1.3.2企業部門の研究開発費

ポイント

  • 日本の企業部門の2013年の研究開発費は12.7兆円であり、2009年における大幅な減少以降は横ばいに推移している。米国の2012年では33.1兆円となり、他国と比較すると第1位の規模である。中国は、2000年代に入り大きく伸びており、2013年では26.8兆円となっている。
  • 2000年を1とした場合の各国通貨による企業部門の研究開発費の指数を見ると、中国の2013年値は16.9であり、急激な伸びを示している。また、韓国の伸びも著しい。米国、ドイツ、フランス、英国も継続して増加しており、最新年を見ると、4ヶ国ともに1.6を示している。一方、日本の2013年は1.2となっている。2009年以降、横ばいに推移しており、1を下回ってはいない。
  • 主要国における企業部門の研究開発費の対GDP比を見ると、日本の2013年の対GDP比率は2.63%である。韓国は2010年から日本を上回り、2013年値は3.26%と他国と比較すると第1位の規模である。ドイツについては、1990年代の中頃から緩やかに増加傾向が見え、2013年では米国を上回り、1.99%となった。
  • 企業の研究開発のための政府による支援の状況を見るために、「直接的支援(企業の研究開発費のうち政府が負担した金額」及び「間接的支援(企業の法人税のうち、研究開発税制優遇措置により控除された税額)」を対GDP比で見ると、日本は間接的支援の方が大きい。
  • 他国では、直接的支援が大きいのはロシア、スロベニア、米国などであり、間接的支援が大きいのはフランス、韓国、カナダ、ベルギーなどである。
(1)各国企業部門の研究開発費

 企業部門の研究開発費は各国の研究開発費総額の大部分を占める。従って企業部門での値の増減が、国の総研究開発費に及ぼす影響は大きい。
 図表1-3-3(A)を見ると、日本の2013年(9)の研究開発費は12.7兆円であり、2009年における大幅な減少以降は横ばいに推移している。
 米国については2008年をピークに減少していたが、近年、増加傾向が見える。2012年では33.1兆円となり、他国と比較すると第1位の規模である。
 長期的に見ると、ドイツは微増、フランス、英国は横ばいに推移している。中国は、2000年代に入り大きく伸びており、2009年では日本を上回り、2013年では26.8兆円となっている。また、韓国も継続して増加している。
 次に、2000年を1とした場合の各国通貨による企業部門の研究開発費の指数を示し、その伸びを見る(図表1-3-3(B))。
 中国の2013年値は16.9であり、急激な伸びを示している。また、韓国の伸びも著しい。米国、ドイツ、フランス、英国も継続して増加しており、最新年を見ると、4ヶ国ともに1.6を示している。一方、日本の2013年は1.2となっている。2009年以降、横ばいに推移しており、1を下回ってはいない。


【図表1-3-3】 主要国における企業部門の研究開発費
(A)名目額(OECD購買力平価換算)

(B)2000年を基準とした各国通貨による企業部門の研究開発費の指数

注:
1)各国企業部門の定義は図表1-1-4を参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3)購買力平価は、参考統計Eと同じ。
<日本>年度の値を示している。
<米国>2012年は予備値。
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。 1982、1984、1986、1988、1990、1992、1994、1996、1998、2013年値は国家の見積もり又は必要に応じてOECDの基準に一致するように事務局で修正された推定値。1993年値は他のクラスを含んでいる。2013年は暫定値。
<フランス>1992、1997、2001、2004、2006年値は、前年までのデータとの継続性が損なわれている。2013年値は暫定値。
<中国>1991~1999までは過小評価されたか、あるいは過小評価されたデータに基づいた。2000年、2009年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。
<EU>各国資料に基づいたOECD事務局の見積もり・算出。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国>NSF,“National Patterns of R&D Resources: 2011-12 Data Update”
<ドイツ、フランス、EU>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2014/2”
<英国>ONS, “Gross UK Research and Development Historical Data”

参照:表1-3-3


 各国の経済規模の違いを考慮して研究開発費を比較するために、企業部門における研究開発費の対GDP比率を見る(図表1-3-4)。日本の2013年の対GDP比率は2.63%である。1990年以降、トップクラスにあったが、2010年からは韓国が日本を上回った。なお、韓国の2013年値は3.26%となり、主要国の中では著しく大きい値となっている。
 米国は長期的に見ると、横ばいに推移している。ドイツについては、1990年代の中頃から緩やかに増加傾向が見え、2013年では1.99%となり、米国を上回っている。英国、フランスについても長期的に見れば横ばいに推移している。一方、中国の値は急激に上昇しており、最新年では英国、EU、フランスの値を超えている。


【図表1-3-4】 主要国における企業部門の研究開発費の対GDP比率の推移

注:
1)GDPは、参考統計Cと同じ。
2)図表1-3-3と同じ。
資料:
図表1-3-3と同じ。

参照:表1-3-4


(2)各国産業分類別の研究開発費

 主要国における企業部門の製造業と非製造業の研究開発費について、各国最新年からの3年平均で見ると、日本、ドイツ、中国、韓国は製造業の割合は9割、フランスは8割に近い。一方、米国、英国に関しては、製造業の割合が7割程度であり、非製造業の重みが他国と比較すると大きい(図表1-3-5)。


【図表1-3-5】 主要国における企業部門の製造業と非製造業の研究開発費の割合 

注:
1)各国、自国の産業分類を使用しているため、国際比較する際は注意が必要である。
2)各国企業部門の定義は図表1-1-4を参照のこと。
<日本>年度の値を示している。産業分類は日本標準産業分類に基づいた科学技術研究調査の産業分類を使用。
<米国>産業分類はNAICSを使用。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国>NSF,“Science and Engineering Indicators 2014”
<ドイツ、フランス、中国、韓国>OECD,“Structural Analysis (STAN) Databases”
<英国>OST,“SET statistics”

参照:表1-3-5


 図表1-3-6は、日本、米国、ドイツの産業分類別研究開発費を示したものである。ここでいう産業分類とは、各国が国際標準産業分類を参照して、企業部門の研究開発統計調査のために設定した産業分類である。各国の標準産業分類はISIC(国際標準産業分類)に概ね対応するように設定されているが、やはり国によって多少の差異が出てくる。そのため、ここでは産業ごとに比較するのではなく、その国の研究開発費における産業構造を見ることとする。
 まず、日本の産業分類別の研究開発費を見ると、製造業では、「輸送用機械製造業」、「情報通信機械器具製造業」が大きく、ついで「医薬品製造業」が大きい。非製造業では、「学術研究、専門・技術サービス業」が大きい。
 米国について、産業分類別で見ると、製造業では、「コンピューター、電子製品工業」、「化学工業」、また「輸送用機械工業」の値が大きい。非製造業では、「情報通信業」、「専門、科学、技術サービス業」が大きくかつ増加している。
 ドイツは製造業、非製造業ともに増加しているのがわかる。産業分類別で見ると「輸送用機械製造業」が特に大きく、次いで「コンピューター、電子・光学製品製造業」が大きい。非製造業を見ると、「専門的科学技術活動」が大きく、かつ増加している。


【図表1-3-6】 日米独の産業分類別研究開発費
(A)日本
(B)米国
(C)ドイツ

注:
図表1-3-5と同じ。
資料:
ドイツはStifterverband Wissenschaftsstatistik, “FuE-Datenreport 2013”、その他の国は図表1-3-5と同じ。

参照:表1-3-6


(3)企業の売上高当たりの研究開発費

 図表1-3-7は日本と米国における企業部門の売上高当たりの研究開発費の割合の推移である。これを全産業と製造業のそれぞれについて示している。
 日本の製造業の値は全産業の値より高く、製造業の方が非製造業より研究集約的である。一方、米国の値は、2000年頃に製造業と全産業の値が同程度になったが、その後は製造業の方が全産業より高い値となっている。


【図表1-3-7】 企業部門の売上高当たりの研究開発費

注:
<日本>
 1)年度の値を示している。
 2)売上高あたりの研究開発費の全産業は2001年度値から「金融保険業を除く全産業」。
 3)産業分類は日本標準産業分類を基に科学技術研究調査の産業分類を使用している。
 4)産業分類の改定に伴い、科学技術研究調査の産業分類は1996、2002、2008、2013年版において変更している。
<米国>
 1)産業分類は1998年まではSIC、1999年からはNAICSを使用。
 2)2001年からFFRDCsを除いている。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国>NSF,“R&D Industry 各年”,“Business Research and De-velopment and Innovation”

参照:表1-3-7


(4)企業への政府による直接的・間接的支援

 企業の研究開発のための政府による支援の状況を見るために、「直接的支援(企業の研究開発費のうち政府が負担した金額)」及び「間接的支援(企業の法人税のうち、研究開発税制優遇措置により控除された税額)」を対GDP比で見ると、日本は間接的支援の方が大きい。
 他国を見ると、直接的支援が最も大きいのはロシアであり、次いでスロベニア、米国も大きい。間接的支援が大きいのはフランス、韓国、カナダ、ベルギーなどである。
 なお、韓国やフランスについては直接的支援、間接的支援ともに大きい(図表1-3-8(A))。
 次に日本についての政府からの直接的、間接的支援の推移を図表1-3-8(B)に示した。これを見ると、政府から企業への直接的支援は長期的には減少傾向にあり、最近はほぼ横ばいである。間接的支援は、2004年に大きく伸びており、その後2008年には減少している。
 間接的支援の2004年の急増については、2003年に導入された「試験研究費の総額にかかる税額控除制度」による税額控除の急増が主な理由と考えられ、この制度を活用する企業が2004年に増えたと推測される。2008年の減少については、法人税全額の減少が、控除額の減少を起こしたと考えられる。2009年以降の状況を見ると、直接的支援が横ばい、間接的支援が増加している。


【図表1-3-8】 企業の研究開発のための政府による直接的支援と間接的支援の状況
(A)主要国比較(2012)年

注:
1)各国からの推計値 (NESTIが行った研究開発税制優遇調査による)、予備値も含まれる。
2)中国、ルクセンブルグは2009年、ロシア、米国、オーストリア、スウェーデン、スペイン、ブラジル、ベルギー、ニュージーランド、イタリア、ポーランドは2011年。
3)エストニア、スウェーデン、ドイツ、フィンランド、ニュージーランド、ルクセンブルグは研究開発税制優遇のデータが提供されなかった。
資料:
OECD, “R&D Tax Incentive Indicators”

参照:表1-3-8


(B)日本の推移

注:
2010年までは年度の値を示している。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」、国税庁、「会社標本調査」、2011年はOECD, “STI Scoreboard 2013” 、2012年はOECD, “R&D Tax Incentive Indicators”

参照:表1-3-8



(9)この節の日本の場合は、国際比較の際には「年」を用いている。本来は「年度」である。日本のみを記述している節では「年度」を用いている。