3.5高等教育機関における外国人学生

ポイント

  • 日本における自然科学分野の外国人大学院生は全体で1.6万人(2013年)であり、内訳を見ると中国人大学院生が最も多く、半数の0.8万人を占めている。一方、米国における科学工学分野の外国人大学院生は全体で16.3万人(2012年)であり、内訳を見ると中国人とインド人の大学院生が多く、両国で全体の半数以上を占めている。
  • 各国の学生が、外国人学生としてどの国の高等教育機関に多く在籍しているかを見ると、日本、中国、韓国の学生は米国において在籍している者が多く、ドイツ、フランスの学生については英国に在籍している者が多い。一方で、英国の学生については、米国に在籍している者が多く、米国の学生については英国に在籍している者が最も多い。

3.5.1日本と米国における外国人大学院生

 この節では、高等教育のグローバル化を示す指標の一つとして、研究者や高度専門家の養成を行っている大学院における外国人大学院生の状況を見る。図表3-5-1は、日本と米国の大学院に在籍する外国人大学院生の数を、最新年のランキングで10位程度の国と主要国について掲載したものである。分野については、日本は「自然科学」分野、米国は「科学工学」分野を対象としている。
 これを見ると、日本における外国人大学院生数は、2011年をピークに微減している。内訳を見ると中国人大学院生が最も多く、最新年では約0.8万人と半数を占めている。次いで韓国・朝鮮人大学院生が0.1万人となっており、1位と2位以降に大きな差がある。一方、米国の外国人大学院生は2010年をピークに減少している。内訳を見るとインド人大学院生が最も多かったが、最新年では中国人大学院生の方が多くなっている。また、日本ほど1位と2位に大きな差はないが、3位以降には大きな差がある。
 なお、ドイツ、英国、フランスといった欧州諸国の大学院生は日本、米国ともに常にトップ10入りしていないことがわかる。


【図表3-5-1】 日本と米国における外国人大学院生の状況
(A)日本:自然科学分野

(B)米国:科学工学分野

注:
日本の場合の外国人とは、日本国籍を持たない者。米国の場合、米国国籍を持たない者。。
資料:
<日本>文部科学省、「学校基本調査報告」
<米国>NSF,“Science and Engineering Indicators 2006,2008,2010,2012”

参照:表3-5-1


3.5.2主要国の高等教育機関における外国人学生

 図表3-5-2は主要国の高等教育機関に在籍する外国人学生数の推移である。ここでいう外国人学生とは「受入国の国籍を持たない学生」のことであり(留学生も含む)、留学生数のような動きの変化は見えないが、どの国の学生が、どの国で存在感を示しているのかを見る。
 日本の状況を見ると、2011年で最も多いのは中国の学生であり9.4万人、次いで韓国の学生が約2.6万人在籍している。一方、欧米の学生は米国が0.2万人、ドイツ、英国は約500人程度である。推移を見ると、中国が突出して増加し続けており、2008年時点では落ち込んだものの、最新年では過去最高の数値を示している。他国もその数値は少ないながらも増加している。
 米国の状況を見ると、2011年で最も多いのは中国で17.9万人、次いで韓国で7.2万人、次に日本で2.1万人である。中国、韓国ともに、学生数は上昇している一方で、日本の学生数は激減している。ただし、日本の2011年の学生数は2.1万人であるのに対して、ヨーロッパ諸国の学生数は1万人以下と少ない状況である。
 ドイツでも中国の学生数が最も多く、2011年で2.1万人である。ただし、2006年頃から減少傾向が見える。次いで多いのがフランスの学生であり0.7万人、また、韓国の学生も0.5万人と多い。日本の学生は0.2万人程度である。
 フランスでも中国の学生数が多く、2011年で2.6万人であり、かつ増加し続けている。次いでドイツの学生数が0.7万人と多い。また、他国の学生の状況は2~3,000人程度と、各国同程度に推移している。
 英国でも中国の学生数が最も多く、2011年で7.3万人と突出している。次いでドイツの学生数が2.1万人と多い。一方、日本は近年減少傾向にあり、最新年は0.4万人と少ない数値である。
 韓国についても中国の学生が多く、2011年で4.7万人であり、一貫して増加し続けている。次いで多いのは日本の学生であるが、0.1万人程度である。
 各国の学生が、外国人学生としてどの国の高等教育機関に多く在籍しているかを見ると、日本、中国、韓国の学生は米国において在籍している者が多く、ドイツ、フランスの学生については英国に在籍している者が多い。一方で、英国の学生については、米国に在籍している者が多く、米国の学生については英国に在籍している者が最も多い。


【図表3-5-2】 主要国の高等教育機関における外国人学生数
(A)日本
(B)米国
(C)ドイツ
(D)フランス
(E)英国
(F)韓国

注:
外国人学生とは、受入国の国籍を持たない学生を指す。
米国は2003年までは外国人学生、2004年からは留学生(受入国に永住・定住していない学生)。
資料:
OECD Stat(webより)

参照:表3-5-2


コラム:国際科学オリンピックのメダル獲得数ランキング

 国際科学オリンピックとは、各国の中等教育課程にある生徒を対象にした科学技術に関する国際的なコンテストである。様々な国における才能ある生徒達を見出し、その才能を伸ばすチャンスを与える事、また、生徒及び教育者の国際交流を図り、各研究領域の発展を促す事を目的としている。結果は各年、各オリンピックの開催国の事務局で公表されていることが多く、一か所にまとめられていない。そのため、ここでは数学、物理、化学、生物学、情報の各オリンピックを一堂にまとめ、3時点の比較を行うこととした。
 科学オリンピックの場合、各メダルがひとつではなく、金、銀、銅の数も、参加枠人数もオリンピックによって差異がある。ここでの順位は、各国が獲得した金メダルの数によって決定した。金メダルの獲得数が同じ場合、最初に銀メダル、次に銅メダルの数で順位を決定した。もし、それでも同列であれば同じ順位とし、順位表はアルファベット順に表記した。また、科学技術指標で主に掲載している国として日、米、独、仏、英、中、韓国についてはベスト10以外でも掲載した。
 図表3-6-1を見ると、各オリンピックともに、中国、韓国をはじめとした東アジア地域の活躍が目立つ。また、イラン、ベトナムなどの国・地域も2000年からベスト10入りしている。
 欧州では、ロシアをはじめとした東欧地域のほうが、ドイツ、フランス、英国といった西欧地域の国・地域より多く、ベスト10入りしており、また、ルーマニアやベラルーシといった国・地域でも2000年からベスト10入りしていることが多い。また、米国については、ほとんどのオリンピックでベスト10入りしている。
 日本が各オリンピックに参加し始めたのは、近年になってからである。数学オリンピックは1990年からの参加であるが、物理オリンピックは2006年から、化学オリンピックは2003年から、情報オリンピックは1994年から1997年まで参加していたがその後休止し、2006年から再び参加、生物学オリンピックは2005年からの参加である。
 日本は、参加し始めた年が、他国より遅めではあったが、参加し始めてからは、各オリンピックでベスト10入りしていることが多く、優秀な成績を収めている。
 日本では国際科学技術コンテストの支援事業を2004年から開始した。理数系教科に秀でた生徒の学習機会を提供し、将来国際的に通用する研究者の育成に資することを目的としている。また、国際科学技術コンテスト自体の開催支援も行っている。2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定したこともあり、科学オリンピックも同時開催を目指す案が進められている(夢ビジョン2020(文部科学省版)による)。
(神田 由美子)


【図表3-6-1】 国際科学オリンピックのメダル数状況

注:
各オリンピックの参加枠については、数学:6人以内、物理:5人以内、化学:4人以内、生物:4人以内、情報:4人以内。
資料:
各オリンピックのwebより科学技術・学術政策研究所が作成。

参照:表3-6-1