許出願状況と主要国からの特許出願状況(続き)
(C)主要国からの特許出願数の推移

注:
1)出願数の内訳は、日本への出願を例に取ると、以下に対応している。
 「居住国への出願」:日本に居住する出願人が日本特許庁に出願したもの。
 「非居住国への出願」:日本に居住する出願人が日本以外(例えば米国特許商標庁)に出願したもの。
2)各国ともEPOへの出願数を含んでいる。
3)国内移行したPCT出願件数を含む。
資料:
WIPO,“WIPO statistics database”(Last updated: February 2017)

参照:表4-2-2