3.4学位取得者の国際比較

ポイント

  • 人口100万人当たりで学士号取得者数を見ると、日本は2013年度で4,373人である。最新年の値が最も多い国は英国次いで韓国であり、両国とも6千人を超えている。
  • 各国の修士号取得者数を人口100万人当たりで見ると、日本は2010年度で615人と、極めて少ない数値である。各国最新年で見ると、最も多い国は英国で、3,884人と群を抜いている。
  • 各国の博士号取得者数を人口100万人当たりで見ると、日本は131人(2010年度)であり、他国と比較すると少ない。各国最新年で見ると、最も多い国はドイツ、次いで英国であり、両国とも300人を超えている。
  • 日本の2010年度の博士号取得者数を主要専攻別に見ると、保健(医学、歯学、薬学及び保健学)が最も多く、6,315人と全体の37.7%を占めている。次いで工学が3,693人(22.0%)、理学は1,534人(9.2%)となっている。

3.4.1学士・修士・博士号取得者数の国際比較

 各国の学士・修士・博士号取得者数について人口100万人当たりで見てみる。ここでいう取得者は、毎年、各国で新たに学位を取得した人数を計測している。国により学位の内容等に差異があるが、日本の学士・修士・博士号にあたる者を対象としている(詳細は各図表の注意書きを参照のこと)。
 なお、ドイツは、伝統的な学位に加えて欧州に共通する学部段階(学士)、大学院段階(修士)を導入し始めた。


(1)人口100万人当たりの学士号取得者数

 人口100万人当たりの学士号取得者数を見ると、日本は2013年度で4,373人である。最新年の値が最も多い国は英国、次いで韓国であり、両国とも6千人を超えている。また、米国も6千人に近い数値である。一方、ドイツ、フランスの最新年は日本よりも低い数値である。ただし、ドイツの学士については、前版「科学技術指標2013」まで、①専門単科大学修了者数、②学士取得者数、③ディプローム試験(国家試験)合格者数を計上していたが、今版からは①と②だけを計上しているため、前版「科学技術指標2013」での数値とは異なることに注意されたい。
 2006年度(ドイツは2007年度)と各国最新年で比較すると、日本は横ばい、フランスは減少、その他の国は伸びており、特に英国の伸びが大きい。
 専攻別の構成比を「自然科学(理学、工学、農学、保健等)」、「人文・社会科学(人文・芸術、法経等)」と「その他」に分けて見ると、ほとんどの国で「人文・社会科学」の割合が大きい。なお、韓国では従来「その他」に含まれていた「芸術」が「人文・芸術」に含まれるようになったので注意されたい。


【図表3-4-1】 人口100万人当たりの学位取得者の国際比較
(A)学士号取得者

注:
<日本>
 標記年3月の大学学部卒業者数を計上。
 「その他」は、教養、国際関係、商船等である。
 2013年の人口データは2012年を使用。
<米国>
 当該年9月から始まる年度における学位取得者数を計上。
 「医・歯・薬・保健」は獣医を含む。「その他」は「軍事科学」、「学際研究」等の学科を含む。
 分野分類については、「教育指標の国際比較」の分類法による。
<ドイツ>
 当該年の冬学期及び翌年の夏学期における専門大学ディプロームと学士の取得試験合格者数。
<フランス>
 当該年(暦年)における学位取得者数。国立大学の学士号(通算3年)及び医・歯・薬学系の第一学位。(Diplôme de docteur、 通算5~8.5年)の授与件数である。理学、工学、農学は足したものを同時計上。
<英国>
 標記年(暦年)における大学など高等教育機関の第一学位取得者数。「その他」はマスコミュニケーション及び複合課程である。コンピューター科学は「理学」に含まれる。連合王国の値であり、留学生を含む。
<韓国>
 標記年3月の大学学部(産業大学、技術大学、放送・通信大学を含まない)卒業者数。2006年の「人文・芸術」は「人文」のみであり「芸術」は「その他」に含まれていたが、2012年からは「その他」は、体育のみなり、「芸術」は「人文・芸術」に含まれている。理学、工学、農学は足したものを同時計上。
資料:
<米国>NCES,IPEDS,“Digest of Education Statistics”
<その他の国>2006年度(ドイツは2007年度):文部科学省、「教育指標の国際比較」
       各国最新年度:文部科学省、文部科学省生涯学習政策局参事官付調べ。
各国の人口は参考統計Aに同じ。

参照:表3-4-1


(2)人口100万人当たりの修士号取得者数

 各国の修士号取得者数を人口100万人当たりで見た場合、日本は2010年度で615人と、極めて少ない数値である。他国の最新年の値を見ると、最も多い国は英国で、3,884人と群を抜いている。次いで米国(2,421人)、ドイツ(2,129人)となっている。
 なお、ドイツの修士は、欧州に共通する修士に加え、総合大学等で取得可能なディプローム数を計上しているため、前版「科学技術指標2013」での数値とは異なることに注意されたい。
 2006年度(ドイツは2007年度)と各国最新年で比較すると、全ての国で増加してはいるが、大きく伸びているのはフランス、英国であり、伸びが少ないのは日本である。
 専攻別の構成比で見ると、日本は「工学」分野の割合が大きいのがわかる。一方、他の国は「法経等」、「教育・教員養成」といった分野の割合が大きい。


(B)修士号取得者

注:
<日本>当該年度の4月から翌年3月までの修士号取得者数を計上。
<米国>当該年9月から始まる年度における修士号取得者数を計上。
<ドイツ>標記年の冬学期及び翌年の夏学期における修士(標準学修期間1~2年)及びディプローム数である。教員試験(国家試験)等合格者(教育・教員養成学部以外の学生で教員試験に合格した者を含む)は、ディプロームの「教育・教員養成」に含まれる。
<フランス>当該年(暦年)における修士号(通算5年)の取得者数。その他の注は図表3-4-1(A)フランスと同じ。
<英国>当該年(暦年)における大学及び高等教育カレッジの上級学位取得者数を計上。その他の注は図表3-4-1(A)英国と同じ。
<韓国>当該年度の3月から翌年2月までの修士号取得者数を計上。その他の注は図表3-4-1(A)韓国と同じ。
資料:
図表3-4-1(A)と同じ。

参照:表3-4-1


(3)人口100万人当たりの博士号取得者数

 各国の博士号取得者数を人口100万人当たりで見た場合、日本は2010年度で131人と少ない数値である。最も多い国はドイツ、次いで英国であり、両国とも300人を超えている。また、米国と韓国は約250人と同程度である。
 2006年度(ドイツは2007年度)と各国最新年を比較すると、日本以外の国は全て増加している。最も伸びているのは韓国であり、次いで英国、米国である(米国のデータについては図表3-4-1(c)の注意書きを参照のこと)。
 専攻別に見ると、博士号取得者の場合、各国とも自然科学の割合が大きい。日本は「医・歯・薬・保健」及び「工学」が大きな割合を占めている。ドイツは「医・歯・薬・保健」の割合も大きいが、「理学」の割合も大きい。一方、英国は「理学」の割合が最も大きい。


(C)博士号取得者

注:
<日本>当該年度の4月から翌年3月までの博士号取得者数を計上。
<米国>当該年9月から始まる年度における博士号取得者数を計上。ここでいう博士号取得者は、“Digest of Education Statistics 2012”に掲載されている“Doctor's degrees”の数値から医学士や法学士といった第一職業専門学位の数値のうち、「法経」、「医・歯・薬・保健」、「その他」分野の数値を除いたものである。
<ドイツ>当該年の冬学期及び翌年の夏学期における博士試験合格者数を計上。
<フランス>当該年(暦年)における博士号(通算8年)の取得者数。その他の注は図表3-4-1(A)フランスと同じ。
<英国>当該年(暦年)における大学及び高等教育カレッジの上級学位取得者数を計上。その他の注は図表3-4-1(A)英国と同じ。
<韓国>当該年度の3月から翌年2月までの博士号取得者数を計上。その他の注は図表3-4-1(A)韓国と同じ。
資料:
図表3-4-1(A)と同じ

参照:表3-4-1


3.4.2日本の博士号取得者

 この節では、日本の博士号取得者の推移を主要専攻別に見る。
 図表3-4-2は博士号取得者数の推移である。長期的に見ると、博士号取得者数は継続して増加していたが、2000年代に入ると、その伸びは鈍化し、2006年度をピークに減少に転じていた。しかしながら、2010年度の博士号取得者数は増加し、16,760人(図表3-4-2)となっている。
 2010年度の取得者数についてその主要専攻別の内訳を見ると、保健(医学、歯学、薬学及び保健学)が最も多く、6,315人と全体の37.7%を占めている。次いで工学が3,693人(22.0%)、理学は1,534人(9.2%)となっている。また、理学と工学の博士号取得者数の割合の推移を見ると、理学は1980年代に漸減しつつ1990年代に入ると横ばいに推移している。一方、工学は1990年代に入ると増加し始め、2000年代に入ると横ばいに推移している。


【図表3-4-2】 博士号取得者数の推移

注:
1)「保健」とは、医学、歯学、薬学及び保健学である。
2)「その他」には、教育、芸術、家政を含む。
資料:
1986年度までは広島大学教育研究センター、「高等教育統計データ(1989)」、1987年度以降は文部科学省調べ。

参照:表3-4-2


 図表3-4-3は、理学及び工学の博士号取得者数について、課程博士数及び論文博士数の内訳別にその推移を見たものである。
 2010年の理学の博士号取得者数は、課程博士号が1,415人、論文博士号では119人である。課程博士と論文博士の内訳の推移を見ると、全ての期間を通じて課程博士数が論文博士数を上回って推移している。なお、最近における取得者数の増加はほとんど課程博士数によるものである。課程博士は2006年度をピークに減少していたが、2010年度は増加した。
 2010年の工学の博士号取得者数は、課程博士号が3,240人、論文博士号では453人である。内訳の推移を見ると、1990年前半までは論文博士数が課程博士数を上回って推移していたが、それ以降は課程博士数の増加が著しく、最近における取得者数の増加は、ほとんど課程博士数によるものである。2010年度には全取得者数の9割を課程博士が占めるようになっている。なお、課程博士の数も近年、減少し始めている。


【図表3-4-3】 博士号取得者数の推移(課程博士/論文博士別)
(A)理学
(B)工学

注:
図表3-4-2と同じ。
資料:
図表3-4-2と同じ。

参照:表3-4-3