1.3部門別の研究開発費

1.3.1公的機関部門の研究開発費

ポイント

  • 日本の公的機関部門の研究開発費は、2013年で1.5兆円であり、2000年代に入ってからは、ほぼ横ばいに推移している。米国は一貫して増加傾向にあり、2012年で5.8兆円と他国と比較して第1位の規模である。中国の研究開発費は1990年代中ごろから急速に増加しはじめ、最新年では米国と同等程度になっている。ドイツ、韓国は2000年代中ごろから増加傾向にあり、特にドイツは、2013年において日本をわずかに上回っている。
  • 2000年を1とした場合の各国通貨による公的機関部門の研究開発費の指数を見ると、中国の2013年値は6.8であり、大きな伸びを示している。また、韓国の伸びも著しい。米国、ドイツも継続して増加しており、最新年を見ると、米国は1.9、ドイツは1.8を示している。フランス、英国、日本は横ばいに推移しており、1を下回る年もある。
(1)各国公的機関部門の研究開発費

 本節では研究開発実施部門としての公的機関部門について述べる。
 ここで対象としている各国の公的機関には以下のような研究機関が含まれる(図表1-1-4(B)参照)。日本は「国営」(国立試験研究機関等)、「公営」(公設試験研究機関等)、「特殊法人・独立行政法人」といった公的研究機関である。
 米国は連邦政府の研究機関(NIH等)と、FFRDCs(政府が出資し、産業・大学・非営利団体部門が研究開発を実施)の研究機関である。
 ドイツでは連邦政府と地方政府、その他の公的研究施設、非営利団体(16万ユーロ以上の公的資金を得ている)及び高等教育機関ではない研究機関(法的に独立した大学附属の研究所)である。ドイツについては、「公的機関」部門と「非営利団体」部門が分離されていないことに注意が必要である。
 フランスは、科学技術的性格公施設法人(EPST)(ただし、CNRSを除く)や商工業的性格公施設法人(EPIC)等といった設立形態の研究機関である。
 英国は中央政府、分権化された政府の研究機関及びリサーチカウンシルである。
 中国は中央政府の研究機関、韓国は国・公立研究機関、政府出捐研究機関及び国・公立病院である。
 図表1-3-1(A)に主要国における公的機関部門の研究開発費(OECD購買力平価換算)の推移を示した。日本の公的機関部門の研究開発費は、2013年(8)で1.5兆円であり、2000年代に入ってからは、ほぼ横ばいに推移している。米国は一貫して増加傾向にあり、2012年で5.8兆円と他国と比較して第1位の規模である。中国の研究開発費は1990年代中ごろから急速に増加しはじめ、最新年では米国と同等程度になっている。ドイツ、韓国は2000年代中ごろから増加傾向にあり、特にドイツは、2013年において日本をわずかに上回っている。
 次に、2000年を1とした場合の各国通貨による公的機関部門の研究開発費の指数を示し、その伸びを見る(図表1-3-1(B))。
 中国の2013年値は6.8であり、大きな伸びを示している。また、韓国の伸びも著しい。米国、ドイツも継続して増加しており、最新年を見ると、米国は1.9、ドイツは1.8を示している。フランス、英国、日本は横ばいに推移しており、1を下回る年もある。


【図表1-3-1】 主要国における公的機関部門の研究開発費の推移
(A)名目額(OECD購買力平価換算)

(B)2000年を基準とした各国通貨による公的機関部門の研究開発費の指数

注:
1)公的機関部門の定義には国によって違いがあるため、国際比較の際には注意が必要である。各国の部門の定義については、図表1-1-4参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3)購買力平価は、参考統計Eと同じ。
<日本>年度の値を示している。2011年から営利を伴う特殊法人・独立行政法人を含む。
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。 1982、1984、1986、1988、1990、2013年値は国家の見積もり又は必要に応じてOECDの基準に一致するように事務局で修正された推定値。1993年以降は他のクラスを含んでいる。2013年は暫定値。
<フランス>1992、1997、2000、2010年のデータは、前年までのデータとの継続性が損なわれている。2013年値は暫定値。
<中国>2009年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。
<EU>各国資料に基づいたOECD事務局の見積もり・算出。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国>NSF,“National Patterns of R&D Resources: 2011-12 Data Update”
<ドイツ、フランス、中国、韓国、EU>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2014/2”
<英国>ONS, “Gross UK Research and Development Historical Data”

参照:表1-3-1

(2)日本の公的機関の研究開発費

 図表1-3-2に日本の公的機関部門における研究開発費使用額の推移を機関の種類別に示す。いずれの研究機関とも2000年度までは、多少の増減はあるものの、増加を続けていた。2000年代に入ると横ばいに推移していたが、2013年度では増加し1.5兆円となった。
 これらのなかでは、「特殊法人・独立行政法人」の金額が最も大きい。なお、国営研究機関と特殊法人の独立行政法人化により、2001年度以降は、「国営」と「特殊法人・独立行政法人」のデータの連続性が失われている。また、2011年度から「特殊法人・独立行政法人」には営利を伴う機関も含まれている。


【図表1-3-2】 日本の公的機関の研究開発費使用額の推移 

注:
1)2001年度に、国営の研究機関の一部が独立行政法人となっているので時系列変化を見る際には注意が必要である。
2)2000年度までは「特殊法人・独立行政法人」は「特殊法人」のみの値。
3)2011年度から特殊法人・独立行政法人には営利を伴う機関も含まれている。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-2


(8)この節の日本は、国際比較の際には「年」を用いている。本来は「年度」である。日本のみを記述している節では「年度」を用いている。


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