3.4学位取得者の国際比較
ポイント
- 日本の2008年の理学の学位授与数は1,525件である。1991年度以降増加傾向となったが、2000年代に入り横ばいに推移している。また、課程博士と論文博士の内訳について見ると、全ての期間を通じて課程博士数が論文博士数を上回って推移している。
- 日本の2008年の工学の学位授与数は3,954件である。1980年代後半以降、その増勢を大きく強めていたが、理学と同様に、2000年代に入ると、横ばいに推移しており、近年、減少傾向が見える内訳を見ると、1990年前半までは論文博士数が課程博士数を上回って推移していたが、それ以降は課程博士数の増加が著しく、最近における授与数の増加は、ほとんど課程博士数によるものである。
- 日本の人口100万人当たりの学位取得者数は、学士号取得者4,322人、修士号取得者584人、博士号取得者は131人である。
- 各国の人口100万人当たりの学位取得者の数を、各国最新年で見ると、学士号取得者の多い国は、韓国(5,843人)、イギリス(5,435人)であり、修士号取得者の多い国は、イギリス(3,044人)、米国(2,155人)であり、博士号取得者数の多い国はドイツ(306人)、イギリス(288人)である。
3.4.1学士・修士・博士号取得者数の国際比較
各国の学士・修士・博士号取得者数について人口100万人当たりで見てみる。国により学位の内容等に差異があるが、日本の学士・修士・博士号にあたる者を対象としている(詳細は各図表の注意書きを参照のこと)。
なお、ドイツは近年、伝統的な学位に加えて欧州に共通する学部段階(学士)、大学院段階(修士)を導入し始めた。従来、ドイツの学士については大学卒業時に行われる国家試験(ディプロマ試験等)の合格者数を計上するのみであったが、最新年では、国家試験合格者数、専門単科大学修了者数と学士取得者数を加えたものが計上されている。
また、修士についても新たにデータが計上されるようになった。
人口100万人当たりで学士号取得者を見た場合、日本は2011年度で4,322人である。最新年の値が5000人を超えている国は、韓国5,843人(2010年度)、イギリス5,435人(2008年度)、米国は5,254人(2008年度)である。また、ドイツは3,576人(2009年度)、フランスは2,615人(2009年度)と比較的少ない。
2000年度(ドイツは2007年度、韓国は2004年度)と各国最新年で伸び率を比較すると、イギリスが最も大きく1.21倍、次に米国が1.19倍、フランスで1.14倍、韓国は1.05倍、日本は1.02倍である。
専攻別の構成比を自然科学(理学、工学、農学、保健等)、人文・社会科学(人文・芸術、法経等)とその他に分けて見ると、各国とも人文・社会科学の割合が大きい。特に大きいのはフランスで約7割を占めている。米国や日本では約6割を占めている。一方、韓国は自然科学と同等程度で約4割、イギリスは自然科学が約5割である。
(1)人口100万人当たりの学士号取得者
図表3-4-2は、理学及び工学の学位授与数について、課程博士数及び論文博士数の内訳別にその推移を見たものである。
理学の学位授与数は1991年度以降増加傾向となったが、2000年代に入り横ばいに推移している。また、課程博士と論文博士の内訳について見ると、全ての期間を通じて課程博士数が論文博士数を上回って推移している。また、最近における授与数の増加はほとんど課程博士数によるものであり、2007年度における課程博士の割合は91.5%にまで高まっている。
工学の学位授与数は1980年代後半以降、その増勢を大きく強めていたが、理学と同様に、2000年代に入ると、横ばいに推移している。内訳を見ると、1990年前半までは論文博士数が課程博士数を上回って推移していたが、それ以降は課程博士数の増加が著しく、最近における授与数の増加は、ほとんど課程博士数によるものである。2007年度には全授与数の85.2%を課程博士が占めるようになっている。

注:
<日本>標記年3月の大学学部卒業者数を計上。「その他」は、教養、国際関係、商船等である。
<米国>当該年9月から始まる年度における学位取得者数を計上。「医・歯・薬・保健」は獣医を含む。「その他」は「軍事科学」、「学際研究」等の学科を含む。
<ドイツ>当該年の冬学期及び翌年の夏学期におけるディプローム試験・教員試験(国家試験)等合格者数、専門単科大学修了者数、学士取得者数(標準学修期間3年)。
<フランス>当該年(暦年)における学位取得者数。国立大学の学士号(通算3年)及び医・歯・薬学系の第一学位。(Diplôme de docteur、 通算5~8.5年)の授与件数である。
<イギリス>当該年(暦年)における大学及び高等教育カレッジの第一学位取得者数を計上。
<韓国>当該年3月の大学学部卒業者数。「人文・芸術」は「人文」のみであり、「芸術」は「その他」に含む。
資料:
文部科学省、「教育指標の国際比較」、各国の人口は参考統計Aに同じ。
参照:表3-4-1
(2)人口100万人当たりの修士号取得者
各国の修士号取得者数を人口100万人当たりで見た場合、日本は584人(2008年度)と小さい数値である。最も数値が大きい国はイギリスで、3,044人(2008年度)と群を抜いており、米国も2,155人(2008年度)と大きい。2000年度(ドイツは2007年度、韓国は2003年度)と各国最新年で伸び率を比較すると、最も伸びたのはフランスで、1.56倍、また、イギリスも1.54倍と、伸びている。日本は1.22倍の伸びを示している。なお、ドイツについては修士課程のシステムが制度化されて間もないため、数値も小さいが、伸びは1.47倍と大きい。
専攻別の構成比で見ると、日本は自然科学分野が約6割と学士号取得者の割合の倍になっており、一方、人文・社会分野は半分以下になっている。他の国は学士号取得者の割合とほぼ同じ傾向であり、日本ほどの変化はない。

注:
<日本>当該年度の4月から翌年3月までの修士号取得者数を計上。
<米国>当該年9月から始まる年度におけ る修士号取得者数を計上。
<ドイツ>標記年の冬学期及び翌年の夏学期における修士(標準学修期間1~2年)を計上。
<フランス>当該年(暦年)における修士号(通算5年)の取得者数。理学、工学、農学は足したものを同時計上。
<イギリス>当該年(暦年)における大学及び高等教育カレッジの上級学位取得者数を計上。
<韓国>当該年度の3月から翌年2月までの修士号取得者数を計上。理学、工学、農学は足したものを同時計上。
資料:
図表3-4-1と同じ
参照:表3-4-1
(3)人口100万人当たりの博士号取得者
各国の博士号取得者数を人口100万人当たりで見た場合、日本は131人(2008年度)であり、他国と比較すると少ない数値である。最も大きい国はドイツであり、306人(2009年度)となっている。また、イギリスも288人(2008年度)と大きい数値になっている。
2000年度(ドイツは2007年度、韓国は)と各国最新年で伸び率を比較すると、イギリスが1.48倍とその伸びは大きく、次いで、米国が1.4倍、韓国は1.3倍となっている。一方、日本は1.03倍、また、フランスもほとんど伸びていない。
専攻別に見ると、博士号取得者の場合、各国とも自然科学の割合が大きい。特に割合の大きい日本は約8割を占め、なかでも「医・歯・薬・保健」が大きな割合を占めている。また、ドイツも自然科学分野の割合が約7割をしめており、日本と同様に「医・歯・薬・保健」の割合も大きいが、「理学」の割合も大きい。また、フランスは学士・修士号取得者での専攻別割合では人文・社会科学の方が大きかったが、博士号取得者になると自然科学が約6割とその占める割合が大きくなっている。

注:
<日本>当該年度の4月から翌年3月までの博士号取得者数を計上。
<米国>当該年9月から始まる年度における博士号取得者数を計上。
<ドイツ>当該年の冬学期及び翌年の夏学期における博士試験合格者数を計上。
<フランス>当該年(暦年)における博士号(通算8年)の取得者数。理学、工学、農学は足したものを同時計上。
<イギリス>当該年(暦年)における大学及び高等教育カレッジの上級学位取得者数を計上。
<韓国>当該年度の3月から翌年2月までの博士号取得者数を計上。理学、工学、農学は足したものを同時計上。
資料:
図表3-4-1と同じ。
参照:表3-4-1
3.4.2学士・修士・博士号取得者数の国際比較
博士号取得者の数は、科学技術人材の質を測る上での重要な指標の1つと考えられる。
図表3-4-2は、博士号授与数の推移を主要専攻別に見たものである。なお、ここでいう博士号授与数とは、学位規則に基づきその年度において授与された学位(いわゆる新制博士)の数である。2008年度の博士号授与数は16,735件であり、長期的に見ると、継続して増加していたが、2000年代に入ると、その伸びは鈍化し、2006年度をピークに減少し始めている。
2008年度の授与数についてその主要専攻別の内訳を見ると、保健(医学、歯学、薬学及び保健学)が最も多く、6,241件と全体の37.3%を占めている。次いで、工学が3,954件(23.6%)、理学は1,525件(9.1%)となっている。

注:
1)「保健」とは、医学、歯学、薬学及び保健学である。
2)「その他」には、教育、芸術、家政を含む。
資料:
1986年度までは広島大学教育研究センター、「高等教育統計データ(1989)」、1987年度以降は文部科学省調べ。
参照:表3-4-2
図表3-4-3は、理学及び工学の学位授与数について、課程博士数及び論文博士数の内訳別にその推移を見たものである。
2008年の理学の学位授与数は1,525件である。1991年度以降増加傾向となったが、2000年代に入り横ばいに推移している。また、課程博士と論文博士の内訳について見ると、全ての期間を通じて課程博士数が論文博士数を上回って推移している。なお、最近における授与数の増加はほとんど課程博士数によるものであり、2008年度における課程博士の割合は9割にまで高まっている。
2008年の工学の学位授与数は3,954件である。1980年代後半以降、その増勢を大きく強めていたが、理学と同様に、2000年代に入ると、横ばいに推移しており、近年、減少傾向が見える。内訳を見ると、1990年前半までは論文博士数が課程博士数を上回って推移していたが、それ以降は課程博士数の増加が著しく、最近における授与数の増加は、ほとんど課程博士数によるものである。2008年度には全授与数の9割を課程博士が占めるようになっている。
(A)理学

(B)工学

注:
図表3-4-2と同じ。
資料:
図表3-4-2と同じ。
参照:表3-4-3